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77.思いがけない罠
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その日はシャイナーがシャメルをブルーグレイから追加購入したいが、叔母を強制送還した関係で少々アンシャンテの印象が悪くなってしまったので、少しだけ口利きをお願いできないだろうかという相談に来たのが始まりだった。
セドリック王子を持ち出されてしまうと兄は自分では動けないとわかっているので、急遽俺も呼ばれて話を聞くことに。
そして三人でお茶を飲みながら話をして、特に問題なく終わりそうではあったのだが、話し終えたところでシャイナーが思い出したように茶葉の入った包みをテーブルへと置いた。
「ついでに以前カリンが気に入ったという茶葉と、同じ茶園で作っている他の茶葉も持って来てみた。良かったら是非試してみて欲しい」
どうも以前来た際にアンシャンテの名産である茶を幾つか補佐官達と兄が試飲する機会があったらしく、そこで気に入ったものがあったらしい。
なんだかんだと仲良くなっているようで良かったとは思うものの、なんだか何かが引っ掛かる。
あんなに敵視していたのに妙に好意的に接してきているせいだろうか?
なんとなく何かがありそうで仕方がない。
けれど兄は特に何も思わなかったのか普通に喜んでいた。
「助かる。これは特に香りも良かったしきっとロキも気に入るだろうと思って」
自分で取り寄せようとも思ったけれど、なかなか手に入らなかったんだと兄は嬉しそうに笑っている。
多分本当に好みの味だったんだろう。
兄の気に入ったものなら是非飲みたいと思い、そのまま侍女に頼んで淹れてもらうことにした。
そうして味わってみると仄かに燻したような香りが鼻を擽り、兄が好きそうな茶だと納得がいく。
「今日はガヴァムの茶も楽しんでもらおうと特別なものを用意させてみた。是非シャイナーにも楽しんでもらいたい」
「それは楽しみだ」
そう言って今度は兄がシャイナーへとこちらの茶を勧め始める。
用意された茶は他国の王に勧めるのにおかしくはない最高級の茶葉なのだろう。
場に良い香りがふわりと香る。
その茶を味わうシャイナーを俺はなんとはなしに観察していたのだが……。
「うっ…」
飲んで暫く経ったところでシャイナーの様子が急におかしくなった。
目が潤み、頬に朱が差し息が荒くなり始めたのだ。
「シャイナー陛下?!」
シャイナーの近衛が慌てたように駆け付けすぐさま助け起こそうとするが、シャイナーは辛そうに眉を寄せるばかり。
そんな様子を見てアンシャンテ側が俄かに色めき立つ。
「カリン陛下!これは一体どういうことです?!」
「まさか毒を?!」
「いや、ち、違う!」
「ではこれは一体なんなのです?!」
「シャイナー陛下!しっかりしてください!」
「医師を早く!!」
場が騒然となり、兄の顔が一気に蒼白になった。
それを見てこれは嵌められたかなと思い、溜め息を吐きながら速やかに指示を出す。
急いで王宮医師を呼びにやらせたものの、あの様子なら恐らく摂取したのは媚薬だろう。
仕込みはシャイナーがしただろうし、自分で自分に盛るなら安全性への配慮くらいはしているはずだ。
問題はこれがどこからどう見てもガヴァム側に問題があるようにしか見えないということ。
自作自演で自分で媚薬を飲むなど普通は考えないからだ。
(やられた。本当に…困った人だ)
怪しいのはテーブル上にあるミルクとシュガー。
用意したのはガヴァム側だが、予め暗部に頼んですり替えるのは簡単だったことだろう。
この数ヶ月でそもそも油断を誘うことには十分成功していたのだから。
やはりしっかり躾けておいた方が良さそうだなと思いながら、取り乱している兄を支えて声を掛ける。
「兄上」
「ロ、ロキ…!俺はやってない!!」
「わかってますよ。大丈夫。ちゃんと信じてますから」
「本当に、俺は何もやってないんだ…!」
必死に言い募る兄に周囲の目は冷たい。
こういう視線に俺は慣れているからいいけれど、兄にはキツイだろう。
このまま兄を放置しているとアンシャンテ側の良い標的になってしまうだけだし、すぐに下げた方がいいと判断した。
「ここは俺に任せて部屋に下がっていてもらえませんか?」
「ロキ…!」
「リヒター。兄上を部屋に送って差し上げろ」
「はっ」
「ロキッ!」
そんなに泣きながら言わなくてもちゃんとわかってるのに。
「さて…シャイナー陛下は一先ず客室にお運びしてくれ」
「は、はいっ!」
すっかり動転しているガヴァム側の侍女や騎士達を促し、アンシャンテ側の近衛に抱き上げられたシャイナーを先導して部屋へと連れていく。
そして駆け付けた医師に診せるとやはり盛られたのは毒ではなく媚薬の類だった。
「陛下…」
ピリピリする近衛達に見守られながら診察を終えた医師が恐る恐ると言うように俺へと言葉を紡ぐ。
「シャイナー陛下に盛られた媚薬は時間経過で抜けるタイプのものではなさそうなのです」
「中和剤は?」
「それも…」
「ない…か」
「はい。申し訳ございません」
「わかった。下がっていい」
そして医師を帰らせ、シャイナーへと声を掛ける。
「シャイナー…。どうやら媚薬でそうなってしまったらしいのですが…どうしたいですか?」
「あ…」
そんな期待に満ちた目でこっちを見たらバレバレなのに…。
まあ虐めてあげますけど。
「こちらが盛った媚薬なら俺がここにいるのはアンシャンテの者達を刺激してしまうでしょう。人払いをして一人で処理することをお勧めします」
ニコッとそう言い放ちさっさと立ち去ろうとしたら思い切り服を掴まれ引き留められる。
(まあ…当然そう来るに決まっているな)
ここで目的である『俺に抱かれる』という機会を簡単に逃すはずがない。
「シャイナー?」
「うぅ…ロキ…辛い……」
まあ辛いのは辛いだろう。
結構強そうな媚薬だし。
「すみません。俺はこれから兄に真偽を問い質しに行かないといけないので」
「やッ…行かないでくれっ……」
目に涙を湛えて縋るように見つめてくるシャイナー。
多分普通ならこれに絆されすぐに慰めたりするんだろうな。
俺はしないけど。
「シャイナー。悪い子にはお仕置きですよ?」
そっと耳元で甘く囁き、すぐにスッと離れてニコリと見下ろす。
「取り敢えず後で様子を見に来るので、それまで自己処理で乗り切ってください」
「ロキッ!」
兄を嵌めようとしたのだから少しくらい反省してほしいものだ。
あの場にいた者達はきっとこう思ったことだろう。
『カリン陛下はいつまでもロキ陛下に執着してくるシャイナー陛下に不満を溜め込み、二度とガヴァムに来る気がなくなるよう薬を盛ったのだ』と。
ちょっと考えればおかしい話だとわかりそうなものだが、アンシャンテの者は自分達の王が倒れたとあって冷静ではいられなかっただろうし、こちら側はこちら側でバカな者ばかりだ。簡単に騙される。
だからこそシャイナーはこんな手で演出を試みたのだろう。
実に上手い手だ。
(俺にはバレバレだけど)
だからこそ簡単に踊ってやる気はない。
それこそ辛かったら自分の近衛に抱いてもらうなり侍女を抱くなりすればいい。
簡単な話だ。
ちゃんといい子で待って、後で様子を見に来た時に反省していたら初めて躾をしてやろう。
それまで精々苦しめばいい。
シャイナーから離れ、俺は何も知らないであろうシャイナーの近衛達に『調査に行ってきます』と言い残し部屋を出た。
***
兄の部屋へと向かうとドアを開けると同時に兄が飛んできて、自分はやってないと言いながら可愛く泣きついてくる。
「うぅ…俺はやってない!ロキ、ロキ、信じてっ…!」
「兄上。落ち着いてください。兄上がそんな風だとシャイナーの思うつぼですよ?」
「うっ…ひっく…」
「自作自演に踊らされてどうするんですか?」
「自作…自演…?」
「ええ。シャイナーは自分で媚薬を飲んだんです。兄上が盛ってないならそれしか考えられないでしょう?」
「で、でも…」
「ガヴァムのお茶を飲んでのことですから周囲にはバレてないですけど」
とは言えこうなってはできる対処法は限られてくる。
「兄上。いくら自作自演とは言えこうなっては多分俺がシャイナーを抱くのが一番有効な手段になってしまいます」
「え?」
「なので、答えてください」
「なに…を?」
「この後俺はシャイナーの元に行くつもりですが、兄上が見届ける気があるのかないのかを」
そう口にしたところで兄は一気に蒼白になった。
「やっ…!嫌だ!」
「見るのが嫌…ということですか?」
「違う!ロキが、ロキがシャイナーを抱くなんて絶対に嫌だ!」
「兄上。それはできれば俺だって抱きたくはないですよ?でも…多分シャイナーはもう手を打ってると思うんです」
どこからどう見てもガヴァム側が盛ったとしか思えない媚薬。
いくらシャイナーの自作自演だとこちらが訴えようと信じる者は誰もいないだろう状況。
医師の手では中和できない媚薬。
そんな中でシャイナーがわざわざ俺以外の誰かに抱かれようとするはずがないという事実。
シャイナーの立場から考えて、彼自身が望む相手を用意するしかなく、この場合は自分以外にはいない。
でなければ事情を知らないアンシャンテ側のものは絶対に納得はしないはず。
国と国の問題にまで発展しかねない大スキャンダルとも言えるこの状況で、それを回避するのは難しい。
ならば自分が抱くのは仕方がない。
もちろんこの機会に二度とこんなことができないほどしっかり躾ける予定ではあるが、それを兄に黙って行う気はなかった。
「兄上、選んでください。俺がシャイナーを抱く姿を横で見ているか、見るのは嫌だから見ないのかを」
そう尋ねた俺の問いに兄は絶望的な顔をしながら震える唇を開いた────。
セドリック王子を持ち出されてしまうと兄は自分では動けないとわかっているので、急遽俺も呼ばれて話を聞くことに。
そして三人でお茶を飲みながら話をして、特に問題なく終わりそうではあったのだが、話し終えたところでシャイナーが思い出したように茶葉の入った包みをテーブルへと置いた。
「ついでに以前カリンが気に入ったという茶葉と、同じ茶園で作っている他の茶葉も持って来てみた。良かったら是非試してみて欲しい」
どうも以前来た際にアンシャンテの名産である茶を幾つか補佐官達と兄が試飲する機会があったらしく、そこで気に入ったものがあったらしい。
なんだかんだと仲良くなっているようで良かったとは思うものの、なんだか何かが引っ掛かる。
あんなに敵視していたのに妙に好意的に接してきているせいだろうか?
なんとなく何かがありそうで仕方がない。
けれど兄は特に何も思わなかったのか普通に喜んでいた。
「助かる。これは特に香りも良かったしきっとロキも気に入るだろうと思って」
自分で取り寄せようとも思ったけれど、なかなか手に入らなかったんだと兄は嬉しそうに笑っている。
多分本当に好みの味だったんだろう。
兄の気に入ったものなら是非飲みたいと思い、そのまま侍女に頼んで淹れてもらうことにした。
そうして味わってみると仄かに燻したような香りが鼻を擽り、兄が好きそうな茶だと納得がいく。
「今日はガヴァムの茶も楽しんでもらおうと特別なものを用意させてみた。是非シャイナーにも楽しんでもらいたい」
「それは楽しみだ」
そう言って今度は兄がシャイナーへとこちらの茶を勧め始める。
用意された茶は他国の王に勧めるのにおかしくはない最高級の茶葉なのだろう。
場に良い香りがふわりと香る。
その茶を味わうシャイナーを俺はなんとはなしに観察していたのだが……。
「うっ…」
飲んで暫く経ったところでシャイナーの様子が急におかしくなった。
目が潤み、頬に朱が差し息が荒くなり始めたのだ。
「シャイナー陛下?!」
シャイナーの近衛が慌てたように駆け付けすぐさま助け起こそうとするが、シャイナーは辛そうに眉を寄せるばかり。
そんな様子を見てアンシャンテ側が俄かに色めき立つ。
「カリン陛下!これは一体どういうことです?!」
「まさか毒を?!」
「いや、ち、違う!」
「ではこれは一体なんなのです?!」
「シャイナー陛下!しっかりしてください!」
「医師を早く!!」
場が騒然となり、兄の顔が一気に蒼白になった。
それを見てこれは嵌められたかなと思い、溜め息を吐きながら速やかに指示を出す。
急いで王宮医師を呼びにやらせたものの、あの様子なら恐らく摂取したのは媚薬だろう。
仕込みはシャイナーがしただろうし、自分で自分に盛るなら安全性への配慮くらいはしているはずだ。
問題はこれがどこからどう見てもガヴァム側に問題があるようにしか見えないということ。
自作自演で自分で媚薬を飲むなど普通は考えないからだ。
(やられた。本当に…困った人だ)
怪しいのはテーブル上にあるミルクとシュガー。
用意したのはガヴァム側だが、予め暗部に頼んですり替えるのは簡単だったことだろう。
この数ヶ月でそもそも油断を誘うことには十分成功していたのだから。
やはりしっかり躾けておいた方が良さそうだなと思いながら、取り乱している兄を支えて声を掛ける。
「兄上」
「ロ、ロキ…!俺はやってない!!」
「わかってますよ。大丈夫。ちゃんと信じてますから」
「本当に、俺は何もやってないんだ…!」
必死に言い募る兄に周囲の目は冷たい。
こういう視線に俺は慣れているからいいけれど、兄にはキツイだろう。
このまま兄を放置しているとアンシャンテ側の良い標的になってしまうだけだし、すぐに下げた方がいいと判断した。
「ここは俺に任せて部屋に下がっていてもらえませんか?」
「ロキ…!」
「リヒター。兄上を部屋に送って差し上げろ」
「はっ」
「ロキッ!」
そんなに泣きながら言わなくてもちゃんとわかってるのに。
「さて…シャイナー陛下は一先ず客室にお運びしてくれ」
「は、はいっ!」
すっかり動転しているガヴァム側の侍女や騎士達を促し、アンシャンテ側の近衛に抱き上げられたシャイナーを先導して部屋へと連れていく。
そして駆け付けた医師に診せるとやはり盛られたのは毒ではなく媚薬の類だった。
「陛下…」
ピリピリする近衛達に見守られながら診察を終えた医師が恐る恐ると言うように俺へと言葉を紡ぐ。
「シャイナー陛下に盛られた媚薬は時間経過で抜けるタイプのものではなさそうなのです」
「中和剤は?」
「それも…」
「ない…か」
「はい。申し訳ございません」
「わかった。下がっていい」
そして医師を帰らせ、シャイナーへと声を掛ける。
「シャイナー…。どうやら媚薬でそうなってしまったらしいのですが…どうしたいですか?」
「あ…」
そんな期待に満ちた目でこっちを見たらバレバレなのに…。
まあ虐めてあげますけど。
「こちらが盛った媚薬なら俺がここにいるのはアンシャンテの者達を刺激してしまうでしょう。人払いをして一人で処理することをお勧めします」
ニコッとそう言い放ちさっさと立ち去ろうとしたら思い切り服を掴まれ引き留められる。
(まあ…当然そう来るに決まっているな)
ここで目的である『俺に抱かれる』という機会を簡単に逃すはずがない。
「シャイナー?」
「うぅ…ロキ…辛い……」
まあ辛いのは辛いだろう。
結構強そうな媚薬だし。
「すみません。俺はこれから兄に真偽を問い質しに行かないといけないので」
「やッ…行かないでくれっ……」
目に涙を湛えて縋るように見つめてくるシャイナー。
多分普通ならこれに絆されすぐに慰めたりするんだろうな。
俺はしないけど。
「シャイナー。悪い子にはお仕置きですよ?」
そっと耳元で甘く囁き、すぐにスッと離れてニコリと見下ろす。
「取り敢えず後で様子を見に来るので、それまで自己処理で乗り切ってください」
「ロキッ!」
兄を嵌めようとしたのだから少しくらい反省してほしいものだ。
あの場にいた者達はきっとこう思ったことだろう。
『カリン陛下はいつまでもロキ陛下に執着してくるシャイナー陛下に不満を溜め込み、二度とガヴァムに来る気がなくなるよう薬を盛ったのだ』と。
ちょっと考えればおかしい話だとわかりそうなものだが、アンシャンテの者は自分達の王が倒れたとあって冷静ではいられなかっただろうし、こちら側はこちら側でバカな者ばかりだ。簡単に騙される。
だからこそシャイナーはこんな手で演出を試みたのだろう。
実に上手い手だ。
(俺にはバレバレだけど)
だからこそ簡単に踊ってやる気はない。
それこそ辛かったら自分の近衛に抱いてもらうなり侍女を抱くなりすればいい。
簡単な話だ。
ちゃんといい子で待って、後で様子を見に来た時に反省していたら初めて躾をしてやろう。
それまで精々苦しめばいい。
シャイナーから離れ、俺は何も知らないであろうシャイナーの近衛達に『調査に行ってきます』と言い残し部屋を出た。
***
兄の部屋へと向かうとドアを開けると同時に兄が飛んできて、自分はやってないと言いながら可愛く泣きついてくる。
「うぅ…俺はやってない!ロキ、ロキ、信じてっ…!」
「兄上。落ち着いてください。兄上がそんな風だとシャイナーの思うつぼですよ?」
「うっ…ひっく…」
「自作自演に踊らされてどうするんですか?」
「自作…自演…?」
「ええ。シャイナーは自分で媚薬を飲んだんです。兄上が盛ってないならそれしか考えられないでしょう?」
「で、でも…」
「ガヴァムのお茶を飲んでのことですから周囲にはバレてないですけど」
とは言えこうなってはできる対処法は限られてくる。
「兄上。いくら自作自演とは言えこうなっては多分俺がシャイナーを抱くのが一番有効な手段になってしまいます」
「え?」
「なので、答えてください」
「なに…を?」
「この後俺はシャイナーの元に行くつもりですが、兄上が見届ける気があるのかないのかを」
そう口にしたところで兄は一気に蒼白になった。
「やっ…!嫌だ!」
「見るのが嫌…ということですか?」
「違う!ロキが、ロキがシャイナーを抱くなんて絶対に嫌だ!」
「兄上。それはできれば俺だって抱きたくはないですよ?でも…多分シャイナーはもう手を打ってると思うんです」
どこからどう見てもガヴァム側が盛ったとしか思えない媚薬。
いくらシャイナーの自作自演だとこちらが訴えようと信じる者は誰もいないだろう状況。
医師の手では中和できない媚薬。
そんな中でシャイナーがわざわざ俺以外の誰かに抱かれようとするはずがないという事実。
シャイナーの立場から考えて、彼自身が望む相手を用意するしかなく、この場合は自分以外にはいない。
でなければ事情を知らないアンシャンテ側のものは絶対に納得はしないはず。
国と国の問題にまで発展しかねない大スキャンダルとも言えるこの状況で、それを回避するのは難しい。
ならば自分が抱くのは仕方がない。
もちろんこの機会に二度とこんなことができないほどしっかり躾ける予定ではあるが、それを兄に黙って行う気はなかった。
「兄上、選んでください。俺がシャイナーを抱く姿を横で見ているか、見るのは嫌だから見ないのかを」
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