上 下
83 / 234

74.閨に必須なのは

しおりを挟む
兄をしっかり楽しませてから休み、翌朝目を覚ますとシャイナーから朝食の誘いが来ているとの連絡を受けた。
兄は昨日シャイナーへの対応は自分がするからと言ってくれたけど、流石に朝食の席にはつけないだろう。
だから俺が代わりに行くことにした。
泊まっていってくれと言ったのはそもそも兄ではなく俺だし、ここは招待を受けるのが正解のはず。
そう思って侍女達には兄はゆっくり休ませてあげるよう指示を出し、さっさと準備をして朝食の席へと向かった。

「ロキ!」

俺の姿を見てシャイナーは顔を輝かせたがどうも顔色が悪い気がするのは気のせいだろうか?

「シャイナー、おはようございます。もしかして枕が変わって眠れませんでしたか?」

顔色が悪いですけどと尋ねると、実はあまり眠れなかったのだと告げられる。

「寒気はしませんか?」
「少し…」
「それなら温かい粥でも用意しますよ。暗部を一人貸していただけますか?」
「え?」
「知り合いの医者から教えてもらった薬草粥を作ろうと思って。身体も温まるし、少々の体調不良ならすぐ治るので」

ただ薬草を使うから毒じゃないかを暗部に確認してもらいたいのだと言うとすぐに納得してもらえた。

「では出来たら部屋に持っていきますね」

この粥には実は昔から何度か世話になっているので割と作るのは得意だったりする。
栄養満点万能粥だから寝込む前に自分で作って食べることと闇医者にいつだったか教わったものだ。
慣れた手つきでコトコト煮て自分で味も確認し満足のいく出来になったのでそのままシャイナーの元へと持っていく。

「お待たせしました」

そう言って差し出すとシャイナーが暗部に確認を取るように視線を向ける。
それに答えるように暗部はコクリと頷き問題ないと口にした。

「ロキ陛下自らがお作りになり、ご自身でお毒味も済ませておられました。手順にも材料にも何一つ問題はございませんでした。必要であれば私も毒味致しますがいかがなさいますか?」
「大丈夫だ。ロキ、食べさせてもらって構わないだろうか?」

シャイナーが嬉しそうにそんなことを言ってくるが、熱さの好みもあるだろうし、菓子とは違うから首を傾げてしまう。

「俺に?」
「ああ」

別に構いはしないけど、いいのかなと思ってリヒターの方をチラッと見るとダメだと言うように首を振られたのできちんと断ることに。

「すみません。この後まだ仕事があるので侍女に任せて構いませんか?」
「そうか。残念だ」
「昼にまた様子を見に来ますので、その時にまたお会いしましょう」
「わかった」

渋々ではあったけど、おとなしく引き下がってもらえてよかった。
このままゆっくり寝てもらって体調が良くなってから帰ってもらったらいいだろう。
これで後は兄に任せて問題はないはず。
昨日は仕事を任せっぱなしにしてしまったし、今日はその分そちらを頑張ろうと思う。
そんな事を考えながら部屋を辞した。

「そろそろ兄上も起きたかな?」
「そうですね。朝食を用意させましょうか?」
「そうだな」

そして部屋へと食事を運んでもらったのだけど……。

「兄上?」

兄はベッドで枕を抱えながら不貞腐れていた。
どうやら動けないらしい。

「ちょっと昨日は張りきりすぎましたね」
「うぅ…ロキの馬鹿」
「大丈夫ですか?無理せず寝ててください。シャイナー陛下も体調不良でもう暫く滞在することになったので見送りも急がないですし、仕事の方も俺がちゃんとしておきますから」

その言葉にバッと顔を上げて目を見開いてくる。

「仮病で居座られたのか?!」
「いえ?どうも枕が合わなかったのか眠れなくて体調を崩してしまったようです」
「あいつっ…そんな虚言を!今すぐ追い出してやる!」

兄は怒り心頭と言った感じでベッドから降りようとしたけど、動けないと言っていただけあって落っこちそうになっていたから慌てて受け止めた。

「兄上!無理しないでください」
「う、く、悔しい…」
「大丈夫ですか?そうだ。久しぶりに兄上にご飯を食べさせてあげましょうか?」
「え?」
「もしよければ」

ニコニコ笑ってそう提案したら兄も怒る気は失せたのか、素直にそっと口を開けてくれた。
そんな兄が可愛くて、持ってこさせた食事を一つずつ丁寧に食べさせていく。

(可愛い…)

いつもしっかりしている兄は俺を頼ってくれることはほとんどないけれど、こうして面倒を見るのは好きなので凄く嬉しい。

「兄上に頼られるとたまらなく幸せな気持ちになれます」
「ロキ…」
「兄上はシャイナーに俺を取られないか心配になってるみたいですけど、俺の心は兄上にしか向いていないので、心配しなくていいですからね?」
「そんな事を言っても多人数でするのも好きなくせに」
「…?シャイナーと三人でしたいんですか?それなら何か考えますけど」
「誰がだ!絶対に嫌だ!」
「なら大丈夫ですよ。多人数だろうと何だろうと、ベッドに兄上は必須なので、シャイナーが俺と寝たいなら兄上がいないと話になりませんよ?」

何を当然の事をと思いながらそう口にすると、兄だけではなく何故かリヒターまで驚愕の眼差しで俺を見ていた。
何かおかしかっただろうか?

「え?あれ?」

そんな声を上げて必死に悩んでいる兄が物凄く可愛い。
リヒターもどうして『それは考えてなかった…』みたいな顔をしているんだろう?
いつも俺のことは大抵把握できているのに珍しいな。

「それにしてもシャイナーも迂闊ですね。兄上に嫌われたらベッドが遠のくだけなのに」

兄に好かれる方に動かれたら俺も少しは考えたのになと笑ったら二人揃って項垂れていた。
こんな簡単な話なのに、もしかしてシャイナーだけでなく二人もわかっていなかったんだろうか?
俺にはそれが謎で仕方がなかった。
本命がいてこそ、3Pや多人数プレイは盛り上がるのに。
逆にそれ以外に興味はないから心配されるいわれはない。

(俺ってそんなに節操なしに見えるのかな?)

『こんなに兄上一筋なのに…』と、よくわからないモヤモヤに襲われたのだった。


****************

※ロキ的に戯れに嬲るのは個別対応可。お仕置き含めて全部こっち。
(ミュゼや初っ端のカーライルがこのパターン。嬲るだけで抱いてはもらえない)

そしてベッドインとなると兄必須。
一見いい感じにロキと交流しているシャイナーですが、そこがわかってないとロキの完全攻略は難しいというオチ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

仮面夫婦、素顔のままで

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:17

孤独の水底にて心を知る

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:97

僕の調教監禁生活。

BL / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:238

壁穴奴隷No.18 銀の髪の亡霊

BL / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:192

極道達に閉じ込められる少年〜監獄

BL / 連載中 24h.ポイント:234pt お気に入り:559

拝み屋少年(年下)から逃げる手段、知りませんか!

ホラー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:32

【完結】竜王は生まれ変わって恋をする

BL / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:620

処理中です...