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64.※デビュタントパーティー② Side.カリン
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(結婚したのにどうしてこんなことになるんだ?!)
本来なら何の心配も不安もなく、二人で盤石な地位を築き、ガヴァムをより良くしていきながら幸せな日々を送るはずだった。
それなのに結婚式当日にロキを攫われ、問題が大量に生じ、挙げ句の果てには攫った相手と何故か懇意にし始めるロキ。
(何故もっと警戒しない…!)
正直言ってそれが一番不可解だった。
確かにこれまで王宮内でのロキの扱いは酷かった。
騎士達だけではなく貴族全般ロキは嫌われていた。
それもこれも父のせいで。
もちろん俺も悪かったが、今は反省してるし色々改善してロキの為に手を尽くしているから許してほしいところではある。
貴族達の意識も変わってきているし、騎士達も同様だ。
良い方向に進んでいると信じて疑わなかった。
でも今回パーティーを開いてみて、それが間違いだったと思い知らされる。
まさかロキが王になってからも、あんな扱いを受けるなんて考えもしなかった。
(デビュタントの令嬢達が揃いも揃って……だと?)
現状ロキの周囲を好意的な者で固めているせいか、特に問題が起こることもなく、ある程度平穏な日々を過ごしていたと思う。
だからこそ、それが如何に虚構でしかなかったのかを実感する羽目になった。
デビュタントの令嬢達がロキに向ける目はどこまでも蔑んだ色に満ち溢れていて、一目見ただけでパーティーなんて開かなければ良かったと後悔してしまうほどの有り様。
けれどそれ以上に、ロキの反応に胸が潰れるかと思うほどの衝撃を受けた。
『元々期待なんて何一つしていませんけど、何か?』と言わんばかりのどこまでも冷めた目。
その上で言い放ってきた言葉が特にショックだった。
「ほら、シャイナー陛下にお願いして正解だったでしょう?」
自分は間違ってなかっただろうと冷めた目と笑顔で俺に言ってくるその姿に泣きたくなる。
もうこの時点で自国に何も期待していないのが丸わかりだ。
しかも本人は俺とのファーストダンス後、御礼はダンスでと約束していたのでとシャイナーと踊り始めた。
それはいい。妥協しよう。
その条件を決めた際俺もその場に居たし、反対はしたけど結局最終的には渋々認めたのだから。
でも、一曲で終わらないというのはどういうことだ?!
どこか楽し気に話しながら踊り続ける二人。
たまたま仕事の話が長引くわけがあるか!
絶対にあの男は狙って話を振ったに違いない。
あのまま放っておいたらきっと三曲目まで踊っていたことだろう。
そんなこと許せるはずがないからしっかりきっちりロキを引き離しに行った。
けれどロキから離れた後、あの男は俺をあからさまに挑発してきたんだ。
「必死だな。フッ…」
そう言って笑ってこられた。
ロキの前では紳士的で、裏なんてありませんと言わんばかりの好意100%の笑みを浮かべてくるくせに、今はそんな素振りを一切見せずこちらを貶めてくるのだ。
怒りたくなる俺の気持ちもわかってほしい。
(俺とロキの仲を引き裂く気満々じゃないか!)
しかもあの男、「国自体に問題があるといくらでもロキにアプローチできていいな」なんて笑って言ってくる始末。
物凄く爽やかに言ってのけたから俺以外が聞いていたとしても空耳を疑っただろう。
けれど喧嘩を売られたのは明らかだった。
「カリン陛下?そんな顔をしているとデビュタントの令嬢が怯えてしまうぞ?」
殊更楽し気にそんな事を言いながら手近なデビュタントの娘と踊り始めたシャイナーにイライラは最高潮になり、誰のせいだと腸が煮えくり返ってしまう。
(この、腹黒がっ!!)
そんな俺にさり気なく踊りながらリヒターが近づいてきて、ロキのフォローはしておくから落ち着いて事に当たってほしいと言ってきた。
その際バルコニーに連れ出すので、一曲踊る許可が欲しいとも言われた。
「お前がロキと踊るのか?」
「はい。お二人だけと踊っただけなら比較して後で何か言ってきそうでしょう?陛下の意識を上手く逸らしてみせるのでお願いします」
「……わかった」
「ありがとうございます」
そうしてリヒターは何人かとダンスを踊った後、そっとその場を離れロキの元へと向かった。
チラリチラリとバルコニーへと目をやりながら踊っていると、程なく二人はやってきて暫く話した後踊り始めた。
とてもリラックスしたように楽しそうに踊るロキ。
そんな姿にまた嫉妬の炎が膨れ上がる。
けれど予め許可を求められてのことだし、ここで言っても仕方がない。
だからこれは仕事だと自分に言い聞かせ、デビュタントの娘達と踊り続けた。
気づけば曲は終わりを迎え、身を離し礼を取る。
そんな俺の後ろでシャイナーの舌打ちが聞こえた。
何だと思って振り向いたらその目はバルコニーへと向けられていて、そこではリヒターがロキの手を取り口づけを落としている真っ最中だった。
(リヒター!!)
俺はそんなもの許可した覚えはないぞ?!
慌ててそちらへと飛んでいくが、ロキは全く嫌がる素振りも見せておらず、普通に笑顔で俺に話しかけてきた。
「兄上。もう終わったんですか?」
「……ああ。それより今のはどういうことだ?」
「え?」
「リヒターがお前の手にキスを落としていただろう?」
「ああ、それですか。敬意を込めた親愛のキスですよ。他に何か?」
「お前は隙がありすぎるんだ!!」
「…?そうですか?」
「そうだ!」
でもここでロキは物凄く嬉しそうに笑って、そっと俺を抱き寄せてきた。
「兄上。あまり可愛い焼きもちを妬かれたらこのまま攫って行きたくなるんですが?」
「……え?」
「陛下。デビュタントのダンスが終わったら長居する必要もありませんし、後は他の者に任せて部屋に下がられては如何です?」
ここでリヒターが卆なくそんなことを口にしてくる。
「でもシャイナー陛下が…」
「大丈夫です。軽く挨拶だけして下がれば十分ですよ。先に下がるお詫びに明日の昼食をご一緒にとでも言っておけば何も問題はありません」
「そうか」
そう言ってロキはすんなりリヒターの助言を受け、俺を連れてシャイナーの元へと向かった。
「シャイナー陛下、今日はどうもありがとうございました。少し疲れましたのでここで先に下がろうと思います。このお詫びは明日の昼食をご一緒することでお許しいただけないでしょうか?」
「……そうか。ゆっくり話したかったがそういうことなら仕方がない。明日の昼食を楽しみにしておこう」
「はい。ではどうぞ引き続きパーティーをお楽しみください」
そして意外な程あっさりとシャイナーから逃れることができた。
リヒターがロキの手にキスを落としていたところを見ていたからもっと絡んでくるかと思ったが、ロキがこう言ったことで状況的に深追いしない方がいいと踏んだのだろう。
心なしか笑顔が引きつっていて悔しさを滲ませているようにも見えたから、ざまあみろとは思った。
(悔しいがリヒターのフォローは完璧だな)
思わずそんなことを考えてしまう。
どこからが狙ってのことだったのだろう?
ああすることで俺が飛んでくるのは当然わかっていただろうが、そこから上手くシャイナーを躱すアドバイスをロキにしたのも完璧だったし、シャイナーへの牽制まで含まれていた。
全部想定の範囲内だったのなら俺には文句のつけようがないし、これではあの口づけを許さざるを得ない。
「リヒター。礼は言わないぞ」
「構いませんよ。俺は陛下を取られないよう手を打っただけの話ですから」
シレッとそんなことを言ってくるこの男の本心が本気でよくわからない。
ロキが好きなくせにロキを手に入れようとしない男。
俺には譲るくせに、シャイナーには絶対に渡したくないと思っているのが透けて見える態度。
味方であって微妙に違うこの男は、やっぱりなんだかんだとライバルなのだろう。
そんな俺達にロキが嬉しそうに声を掛けてくる。
「兄上。今日は久しぶりにリヒターも一緒にどうですか?沢山二人で可愛がってあげますよ?」
「…………俺はお前だけがいいんだが?」
「そうですか…。できればこの三人でしたかったんですけど。それなら誰か……」
「待て待てっ!わかった!そうだな!リヒターにしよう!」
「そうですか?じゃあ三人で」
どうやら今日はとことん三人でやりたい気分だったらしい。
リヒターがダメなら他の誰かと言い出しそうだったので慌てて止めに入った。
以前俺が友人二人を抱いたせいで、3Pは他の相手でもいいんじゃないかと思わせてしまったらしく『兄上も抱きたい気分になったら言ってくださいね?』とか言われたのだ。
気分が乗らなくて二人に挿れられたくないならそっちでもいいとでも言おうとしたんだろう。
ここで歯止めをかけておかないと大変なことになってしまう。
「陛下。今後の事を考えて、今度同じ近衛のマーシャルでも引き入れておけばよいのでは?普段の護衛にも使えますし、俺がダメな時の閨の相手としても悪くはありません」
「マーシャルか。……あまり気は乗らないが、一度兄上と抱いているしな。なくはない」
「ええ。マーシャルも分は弁えるでしょう。陛下をお守りするのはガヴァムの者で固めたいので是非検討していただけませんか?」
その言葉にハッとしてリヒターを見る。
恐らくアンシャンテの暗部が密かにロキを護衛してることを気に掛けてのことだろう。
カーライルから聞いた時は俺もヒヤリとしたものだ。
だからこそリヒターがそう言いたくなる気持ちもよくわかる。
要するに閨に引き込んで仲間にし、絶対裏切らないよう教え込めとリヒターは言っているのだ。
裏切らない護衛は一人でも多い方がいい。
(リヒターもロキの影響で少し変わってきたな)
ひたすら真面目な奴だったのにと思わないではない。
それもこれもロキが攫われた際に発覚した、味方が少なすぎる事が要因だ。
「じゃあ今度試しに4人でやってみようか。兄上。兄上がマーシャルを抱きながら俺が兄上に挿入するのも楽しいかもしれませんね」
「その場合リヒターはどうなるんだ?」
「え?誰かがフェラでもすればいいのでは?まあ、取り敢えずマーシャルあたりでどうです?」
「……そうか。それは凄い光景になりそうだな」
「ええ。楽しみですね」
まあ…ロキが嬉しそうだからいいか。
三人に抱かれるよりロキにだけ抱かれるのならある意味平和的な4Pではある。
一応考慮に入れてみようか。
そうしてこの日は部屋へと帰り、ロキの要望通りロキとリヒターにいっぱい抱かれたのだが、俺を抱きながらロキばかり見るリヒターに俺は結局嫉妬する羽目になった。
***
「あっ…んぅっ!」
「兄上、リヒターに抱かれて気持ち良さそうですね」
後背位でリヒターに貫かれながら揺さぶられ、正面からロキに口づけられて前を玩具で嬲られる。
さっきまでロキにフェラで可愛がられていたせいで気持ち良さに輪がかかってたまらない。
更に捏ねるようにクリクリと胸まで可愛がられると下腹がキュンとして締めつけが増した。
「カリン陛下、そろそろ中に出してもいいですか?」
欲を滲ませた声でリヒターが耳元で囁きを落としてくる。
「あ…やだっやだっ!」
でも俺はロキに早く抱かれたくて嫌だと言った。
それなのにあっさりロキは言うんだ。
「兄上…もっとリヒターに抱かれたいんですね。折角代わろうと思ってたのに…。リヒター、兄上をもっと満足させてやってくれ」
わかってて虐めてるのが丸わかりな楽し気な表情にゾクゾクさせられる。
「や、違うぅっ!ロキに挿れてほしいのぉ…!あ────ッ!」
ロキの要望に応えるように腰を高く持ち上げさせられて、リヒターからバックでパンッパンッと激しく犯される。
「はぁ…陛下…んっ…」
そう言いながらピストンを繰り返し、暫くして俺の中にリヒターは熱いものを注ぎ込んだ。
でも俺は知ってるんだぞ?!
出した後、うっとり俺を視姦しているロキの方を切なげに見てた事を…!
この場合の『陛下』は絶対ロキの事だろう?!
大体前から思っていたが、こいつは俺を抱くくせに基本的にロキばかり見ているのだ。
まるでロキの望む事を全部叶えてやりたいと言わんばかりに。
本人は絶対に認めないし、無意識っぽいから言っても無駄だが、それも俺が嫉妬する一因だと思う。
「はぁ、あ…んんっ」
そんな事を考えているうちにズルッと中から引き抜かれて、甘い声が意図せず口から飛び出した俺をロキが愛おしげにそっと抱き寄せ口づけてくる。
「兄上。俺も挿れてあげますね」
そして艶美な微笑を浮かべながらベッドへと押し倒し、正常位でズプッと挿れてきた。
「は…ぁあ…ん!」
(気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい!)
ロキの最高に気持ちいい楔が俺の中へと入ってくる。
思考が溶けて全身が歓喜で満たされるこの快感がたまらない。
やっぱり他の誰のものよりロキのものが一番いい。
「兄上。リヒターと俺の、どちらが好きですか?」
「あん…ロキのに決まってる…」
「ふふっ、嬉しいですね。じゃあ俺もいっぱい中に出して、中でリヒターのと一緒にかき混ぜてあげますね」
『ついでに顔にたっぷりかけてもらって、卑猥な姿を俺に見せてください』と言いながらロキが欲情した顔で俺を責め苛み始める。
それがまた凄く気持ちよくて、縋り付いて『奥までいっぱい突いて』と何度も訴える俺。
前にプジーが入れられているため、どうしても後ろで中イキし続けてしまう。
そしてそんな俺を見つめながらとっても満足気な顔をするロキ。
それはいい。
ロキは俺が大好きで、俺だけを見てくれているんだから。
でもリヒターは扱きながらまた熱っぽい目でロキを見てるし、俺に顔射しようとしているくせにロキで抜いてるようにしか見えない。
前からこうだったか?
いや、確か前は盗み見るようにしながらロキを見るくらいで、一応俺の方を向いていた気がする。
ロキが攫われてからか?
確かにこういう時のロキは色っぽいしちょっと病んだ笑みを浮かべててたまらなく目を惹かれるけど…。
俺も大好きだけど…!
だからと言ってあからさまにロキだけを見て、それで抜かれるのはちょっと嫌だ。
そう思ってリヒターを涙目で睨んでたはずなのに、ロキからは明後日の言葉が降ってきた。
「兄上?そんなにリヒターを見つめて…顔射が待ち遠しいんですか?精液塗れになるの、大好きですもんね。内も外もたっぷり受け取ってください」
(ち、違うのにっ!)
でもロキに犯されるのが気持ち良すぎて上手く言葉が紡げない。
そんな俺をロキは嬉しそうに責め立て、一際強く腰を突き上げて俺の奥へと熱い白濁を注ぎ込んだ。
「ひぅう…ッ!あ…きもひぃ…きもひいぃよぉ…」
ロキにいっぱい中を擦られて注がれて、ただでさえ甘イキしていた身体がビクンビクンと絶頂に押し上げられる。
「あ…あはぁ…」
奥が気持ちよすぎて物欲しげに疼き、まるで全身でロキを求めているかのように収縮している。
(もっともっと犯されたい…)
俺は心地いい気怠さの中、そんな心境で余韻に浸っていた。
そこへリヒターから熱い飛沫をかけられて思わずトロンとした顔で放心してしまう。
どうしようもなく気持ちよかったんだから仕方がない。
「兄上、今日も本当に可愛いですね。まだまだ沢山抱いてしっかり満足させてあげますからね」
その言葉と共にロキから柔らかな唇が降ってきて、唇を塞がれそのままクチュクチュと口内を蹂躙されてグズグズに思考を溶かされた。
ロキとのキスは本当に気持ちが良くて、叶うならずっとしていたいくらいだ。
そんな事をされながら抱かれたら、誰だって好きにしてって言ってしまいたくなるだろう。
そこからまた交代で抱かれ、俺は精液塗れでぐちゃぐちゃになる程二人掛かりで可愛がられ最後は気絶させられたけど、これだけは言いたい!
リヒターは絶対前よりもずっとずっとロキの事を好きになっている。
絶対だ!
でないとロキをあんなに熱く見つめたりはしないはず。
あれはどう見ても忠誠心を通り越して恋しているだろう。
(油断も隙もあったもんじゃないな?!ロキは絶対、絶対、誰にもやらないんだからな!)
俺は快楽に呑まれながらも、強く強くそう思ったのだった。
****************
※珍しい抱かれている時のカリンの心境でした。
抱かれ始めてしばらくはちゃんとこんな風に思考は働いてますが、気持ち良過ぎて喘ぎ声しか出せないジレンマに襲われ中。
本来なら何の心配も不安もなく、二人で盤石な地位を築き、ガヴァムをより良くしていきながら幸せな日々を送るはずだった。
それなのに結婚式当日にロキを攫われ、問題が大量に生じ、挙げ句の果てには攫った相手と何故か懇意にし始めるロキ。
(何故もっと警戒しない…!)
正直言ってそれが一番不可解だった。
確かにこれまで王宮内でのロキの扱いは酷かった。
騎士達だけではなく貴族全般ロキは嫌われていた。
それもこれも父のせいで。
もちろん俺も悪かったが、今は反省してるし色々改善してロキの為に手を尽くしているから許してほしいところではある。
貴族達の意識も変わってきているし、騎士達も同様だ。
良い方向に進んでいると信じて疑わなかった。
でも今回パーティーを開いてみて、それが間違いだったと思い知らされる。
まさかロキが王になってからも、あんな扱いを受けるなんて考えもしなかった。
(デビュタントの令嬢達が揃いも揃って……だと?)
現状ロキの周囲を好意的な者で固めているせいか、特に問題が起こることもなく、ある程度平穏な日々を過ごしていたと思う。
だからこそ、それが如何に虚構でしかなかったのかを実感する羽目になった。
デビュタントの令嬢達がロキに向ける目はどこまでも蔑んだ色に満ち溢れていて、一目見ただけでパーティーなんて開かなければ良かったと後悔してしまうほどの有り様。
けれどそれ以上に、ロキの反応に胸が潰れるかと思うほどの衝撃を受けた。
『元々期待なんて何一つしていませんけど、何か?』と言わんばかりのどこまでも冷めた目。
その上で言い放ってきた言葉が特にショックだった。
「ほら、シャイナー陛下にお願いして正解だったでしょう?」
自分は間違ってなかっただろうと冷めた目と笑顔で俺に言ってくるその姿に泣きたくなる。
もうこの時点で自国に何も期待していないのが丸わかりだ。
しかも本人は俺とのファーストダンス後、御礼はダンスでと約束していたのでとシャイナーと踊り始めた。
それはいい。妥協しよう。
その条件を決めた際俺もその場に居たし、反対はしたけど結局最終的には渋々認めたのだから。
でも、一曲で終わらないというのはどういうことだ?!
どこか楽し気に話しながら踊り続ける二人。
たまたま仕事の話が長引くわけがあるか!
絶対にあの男は狙って話を振ったに違いない。
あのまま放っておいたらきっと三曲目まで踊っていたことだろう。
そんなこと許せるはずがないからしっかりきっちりロキを引き離しに行った。
けれどロキから離れた後、あの男は俺をあからさまに挑発してきたんだ。
「必死だな。フッ…」
そう言って笑ってこられた。
ロキの前では紳士的で、裏なんてありませんと言わんばかりの好意100%の笑みを浮かべてくるくせに、今はそんな素振りを一切見せずこちらを貶めてくるのだ。
怒りたくなる俺の気持ちもわかってほしい。
(俺とロキの仲を引き裂く気満々じゃないか!)
しかもあの男、「国自体に問題があるといくらでもロキにアプローチできていいな」なんて笑って言ってくる始末。
物凄く爽やかに言ってのけたから俺以外が聞いていたとしても空耳を疑っただろう。
けれど喧嘩を売られたのは明らかだった。
「カリン陛下?そんな顔をしているとデビュタントの令嬢が怯えてしまうぞ?」
殊更楽し気にそんな事を言いながら手近なデビュタントの娘と踊り始めたシャイナーにイライラは最高潮になり、誰のせいだと腸が煮えくり返ってしまう。
(この、腹黒がっ!!)
そんな俺にさり気なく踊りながらリヒターが近づいてきて、ロキのフォローはしておくから落ち着いて事に当たってほしいと言ってきた。
その際バルコニーに連れ出すので、一曲踊る許可が欲しいとも言われた。
「お前がロキと踊るのか?」
「はい。お二人だけと踊っただけなら比較して後で何か言ってきそうでしょう?陛下の意識を上手く逸らしてみせるのでお願いします」
「……わかった」
「ありがとうございます」
そうしてリヒターは何人かとダンスを踊った後、そっとその場を離れロキの元へと向かった。
チラリチラリとバルコニーへと目をやりながら踊っていると、程なく二人はやってきて暫く話した後踊り始めた。
とてもリラックスしたように楽しそうに踊るロキ。
そんな姿にまた嫉妬の炎が膨れ上がる。
けれど予め許可を求められてのことだし、ここで言っても仕方がない。
だからこれは仕事だと自分に言い聞かせ、デビュタントの娘達と踊り続けた。
気づけば曲は終わりを迎え、身を離し礼を取る。
そんな俺の後ろでシャイナーの舌打ちが聞こえた。
何だと思って振り向いたらその目はバルコニーへと向けられていて、そこではリヒターがロキの手を取り口づけを落としている真っ最中だった。
(リヒター!!)
俺はそんなもの許可した覚えはないぞ?!
慌ててそちらへと飛んでいくが、ロキは全く嫌がる素振りも見せておらず、普通に笑顔で俺に話しかけてきた。
「兄上。もう終わったんですか?」
「……ああ。それより今のはどういうことだ?」
「え?」
「リヒターがお前の手にキスを落としていただろう?」
「ああ、それですか。敬意を込めた親愛のキスですよ。他に何か?」
「お前は隙がありすぎるんだ!!」
「…?そうですか?」
「そうだ!」
でもここでロキは物凄く嬉しそうに笑って、そっと俺を抱き寄せてきた。
「兄上。あまり可愛い焼きもちを妬かれたらこのまま攫って行きたくなるんですが?」
「……え?」
「陛下。デビュタントのダンスが終わったら長居する必要もありませんし、後は他の者に任せて部屋に下がられては如何です?」
ここでリヒターが卆なくそんなことを口にしてくる。
「でもシャイナー陛下が…」
「大丈夫です。軽く挨拶だけして下がれば十分ですよ。先に下がるお詫びに明日の昼食をご一緒にとでも言っておけば何も問題はありません」
「そうか」
そう言ってロキはすんなりリヒターの助言を受け、俺を連れてシャイナーの元へと向かった。
「シャイナー陛下、今日はどうもありがとうございました。少し疲れましたのでここで先に下がろうと思います。このお詫びは明日の昼食をご一緒することでお許しいただけないでしょうか?」
「……そうか。ゆっくり話したかったがそういうことなら仕方がない。明日の昼食を楽しみにしておこう」
「はい。ではどうぞ引き続きパーティーをお楽しみください」
そして意外な程あっさりとシャイナーから逃れることができた。
リヒターがロキの手にキスを落としていたところを見ていたからもっと絡んでくるかと思ったが、ロキがこう言ったことで状況的に深追いしない方がいいと踏んだのだろう。
心なしか笑顔が引きつっていて悔しさを滲ませているようにも見えたから、ざまあみろとは思った。
(悔しいがリヒターのフォローは完璧だな)
思わずそんなことを考えてしまう。
どこからが狙ってのことだったのだろう?
ああすることで俺が飛んでくるのは当然わかっていただろうが、そこから上手くシャイナーを躱すアドバイスをロキにしたのも完璧だったし、シャイナーへの牽制まで含まれていた。
全部想定の範囲内だったのなら俺には文句のつけようがないし、これではあの口づけを許さざるを得ない。
「リヒター。礼は言わないぞ」
「構いませんよ。俺は陛下を取られないよう手を打っただけの話ですから」
シレッとそんなことを言ってくるこの男の本心が本気でよくわからない。
ロキが好きなくせにロキを手に入れようとしない男。
俺には譲るくせに、シャイナーには絶対に渡したくないと思っているのが透けて見える態度。
味方であって微妙に違うこの男は、やっぱりなんだかんだとライバルなのだろう。
そんな俺達にロキが嬉しそうに声を掛けてくる。
「兄上。今日は久しぶりにリヒターも一緒にどうですか?沢山二人で可愛がってあげますよ?」
「…………俺はお前だけがいいんだが?」
「そうですか…。できればこの三人でしたかったんですけど。それなら誰か……」
「待て待てっ!わかった!そうだな!リヒターにしよう!」
「そうですか?じゃあ三人で」
どうやら今日はとことん三人でやりたい気分だったらしい。
リヒターがダメなら他の誰かと言い出しそうだったので慌てて止めに入った。
以前俺が友人二人を抱いたせいで、3Pは他の相手でもいいんじゃないかと思わせてしまったらしく『兄上も抱きたい気分になったら言ってくださいね?』とか言われたのだ。
気分が乗らなくて二人に挿れられたくないならそっちでもいいとでも言おうとしたんだろう。
ここで歯止めをかけておかないと大変なことになってしまう。
「陛下。今後の事を考えて、今度同じ近衛のマーシャルでも引き入れておけばよいのでは?普段の護衛にも使えますし、俺がダメな時の閨の相手としても悪くはありません」
「マーシャルか。……あまり気は乗らないが、一度兄上と抱いているしな。なくはない」
「ええ。マーシャルも分は弁えるでしょう。陛下をお守りするのはガヴァムの者で固めたいので是非検討していただけませんか?」
その言葉にハッとしてリヒターを見る。
恐らくアンシャンテの暗部が密かにロキを護衛してることを気に掛けてのことだろう。
カーライルから聞いた時は俺もヒヤリとしたものだ。
だからこそリヒターがそう言いたくなる気持ちもよくわかる。
要するに閨に引き込んで仲間にし、絶対裏切らないよう教え込めとリヒターは言っているのだ。
裏切らない護衛は一人でも多い方がいい。
(リヒターもロキの影響で少し変わってきたな)
ひたすら真面目な奴だったのにと思わないではない。
それもこれもロキが攫われた際に発覚した、味方が少なすぎる事が要因だ。
「じゃあ今度試しに4人でやってみようか。兄上。兄上がマーシャルを抱きながら俺が兄上に挿入するのも楽しいかもしれませんね」
「その場合リヒターはどうなるんだ?」
「え?誰かがフェラでもすればいいのでは?まあ、取り敢えずマーシャルあたりでどうです?」
「……そうか。それは凄い光景になりそうだな」
「ええ。楽しみですね」
まあ…ロキが嬉しそうだからいいか。
三人に抱かれるよりロキにだけ抱かれるのならある意味平和的な4Pではある。
一応考慮に入れてみようか。
そうしてこの日は部屋へと帰り、ロキの要望通りロキとリヒターにいっぱい抱かれたのだが、俺を抱きながらロキばかり見るリヒターに俺は結局嫉妬する羽目になった。
***
「あっ…んぅっ!」
「兄上、リヒターに抱かれて気持ち良さそうですね」
後背位でリヒターに貫かれながら揺さぶられ、正面からロキに口づけられて前を玩具で嬲られる。
さっきまでロキにフェラで可愛がられていたせいで気持ち良さに輪がかかってたまらない。
更に捏ねるようにクリクリと胸まで可愛がられると下腹がキュンとして締めつけが増した。
「カリン陛下、そろそろ中に出してもいいですか?」
欲を滲ませた声でリヒターが耳元で囁きを落としてくる。
「あ…やだっやだっ!」
でも俺はロキに早く抱かれたくて嫌だと言った。
それなのにあっさりロキは言うんだ。
「兄上…もっとリヒターに抱かれたいんですね。折角代わろうと思ってたのに…。リヒター、兄上をもっと満足させてやってくれ」
わかってて虐めてるのが丸わかりな楽し気な表情にゾクゾクさせられる。
「や、違うぅっ!ロキに挿れてほしいのぉ…!あ────ッ!」
ロキの要望に応えるように腰を高く持ち上げさせられて、リヒターからバックでパンッパンッと激しく犯される。
「はぁ…陛下…んっ…」
そう言いながらピストンを繰り返し、暫くして俺の中にリヒターは熱いものを注ぎ込んだ。
でも俺は知ってるんだぞ?!
出した後、うっとり俺を視姦しているロキの方を切なげに見てた事を…!
この場合の『陛下』は絶対ロキの事だろう?!
大体前から思っていたが、こいつは俺を抱くくせに基本的にロキばかり見ているのだ。
まるでロキの望む事を全部叶えてやりたいと言わんばかりに。
本人は絶対に認めないし、無意識っぽいから言っても無駄だが、それも俺が嫉妬する一因だと思う。
「はぁ、あ…んんっ」
そんな事を考えているうちにズルッと中から引き抜かれて、甘い声が意図せず口から飛び出した俺をロキが愛おしげにそっと抱き寄せ口づけてくる。
「兄上。俺も挿れてあげますね」
そして艶美な微笑を浮かべながらベッドへと押し倒し、正常位でズプッと挿れてきた。
「は…ぁあ…ん!」
(気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい!)
ロキの最高に気持ちいい楔が俺の中へと入ってくる。
思考が溶けて全身が歓喜で満たされるこの快感がたまらない。
やっぱり他の誰のものよりロキのものが一番いい。
「兄上。リヒターと俺の、どちらが好きですか?」
「あん…ロキのに決まってる…」
「ふふっ、嬉しいですね。じゃあ俺もいっぱい中に出して、中でリヒターのと一緒にかき混ぜてあげますね」
『ついでに顔にたっぷりかけてもらって、卑猥な姿を俺に見せてください』と言いながらロキが欲情した顔で俺を責め苛み始める。
それがまた凄く気持ちよくて、縋り付いて『奥までいっぱい突いて』と何度も訴える俺。
前にプジーが入れられているため、どうしても後ろで中イキし続けてしまう。
そしてそんな俺を見つめながらとっても満足気な顔をするロキ。
それはいい。
ロキは俺が大好きで、俺だけを見てくれているんだから。
でもリヒターは扱きながらまた熱っぽい目でロキを見てるし、俺に顔射しようとしているくせにロキで抜いてるようにしか見えない。
前からこうだったか?
いや、確か前は盗み見るようにしながらロキを見るくらいで、一応俺の方を向いていた気がする。
ロキが攫われてからか?
確かにこういう時のロキは色っぽいしちょっと病んだ笑みを浮かべててたまらなく目を惹かれるけど…。
俺も大好きだけど…!
だからと言ってあからさまにロキだけを見て、それで抜かれるのはちょっと嫌だ。
そう思ってリヒターを涙目で睨んでたはずなのに、ロキからは明後日の言葉が降ってきた。
「兄上?そんなにリヒターを見つめて…顔射が待ち遠しいんですか?精液塗れになるの、大好きですもんね。内も外もたっぷり受け取ってください」
(ち、違うのにっ!)
でもロキに犯されるのが気持ち良すぎて上手く言葉が紡げない。
そんな俺をロキは嬉しそうに責め立て、一際強く腰を突き上げて俺の奥へと熱い白濁を注ぎ込んだ。
「ひぅう…ッ!あ…きもひぃ…きもひいぃよぉ…」
ロキにいっぱい中を擦られて注がれて、ただでさえ甘イキしていた身体がビクンビクンと絶頂に押し上げられる。
「あ…あはぁ…」
奥が気持ちよすぎて物欲しげに疼き、まるで全身でロキを求めているかのように収縮している。
(もっともっと犯されたい…)
俺は心地いい気怠さの中、そんな心境で余韻に浸っていた。
そこへリヒターから熱い飛沫をかけられて思わずトロンとした顔で放心してしまう。
どうしようもなく気持ちよかったんだから仕方がない。
「兄上、今日も本当に可愛いですね。まだまだ沢山抱いてしっかり満足させてあげますからね」
その言葉と共にロキから柔らかな唇が降ってきて、唇を塞がれそのままクチュクチュと口内を蹂躙されてグズグズに思考を溶かされた。
ロキとのキスは本当に気持ちが良くて、叶うならずっとしていたいくらいだ。
そんな事をされながら抱かれたら、誰だって好きにしてって言ってしまいたくなるだろう。
そこからまた交代で抱かれ、俺は精液塗れでぐちゃぐちゃになる程二人掛かりで可愛がられ最後は気絶させられたけど、これだけは言いたい!
リヒターは絶対前よりもずっとずっとロキの事を好きになっている。
絶対だ!
でないとロキをあんなに熱く見つめたりはしないはず。
あれはどう見ても忠誠心を通り越して恋しているだろう。
(油断も隙もあったもんじゃないな?!ロキは絶対、絶対、誰にもやらないんだからな!)
俺は快楽に呑まれながらも、強く強くそう思ったのだった。
****************
※珍しい抱かれている時のカリンの心境でした。
抱かれ始めてしばらくはちゃんとこんな風に思考は働いてますが、気持ち良過ぎて喘ぎ声しか出せないジレンマに襲われ中。
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