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40.国際会議㉕【戴冠】
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「……あ…れ?」
眩しいと思いながら目を覚ますと、何故か兄の隣で眠っていた。
服は着ているようだし、正直昨日飲んだところまでは覚えているから、抱いてはいないと思う。
きっとそのまま寝入ってしまって、兄に運ばれてしまったんだろう。
取り敢えず目も覚めたことだし自室で着替えようと思ったのだが、兄の声でそれは失敗に終わった。
「どこに行く?」
「あ、兄上。おはようございます」
ニコッと笑っていつものように抜け出そうとするけれど、何故か兄は全然離してくれない。
それどころかベッドに引きずり込むように引っ張り込まれ、そのまま何故か組み敷かれてちょっと驚いてしまった。
「兄上?」
「……取り敢えずレンバーという男について詳しく教えてもらおうか?」
「え?」
どうしてそんなにレンバーを気にしてるんだろう?
それがよくわからない。
「レンバーですか?俺の知り合いの情報屋ですが?」
「……言い方が悪かったな。昨日お前に閨事を教えた男だと聞いたが…寝たのか?」
「え?寝ませんよ。酒場でしか会ったことないですし」
「……本当だな?」
「ええ。そもそも女性を抱いて情報を聞き出すのを生業にしている男なので、俺なんかを抱くなんてしないと思いますけど」
「そうか…」
どうして安心したという顔をしているのかはわからないけど、憂いが晴れたなら良かった。
「じゃあ俺はこれで…」
「待て」
「……?」
「ロキ。昨日はお前がかなり拗らせているのがよくわかった。だからこそ言いたい」
「はあ…」
一体何を言われるんだろう?
「俺が愛してるのはお前だけだ」
そんな言葉と真剣な眼差しにドクッと胸が弾む。
「昨日お前に丁寧に抱いてもらって、俺は凄く嬉しかった」
「え?」
「俺はずっとお前にあんな風に抱かれてみたかったんだ…」
「えっ?!」
正直その言葉は驚き以外の何ものでもなくて、心臓が止まるかと思うほど衝撃を受けた。
「え?で、でも兄上は激しく抱かれるのが大好きじゃないですか!」
「勿論大好きだ」
「ならどうして……」
大好きと聞いてホッとするけれど、優しくも抱かれてみたかった兄の心境がいまいちよくわからなくて困惑してしまう。
「俺がお前を好きなのは、快楽を求めているからだけじゃない。それを抜きにしても愛しく思っているからだ」
その言葉に俺は頭を殴られたように衝撃を受けた。
「俺はどんな形でもいいからお前と愛し合いたいんだ。でもお前との行為はどうしても気持ちよくて我を忘れるほど感じてしまって、俺がお前に気持ちを伝えることも、逆にお前からの愛情を俺が受け取ることもできなくなっている気がした」
「兄上……」
「だから段々嫉妬も激しくなって、どうしようもなく辛かった。俺は…無理だとわかっていてもお前に優しく抱かれて、愛情を感じて安心させて欲しかったんだ」
昨日は図らずもそういった状況になって嬉しかったし、俺からの愛情も凄く伝わってきて嬉しかったと兄は言う。
「お前にも…俺の愛情が伝わったから泣くほど嬉しい気持ちになってくれたんじゃないのか?」
その言葉は奇妙なほどストンと俺の中へと落ちてきた。
そして兄が俺に優しく抱かれたかった理由も凄く良くわかった。
難しく考える必要はどこにもなかったのだ。
確かに俺は闇医者が言うように兄を神聖視し過ぎて拗らせていた気がする。
兄はそれよりもずっと俺の近くにいて、俺に愛情を注いでくれる存在だったのに…。
「兄上……」
なんだか無性に兄にくっつきたくて、好きですと言って上に乗る兄を抱き寄せ、気持ちを込めてその唇に自分の唇を重ねる。
「兄上が大好きで大好きで、気持ちを押し付けてばかりで本当にすみません」
「大丈夫だ。俺はお前にそうやって身も心も縛られるのは存外気に入っているからな」
だから気にせず独り占めしてくれと笑われてしまった。
そこからは昨日の時間を取り戻すかのようにゆったりと口づけあい、二人で肌を重ねて愛情を伝え合った。
「……うっ」
幸せすぎてやっぱり涙が出そうになったけど、兄が嬉しそうに俺からの愛情が伝わって嬉しいと笑うから、それならやっぱり他の誰でもなく俺が抱くのが一番なのだとちゃんと理解することができた。
「ロキ…泣いてもいいから、遠慮せず俺を抱いてくれ」
「兄上…」
「幸せの第一歩だ」
「はい…」
優しい兄に気持ちよくなってほしい。
でも今日は優しく愛したい。
そんな気持ちで丁寧に愛撫し、気持ちを込めて兄をとろとろにしてあげた。
その後、二人でベッドでまったりしている中、ふとリヒターにも心配をかけた事を思い出す。
「後でリヒターにも謝らないと…」
心配をかけてしまっただろうなと思ったから不意にそう口にしたのだけど、兄からは謝るのはいいけれど暫く3Pはお預けだと言われてしまった。
「暫くロキは俺を独り占めして俺の事をしっかり理解すること!」
拗らせてややこしくなる前に、先にきちんと向き合うようにと言われてクスリと笑みが零れ落ちる。
「兄上。それなら少しだけ我儘を言ってもいいですか?」
「なんだ?」
「兄上が好き過ぎて結婚式まで待てそうにありません。戴冠式の夜、こっそり二人きりで教会で愛を誓い合いたいです」
誰に祝福されなくてもいい。
豪華な婚礼衣装も沢山の参列客も必要じゃない。
二人きりで愛を誓い合いたかった。
そんな俺の気持ちに優しい兄はあっさりと頷いてくれる。
「ああ。お前がそれをしたいなら、二人で先に誓い合おう」
その言葉にジワリと胸が熱くなる。
こんな我儘を聞き入れてもらえるのだと嬉しくなった。
***
それから戴冠式の日を迎え、俺は晴れ晴れしい気分で式へと臨んでいた。
金糸銀糸で刺繍が施された豪華な衣装に身を包んだ兄はとてもカッコよくて思わず見惚れてしまったほど。
「兄上…とっても素敵です」
「ああ。お前もよく似合っている」
「ありがとうございます」
別に自分の衣装なんてどうでもいいのでそこは軽く流して今日の参列者達について確認しておく。
国際会議の関係でこちらに向かうのが難しかった国からは祝辞が多く届けられたが、ブルーグレイからは国王自ら足を運んでくれたので、参列してくれた各国からは感嘆の声が聞こえてきた。
大国の国王自らの参列というのはそれだけで凄いことらしい。
ミラルカも皇太子がワイバーンを使って皇王夫妻を連れてきてくれたので三者揃って出席してくれている。
非常にありがたい事だ。
国境を接する三ヶ国始め、新事業について聞きつけた他の周辺諸国からも人が大勢やってきていた。
本当に一大イベントと化していて気持ち的には逃げ出したくなる。
兄が自分だけを見ていろと言ってくれていなければきっとフラッとどこかに出掛けてしまっていたかもしれない。
「ロキ。大丈夫か?」
「ええ。緊張したら昨日の可愛い兄上でも思い出してリラックスしますね」
「……っ!」
仲直り後、二人で決めたことがある。
一つ。喧嘩した後は『ゴメンねエッチ』として、普通に肌を重ねて気持ちを伝え合うこと。
よくわからないけど、俺が酔い潰れる前に『ゴメンねフェラ』と言う単語を口にしていたらしく、レンバーがそう言えばそんな事を言っていたのを思い出した。
でも兄はフェラをされたら羞恥心が煽られて酷く抱かれたくなるから、そっちは普段の時限定にして欲しいと言ってきた。
二つめ。
普段はこれまで通り激しめで色々可愛がってくれて構わない。但し、複数プレイはよっぽど腹を立てた時だけにして欲しいということとマンネリ防止に3Pを楽しみたい時はリヒター限定で混ぜることと決められた。
基本的に以前と変わらないからこの辺はまあいいかと普通に了承した。
念のため『全部を普通にしてもいいんですよ?』と言ったら、それは嫌だと言われたので兄的にはどっちも大事なんだろうと納得した。
俺も泣いてよがる兄は大好きなので快く了承し、昨日と一昨日はそれはもう二人で楽しんだ。
快感に蕩けきった兄の顔はやっぱり最高だ。
俺のメス犬になっちゃうと舌ったらずに言われて、今日はマーキングじゃなくていっぱい奥に種付けしてと強請られ凄く興奮させられた。
あの時の兄の痴態を思い出せば自然と頬も緩むし、気持ちも上向くというもの。
酒場の連中には一般人に変態がバレないようになと笑われたけど、無理かもしれない。
それもこれも兄が可愛すぎるのが悪いと思う。
「ロキ…何を考えている?」
「え?可愛い兄上の痴態ですけど?」
「今はやめろ!恥ずかしいだろう?!」
「いいじゃないですか。別に。俺も笑顔になれますし、兄上も俺が兄上のことで頭をいっぱいにしてるのは嬉しいでしょう?」
「グッ…」
「じゃあそろそろ行きましょうか」
そうして二人で晴れ舞台へと足を運ぶ。
歓声を背に定位置へと進み、進行役の内務大臣の言葉で式は順調に執り行われ、最後に兄の前へと跪いて頭を垂れた。
「偉大なる尊き血を受け継ぐ者よ。ガヴァムの地に永遠の忠義を尽くし、この地を発展させ、人々に安寧を与えよ。さすれば常しえに其方の名は人々に語り継がれることだろう。カリン=ガハム=ヴァドラシアの名においてロキ=アーク=ヴァドラシアを王としてかかげる事をここに認める!」
そしてそっと王冠が兄の手で俺の頭へと乗せられる。
「……確かに拝命致しました」
今この場では戴冠してくれる相手は自分よりも上位だが、こう答えた後立ち上がればその順位が入れ替わる。
(立ちたくないな…)
チラリとそんな事を思ったけれど、のんびりしすぎて兄との秘密の結婚式ができなくなる方が嫌なので渋々立ち上がり、なんとか笑みを浮かべた。
それと共に周囲から割れんばかりの拍手と歓声が上がり、口々に名を呼ばれ、祝福の言葉が手向けられた。
後はバルコニーに出て国民達へ手を振って挨拶をするだけだ。
裏稼業のみんなは見にくると言っていたけど、本当に来るんだろうか?
でも来てくれたら嬉しいなと少しだけ思ったのだった。
眩しいと思いながら目を覚ますと、何故か兄の隣で眠っていた。
服は着ているようだし、正直昨日飲んだところまでは覚えているから、抱いてはいないと思う。
きっとそのまま寝入ってしまって、兄に運ばれてしまったんだろう。
取り敢えず目も覚めたことだし自室で着替えようと思ったのだが、兄の声でそれは失敗に終わった。
「どこに行く?」
「あ、兄上。おはようございます」
ニコッと笑っていつものように抜け出そうとするけれど、何故か兄は全然離してくれない。
それどころかベッドに引きずり込むように引っ張り込まれ、そのまま何故か組み敷かれてちょっと驚いてしまった。
「兄上?」
「……取り敢えずレンバーという男について詳しく教えてもらおうか?」
「え?」
どうしてそんなにレンバーを気にしてるんだろう?
それがよくわからない。
「レンバーですか?俺の知り合いの情報屋ですが?」
「……言い方が悪かったな。昨日お前に閨事を教えた男だと聞いたが…寝たのか?」
「え?寝ませんよ。酒場でしか会ったことないですし」
「……本当だな?」
「ええ。そもそも女性を抱いて情報を聞き出すのを生業にしている男なので、俺なんかを抱くなんてしないと思いますけど」
「そうか…」
どうして安心したという顔をしているのかはわからないけど、憂いが晴れたなら良かった。
「じゃあ俺はこれで…」
「待て」
「……?」
「ロキ。昨日はお前がかなり拗らせているのがよくわかった。だからこそ言いたい」
「はあ…」
一体何を言われるんだろう?
「俺が愛してるのはお前だけだ」
そんな言葉と真剣な眼差しにドクッと胸が弾む。
「昨日お前に丁寧に抱いてもらって、俺は凄く嬉しかった」
「え?」
「俺はずっとお前にあんな風に抱かれてみたかったんだ…」
「えっ?!」
正直その言葉は驚き以外の何ものでもなくて、心臓が止まるかと思うほど衝撃を受けた。
「え?で、でも兄上は激しく抱かれるのが大好きじゃないですか!」
「勿論大好きだ」
「ならどうして……」
大好きと聞いてホッとするけれど、優しくも抱かれてみたかった兄の心境がいまいちよくわからなくて困惑してしまう。
「俺がお前を好きなのは、快楽を求めているからだけじゃない。それを抜きにしても愛しく思っているからだ」
その言葉に俺は頭を殴られたように衝撃を受けた。
「俺はどんな形でもいいからお前と愛し合いたいんだ。でもお前との行為はどうしても気持ちよくて我を忘れるほど感じてしまって、俺がお前に気持ちを伝えることも、逆にお前からの愛情を俺が受け取ることもできなくなっている気がした」
「兄上……」
「だから段々嫉妬も激しくなって、どうしようもなく辛かった。俺は…無理だとわかっていてもお前に優しく抱かれて、愛情を感じて安心させて欲しかったんだ」
昨日は図らずもそういった状況になって嬉しかったし、俺からの愛情も凄く伝わってきて嬉しかったと兄は言う。
「お前にも…俺の愛情が伝わったから泣くほど嬉しい気持ちになってくれたんじゃないのか?」
その言葉は奇妙なほどストンと俺の中へと落ちてきた。
そして兄が俺に優しく抱かれたかった理由も凄く良くわかった。
難しく考える必要はどこにもなかったのだ。
確かに俺は闇医者が言うように兄を神聖視し過ぎて拗らせていた気がする。
兄はそれよりもずっと俺の近くにいて、俺に愛情を注いでくれる存在だったのに…。
「兄上……」
なんだか無性に兄にくっつきたくて、好きですと言って上に乗る兄を抱き寄せ、気持ちを込めてその唇に自分の唇を重ねる。
「兄上が大好きで大好きで、気持ちを押し付けてばかりで本当にすみません」
「大丈夫だ。俺はお前にそうやって身も心も縛られるのは存外気に入っているからな」
だから気にせず独り占めしてくれと笑われてしまった。
そこからは昨日の時間を取り戻すかのようにゆったりと口づけあい、二人で肌を重ねて愛情を伝え合った。
「……うっ」
幸せすぎてやっぱり涙が出そうになったけど、兄が嬉しそうに俺からの愛情が伝わって嬉しいと笑うから、それならやっぱり他の誰でもなく俺が抱くのが一番なのだとちゃんと理解することができた。
「ロキ…泣いてもいいから、遠慮せず俺を抱いてくれ」
「兄上…」
「幸せの第一歩だ」
「はい…」
優しい兄に気持ちよくなってほしい。
でも今日は優しく愛したい。
そんな気持ちで丁寧に愛撫し、気持ちを込めて兄をとろとろにしてあげた。
その後、二人でベッドでまったりしている中、ふとリヒターにも心配をかけた事を思い出す。
「後でリヒターにも謝らないと…」
心配をかけてしまっただろうなと思ったから不意にそう口にしたのだけど、兄からは謝るのはいいけれど暫く3Pはお預けだと言われてしまった。
「暫くロキは俺を独り占めして俺の事をしっかり理解すること!」
拗らせてややこしくなる前に、先にきちんと向き合うようにと言われてクスリと笑みが零れ落ちる。
「兄上。それなら少しだけ我儘を言ってもいいですか?」
「なんだ?」
「兄上が好き過ぎて結婚式まで待てそうにありません。戴冠式の夜、こっそり二人きりで教会で愛を誓い合いたいです」
誰に祝福されなくてもいい。
豪華な婚礼衣装も沢山の参列客も必要じゃない。
二人きりで愛を誓い合いたかった。
そんな俺の気持ちに優しい兄はあっさりと頷いてくれる。
「ああ。お前がそれをしたいなら、二人で先に誓い合おう」
その言葉にジワリと胸が熱くなる。
こんな我儘を聞き入れてもらえるのだと嬉しくなった。
***
それから戴冠式の日を迎え、俺は晴れ晴れしい気分で式へと臨んでいた。
金糸銀糸で刺繍が施された豪華な衣装に身を包んだ兄はとてもカッコよくて思わず見惚れてしまったほど。
「兄上…とっても素敵です」
「ああ。お前もよく似合っている」
「ありがとうございます」
別に自分の衣装なんてどうでもいいのでそこは軽く流して今日の参列者達について確認しておく。
国際会議の関係でこちらに向かうのが難しかった国からは祝辞が多く届けられたが、ブルーグレイからは国王自ら足を運んでくれたので、参列してくれた各国からは感嘆の声が聞こえてきた。
大国の国王自らの参列というのはそれだけで凄いことらしい。
ミラルカも皇太子がワイバーンを使って皇王夫妻を連れてきてくれたので三者揃って出席してくれている。
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本当に一大イベントと化していて気持ち的には逃げ出したくなる。
兄が自分だけを見ていろと言ってくれていなければきっとフラッとどこかに出掛けてしまっていたかもしれない。
「ロキ。大丈夫か?」
「ええ。緊張したら昨日の可愛い兄上でも思い出してリラックスしますね」
「……っ!」
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一つ。喧嘩した後は『ゴメンねエッチ』として、普通に肌を重ねて気持ちを伝え合うこと。
よくわからないけど、俺が酔い潰れる前に『ゴメンねフェラ』と言う単語を口にしていたらしく、レンバーがそう言えばそんな事を言っていたのを思い出した。
でも兄はフェラをされたら羞恥心が煽られて酷く抱かれたくなるから、そっちは普段の時限定にして欲しいと言ってきた。
二つめ。
普段はこれまで通り激しめで色々可愛がってくれて構わない。但し、複数プレイはよっぽど腹を立てた時だけにして欲しいということとマンネリ防止に3Pを楽しみたい時はリヒター限定で混ぜることと決められた。
基本的に以前と変わらないからこの辺はまあいいかと普通に了承した。
念のため『全部を普通にしてもいいんですよ?』と言ったら、それは嫌だと言われたので兄的にはどっちも大事なんだろうと納得した。
俺も泣いてよがる兄は大好きなので快く了承し、昨日と一昨日はそれはもう二人で楽しんだ。
快感に蕩けきった兄の顔はやっぱり最高だ。
俺のメス犬になっちゃうと舌ったらずに言われて、今日はマーキングじゃなくていっぱい奥に種付けしてと強請られ凄く興奮させられた。
あの時の兄の痴態を思い出せば自然と頬も緩むし、気持ちも上向くというもの。
酒場の連中には一般人に変態がバレないようになと笑われたけど、無理かもしれない。
それもこれも兄が可愛すぎるのが悪いと思う。
「ロキ…何を考えている?」
「え?可愛い兄上の痴態ですけど?」
「今はやめろ!恥ずかしいだろう?!」
「いいじゃないですか。別に。俺も笑顔になれますし、兄上も俺が兄上のことで頭をいっぱいにしてるのは嬉しいでしょう?」
「グッ…」
「じゃあそろそろ行きましょうか」
そうして二人で晴れ舞台へと足を運ぶ。
歓声を背に定位置へと進み、進行役の内務大臣の言葉で式は順調に執り行われ、最後に兄の前へと跪いて頭を垂れた。
「偉大なる尊き血を受け継ぐ者よ。ガヴァムの地に永遠の忠義を尽くし、この地を発展させ、人々に安寧を与えよ。さすれば常しえに其方の名は人々に語り継がれることだろう。カリン=ガハム=ヴァドラシアの名においてロキ=アーク=ヴァドラシアを王としてかかげる事をここに認める!」
そしてそっと王冠が兄の手で俺の頭へと乗せられる。
「……確かに拝命致しました」
今この場では戴冠してくれる相手は自分よりも上位だが、こう答えた後立ち上がればその順位が入れ替わる。
(立ちたくないな…)
チラリとそんな事を思ったけれど、のんびりしすぎて兄との秘密の結婚式ができなくなる方が嫌なので渋々立ち上がり、なんとか笑みを浮かべた。
それと共に周囲から割れんばかりの拍手と歓声が上がり、口々に名を呼ばれ、祝福の言葉が手向けられた。
後はバルコニーに出て国民達へ手を振って挨拶をするだけだ。
裏稼業のみんなは見にくると言っていたけど、本当に来るんだろうか?
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