【完結】王子の本命~ガヴァム王国の王子達~

オレンジペコ

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36.※国際会議㉑

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「ロキの浮気者」

そんなことを言いながら兄が枕を抱きながらうつ伏せで拗ねていて、とっても可愛い。
どうして兄はこんなに自分の心を虜にしてしまうんだろう?

「兄上。今日のことは不可抗力ですよ?レオナルド皇子だって俺とどうこうなる気はないと言っていたでしょう?」
「……口でなら何とでも言える」
「では態度では?」
「……演技かもしれないじゃないか」
「ふふっ…兄上のようにですか?」

『兄上も演技が上手でしたもんね』と言いながらクスクスと笑うと、どこか憎らし気に睨まれてしまった。

「ロキ…」
「兄上。不安にさせてしまったことは謝ります。だから…その…」
「……?」
「今日はいつもとは違う抱き方をしてもいいですか?」

いつもは兄に合わせて割と酷い抱き方をしている。
自分も興奮するし、どちらかと言えばそんな抱き方は好きではあるけれど、リヒターから結婚するのなら一度くらいは普通に抱いてみたらどうかと言われたのを思い出したのだ。

一般的な普通の抱き方というのがよくわからなかったのでリヒターに聞いた当初こっそりリサーチはしてみたものの、『道具は使わない』『愛情を持って優しく丁寧に抱く』ということくらいしかわからなかった。
果たしてそれで兄が満足するのかと疑問に思ったからこれまで記憶の彼方に追いやっていたのだが、ここはひとつ思い切って試してみようと思う。

怪訝そうな兄だけど、失敗したら失敗したで焦らしプレイだったことにしてしまえばいい。
それなら気も楽だ。
そう思いながらまずは軽くチュッと兄の髪にキスを落とした。

「……え?」
「兄上。今日は愛情深く優しく抱くので、許してください」

ちゅっちゅっとキスを降らせながらゆっくりと服を剥ぎ、弱いところを狙ったように愛撫する。

「んんっ…」

欲を煽るように、丁寧に手を這わせねっとりじっくり嬲っていく。

「ひっ…」

兄が大好きな触り方なんてもうとっくの昔に覚え込んでいる。

(少し勿体つけたように触るくらいがいいんですよね?)

優しく抱くくらい自分にだってやろうと思えばいくらでもできるのだ。
でもこんな程度で兄が満足してくれるとは全く思えないから普段は道具を駆使しながら頑張っているのに…。
そう思いながらそっと兄の表情を確認すると────。

(あれ?)

そこにあったのはいつもと変わらないほど気持ちよさそうな兄の顔。
心持ちいつもよりも緊張していそうな気がするけど、どこか切なげな眼差しで恋うるように俺を見つめてきていて、どうしてこんな表情をしているのか理解が追い付かない。

「兄上?」
「あ…ロキ……」

熱っぽい眼差しで見つめられながら名を呼ばれ、胸がドクッと弾んでしまう。

「兄上…気持ちいいですか?もっと気持ちよくしてあげますからね?」

そこから更に丁寧に丁寧に感度を上げていき、挿れてほしいと身悶えながら強請られたところでゆっくりと挿れてあげた。
反応的に挿れたらすぐにイッてしまいそうだったので、もちろん兄のものの根元はちゃんと押さえた上でだ。

「んぁああぁっ!」

それでも挿れると同時に中イキはしてしまったようだけど、気持ちよさそうだしこのまま動いても大丈夫だろう。
パンッパンッと中を何度も擦り上げ奥まで突いてあげるといつものように涎を垂らして悦んでもらえたけれど、どこかいつもとは違ってその目は快楽に蕩けているといった感じではなく、俺に溺れているといった感じに見えた。
ちょっと説明が難しいけど、相手が他の誰でもいいといった感じではなく、俺に抱かれているのが嬉しいといった感じと言えば伝わるだろうか?
熱を孕んだ眼差しは真っ直ぐに俺へと向けられていて、愛しくて仕方がないといった感じで縋るように腕を伸ばされる。
そんな行為に胸がドクンッと激しく鳴った。

(なんだ、これ…)

何故か初めて知るような感覚が胸の奥からあふれ出してくる。
大事…?愛おしい…?
なんだろう、これは?
これまでだって兄のことは大好きだったし、一番大事に思っていたはずなのに、それ以上の感情を揺さぶるような気持ちが込み上げてきて混乱する。

「……ロキ?」

気づけば俺の動きは止まっていて、息を整えた兄が困惑したように俺を見つめていた。

「……え?」

ポタッ…と零れ落ちたのは自分の涙で、気づけば俺は何故か泣いてしまっていた。

「あ…れ?」
「ロキッ!どうした?!」

兄が慌てたように起き上がって涙を拭ってくれるけど、涙は全然止まらなくて、一度中から引き抜いてちょっと落ち着こうということになった。

「落ち着いたか?」
「……すみません」

心配したように兄が俺を抱き寄せながら顔を覗き込み、そっと水を差しだしてくれる。

「俺が何かお前を悲しませるようなことをしてしまったか?」

しかもそんな風に気遣ってくれて、流石に何も言わないのはダメかと思い、ぽつぽつと先程のことを口にしてみることにした。
自分でもよくわからないから本当にあるがままを話すしかできないのだけれど…。

「その…兄上が悪いんじゃなくて、俺がおかしいんです」
「…………?」
「これまでも兄上のことはこれ以上ないほど好きなはずだったのに……」
「…………」
「さっき兄上を抱いていたらもっと強い気持ちが込み上げてきて、どうしようもなく胸が締めつけられて、愛おしくなって……」
「……ロキ」
「自分でも訳が分からないし、勝手に涙は止まらなくなるし…。だからすみません。ちょっと暫く閨はリヒターに……」

そこまで言ったところでちょっと待てとストップが入った。

「どうしてそうなる?!」
「え?だから、落ち着くまで兄上を抱けないなと思って…」

こんな独りよがりな気持ちで兄を抱いても満足させてあげられる自信がないし、暫くはリヒターに抱いてもらってくださいと口にしたら滅茶苦茶責められて、でも言われている意味が全く分からなくて首を傾げてたら何故かリヒターを呼ばれた。

「リヒター!ちょっとロキを叱って説得してくれ!どう言っても俺だけじゃ納得しないんだ!」
「兄上?」
「落ち着いてください、カリン王子。説明していただけないと何も手が打てません」

その言葉に兄が深呼吸し、リヒターへと簡潔に説明する。

「俺を物凄く大事そうに抱いていたと思ったら、急に愛おしすぎて涙が止まらなくなったから暫く自分ではなくお前に抱かれろと言ってきたんだぞ?!おかしいだろう?!」

別におかしなことは言っていないつもりなんだけどなと思っていたら、何故かリヒターにも大きな溜息を吐かれてしまった。

「なるほど。呼ばれた意味が分かりました。ロキ王子?」
「なんだ?」
「カリン王子がお好きですか?」
「もちろんだ」
「大事で愛おしい気持ちがこれまで以上に溢れてしまったんですよね?」
「……ああ」
「そういう時はどうすればいいのかわかりますか?」
「え?……落ち着くまでは迷惑にしかならないから誰か他の人に任せるのが一番かな…と思ったんだけど」
「カリン王子が迷惑だと言ったんですか?」
「いや」

兄は別に何も言ってはいない。
勝手に俺がそう思っただけで……。

「じゃあカリン王子に聞いてみてください」

そんな風に促されて、俺はそっと兄へと視線を向ける。

「その…迷惑、ですよね?」

恐る恐るそう尋ねると、兄はどこか怒ったようにしながら迷惑なんかじゃないと言ってきた。

「好きな相手が自分に夢中になってくれて嫌になる奴なんていない」
「…………」
「泣くほど俺が好きなら、誰かに俺を託すよりもそのまま抱いてほしい」
「え……」
「お前に抱かれるのは嬉しいし、寧ろ誰かに託された方が俺は嫌だ」
「え?そ…そんな……」
「お前は意外に思ってるかもしれないけど、俺の考えの方が普通だぞ?」

本当にそうなんだろうかと思いながらそっとリヒターの方を窺うと、その通りと言わんばかりに深く頷かれてしまう。

「お前の性癖はわかっているが、それとこれとは別だし、そろそろ俺に愛されてる自信を持ってほしい」
「兄上に愛されてる…自信、ですか?」
「そうだ。たまにリヒターを交えて俺を抱くのは別にいいが、俺の想う相手はお前なんだぞ?好きな相手以外に抱かれるのは基本的にはお断りだ」

何度も言わせるなと、そう言われてよくよく言われた言葉をかみ砕いて、初めてもしかしてと思った。

「えっと…兄上。もしかして性欲を満足させられる俺と寝るのが好きなんじゃなくて、どんな俺でも好きってこと…ですか?」

恐る恐るそう尋ねてみると、何故か二人揃ってガクッと肩を落としてきた。
そんなわけがないのに、口に出してしまって物凄く恥ずかしくてすぐに後悔してしまう。

「そんなわけないですよね。冗談とでも思って忘れてください」
「いやいやいや?!ロキ王子!違いますよ?!」
「そうだぞ、ロキ!ちょっと待て!」
「いいんです。身の程知らずな俺が悪いので。えっと…頭を冷やしてくるので後は二人で……」
「だから待てと言っている」

勝手に自己完結をするなとガシッと肩を掴まれ逃げそこなったんだけど、今日のところはできればこのまま逃がしてほしい。

「リヒター!絶対に逃がすな!」
「わかってますよ。ここで逃がしたら絶対に明後日の方向にいかれてしまいますからね」
「え?」

そこからは何故か二人がかりで色々言い聞かされたけど、結局のところ慰め以外の何ものでもないように思えたので、二人の言い分はよくわかったから時間をくれと言って闇医者のところへ逃げ出した。
それくらい俺には全く理解できなかったから……。
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