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16.国際会議①
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※今回、本編とのコラボ的なお話になっています。
途中で王子やアルフレッドも出てきますので、双方視点で楽しんで頂けたら嬉しいです(^^)
****************
「ああ…私はどうしたらいいんだ……」
ガヴァム王国の王は現状を悩んで嘆いていた。
将来を期待していた上の息子カリンはブルーグレイ王国で王太子の不興を買い、快楽堕ちなどという情けない状況に追い込まれた。
だからその姿を見た後すぐさま部屋へと軟禁し、周囲を口の堅い者で固めて隔離したのだ。
カリンのスペアとしては少々心もとないが他に適した者もいないしと下の息子ロキを王太子に据え、周囲を優秀な者で固めてロキをお飾りの王太子にして国を回していけばいいと考えていたのに全てが台無しになってしまった。
昔から不出来な息子だと思っていたが、まさかここまでとは思ってもみなかった。
気づけば隠していたカリンの爛れた性生活は王宮中に知れ渡っていて、いくら口止めしようとも無駄に終わるほどになっていた。
今やカリンはロキの恋人だとも言われていて兄弟で寝ていると専らの噂だ。
快楽堕ちした兄を手籠めにするなど本気で頭がおかしいとしか思えない。
だが何をどうやったのかは知らないが、王宮医師でさえ匙を投げたカリンは今昼間はまともな状態に戻っているらしい。
だからこそ補佐官として仕事をすることを認めたのだが、夜が酷すぎるので最早カリンが以前のように周囲に認められることはないだろう。
私達夫婦の庭園で淫らに戯れ声を響かせた時には夫婦揃って不眠に悩まされて大変だった。
少なくとも自分達は兄を嬉々として抱くロキもあんな声で乱れるカリンも息子とは認めたくはない。
正直気が狂いそうだ。
そして問題は重鎮達だ。
これまで自分を支え続けてくれていた優秀な者達が次々とロキの魔の手に堕とされてしまった。
ロキ様のためならとかわけのわからないことを言い出し、仕事に励んではいるようだがロキに犬のようにしっぽを振っている姿は情けないの一言。
あれではただの変態ではないか。
彼らの娘達も淑女と名高い素晴らしい令嬢達ばかりだったのに、今ではすっかり引き籠りになってしまっていて、毎日泣き暮らしていると聞く。
親がああなってしまってはそうなるというもの。
可哀想にとしか思えない。
ここまでくるとロキの教育を間違ってしまったのではと思わざるを得ない。
昔から厳しく接してきたつもりだし、教育係達には殊更厳しく接するように言ってきたつもりだ。
手心など加えず、体罰を加えても不問に処すと言ってこれでもかと厳しく教育させてきた。
カリンよりも劣るのだから当然だと突き放し、カリンにも出来損ないの弟とは関わるなと伝え、甘えなど一切許さず育ててきたというのにどこをどう間違えてしまったのだろうか?
「宰相…ロキを教育し直すにはどうしたらいいと思う?」
ダメ元で変態に堕とされてしまった宰相にそう尋ねてみると嬉々として答えられた。
「ロキ様の素晴らしさを他国にも広められては如何でしょう?」
「…………それは無理だろう」
あの状態のロキを外に出せば国の恥にしかならない。
どこの世界に変態を量産していく王太子がいるというのか。
けれど宰相は全く譲ってはくれなかった。
「いいえ!カリン王子からロキ王子に王太子の座が譲られたのですから、お披露目も兼ねて一度くらい外へは出すべきです」
「その意見には一理あるが、国にはイメージというものがつきものだ」
「そうですね。ガヴァム王国は歴史ある国ですし、保守的な考え方をする国というイメージがどうしても付き纏います」
「そうだ」
それならわかるだろう?と話を振ると、宰相は鷹揚に首肯し、こう言い放った。
「そのイメージを壊し、新たな風を吹き込むのがロキ様です!お任せください!私が必ずやロキ様を説得し、この国に新しい風を吹かせて見せましょう!」
「違う!違うぞ?!」
そのイメージを大事にしろと言ってやりたかったのに真逆の発想に至ってしまった宰相を慌てて止めようとするが宰相は嬉々として胸を叩き、王の名代として国際会議に出るよう説得してまいりますと足取りも軽やかにロキの元へと走って行ってしまった。
こうなってしまっては後はロキが断るのを祈るしかない。
最近ストレスで円形脱毛症になってしまったので国際会議は宰相に任せようと思っていたのに、どうしてこうなってしまったのか…。
(まあ基本的に引きこもりのあいつのことだ。わざわざ外に出ようなどとは思わないだろう)
好んで不出来な自分をアピールしに行くような愚かさは流石に持ち合わせてはいないはず。
それだけがせめてもの救いだと思いながら深く深く息を吐き出したのだが────。
***
「父の代理…ですか?」
「はい。ロキ様が王太子に就いてからの初の大役です!王の名代として国際会議に参加して頂きたいのです!」
宰相が嬉々としてそんなことを言ってくるけれど、正直あまり気乗りしない事案だった。
「別の者に頼んでは?兄上なら兎も角、俺では明らかに役者不足です」
「そんなことはありません!王太子として立派にこの大役をこなせれば他国にもロキ様が印象付けられるので一石二鳥!如何です?」
(はぁ…ここでどうでもいいと言ったらきっとダメなんだろうな)
正直面倒臭いし行きたくない。
「俺は交渉事なんて向いていないし、愛想を振りまくこともできないですよ?」
「わかっています!だからこそ周囲を優秀な者で固めるのです!ロキ様は落ち着いた雰囲気を纏いながら我々に指示を出して下さるだけで構いません。些事は全て周囲の者が卆なくこなしますのでご安心を!上手くいけばロキ様は我々を褒めてご褒美を下さればいいのです!必要な道具も揃えておきますので是非ご一考ください!」
結局はご褒美目当てということなのか?
徹底してるな。
でもこの場合嬉しいのは宰相だけじゃないのだろうか?
「兄上…どう思います?」
「いいんじゃないか?国際会議なら王太子のお披露目にも絶好の機会だ。俺が居なければ特に問題はないだろう」
「え?兄上が留守番をされるなら行きませんよ?そんな面倒な場所」
「なぁ?!カリン王子!貴方は補佐官として是非是非同行なさってください!ロキ様は貴方がいないとやる気を出して下さらないのですよ?!お願い致します!」
「それはそれで問題だと思うが…。まあわかった。父の許可が下りるのなら考えよう」
「そこは大丈夫です!王は国際会議の件は私に全てお任せくださっているので私がOKを出せば問題ありません!」
「そうか。意外だがそういうことなら同行しよう」
「はい!ではロキ様!ロキ様もそれでよろしいですね?」
「兄上が行くなら?」
「はい!ではそのように準備の方は進めさせて頂きますので!」
そうして宰相は嬉々として準備を始め、二か月先にある国際会議へと出掛けることが決まってしまったのだった。
途中で王子やアルフレッドも出てきますので、双方視点で楽しんで頂けたら嬉しいです(^^)
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「ああ…私はどうしたらいいんだ……」
ガヴァム王国の王は現状を悩んで嘆いていた。
将来を期待していた上の息子カリンはブルーグレイ王国で王太子の不興を買い、快楽堕ちなどという情けない状況に追い込まれた。
だからその姿を見た後すぐさま部屋へと軟禁し、周囲を口の堅い者で固めて隔離したのだ。
カリンのスペアとしては少々心もとないが他に適した者もいないしと下の息子ロキを王太子に据え、周囲を優秀な者で固めてロキをお飾りの王太子にして国を回していけばいいと考えていたのに全てが台無しになってしまった。
昔から不出来な息子だと思っていたが、まさかここまでとは思ってもみなかった。
気づけば隠していたカリンの爛れた性生活は王宮中に知れ渡っていて、いくら口止めしようとも無駄に終わるほどになっていた。
今やカリンはロキの恋人だとも言われていて兄弟で寝ていると専らの噂だ。
快楽堕ちした兄を手籠めにするなど本気で頭がおかしいとしか思えない。
だが何をどうやったのかは知らないが、王宮医師でさえ匙を投げたカリンは今昼間はまともな状態に戻っているらしい。
だからこそ補佐官として仕事をすることを認めたのだが、夜が酷すぎるので最早カリンが以前のように周囲に認められることはないだろう。
私達夫婦の庭園で淫らに戯れ声を響かせた時には夫婦揃って不眠に悩まされて大変だった。
少なくとも自分達は兄を嬉々として抱くロキもあんな声で乱れるカリンも息子とは認めたくはない。
正直気が狂いそうだ。
そして問題は重鎮達だ。
これまで自分を支え続けてくれていた優秀な者達が次々とロキの魔の手に堕とされてしまった。
ロキ様のためならとかわけのわからないことを言い出し、仕事に励んではいるようだがロキに犬のようにしっぽを振っている姿は情けないの一言。
あれではただの変態ではないか。
彼らの娘達も淑女と名高い素晴らしい令嬢達ばかりだったのに、今ではすっかり引き籠りになってしまっていて、毎日泣き暮らしていると聞く。
親がああなってしまってはそうなるというもの。
可哀想にとしか思えない。
ここまでくるとロキの教育を間違ってしまったのではと思わざるを得ない。
昔から厳しく接してきたつもりだし、教育係達には殊更厳しく接するように言ってきたつもりだ。
手心など加えず、体罰を加えても不問に処すと言ってこれでもかと厳しく教育させてきた。
カリンよりも劣るのだから当然だと突き放し、カリンにも出来損ないの弟とは関わるなと伝え、甘えなど一切許さず育ててきたというのにどこをどう間違えてしまったのだろうか?
「宰相…ロキを教育し直すにはどうしたらいいと思う?」
ダメ元で変態に堕とされてしまった宰相にそう尋ねてみると嬉々として答えられた。
「ロキ様の素晴らしさを他国にも広められては如何でしょう?」
「…………それは無理だろう」
あの状態のロキを外に出せば国の恥にしかならない。
どこの世界に変態を量産していく王太子がいるというのか。
けれど宰相は全く譲ってはくれなかった。
「いいえ!カリン王子からロキ王子に王太子の座が譲られたのですから、お披露目も兼ねて一度くらい外へは出すべきです」
「その意見には一理あるが、国にはイメージというものがつきものだ」
「そうですね。ガヴァム王国は歴史ある国ですし、保守的な考え方をする国というイメージがどうしても付き纏います」
「そうだ」
それならわかるだろう?と話を振ると、宰相は鷹揚に首肯し、こう言い放った。
「そのイメージを壊し、新たな風を吹き込むのがロキ様です!お任せください!私が必ずやロキ様を説得し、この国に新しい風を吹かせて見せましょう!」
「違う!違うぞ?!」
そのイメージを大事にしろと言ってやりたかったのに真逆の発想に至ってしまった宰相を慌てて止めようとするが宰相は嬉々として胸を叩き、王の名代として国際会議に出るよう説得してまいりますと足取りも軽やかにロキの元へと走って行ってしまった。
こうなってしまっては後はロキが断るのを祈るしかない。
最近ストレスで円形脱毛症になってしまったので国際会議は宰相に任せようと思っていたのに、どうしてこうなってしまったのか…。
(まあ基本的に引きこもりのあいつのことだ。わざわざ外に出ようなどとは思わないだろう)
好んで不出来な自分をアピールしに行くような愚かさは流石に持ち合わせてはいないはず。
それだけがせめてもの救いだと思いながら深く深く息を吐き出したのだが────。
***
「父の代理…ですか?」
「はい。ロキ様が王太子に就いてからの初の大役です!王の名代として国際会議に参加して頂きたいのです!」
宰相が嬉々としてそんなことを言ってくるけれど、正直あまり気乗りしない事案だった。
「別の者に頼んでは?兄上なら兎も角、俺では明らかに役者不足です」
「そんなことはありません!王太子として立派にこの大役をこなせれば他国にもロキ様が印象付けられるので一石二鳥!如何です?」
(はぁ…ここでどうでもいいと言ったらきっとダメなんだろうな)
正直面倒臭いし行きたくない。
「俺は交渉事なんて向いていないし、愛想を振りまくこともできないですよ?」
「わかっています!だからこそ周囲を優秀な者で固めるのです!ロキ様は落ち着いた雰囲気を纏いながら我々に指示を出して下さるだけで構いません。些事は全て周囲の者が卆なくこなしますのでご安心を!上手くいけばロキ様は我々を褒めてご褒美を下さればいいのです!必要な道具も揃えておきますので是非ご一考ください!」
結局はご褒美目当てということなのか?
徹底してるな。
でもこの場合嬉しいのは宰相だけじゃないのだろうか?
「兄上…どう思います?」
「いいんじゃないか?国際会議なら王太子のお披露目にも絶好の機会だ。俺が居なければ特に問題はないだろう」
「え?兄上が留守番をされるなら行きませんよ?そんな面倒な場所」
「なぁ?!カリン王子!貴方は補佐官として是非是非同行なさってください!ロキ様は貴方がいないとやる気を出して下さらないのですよ?!お願い致します!」
「それはそれで問題だと思うが…。まあわかった。父の許可が下りるのなら考えよう」
「そこは大丈夫です!王は国際会議の件は私に全てお任せくださっているので私がOKを出せば問題ありません!」
「そうか。意外だがそういうことなら同行しよう」
「はい!ではロキ様!ロキ様もそれでよろしいですね?」
「兄上が行くなら?」
「はい!ではそのように準備の方は進めさせて頂きますので!」
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