【完結】王子の本命~ガヴァム王国の王子達~

オレンジペコ

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7.※覚醒 Side.カリン王子

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どこかで優しい声がする。
それは幻聴のようでそうではない声だ。
どこから?いつから?

ふと────そんなことを考えた。




「さあ、兄上。今日もお薬を飲みましょうね」

また……何処からか優しい声が聞こえてくる。
俺はこの声を知っているようで知らない。
だって俺が知っているあの男の声と似ているけれど、あの男が自分にこんな優しい声で話しかけるはずがないと…知っているのだから。

そして口に入れられた何かを、続いて温かな感触と共に流し込まれた液体で反射的に飲み下す。

「ちゃんと飲めたか確認しますね」

そう言いながら口内に薬がないかを確認するように舌であちこち舐めまわされる。
けれどそれがとてつもなく気持ち良くて、ついついうっとりと受け入れてしまう自分がいた。

「今日もいい子に飲めましたね。次はお尻のお薬ですよ」

そして今度は身体をひっくり返されてゆっくりと薬らしき物体を指で奥まで入れ込まれる。

「ん…んんぅ……」
「大丈夫。ちゃんと良くなってきてますよ」

入れられた瞬間不安げな声を上げて咄嗟に服を掴んでしまったからだろうか?
宥めるように頭を撫でられ、そんな風に声を掛けられてしまう。
だから思わず顔を上げその男の方を見てしまったのだが、そこには確かに自分の見知った顔があって戸惑いを隠すことができなかった。

俺自身のスペアとして育てられた俺の劣化品。
何をやらせても完璧にはできない愚か者。
父に散々こき下ろされ、母に蔑まれ、俺に馬鹿にされ続けてきた実弟───ロキ=アーク=ヴァドラシア。

「ああ、だいぶしっかりしてきましたね。兄上。俺がわかりますか?」
「…………」
「まだもう少しですかね?まあいいですよ。頑張ったご褒美は夜にあげますから楽しみにしててくださいね」

そう言って俺が大嫌いなはずのその男は再度優しく頭を撫でて部屋を出て行ってしまう。

「あ…う……」

纏まらない思考。どこか重怠い体。
それだけではなく何故か切ないような胸の痛みに襲われて困惑が増してしまう。
自分は一体どうしてしまったんだろう?

考えるのが億劫で、どうしても深く物事を考えることができない。
わかることは、ここが恐ろしい場所ではなく自分が育った城の中であることと、あの男に飼われているのだということだけだ。
そうでなければ説明がつかない。

(俺は────?)

そうしてまたゆっくりと意識を手放してしまった。


***


「あっ!はぁんっ!」

はぁはぁと荒い呼吸が響く中、また意識が覚醒する。
気持ちいい気持ちいいと身体が歓喜し、目の前の男に縋るように手を伸ばす。

「兄上は本当に奥が大好きですね」
「あっあっ…!」
「乳首を弄られるのも大好きですし、そんなに悦んで…。誰に抱かれてるのかわかってるんですか?」
「あっあぁっ!ご主人…様ぁ……!」
「ふふっ…そう呼ばれるのは好きですけど、そろそろ名前も呼んでほしいなって思ってるんですよ?」

『だっていつまでもブルーグレイの尋問官と同じ呼び方というのも癪でしょう?』と言われ、身体に震えが走った。

それと共にフラッシュバックするのは恐ろしく冷たい笑みで自分を甚振ってくる男の顔────。
そして唐突に思い出されるブルーグレイ王国での恥辱の数々。
イキたくてイキたくて許してくれと何度も叫び、けれど全く聞き入れてはもらえなかった最悪な時間。

「あ…あぁあっ……!」
「兄上?」
「あ…ひっ……」

自分は確かにあの時、拷問官に散々弄ばれ開発されて犯されてはいなかったか?
ありとあらゆることを仕込まれ、前でイクにイケないまま調教されたのではなかったか?
挙句に快楽に堕とされ、全てがどうでもよくなったのではなかっただろうか?

「やっ…!いやっ……!」

そこまで思い出したところで一種の恐慌状態へと陥りそうになったけれど、そんな俺の様子を察したのか、男が動きを止めてそっと抱き込んでくる。

「怯えさせてしまいましたね。大丈夫。大丈夫ですよ」
「やだっ…!嫌だぁ……!」
「怖がらなくてもここには俺しかいません。安心してください」

安心?そんなもの、できるはずがない。
だって目の前にいるこの男は自分がこれまでずっと蔑んで馬鹿にしてきた弟なのだ。
自分を恨んでいないはずがない。憎んでいないはずがない。
そう────思うのに……。

「あ…ロキ…ロキぃ……」

気づけば自分から思い切り抱き着いて、その名を口にしてしまっていた。

「兄上…俺がわかりますか?」

以前の自分は知らない、耳に優しく響く穏やかで安心する声。
その言葉に不思議と安堵しながらこくりと頷くと、ロキはニコリと笑ってそっと抱き込み優しくキスをしてくれる。

「良かった。これからは俺が兄上を守るので────可愛く啼いてくださいね?」
「……え?あ、あぁあっ……!」

未だ奥に挿れられたままだった熱い凶器が奥を抉り、これでもかと侵略を開始する。

「あっ…!いやっ!いやぁっ!」
「誰に抱かれてるのかちゃんと認識して、そのまま俺のものになったんだと自覚してください」
「ひっ、ひぅうっ!!」

丁寧な言葉と卑猥な行為があの時の拷問官とリンクする。

「さあ、兄上…俺に抱かれて淫らに乱れて悶えてください」
「あぁっあぁっ!!ロキッ、ロキッ!!」
「ふふ…っ、そう、上手ですよ」

勝手に揺れる腰が止まらなくて、快感に目がくらむ。

「気持ちいっ…気持ちいいよぉ…っ!」

自分は確かに今、大嫌いな弟に快感を引き出され、抱かれているのだと泣きたくなった。
でも────あの時の拷問官の眼差しの奥はただただ冷たくて、俺を苦しめることにのみ終始していたように思うけど、今俺を抱くロキはそれとは全然違って、狂おしいほど熱を孕んだ目で『俺』を見つめていて……。

「ああ、いいですね。そのいつもとは違う怯えたような目。最高に可愛いですよ?兄上」
「あんっ!やっ…!気持ちいいっ!そこ、気持ちいいぃっ!」
「ふふ…このひと月ですっかり俺色に染まってしまいましたね」
「あぁっ!こんなの、違うぅッ!」
「何も違いませんよ?それに沢山の男達に組み敷かれるより、俺一人が相手の方がいいんでしょう?」
「やだっ…!嫌だぁっ!!」

弟に抱かれてよがるなんて嫌なはずだし、嫌悪感を抱いたとしても全くおかしくはないのに、どうして自分はこんなにも感じて悦んでいるのだろうか?
悪戯っぽく笑いながらどこか病んでるように俺を見つめるロキの姿にゾクゾクと身が震えてしまう。

「そろそろ出しますよ。ちゃんと、いつもみたいに『奥にマーキングして』って言ってくださいね?」

そんなこと言えないとまた泣きそうになったが、意外なことにその言葉は勝手に口から飛び出してしまった。

「あぁんっ!も、イッちゃう、イッちゃうぅっ!早くっ…奥にせーえき出して、マーキングしてぇっ!!」
「ははっ!いいですよ。たっぷり奥に出して、マーキングしてあげますからね」

そう言いながらロキは激しく腰を振って、くっと呻きながら俺の奥へと熱い飛沫を吐き出し、それと同時に俺もまた達してしまう。

「あぁあっ!イク────ッ!!」

ビクビクと同時に果てて、あまりの気持ち良さにロキを思い切り締め付けてしまう。

「あ…あぁあ……っっ」
「はぁ…っ、よかったですか?兄上…」

そう尋ねられてもすぐには答えられないほど快楽に呑まれてしまっていた。
身体が震えて気持ちよくて気持ちよくてたまらない。
どうしてだろう?こんなに酷い目にあわされているのに……心も体もロキを求めてやまない。
離れないで、もう少しこのままでいて欲しい…そんな考えが込み上げてきて混乱する。

そんな俺に再度ロキはちゅっちゅっと優しくキスを落として声を掛けてきた。

「最高に可愛かったですよ。後始末はしておくので、眠ってください」

お疲れさまでしたとそっとベッドを降りロキが俺の身を清め始めるが、飛んでぼんやりした思考はなかなか戻りそうにない。
そんな俺を見てロキがポツリと呟いた。

「はぁ…まだ一時的なものか。まだまだ先は長そうだ」

どうやらぼんやりしている様子を見て、まだ完全には正気に戻っていないのだと思ってしまったらしい。

「兄上…。我儘かもしれませんが……万が一にでも完全に回復してしまったら沢山恨み言を言って酷い事をしてしまいそうなので、できれば適度にこのままの可愛い兄上でいてください」

そんなどこか切ない声でそんなことを言ったかと思うと、ロキはまるで愛しい相手に愛を囁くように両頬へと手を添えて、これでもかというくらい愛おしげにキスをしてから部屋を出て行った。

(…………え?)

一体何がとパニックになってしまう。
ロキは自分のことが好きなのだろうか?
けれど恨み言を言って酷い事をしてしまいそうだとも言っていたし、やはり嫌っていると考えた方がいいのだろうか?

(暫く…様子を見た方がいいのか?)

自分の身に何が起こっているのか全く分からないからこそ途方に暮れる。
けれど昼よりもだいぶ意識ははっきりとしてきたし、記憶が飛んでいるところはおかしかったにしても、このままいけば正気になれる時間は増えていくだろう。

だから正気の時にちゃんと考えようと思い直し、今日はこのまま眠ることにする。
乱れに乱れたシーツはそのままだったけど、ロキが大きなタオルを下に敷いてくれたので冷たくはない。

「ロキ……」

嫌いなはずの弟の名を呼びながらそっと掛け布に包まり目を閉じるが、何故かその温もりが恋しくて、俺はなかなか眠ることができなかった。
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