【完結】予想外の異世界で俺は第二の人生を生きることになった

オレンジペコ

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65.好き…※

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さて、フィンのヤンデレは置いておいて、こちらは健全ですよ!
二人の恋の結末はこんな感じなのか~と生暖かく見て頂けると嬉しいです。
宜しくお願いしますm(_ _)m

────────────────

今日はもう夕食を食べたらゆっくり休もうと言って、解散になった。
王太子はこれまでずっと魔法が使えない牢に入っていたため随分汚れてしまっていたので、クリーンの魔法を掛けて送り出した。
今日は久しぶりの王宮料理人による夕餉を堪能してゆっくり休んでほしいものだ。
どう考えても俺の料理よりも豪華だしな。
そしていつものメンバーでオムライスを美味しく食べて労い合いながら無事に全てが終わったことに対して乾杯を行った。

「ヒロ!カッコよかったわよ!」
「ハイジもな。俺の予備の剣持たせて正解だったな」
「本当に。あの鳥、かなりしぶとくて…剣でガードしていなかったらあっさり吹き飛ばされていましたわ」

そんな風に仲良く話す二人。実はお似合いなんじゃないのか?
まあヒロは帰りたがってたからここでそんな無粋なことは言わないけど…。
そして色々各所の収拾を図ってくれたミルフィスにも感謝したいところだ。
恐らく明日からはまた大変になっていくことだろう。
回復魔法を掛けておいたけど、できれば今日くらいはゆっくりしてほしい。
それは勿論宰相にも言えることだけど……。

「宰相も、お疲れさまでした」

今日一番疲れただろうヴェルを労いながら笑顔でカチンとグラスを合わせると、なんだか申し訳なさそうな顔で謝られた。
本人曰く何もできなかったのが申し訳なかったとのこと。
でもそれは仕方がないと思う。
ジフリートの狙いがそもそもヴェルだったのだ。
言ってみればお姫様ポジションなんだから。いや、本人にはもちろん言わないけど…。

「今日はこの後ゆっくり休んでくださいね」

代わりに言えるのはこれくらいだろうと笑顔で伝えると、ヒロが横から茶々を入れてきた。
「サトル、お前今日はそのまま宰相の部屋に泊ってこい!」
「それは名案ですわ!添い寝して差し上げたらどうです?ヴェルガー様もお疲れですし、その方が喜びますわ!」
「……ハイジ?」
ヒロのは完全に冗談だとして、ハイジの言ってる添い寝は流石に違うんじゃないかと低い声で抗議を入れるとヒッと声を上げておとなしくオムライスを食べ始めた。
そんなに俺が怖いならいじらなければいいのに…。
と言うかハイジの方が強いのにどうしてこんなにビビられないとダメなんだ?
明らかにおかしいだろう。

そうやってわいわいと話していると、先に食べ終わったミルフィスが最初に席を外し、次いでヒロとハイジが頑張れよと言って去っていった。
何この気遣い…居た堪れないんだけど。
でも折角なので皆の好意に甘えさせてもらおうかなと思った。

「宰相…よかったら俺に部屋まで送らせてもらえませんか?」

疲れているだろうし、今日のところは手短に好きだとだけ伝えた方がいいだろうか?
こういうことは初めてだし、勝手がわからなくて緊張してしまう。
今言ってしまうと何となく気まずそうだから、部屋についてからでいいかな?
それで困った顔をされたらおやすみとだけ言って、明日朝一番でヒロに報告して帰還魔法で日本に帰してやった後、王宮を出ることを考えよう。
もし…ヴェルも俺の気持ちに応えてくれそうだったら、少しだけ時間を取ってもらって、話を聞いてもらってから付き合うか決めてもらおう。
とりあえずそうやって考えをまとめたところで、承諾してくれたヴェルを連れて食堂を出た。




「マナ…その…」
部屋まで送る道すがら、ヴェルがそんな風に言い難そうに切り出してきた。
「なんですか?」
けれどヴェルは中々本題を切り出そうとはしない。
何か不安なことでもあるんだろうか?
言おうとはしてるのに言えない…そんな感じだ。
別に急かす気はないので俺は気にしないけど。
そんな思考に自分でも驚き、こんなに心が穏やかなのは相手がヴェルだからだよなと思わず笑ってしまった。
「ふふっ…」
「マナ?」
不思議そうにするヴェルが可愛くて、つい人がいないのをいいことにそのまま壁際へと誘導してしまう。

「すみません。少しだけ…こうさせてください」

衝動というのはなかなか抑えられないものなんだということを初めて知った。
答えを聞く前にギュッと抱き込んで放したくなくなってしまったのだ。
部屋まで持たないって俺、どれだけヴェルのことが好きなんだろう?
こんな状況で振られたら暫く立ち直れないだろうな……。
そうしてヴェルの温もりを堪能していると、おずおずと背へと手を回されてヴェルの方から抱き返された。
「マナ…私の部屋で少し話して行かないか?」
「…………」
「その…な?私はトモやハイジのように強くはないし、情けない姿ばかりみせているからこんなことを言われても迷惑なのはわかっているんだが……」
どうやら俺が黙って動こうとしないからかヴェルはそのまま話すことに決めてしまったらしい。
本当に…こういう勝手に決めつけて先々に事を進めるところは最初から変わらないんだなとより一層愛しい気持ちが込み上げてきてしまう。

「私は…マナが好きだ」

知っていた…けど、イレギュラーな方法で知ったせいで自信がなかったその言葉が、確かな現実感を伴ってその口から切なげに紡がれる。
「マナに恋をしていると言ったら……迷惑だろうか?」
迷惑なんてあるはずがない。
それよりも、その言葉が本当に嬉しくて泣きたいほど心が震えた気がする。
「俺も…好き。ヴェルが……ヴェルだから好き」
情けなくなんてない。
「いつも頑張ってるヴェルが、俺は好きで…ヴェルとずっと一緒に居て離れたくないって思うくらい…どうしようもなく好き……」
そして自分でも思ってもないほどそんな言葉が口を突いて出た。
そうなんだ。
俺はヴェルがヴェルだから……いつだって好きだった──────。


***


二人でヴェルの部屋に行って、扉をくぐったところでどちらからともなく唇が合わさった。
吐息が熱くて酔いそうになる。
前にもキスは何度もしたのに、それとは全然違う口づけだった。
胸が締め付けられそうなほど切なくて、泣きたくなるほど嬉しくて感情が乱される。
「ヴェル……」
「マナ。お前に名を呼ばれるのが嬉しい」
そうして優しく笑ってくれるヴェルに強請るように何度も唇を重ねていく。
「ん…んぅ……」
どれくらいそうして口づけをしていたのかはわからないけれど、終わる頃には二人して熱の籠った目で相手を見つめていた。
「マナ…今日は…このまま泊まっていかないか?」
そんな言葉になんだか流されて、気づけば頷いている自分がいたんだけれど────。

はい。残念な俺が通りますよ!

折角いい雰囲気だったのに、結局できず仕舞いに終わってしまったんだ。
ヴェルは全然大丈夫だからと背をさすってくれたけど、本当に申し訳なさすぎて穴があったら入りたかった。
なんでもハイジが俺がヒロと寝てるとか吹き込んでたらしいんだが、俺誰とも寝たことないから!
勝手がわからないから!
そういう関係になるのは今度ちゃんと調べてからだな…。
俺…誘い方すらわからないんだけど。
リードとかしてもらえるのかな?
でもヴェルだしな…う~ん……俺が頑張るしかないな。多分。
まあそれはその時また改めて考えよう。

それは横に於いておいて、取り敢えず仕方がないから「初めてで下手くそなのは許してほしい」って言ってこの日は頑張って口で慰めてみた。
俺も男だから気持ちはわかるし、それくらいならできるかと思ったんだ。
だってやる気満々だったのにできないって……さすがに可哀想すぎる。
ヴェルって本当に不憫な状況になりがちだな。

そして…見る前は嫌悪感とかあるかなと思ったけど、ヴェルのだったら意外なことに全然大丈夫だった。
やっぱり好きな相手だと平気なものなのかな?

「んっ…ふぅ…んん…」

ピクンと震えるヴェルの分身が愛しくて、どうしたら気持ちよくなってくれるだろうと懸命に舌と口を使って奉仕する。
ヴェルの反応を見ながらする初めてのフェラは何故か俺まで気持ちよく感じられて、気づけば夢中になって舐めていた。
最後は飲まなくていいからと慌てられたけど、挿れさせてあげられなかったんだからこれくらいはさせて欲しい。
初めてのイキ顔は色気が凄くてたまらなかった。
綺麗なアイスブルーの髪がサラッと落ちてきたのまでがその艶に色を足すから、そっと掻き上げてそのまま引き寄せられるようにキスしてしまった。
本当に好き過ぎて困る。

「ヴェル……もう寝ようか」

ちょっと脱線したけどできないならもうおとなしく寝るのが一番だ。

「(くっ…また生殺しだ…)そうだな。寝ようか」

何か聞こえた気がするけどよく聞こえなかった。
まあ…多分『一方的にさせてしまって悪かった』的なそんな言葉だろう。
ヴェルは真面目だし。
俺は気にしてないんだけどな。
寧ろごちそうさまって感じだったから。

そうして俺は幸せな気持ちで大好きなヴェルに寄り添いながら目を閉じたのだった。

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