【完結】予想外の異世界で俺は第二の人生を生きることになった

オレンジペコ

文字の大きさ
上 下
12 / 71

11.油断大敵

しおりを挟む
召喚されてから5日────。
あれから俺は広い部屋へと変えてもらうことができた。
けれど相変わらずここに居る者達は本当に自分には冷たい者達ばかり。
宰相と勇者が気にかけてくれているし、ご飯も一緒に食べるぞと言われ一緒に取る様になったので当面の問題は解決したと思っていたのだが─────問題は昨日発生した。

夕飯時、突然目の前にステータスウィンドウのようなものが現れたのだ。
『なんだこれ?』と思ってそこに書かれた文字を目で追う。

【微量の毒物を検出しました。浄化しますか? YES/NO】

え?毒物の浄化?
そんなものYESに決まっている。
微量とは言え毒物は毒物だ。
場合によっては倒れるかもしれないし、そうでなくてもトイレとお友達になりそうで嫌だ。

「YESっと」

そしてそれを選んだ瞬間自分の中からふわりと何かが出ていった感覚があり、次いで目の前の皿が一瞬白く光ってすぐに元通りになった。

どうやらこれが浄化らしい。
よくわからないがさすが異世界。
もしやこれは召喚された者に対する独特のシステムなのだろうか?
親切な機能があるんだなと思いながらホッと息を吐いたのだが、それを見た勇者が目を見開いてこちらを凝視していることに気がついた。
「…?どうかしたのか?」
「……サトル。今何かやったのか?」
「え?ああ、食べようと思ったら変なステータスウィンドウみたいなのが目の前に出てきたから」
「…………なんて書いてあった?」
「へ?【微量の毒物を検出しました】ってあったけど?」
これ便利な機能だなと笑顔で言ったら、蒼白になってヒロは勢いよく立ち上がった。
「食べるな!」
「ええっ?!」
そうは言ってももう浄化しているし大丈夫なのだが、ヒロは最後まで聞かずに宰相を呼べと近くにいた自分の従者らしき者に言い放っていた。
それから暫くしてバタバタと宰相が慌てたようにやってきて場が騒然となる。
「マナ!」
蒼白になりながら飛んできた宰相がすぐさま自分の方へと近づいてきて大丈夫かと尋ねてきてくれる。
「いや、大丈夫ですよ?ちゃんと浄化したんで、もうあれは食べても問題ありませんから」
一応そう言ってみるが、宰相は心配そうだ。
「くそっ!誰がこんなことを!」
許せんとヒロの方もご立腹だ。
一口も食べてないから全然大丈夫なのに……。
「マナ。犯人が分かるまで暫く自分で料理を作れるか?食材は厨房でもらえるようにしておくから」
きっと以前自分で夜食を作ると宣言していたので宰相はそんな風に提案してくれたのだろう。
ついでに道具も借りれるよう厨房には言っておくからと言ってくれたので、素直に感謝は伝えておいた。
どういう意図があったのかは知らないが、毒を盛られるのはあまり気持ちのいいものではない。
犯人が単独なのか複数なのかわからないし、それなら自分で料理を作った方がずっと安心だろうと宰相の提案を有難く受けさせてもらうことにした。
ついでに何かあった時用に薬草園の薬草の使用許可ももぎ取っておいた。
大丈夫だとは思うが、先ほどのように警告がない場合の対策もちゃんと考えておいた方がいいだろうと思ってのことだ。

ちなみにうちの両親は過干渉な性格ではあったが共働きだったので一応料理は早い段階で覚えていた。
教えてくれた今は亡き祖母には感謝しかない。

『知っとかんと絶対苦労するからな。家事はきっちり一通り覚えて、早めに自立した方がええよ』

そうやって教えてくれる祖母に当時はどうしてそんな風に言われるのだろうと思わないでもなかったが、今ならよくわかる。
さっさと親から逃げられるだけのスキルを身につけろと言ってくれていたのだ。
その時の経験から一通り家事は覚えることができたし、家を出た後でその経験は随分生かされたと思う。
それがまさか異世界に来ても役立つことになるとは思ってもみなかったが…。
取り敢えず料理の基礎はわかっているから、きっと多少調味料等が変わっても何とかなることだろう。

(そうだな…。念のため一応後で図書室で料理の本も確認してみるか)

もしかしたらフグとかのように毒がある魚をこちらの無知をいいことに差し出してくる輩もいるかもしれないし、念には念をと頭を巡らせる。
まだまだこちらに来て日は浅いのだ。
用心しておくに越したことはない。

こうして自分の食べる分は自分で作ることになったので、それから俺は宰相の仕事の手伝いだけではなく、時間を見つけては図書室や薬草園など他の場所にも足を運ぶようになったのだった。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている

香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。 異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。 途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。 「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

処理中です...