【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

オレンジペコ

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【亡国からの刺客】

196.そして未来へ Side.アルフレッド&セドリック

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「トイレの窓?!あんなとこ、どうやっても入れないだろ?」

セドに抱き潰された翌日、レオナルド皇子とユーフェミア妃を見送った後、セドからあり得ない話を聞かされた。
なんでも賊の侵入ルートとしてトイレの窓が使われたというのだ。
どう考えてもあんな小窓からは入れる奴なんていないだろう。
そう思ったのに、セドの口からとある窓から侵入された形跡が見られたと聞いて驚いた。

「ま、マジか…」
「俺も驚いた。完全に盲点だったからな」
「でもよく判明したな」
「ああ」

そんな場所に気づいた者が凄い。
だから素直にそう口にしたのだけど、それに関してはレオナルド皇子のお手柄だったらしい。
まあもっと言えば姫の機転で判明したとも言えるかもしれない。

レオナルド皇子は今回の襲撃を受けてミラルカの警備が心配になって、ロキ陛下に連絡を取ってみたら思いがけず教えてもらえたのだとか。

(あの人、何でも知ってるな)

まあ別にあからさまに教えてくれたというより、そこくらいしか侵入口がない程度の言い方だったらしいけど。
ちなみにブルーグレイの最難関と比べ、ミラルカの警備は中の上だったらしい。
それで30か所以上侵入ルートがあるそうで、父王にも既に連絡済みとのこと。
大丈夫かな?
ちょっとミラルカの騎士としては心配だ。

「でもまあ良かったな」

これで警備は万全。
もう侵入されることもなくなるだろう。

「いや。新人が腑抜けていることは判明したからな。しっかり教育を施すように指示を出した。ついでに闇医者の無許可剣持ち込みを受けてマジックバッグについても警戒するよう周知しておいた」
「は?無許可で剣持ち込み?メスとかじゃなくて?」

医者なら剣じゃなくてメスだろうと思って首を傾げたら、闇医者が持ち込んだのは俺の剣だったと判明。
それくらい許可を取ったらよかったのに。

(俺の剣なんだし、絶対すぐに許可が下りたと思うけどな)

そう思ったけど、もしかしてさり気なく警備の穴を教えてくれたのかなという思いが頭を過った。
だって今回はセドの許可を得た上でここに来ていた闇医者だったから問題なかったけど、それこそトイレの窓から侵入した賊がその辺を何食わぬ顔で自由に歩き回っていて、そこからすれ違いざまに不意打ちのように武器を取り出して襲ってくることだって考えられた。

(……ヤバいな)

気づけば危険極まりないじゃないか。
巧みな暗殺者は極自然に殺しに来るって聞いたことがあるし、殺気がなかったらきっと自分でも刺されてると思う。
気をつけよう。

「はぁ…。やっぱロキ陛下の一派って味方の方が有難いな」
「そうだな。今回シグマもあっと言う間に潰してくれたしな」
「……そっか」

なんだか複雑だけど、しょうがない。
できるだけ関わらなかったらいいんだよな?
持ちつ持たれつ。必要な時だけ接点を持つ。
きっとそれが一番いいんだろう。

「一応礼でも伝えておくか」

だからそう言ったセドに後は任せて俺は退散しよう。

「あ、そうだ。レオナルド皇子がロキ陛下が側室を迎えたとかなんとか言ってたから、もし本当だったらおめでとうって言っておいてくれないか?」
「側室を?」
「ああ。なんでもカリン陛下の子供でも欲しくなったんじゃないかって」
「…………あり得なくはなさそうだな。聞いておこう」

そして俺はグッと伸びをして姫の元へと向かう。
今日は快晴!鍛錬日和だ。
大事な剣も返してもらえたことだし、今日は沢山剣を振ろう。


***


【Side.セドリック】

ずっとわからなかった賊の侵入ルートが明らかになった。
だがそれは今回の賊の侵入ルートではない。
俺にルカ襲撃の件を伝えに来たデルタの男の侵入ルートだ。

侵入者達と同じ新人の穴を突いたルートからと本人は言っていたが、絶対に嘘だろう。
恐らく本当はここからだ。

レオナルド皇子がロキから聞き出し、姫がそれを聞き父へと連絡を入れ対策を取ったと聞いた。
これは誰もが気づかなかった侵入ルートだ。
けれど小窓の外にはいい具合に足を掛けられる取っ掛かりがあり、気づけばここしかないと言い切れるほどの説得力が確かにあったのだ。
気づかなかった自身が腹立たしい。
もっとこれからは先入観をなくしていかねば。

そう思いながらロキへと連絡を取り、今回の件の礼を言った後アルフレッドが言っていた側室の件を尋ねると『耳が早いですね』と言われた。
どうやら本当だったらしいが、本人曰くストーカーらしい。

『兄上に目移りしないところだけはいいんですけど、鬱陶しいのでほぼ無視してます』
「酷いな」
『兄上の癒しというだけで腹立たしいのに、全く非のないリヒターまで責めてきて俺の癒しを奪いにきたんですよ?そんな人、無視で十分です』
「そうか」

どうやら側室の女はロキの地雷をこれでもかと踏みぬいたらしい。
ロキの怒りは相当だ。
聞く限りいつ離縁してもおかしくはなさそうな状況だし、これは無理だろう。

(子ができたらルカの嫁候補に加えてもいいかと思ったが…)

仕方がない。
やはりここはトルセンの娘が最有力候補ということにしておこうか。
そう考えを纏め適当に話を切り上げ通話を切った。

「後はレオナルド皇子に娘が生まれたら考えるか」

自分の時の二の舞にならないように予め候補だけは考えておきたい。
周辺諸国にも当然目を向けるつもりではあるが、間違って母のような女が嫁に来ても困る。
ルカのためというよりも、自分のために相手はある程度厳選したいところだ。

(まあ、自分でまともな相手を見つけてくれるのが一番いいんだがな)

そう思いながら珍しくルカのことを考えたのだが、まさかそのルカが成長したところでアルフレッドに目をつけてくるなんてこの時は思いもよらなかった。

そしてこの数年後、腹立たしいことに俺は息子とアルフレッドを取り合うこととなり、それはルカが20才になるまで続くこととなる。

「アルフレッド!今日は母上の護衛は休み?それなら手合わせしてほしいんだ!だいぶ上達したからアドバイスが欲しくて」
「いいですよ?すぐに鍛錬場に行きますか?」
「やった!」

実にあざとい。
アルフレッドもそんな下心が見え見えの言葉にあっさり乗るな!
剣なら俺との手合わせ優先だ!

「アル。そんな下手くそと手合わせなんてする必要はない。俺が好きなだけ相手をしてやるからそちらはオーガストに任せろ」
「え?!」
「それとも俺では不服か?」
「そんなことない!ちょうど思い切り打ち合いたい気分だったんだ!」
「そうか。なら一緒に行こう」
「父上!邪魔をしないでください!俺との約束が先です!」
「知らんな。お前はオーガストに相手してもらえ」
「~~~~~~っ!!」

そうして火花を飛ばす日々は────もうそう遠くない未来と言えるだろう。



Fin.

****************

※これで無事に閑話4や閑話14に繋げられたかなと思います。
ちなみに上記最後のルカは大体14、15歳くらいを想定して書いてます。
子供から大人へ成長する『僕』から『俺』への転換期イメージです。

子供世代の番外編など思いついたら書くかもしれませんが、本編としてはここで完結するのが一番キリがいいかなと思ってます。
お付き合いいただいた皆様、ありがとうございました(´∀`*)


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※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
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