【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

オレンジペコ

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【亡国からの刺客】

184.情報入手 Side.セドリック

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※裏組織の者とのファーストコンタクトは『121.ガヴァムからの来客④』をご参考ください。

****************

ルカの襲撃を受け調査させたところ、どうやらロロイアは関係がなさそうだということが判明した。
あちらの王宮に特に動きはないそうだ。
そして同時進行で暗部に依頼を出させた裏組織から今日連絡が入った。
情報が集まった────と。
そのため自らの足でデルタのアジトへと向かう。

以前来た時と変わらぬ一見ただの店にしか見えない佇まい。
その店に入ってすぐカウンターへと足を向け合言葉を伝えると、あっさりと奥へと案内されハウルと接触することができた。

「ご無沙汰しています。セドリック王子」
「情報が集まったと聞いたが本当だろうな?」
「ええ。もちろん」

そう言いながらスッと紙の束を差し出し、『情報料はご覧になってからで結構です』と言われる。
それを受け早速その書類へと目を通すと、そこには滅ぼしたはずの国────ヒルデガーシュの名が書かれていて驚いた。

「これは確かなのか?」
「ええ、もちろん」

ブルーグレイには現在5つの裏稼業グループがあるが、そのうちここデルタグループが親しくしているのがラムダとオミクロン。
そしてロキが来た際に制圧されて、その後ガヴァム派に鞍替えしたのがエプシロン。
残っているあと一つがシグマだ。

今回襲撃を企てた者が最初に接触したのはエプシロンだったらしい。
だがエプシロンは一度俺の怒りを買っているのもあり、内容を聞いて他のグループをその男に紹介したそうだ。
ただラムダは元々敵対していたエプシロンからの紹介なんて受けたくないと突っぱね、内容も聞かずオミクロンに押し付けた。
けれどオミクロンの方も内容を聞いて『これはヤバいぞ』と考え、シグマに行くよう仕向けたそうだ。

「うちに話が来なかったのはうちがガヴァムと特別懇意にしているのが分かっていたからですね」

俺とロキが親しいのは裏でも有名だから、わざわざその俺の息子を暗殺する依頼を持ち込まなかったというのがあるらしい。
依頼するだけ無駄だとすぐにわかるからだろう。

「シグマは他のところより腕は劣りますが、頭はそこそこ働きますし、金さえ受け取れれば割と何でも引き受けますからね。今回の話も金額を釣り上げた上で引き受けたんでしょう」

とは言えそれだけなら相手の身元も何もわからなかったはず。
どうやって判断したのか?
それが聞きたかった。

「何故その依頼者がヒルデガーシュの者だと?」
「簡単ですよ。受ける方だってある程度相手の身元を把握したいものなんです。だから打ち合わせと称して会い、毎回別れ際に声を掛けていたそうです」

きな臭い国の別れの挨拶。
その中で一つだけ反応があったとのこと。

「『闇夜の女神が貴方に微笑みますように』────こう言ったら笑って『女神の口づけを賜りますように』と返したそうですよ」

そこから各所に人をやり、ハウルは情報を集めに集めた。

ヒルデガーシュが滅びて数年。
細々と生活して生き延びたにしてはシグマに大金を払い過ぎている。
その資金源はどこだと考え、まずはここ半年で殺された、もしくは事故死した商人がいないかの情報を集めた。
そしてそこから奪われた金品を辿り、相手を特定。
その相手が今回の依頼主と同一人物なのかどうかも確認し、それについて確信が得られたのでこうして報告書にまとめたのだとハウルは言う。
それだけの情報を数日でかき集めたのは流石だと言えるだろう。

「もし不明点があればなんでもどうぞ」
「…………この男の所在地は?」
「裏に三本入った通りのそこそこ大きなアパートです。あそこは穴場でね。後ろ暗い者にはもってこいの場所なんですよ」
「ほぉ?」
「ああ、派手に乗り込んだりはなさらないでくださいね?他の住人に警戒されますし」
「なるほど。捕まえたいならこっそり捕縛しに行くか、おびき寄せてから捕まえろということか」
「ええ。本人が騒ぎでも起こせば別ですが、そうでないなら敢えて騒々しく騎士達に踏み込んで欲しくはない場所です」

裏には裏の流儀があるのですよとハウルは言うが、その目は全く笑っていない。
ここで土足で踏み荒らすようなことがあれば二度と協力しないぞと言わんばかりの態度だった。
他の相手であればそんなもの知ったことかと動くのだが、如何せん相手が相手だ。
ロキとも繋がりがある相手だけに、今後を考えると使えるという点で仲良くしておくに越したことはない相手でもある。
けれどあっさり素直に譲歩するのも癪だ。
そして暫し睨み合うように視線を交わしていたところで、扉をノックする音が聞こえた。

「来客中だぞ?」
「はい。ですがセドリック王子がいるならちょうどよいと闇医者が…」

どうやら思いがけない相手が俺に会いにやってきたらしい。

「…入ってもらえ」

ハウルがそう言うや否や、見知った顔が入室してきた。

「ハウル。歓談を邪魔してすまない。こちらに来たついでに挨拶をと思ったらセドリック王子が来ていると聞いてな」
「ハハッ。そこで避けようとしないところが実にお前らしいな」

ハウルが顔を輝かせて闇医者を歓迎する。

「セドリック王子。ご無沙汰しております」
「ああ。久しぶりだ。元気そうだな?」
「ええ。たまたま薬の仕入れに来たらセドリック王子が来ていると聞いたのでご挨拶をと」
「そうか」

(薬の仕入れ?よく言う)

ガヴァムからならどう考えてもロロイアの方が近い。
何か目的があってブルーグレイまで来ていたのだろうに。
そう考える俺に闇医者が読めない笑みで話しかけてくる。

「疑わしそうですね?」
「当然だろう?」
「まあそうでしょうね。正直に言うとただの視察ですよ。裏のね」

なるほど。
それならまだわからなくはない。

「ついでに引き抜きと、活動資金を増やしに来たってのもあるだろう?」

ハウルがそう言うと、あっさり『その通り』とも白状したから単に裏関係で動いていただけのようだ。

「そう言えばセドリック王子。アルフレッド妃殿下の毒耐性薬はどうされるか決められましたか?」

徐に思い出したように聞かれ、そう言えばユーツヴァルトのせいですっかり有耶無耶になっていたと思い出す。
ルカの暗殺未遂もあったことだし、万が一を考えると早めに手は打っておきたい。

「頼めるか?」
「いつがよろしいですか?」
「できるだけ早くがいい」
「わかりました。ではまた連絡をください。なんなら今夜でもできますので」
「それなら今夜城へ来い。アルフレッドは俺が説得しておく」

そして俺は金貨の袋をテーブルへと置くと、書類を手に出口へと向かう。

「ハウル。世話になったな。また頼む」
「縁がありましたら、また是非に」

笑顔で見送るハウルに『食えない奴だ』と思いながら俺はその場を後にしたのだが────。

「アルフレッドが…?」

城に帰ってすぐ、俺は思いがけないことを聞かされ、怒りのままに再度城を飛び出す羽目になったのだった。


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※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
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