【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

オレンジペコ

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【亡国からの刺客】

182.来客

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姫はまずルカ殿下の無事を確認しホッと息を吐いた後腰を落ち着け、茶の準備を侍女へと頼んでから俺からの報告へと耳を傾けた。
その上で溜息を一つ落とす。

「なるほど。確かに筆頭騎士長としては油断した形ね」
「申し訳ありません」
「その潔さは貴方の美徳でもあるわ。でもね?その前に側妃として正妃である私の指示で動いてくれていたのよね?」
「それは…」
「不慣れな仕事を一生懸命していて筆頭騎士長の仕事が多少おろそかになったというのであれば、そこは責められるべきではないと思うの」
「でも…っ」
「現にルカの周囲は別に警備が手薄だったわけではないのよね?」
「そこはしっかり護衛騎士は配置していましたし、侍女達も沢山側についてはいましたけど…」
「なら十分貴方は筆頭騎士長の役割も果たしてくれていたということでしょう?手薄にしていたわけじゃなく、単に貴方個人が側に居られなかっただけじゃないの」
「それでも危機感は持っておくべきでした」
「そうね。『王子暗殺』という話が来た時点で以前の貴方なら気づいていたとは思うわ。でもね?それって、セドリック王子のことを信頼しているからこそそこは任せようって思ってしまったのよね?」
「…………」

そうかもしれない。
でもそんなこと、ただの言い訳だ。
以前の自分なら絶対にそんな油断はしなかったと自分で自分に腹が立つ。
なのに姫はそんな俺にこう言うのだ。

「別に以前の貴方に戻れと言う気はないわ」
「でもっ…!」
「私は良い傾向だと思うのよ。あんなにセドリック王子を嫌っていた貴方がすっかりラブラブになって、頼れるようになったっていうのはね」
「姫…」
「でもまあ、それで問題が起こったのは確かに良い状況とは言えないわ。だから、そうね。今回の件で一応罰を課すわ」

そして姫は俺に三か月の減給と、反省文と改善案の提出を求めた。

「アルフレッド。大事なのは報連相よ。そこを踏まえた上でよく考えて書いて提出なさい。提出するまでは謹慎期間とします」
「ありがとうございます」

寛大な姫の言葉に知らず頭が下がる。
俺は改めて忠誠を誓い直して自室へと戻るため踵を返した。

(やっぱりブルーグレイ側との連携をもっと視野に入れて考えるべきだよな)

そして『その辺りのことを分け過ぎていたのだ』と姫に提出する改善案について考え始めたところで、俺の背に姫から思い出したように声が掛けられた。

「あ、アルフレッド。筆頭騎士長の貴方へのお説教は終わったけど、側妃の貴方のお仕事も忘れないで頂戴ね?」
「え?」
「取り敢えずこれから反省文を書く時間は取るけれど、晩餐は必ず同席してもらうわよ?お兄様とユーフェミア様のおもてなしがあるから」
「そちらは姫がいれば問題ないのでは?」

必ずしも俺が同席する必要はないのではと思いそう尋ねると、何故か『とんでもない!』とばかりに声を上げられた。

「貴方がいないとセドリック王子が怖いじゃない!」

さも当然のように言い放たれる言葉。

「つまり、俺に防波堤になれと…?」
「そうよ!お願いね。アルフレッド」

断らないわよねとニコッとお願いしてくる姫に俺は当然逆らう気はない。
あそこまで寛大な処置を取ってくれたのだし、ここはセドの防波堤にでも何でもなろう。

「わかりました。ではまた晩餐の席で」
「ええ。頼りにしてるわ」

そして俺は今度こそ自室へと向かい、部屋で反省文と考えられるだけの改善案を書き出し、二度とこんなことが起こらないようにと気を引き締め直したのだった。


***


「アルフレッド!久しぶり!」

晩餐の席ではレオナルド皇子が元気にそう声を掛けてくれる。

「レオナルド皇子。ご無沙汰しております」
「今日はアルメリアの護衛騎士じゃなく側妃として同席しているんだし、気楽にしてくれ」
「はい。ユーフェミア妃もお元気そうで安心しました。この度はご結婚おめでとうございます」

そう寿ぎを口にすると二人は照れたようにお礼を言ってきた。
どうやら夫婦仲は良好のようだ。

「今回は新婚旅行を兼ねてブルーグレイに来たんだ」

どうやら道中でヴィンセント陛下からもあちこちお勧めの場所を聞いたらしく、観光なんかを楽しみにしているとか。

「三日間は城にいるけど、それ以降は観光しつつ各地を転々とする予定だからよろしく」

どうやらそれもあって姫は俺をこの席に着かせたかった様子。
タイミングを逃したら俺がセドに抱き潰されて、三日なんてあっという間に過ぎてしまうと思ったのかもしれない。

そこからは和やかに話しながら二人の馴れ初め話なども聞かせてもらった。
とは言え当然セドは全く興味なんてありませんと言った様子で聞き流している。
ロキ陛下が来た時とは雲泥の差だ。

(少しは興味を持てよ…!)

こういうところがセドの悪いところだよな。
もてなしの心がなさすぎる。
もうちょっと姫を見習ってくれればいいのに。
そう思っていたら、珍しくセドが話の切れ間に姫へと声を掛けた。

「姫」
「ひゃっ、ひゃいっ?!」

突然の珍事に姫が飛び上がって声をひっくり返す。
それくらい驚いたんだろう。
もしかしてこういうのを気にして話に入らなかったとか?

(う~ん。あり得る)

そんなことを考えている俺の隣で、姫が真っ青になりながら恐る恐るセドの方へ視線を向ける。

「な、なんでしょう?セドリック王子」
「この後の予定は何かあるか?」
「い、いいえ。この後は旅の疲れを取るためにも早めに休んでもらおうかと」
「そうか。なら俺もアルフレッドと早めに休んで問題はないな」
「…!もちろんです!」

その答えに満足げに笑い、セドがこちらへと目を向けてきた。

「アルフレッド。お前もここ数日慣れないことをして疲れただろう?姫も帰ってきたことだし、些事は任せてゆっくり休め」
「……え?」

その言葉に俺は思い切り目が泳いだ。
この言葉だけなら素直に聞けたと思うけど、その前のセリフから考えるに、二人で部屋に籠りに行くぞと言われたようなものだ。
流石に不始末の後にこれはないだろうと思い、なんとか逃げようとするがそんなに簡単には逃がしてもらえない。

「あ~…その、俺は今騎士として責任を取らないといけない立場だし、本当なら謹慎しておくぐらいの罰則を受けてもおかしくない状況だから…」
「ほぉ?」

どこか楽し気にしながらセドが笑う。

「姫。アルフレッドはこう言っているが?」
「え?あ、全然大丈夫ですわ!そもそも側妃としての立場があるでしょう?何も問題はありません」
「アル。姫はこう言っているが?」
「そっ、それとこれとは別だから!俺なりの姫に対する誠意だから!」
「そうか。あくまでも騎士としての責任を取りたいと?」
「そうだ!」

そう言った途端また楽し気に笑われた。

「ククッ。姫。では息子を窮地に陥らせた咎で姫の騎士を手ずから躾けたい。構わないな?」
「げっ?!」
「……仕方ありませんね。許可しますわ。アルフレッドも私の言い渡した減給や反省文等では納得がいかなかったのでしょう。どうぞ本人が納得いくまで反省できるよう、お好きなように躾けてやってください」
「ひ、姫っ!」

それはあんまりだと思いながら姫の方を見ると、諦めろと言わんばかりの目を向けられた。
仕方がないとはわかっていても流石に酷い。

そして俺は食事が終わると共にセドに連行されて、部屋でお仕置きと言う名のよくわからないプレイを強要されたのだった。


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※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
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