【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

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【シャイナー陛下の婚礼】

178.従兄弟の結婚式⑩ Side.アルフレッド&セドリック

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ユーツヴァルトの件はショックだったけど、俺達は翌日、取り敢えずブルーグレイに帰ることになった。
シャイナー陛下からは、ユーツヴァルトと知り合いではあっても俺達が今回のロキ陛下への毒殺にかかわったとはもう考えていないからと特に帰国を渋られることもなく、そのまま見送ってもらえた。
下手に長々と足止めされなくて良かったと思う。

「セド。ロキ陛下に何かお詫びの品でも送った方がいいのかな?」

ワイバーンで飛び立った後、なんとなく後ろめたくてそう言ったら、セドからは『逆にロキから物が送られてくるんじゃないか?』と返された。
関係のない俺達を巻き込んでしまったと思ったら何かしら送ってきそうだと。
確かにありそうな話ではある。

「悪いと思うなら、送られてくるものを素直に受け取って使ってやればいい」
「え……変なもの送ってこないよな?」
「さあな。あいつの用意する物は全く読めないから俺にはわからん」

そう言えば俺が喜ぶ短剣や剣の手入れセットもあれば、抱き枕とかいたずらし易い夜着とかそんなものまであった。
前者なら喜んで使うけど、後者は遠慮したい。
そんな風にドキドキしながら何が送られてくるのか待つくらいなら、何か俺の方で良さそうなものを選んで贈ろう。
その方が精神的に楽だ。
やっぱりここはカリン陛下と一緒に使える物前提かな?
え、SM的な?

「縄…とか?」

だからそう口にしたのに、セドは何を勘違いしたのか俺に『縄で縛られたかったのか?』と聞いてきた。

「違う!」
「緊縛プレイは嫌いだと思っていたが……帰ったらやってみるか?」
「絶対断る!俺はロキ陛下に贈る物を考えてただけで、お前とそんな変態プレイをしたくて言ったんじゃないから!」
「そんなに必死に誤魔化さなくてもいいだろう?」

絶対誤解してる!
もしくはこれにかこつけて俺を揶揄って遊んでる!
そう思ったから威嚇するように睨みつけてやった。
でもセドはそんな俺の威嚇もなんのその。どこ吹く風とばかりに受け流してしまう。

「そうだな。ロキに贈る物を選定するのに俺も手を貸してやろう。俺が手伝ってやるし、お前が実際に色々試してから決めたらどうだ?」
「へ?!」
「その方が手紙も書きやすいだろう?」
「いやいやいや?!絶対無理!」

セドがそれで俺に何をする気なのかわからなくて必死になって遠慮する。
なのにセドは悪趣味にもそんな俺の様子を楽しんでいて、更に揶揄ってきた。

「ククッ。どんなものを想像したんだ?後ろに突っ込まれるディルドか?それとも道具ではなく縛り上げられる自分か?」
「やめろよ!お前、本当に最悪だ!」

真っ赤になってそう言うけど、セドの口は止まらない。

「帰ったらすぐ商人を呼んで一緒に選ぶとしようか。お前が何を選ぶのか今から楽しみだ」
「~~~~っ!!い、いらない!えっと、その、ぶ、無難なものにするから!」
「お前的には詫びの気持ちから贈りたいのだろう?そんな適当なものでいいのか?」
「うっ…そ、それは…」

そう言われてしまうと非常に弱い。

(でもこのままセドに好きなように弄ばれるのも嫌だ!)

でも夜の物以外でロキ陛下が好きなものって言うと後は魔道具くらいしか思いつかないし、それこそそっちはセドの方が詳しい。
俺にはちんぷんかんぷんだ。

(困った……。ロキ陛下が好きなもの…好きなもの……)

一番はカリン陛下で、二番は夜の道具で、三番は魔道具で……。

(ん?待てよ?それってカリン陛下が喜ぶものを贈ればいいだけなんじゃ…)

「閃いた!!」
「何だ突然」
「そうだよ、カリン陛下だよ!カリン陛下はロキ陛下と違って剣が好きだし、カリン陛下好みの剣でも贈ろう!訓練法もついでに紙に書いて送ったら喜ばれると思うし、一石二鳥だ!」

名案だと俺は思ったんだけど、それを聞いたセドが何故か不機嫌になってしまう。

「何故お前がカリンの好みを把握している?」
「え?前にブルーグレイに来た時に一緒に剣の訓練をしただろ?あの時にレオナルド皇子と一緒に好みの剣の話で盛り上がったんだ」
「…………許せんな」
「へ?」
「アルフレッド。剣なんて贈る必要はない。俺が吟味した鞭を贈ろう」
「は?」
「ロキの武器は鞭だからな。そちらの方が喜ばれる」
「…え?」
「ついでに俺が吟味した拷問具も添えて送ってやったら問題ないだろう」
「はぁ?!」
「カリンはドMだからな。きっと剣よりも喜んでもらえるぞ?」
「え?でも今確か拷問具とか…」
「ロキの好みは俺が把握しているからな。全部任せておけ」
「いやいやいや?!俺が贈るって!」
「俺が贈る」
「俺だ!」
「俺だ」

そんな言い合いをしながら俺達はブルーグレイ方面に飛んでいたんだけど、途中でふと思い立ってユーツヴァルトが追い込まれた森を見に行きたくなった。

「セド!贈り物の件は譲るから、森の方に行ってもいいか?」
「ダメだ」
「どうして?!」
「森は今アンシャンテの連中がユーツヴァルトを血眼になって探しているはずだ。下手に近づいて邪魔になったらいけないだろう?」
「う…それはそうだけど…」

それでも気になるのは気になるのだから仕方がない。

「ダメ…か?」
「…………」

セドは俺の嘆願に悩んでいるようだった。
そして最終的に『メルケ国の現状把握をする名目で街に降りよう』と言ってくれた。
アンシャンテ側にいたら邪魔になるから、メルケ側にいればいいと苦肉の策を取ってくれたらしい。
運良くユーツヴァルトが森を抜けてメルケ国まで来れていれば情報も入るだろうと。
正直有り難い。
三日ほどしか滞在しないぞと言われたけど十分だ。
心の整理をするのにちょうどいい。
そう思いながら俺はセドに心から感謝したのだった。


***


【Side.セドリック】

逃げたユーツヴァルトが気になるというアルフレッド。
だがここで見つけて保護するという選択肢は俺には一切ない。
寧ろ見つけたらアルフレッドにばれないように処分する一択と言っていいだろう。
百害あって一利なしの相手を生かしておくほど俺は甘くはない。

(まあどうせ森の捜索をしているアンシャンテ側が見つける可能性が高いだろうがな)

そうなればシャイナーが即処分することだろう。
けれど思いがけない脱獄のように、何事にも万が一ということはある。
逃げ切られる可能性もゼロではない。

そう考えながら、メルケ国に滞在という形ならアルフレッドの希望に添えるなとふと思った。
ロロイア国に行った際にメルケ国とネブリス国の話を聞いたが、折角近くまで来ているのだから実際に自分の目でどうなっているのか確認しても面白いと思ったのだ。
だからアルフレッドに『メルケ国の現状把握をする名目で街に降りよう』と言ったに過ぎない。
そうでなければ森上空を一回りしただけでブルーグレイに帰っていただろう。
もっともらしい理由を口にしたらアルフレッドは感謝してくれたし、俺としても好都合だ。
取り敢えず三日もあれば情報は色々集まるだろう。
そう思いながら街へと降りた。




それから暗部を放ち、情報収集に勤しむ。
ネブリス国はやはりメルケ国に取り込まれたようだが、メルケ国の民の間には思った以上に焦燥が漂っていた。
普通諍いに勝った方ならもっと皆の顔が誇りに輝いていそうなものだが、それが一切ないのが非常に気になる。
まるでお先真っ暗と言わんばかりだ。

『ああ…王位が簒奪されてしまってから散々だ』
『宰相がガヴァムの王に喧嘩を売ったせいで物資が全然入ってこない。俺達はいつまで耐えればいいんだ…』
『このまま生活が改善されなければ俺達はもう終わりだ。今の王が何をしてくれた?何もしてくれないじゃないか』
『いっそ難民としてアンシャンテかガヴァムに縋りたい』

ひそひそと話される内容は悲壮に満ちている。
王位が簒奪というのは前王が殺されたという話だろう。
確か冷遇されていた王の従兄弟が新しい王になったと聞いた。
ロキに喧嘩を売ったというのは初耳だが、それで物資が入ってこないというのもおかしな話だ。
あいつは他の国なんてどうでもいいと思っていそうだし、基本的に面倒くさがり屋で放置プレイが大好物だ。
ただの被害妄想ではないだろうか?
もしくは裏の連中でも怒らせて物流を止められたか?
その場合は恐らく自業自得だろう。
対策を取るのはトップだから文句を言うなら新王にだろうにと、民度の低さに呆れてしまう。

(これは…この国を立て直すのはかなり大変そうだな)

そんなことを考えながら滞在二日目の朝、宿でアルフレッドと食事をとっていると、情報収集に向かわせていた暗部がやってきた為『少し席を外す』と声を掛け外に出た。

「セドリック様。王宮に潜り込ませた者から連絡が入りました。先日メルケ国の王子が森で狩猟中、倒れたユーツヴァルトを発見し保護したようだと」
「…なんだと?」
「ユーツヴァルトの身柄は現在メルケ国王城内の一室にあり、王子が手厚く看病しているとのことです」

まさかアンシャンテの追っ手に見つかることなく、メルケの王族に保護されていたとは…。

(運のいい奴だ)

けれどだからと言って知ったからには見逃す理由はない。

「シャイナーはこの件を把握しているのか?」
「どうでしょう?森の捜索が終わったという情報は来ていませんし、まだ把握できていないのでは?」
「そうか」

知らせてやる義理はないが、さてどうしたものか。

「一日だけ様子を見る。それで動きがなければこちらで手を打とう」
「かしこまりました」

そうして一日だけ待ち報告を待っていると、アンシャンテが動いたとの報告が届いた。
どうやらこちらからの情報がなくとも情報の把握がちゃんとできたのか、メルケ国に対して正式にユーツヴァルトの身柄引き渡しを要求したらしい。

「それで?メルケ側はどう出た?」
「はい。それが『該当する人物はいない』と返答したようです」
「該当人物がいない?」
「はい。恐らく王子が自ら懸命に看護しているため、可哀想に思ってそう返答したのかと」
「…その王子はいくつだ?」
「まだ12才かそこらだと思われます」
「なるほど?」

新王は幼い息子が助けた相手を保護する方が大事と判断したのか。
甘いな。

「まあいい。それならそれでいくらでも手はある」

シャイナーが手をこまねくならこちらで手を下してやろう。

「ロキもなんだかんだと甘いからな。俺が正しい始末の仕方を教えてやるとしようか」

暗殺とは何もあからさまに行うばかりではない。
寧ろ疑いの目が向かぬよう密やかに行われることの方が多いのだ。

「ユーツヴァルトは毒を所持していたな」
「はっ」
「そのうちの一つを用いて自害に見せかけ殺せ」
「かしこまりました」
「一人は王子の傍にとどまり、美談に仕立て上げろ。それで全ての片がつく」
「御意」

幼い王子の逆恨みがアンシャンテにもガヴァムにも向かないようにするには、ユーツヴァルト自身による自害に見せかけるのが最も有効だ。
加えて美談に持ち込むことで万が一ユーツヴァルトの死がアルフレッドの耳に届いたとしても少々の悲しみで済むし、こちらに非難が向くこともない。

「さて。後は待つだけだな」

そうして俺はフッと笑いながらアルフレッドの元へと戻ったのだった。


****************

※次回エピローグになります。
宜しくお願いしますm(_ _)m


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※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
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