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【シャイナー陛下の婚礼】
175.従兄弟の結婚式⑦ Side.セドリック
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満足な気持ちでしっかり眠った翌朝、アルフレッドから一通の手紙を受け取った。
なんでも昨夜遅い時間に至急ということで、シャイナーから手紙が届けられたらしい。
只事ではない様子にアルフレッドはその場で手紙を持ってきた者に尋ねたらしいが、重大な話だから詳細は翌日直接話すと言われたとか。
それほど重大なこととはなんだろう?
幸い熱は一晩で下がったし、話を聞くのは別に問題はないのだが、気になるのは気になる。
だからすぐさまその場で手紙を開封することに。
「…………」
俺はその内容を読んで眉を顰めた。
ある意味想定の範囲内の話ではあったからだ。
思い出されるのは昨日の去り際のロキの様子。
フラフラと具合が悪そうだったあれが、まさか毒によるものだったとはあの時は思いもしなかった。
手紙には『アルフレッドの知り合いがロキ暗殺に関わっている疑いが濃厚なため、話をさせてほしい』と書かれてある。
未遂に終わったとは言え、シャイナーからすれば黙ってはいられない事件というわけだ。
これは慎重にいかないとこちらが火の粉を被る事態になりかねない。
「アルフレッド」
「なんだった?!」
俺が手紙を読む間ずっとそわそわしていたアルフレッドに声を掛けると、待ってましたと言わんばかりに食いついてくる。
「ロキが昨夜毒を盛られて寝込んだらしい」
「え?!なんでそれでセドに話が来るんだよ?!」
『仲が良いのはシャイナー陛下も知ってるだろ?!』とアルフレッドは言うが、そういう問題ではない。
「嫌疑がかかっているのは俺じゃない。お前の知り合いだ」
「……え?」
「ユーツヴァルトが関わっていると言っている」
「は……?」
全く想定外の事を言われたと言った様子で、アルフレッドが物の見事に固まってしまう。
「あいつはロロイアでもロキによく眠れる薬だと言って毒を手渡していたらしいし、まず間違いないだろう」
「え?は?ちょ、ちょっと待て。あ、あいつはそんな奴じゃ…っ」
必死に庇おうとするアルフレッドには悪いが、シャイナーがこう言ってきたからには逃げ道など存在しない。
ロキが許してもきっとあいつならサクッと始末するはずだ。
まああいつがしなくても俺が手を下すが。
(これから先、何度も巻き込まれるのは迷惑以外の何ものでもないからな)
毒耐性がしっかりついていたから助かっただけで、本来ならロキは死んでいたはずだ。
そして助かったということは、また狙われるということに他ならない。
だからこそここで情をかけるわけにはいかないのだ。
それからすぐ支度をし朝食を摂っていると、シャイナーから食後に話したいと連絡が入った。
アルフレッドは『何かの間違いだ』『あいつがロキ陛下を殺そうとする理由がない』と必死に弁護していたが、途中からハッとした顔になって、直接ユーツヴァルトに聞かないとと呟いていた。
何やら思い当たることでもあったんだろうか?
その後呼ばれた部屋に出向くとそこには怒り心頭と言った様子のシャイナーと、微笑を浮かべるキャサリン妃が待っていた。
「おはようございます、セドリック王子。アルフレッド妃殿下。わざわざのお運び恐縮ですわ」
キャサリン妃はそう挨拶をしてくれたが、シャイナーの方はいきなり本題を切り出してくる。
「セドリック。単刀直入に言う。そこのアルフレッドの知り合いである医師、ユーツヴァルトは始末していいな?」
「いいぞ」
サクッと答えたらアルフレッドが絶望的な顔をしながら袖を引いてきた。
だから一つ息を吐き、『せめてアルフレッドが納得できるよう丁寧に説明してからだ』とシャイナーへと話を振った。
それを受けシャイナーが昨夜の出来事を懇切丁寧にアルフレッドに説明し始める。
シャイナーの説明によると、昨日のパーティーで給仕がロキに毒と知らずにとある薬をワイングラスに混入して飲ませたらしい。
給仕は恋仲である侍女から受け取ったただのシロップだと言っていたのだとか。
渡した方の侍女はと言うと、赤ワインの渋みを消しマイルドな飲み口に変わる、ロキ陛下好みのシロップと認識。
こちらもそれが毒とは知らなかったらしい。
その侍女曰く、そのシロップはアルフレッドの知り合いの医者から受け取ったもので、俺とロキの仲が良いのも知っていたからそちら経由で渡してきたのかと疑いもしなかったとのこと。
馬鹿かと言いたい。
それだとロキが死んでいたら俺がロキを殺そうとしたことになるではないか。
俺がやるならそんな不確実な手は使わない。
やるなら暗部に指示を出し、確実に殺る。
こんな風におかしな嫌疑をかけられるなんて不愉快極まりなかった。
「大体あいつは死にたがりなんだから、カリンと二人で殺してやると言えば二つ返事で頷くだろう?わざわざ毒を使うまでもない」
そう言い切ってやったらシャイナーから殺気が飛んできた。
「セドリック…。ロキに手を出してただで済むと思うなよ?」
「はぁ…だから濡れ衣だ。こちらは関与していない。大体あんなに面白い奴を俺が殺すはずがないだろう?」
「…………」
俺とシャイナーの間に不穏な空気が流れる。
「シャ、シャイナー陛下!」
けれどここで場の空気に耐えかねたようにアルフレッドが声を上げた。
「…なんだ?」
「きっと何かの間違いだと思うんです!だから…一度直接ユーツヴァルトと話させてもらえないでしょうか?」
相手が王だからアルフレッドは丁寧に言葉を選んで願いを口にしているが、流石に無理があるだろうと思った。
シャイナーはどう見てもユーツヴァルトを殺す気満々だ。
けれどここでキャサリン妃が間を取り持つように言葉を挟んでくれる。
「その点は大丈夫ですわ。現在はあくまでも嫌疑の段階ですし、ガヴァム側からも実行犯は極刑にと言われておりますが、そのアルフレッド妃殿下のお知り合いの方は様子見でと伺っておりますので」
それを聞きアルフレッドはあからさまにホッとしたような顔になって礼を言った。
「ありがとうございます。感謝します」
なかなかどうして良い嫁だ。
シャイナーの暴走を止めるのに適した人物と言えるだろう。
「じゃあ俺、これからすぐユーツヴァルトのところに行ってくる!」
俺の方にそう言って今にも飛び出していきそうなアルフレッドだが、それをよしとするシャイナーではなかった。
「アルフレッド。監視に二人連れていけ。それが条件だ」
「まあ当然だろうな」
下手に逃がされては困るというのもよくわかる。
だからその言葉に軽く頷き、アルフレッドにちゃんと連れていくよう伝えておいた。
「お前は行かないのか?」
アルフレッドをあっさり見送った俺にシャイナーがそう訊いてきたが、ここでついて行くほど俺も馬鹿ではない。
監視はさり気なく側にいるだけだし、俺がいない方がユーツヴァルトに警戒はされ難いはずだ。
それよりもアルフレッドに聞かせたくない話をするなら今だろう。
「行く必要はないな。それよりもユーツヴァルトを自然な形で殺す方法でも話し合った方がずっと有意義だ」
「それはそうだな」
処分するのは簡単だが、それだとアルフレッドが悲しむし、ロキも気にするだろう。
別に殺さなくても…などと言いかねない奴なのだから。
「あいつは自分に降りかかったことに対しては対応が緩いからな」
「確かに」
殺されそうになったのがカリンだったならサクッと殺していいと言いそうだが、こと自分に関してだけは大らかすぎるほど大らかなのだ。
『結果的に死ななかったし、いいんじゃないですか?アルフレッド妃殿下も悲しませずに済みますよ?』と笑いながら言ってきても全く不思議ではない。
「それにしてもやけにイライラしているな?それほど警備の穴を突かれて腹が立ったのか?」
イラつくシャイナーにそう声を掛けると『違う!』と噛みつかれた。
「では…大好きなご主人様が殺されそうになったからか?」
「それは確かに大きな理由だ」
そうは言うがどうやらそれだけではなさそうだ。
そんなシャイナーの様子を見て、キャサリン妃が困ったように頬に手を当て言ってくる。
「セドリック王子。どうぞお気になさらず。昨日ロキ陛下が盛られた毒が媚薬効果の高いものだったせいで、その…殿方に抱かれたのが気に入らなかったようなのですわ」
「なるほど」
自分の敬愛するご主人様が他の男の腕の中で啼かされたのが気に食わないと。そういうことらしい。
けれどこの場合抱いたのはカリンではないのだろうか?
「どうせ抱いたのはカリンだろう?夫婦なんだから許容してやったらどうだ?」
「違う!リヒターだ!あいつは近衛騎士の分際でロキを抱いたんだ!許せるか!」
絶対に殺してやるとユーツヴァルトに対するよりも強い殺意をまき散らすシャイナーにキャサリン妃は辟易している様子。
「昨夜から医療行為の一環だと何度も言っているのですが、ちっとも聞いてくださらないのですわ」
「落ち着くまで裸に剥いて縛り上げて、口枷でも嵌めて放置してやったらどうだ?」
「まあ!セドリック王子もなかなか楽しい提案をしてくださるのですね。本当にロキ陛下から頂いた振動式のプジーでも突っ込んで放置してあげようかしら?そう言えば結婚祝いに頂いたものの中に振動式のディルドや面白い形をしたプラグというものもありましたわね。そちらと合わせて試してみるのもいいかもしれませんわ」
「……え?」
「それは楽しそうだな。キャサリン妃はなかなか面白い。是非これからも仲良くしてもらいたいところだ」
「ありがとうございます。シャイナー陛下を虐める楽しいご提案がありましたら是非教えてくださいませ」
そう言ってツンナガールを取り出したキャサリン妃。
「こちら、ロキ陛下から頂いた私専用の魔道具ですの。もしセドリック王子もお持ちでしたらこちらにご連絡いただけると有難いですわ」
「そうか」
身内とロキ周り以外の相手と番号を交換するのは初めてのことで、なかなか新鮮だ。
「シャイナー陛下の件で困ったことがありましたらそちらも私の方までご相談ください」
きっちり対処させていただきますと笑って言ってきたキャサリン妃。
俺相手にここまで普通に話してくる女は珍しい。
「わかった。頼りにさせてもらおう」
「ええ。では一先ず今はこの辺で。後でアルフレッド妃殿下がお戻りになりましたらまたお呼びください」
そう言ってキャサリン妃はシャイナーをグイグイ引っ張りながらさっさと退室していった。
「キャシー?!」
「シャイナー陛下。ロキ陛下の様子を見に行くと仰っていませんでしたか?早く行かないと門前払いにされてしまいますわよ?」
「…!それは困る!」
そんなことを口にしながら────。
なんでも昨夜遅い時間に至急ということで、シャイナーから手紙が届けられたらしい。
只事ではない様子にアルフレッドはその場で手紙を持ってきた者に尋ねたらしいが、重大な話だから詳細は翌日直接話すと言われたとか。
それほど重大なこととはなんだろう?
幸い熱は一晩で下がったし、話を聞くのは別に問題はないのだが、気になるのは気になる。
だからすぐさまその場で手紙を開封することに。
「…………」
俺はその内容を読んで眉を顰めた。
ある意味想定の範囲内の話ではあったからだ。
思い出されるのは昨日の去り際のロキの様子。
フラフラと具合が悪そうだったあれが、まさか毒によるものだったとはあの時は思いもしなかった。
手紙には『アルフレッドの知り合いがロキ暗殺に関わっている疑いが濃厚なため、話をさせてほしい』と書かれてある。
未遂に終わったとは言え、シャイナーからすれば黙ってはいられない事件というわけだ。
これは慎重にいかないとこちらが火の粉を被る事態になりかねない。
「アルフレッド」
「なんだった?!」
俺が手紙を読む間ずっとそわそわしていたアルフレッドに声を掛けると、待ってましたと言わんばかりに食いついてくる。
「ロキが昨夜毒を盛られて寝込んだらしい」
「え?!なんでそれでセドに話が来るんだよ?!」
『仲が良いのはシャイナー陛下も知ってるだろ?!』とアルフレッドは言うが、そういう問題ではない。
「嫌疑がかかっているのは俺じゃない。お前の知り合いだ」
「……え?」
「ユーツヴァルトが関わっていると言っている」
「は……?」
全く想定外の事を言われたと言った様子で、アルフレッドが物の見事に固まってしまう。
「あいつはロロイアでもロキによく眠れる薬だと言って毒を手渡していたらしいし、まず間違いないだろう」
「え?は?ちょ、ちょっと待て。あ、あいつはそんな奴じゃ…っ」
必死に庇おうとするアルフレッドには悪いが、シャイナーがこう言ってきたからには逃げ道など存在しない。
ロキが許してもきっとあいつならサクッと始末するはずだ。
まああいつがしなくても俺が手を下すが。
(これから先、何度も巻き込まれるのは迷惑以外の何ものでもないからな)
毒耐性がしっかりついていたから助かっただけで、本来ならロキは死んでいたはずだ。
そして助かったということは、また狙われるということに他ならない。
だからこそここで情をかけるわけにはいかないのだ。
それからすぐ支度をし朝食を摂っていると、シャイナーから食後に話したいと連絡が入った。
アルフレッドは『何かの間違いだ』『あいつがロキ陛下を殺そうとする理由がない』と必死に弁護していたが、途中からハッとした顔になって、直接ユーツヴァルトに聞かないとと呟いていた。
何やら思い当たることでもあったんだろうか?
その後呼ばれた部屋に出向くとそこには怒り心頭と言った様子のシャイナーと、微笑を浮かべるキャサリン妃が待っていた。
「おはようございます、セドリック王子。アルフレッド妃殿下。わざわざのお運び恐縮ですわ」
キャサリン妃はそう挨拶をしてくれたが、シャイナーの方はいきなり本題を切り出してくる。
「セドリック。単刀直入に言う。そこのアルフレッドの知り合いである医師、ユーツヴァルトは始末していいな?」
「いいぞ」
サクッと答えたらアルフレッドが絶望的な顔をしながら袖を引いてきた。
だから一つ息を吐き、『せめてアルフレッドが納得できるよう丁寧に説明してからだ』とシャイナーへと話を振った。
それを受けシャイナーが昨夜の出来事を懇切丁寧にアルフレッドに説明し始める。
シャイナーの説明によると、昨日のパーティーで給仕がロキに毒と知らずにとある薬をワイングラスに混入して飲ませたらしい。
給仕は恋仲である侍女から受け取ったただのシロップだと言っていたのだとか。
渡した方の侍女はと言うと、赤ワインの渋みを消しマイルドな飲み口に変わる、ロキ陛下好みのシロップと認識。
こちらもそれが毒とは知らなかったらしい。
その侍女曰く、そのシロップはアルフレッドの知り合いの医者から受け取ったもので、俺とロキの仲が良いのも知っていたからそちら経由で渡してきたのかと疑いもしなかったとのこと。
馬鹿かと言いたい。
それだとロキが死んでいたら俺がロキを殺そうとしたことになるではないか。
俺がやるならそんな不確実な手は使わない。
やるなら暗部に指示を出し、確実に殺る。
こんな風におかしな嫌疑をかけられるなんて不愉快極まりなかった。
「大体あいつは死にたがりなんだから、カリンと二人で殺してやると言えば二つ返事で頷くだろう?わざわざ毒を使うまでもない」
そう言い切ってやったらシャイナーから殺気が飛んできた。
「セドリック…。ロキに手を出してただで済むと思うなよ?」
「はぁ…だから濡れ衣だ。こちらは関与していない。大体あんなに面白い奴を俺が殺すはずがないだろう?」
「…………」
俺とシャイナーの間に不穏な空気が流れる。
「シャ、シャイナー陛下!」
けれどここで場の空気に耐えかねたようにアルフレッドが声を上げた。
「…なんだ?」
「きっと何かの間違いだと思うんです!だから…一度直接ユーツヴァルトと話させてもらえないでしょうか?」
相手が王だからアルフレッドは丁寧に言葉を選んで願いを口にしているが、流石に無理があるだろうと思った。
シャイナーはどう見てもユーツヴァルトを殺す気満々だ。
けれどここでキャサリン妃が間を取り持つように言葉を挟んでくれる。
「その点は大丈夫ですわ。現在はあくまでも嫌疑の段階ですし、ガヴァム側からも実行犯は極刑にと言われておりますが、そのアルフレッド妃殿下のお知り合いの方は様子見でと伺っておりますので」
それを聞きアルフレッドはあからさまにホッとしたような顔になって礼を言った。
「ありがとうございます。感謝します」
なかなかどうして良い嫁だ。
シャイナーの暴走を止めるのに適した人物と言えるだろう。
「じゃあ俺、これからすぐユーツヴァルトのところに行ってくる!」
俺の方にそう言って今にも飛び出していきそうなアルフレッドだが、それをよしとするシャイナーではなかった。
「アルフレッド。監視に二人連れていけ。それが条件だ」
「まあ当然だろうな」
下手に逃がされては困るというのもよくわかる。
だからその言葉に軽く頷き、アルフレッドにちゃんと連れていくよう伝えておいた。
「お前は行かないのか?」
アルフレッドをあっさり見送った俺にシャイナーがそう訊いてきたが、ここでついて行くほど俺も馬鹿ではない。
監視はさり気なく側にいるだけだし、俺がいない方がユーツヴァルトに警戒はされ難いはずだ。
それよりもアルフレッドに聞かせたくない話をするなら今だろう。
「行く必要はないな。それよりもユーツヴァルトを自然な形で殺す方法でも話し合った方がずっと有意義だ」
「それはそうだな」
処分するのは簡単だが、それだとアルフレッドが悲しむし、ロキも気にするだろう。
別に殺さなくても…などと言いかねない奴なのだから。
「あいつは自分に降りかかったことに対しては対応が緩いからな」
「確かに」
殺されそうになったのがカリンだったならサクッと殺していいと言いそうだが、こと自分に関してだけは大らかすぎるほど大らかなのだ。
『結果的に死ななかったし、いいんじゃないですか?アルフレッド妃殿下も悲しませずに済みますよ?』と笑いながら言ってきても全く不思議ではない。
「それにしてもやけにイライラしているな?それほど警備の穴を突かれて腹が立ったのか?」
イラつくシャイナーにそう声を掛けると『違う!』と噛みつかれた。
「では…大好きなご主人様が殺されそうになったからか?」
「それは確かに大きな理由だ」
そうは言うがどうやらそれだけではなさそうだ。
そんなシャイナーの様子を見て、キャサリン妃が困ったように頬に手を当て言ってくる。
「セドリック王子。どうぞお気になさらず。昨日ロキ陛下が盛られた毒が媚薬効果の高いものだったせいで、その…殿方に抱かれたのが気に入らなかったようなのですわ」
「なるほど」
自分の敬愛するご主人様が他の男の腕の中で啼かされたのが気に食わないと。そういうことらしい。
けれどこの場合抱いたのはカリンではないのだろうか?
「どうせ抱いたのはカリンだろう?夫婦なんだから許容してやったらどうだ?」
「違う!リヒターだ!あいつは近衛騎士の分際でロキを抱いたんだ!許せるか!」
絶対に殺してやるとユーツヴァルトに対するよりも強い殺意をまき散らすシャイナーにキャサリン妃は辟易している様子。
「昨夜から医療行為の一環だと何度も言っているのですが、ちっとも聞いてくださらないのですわ」
「落ち着くまで裸に剥いて縛り上げて、口枷でも嵌めて放置してやったらどうだ?」
「まあ!セドリック王子もなかなか楽しい提案をしてくださるのですね。本当にロキ陛下から頂いた振動式のプジーでも突っ込んで放置してあげようかしら?そう言えば結婚祝いに頂いたものの中に振動式のディルドや面白い形をしたプラグというものもありましたわね。そちらと合わせて試してみるのもいいかもしれませんわ」
「……え?」
「それは楽しそうだな。キャサリン妃はなかなか面白い。是非これからも仲良くしてもらいたいところだ」
「ありがとうございます。シャイナー陛下を虐める楽しいご提案がありましたら是非教えてくださいませ」
そう言ってツンナガールを取り出したキャサリン妃。
「こちら、ロキ陛下から頂いた私専用の魔道具ですの。もしセドリック王子もお持ちでしたらこちらにご連絡いただけると有難いですわ」
「そうか」
身内とロキ周り以外の相手と番号を交換するのは初めてのことで、なかなか新鮮だ。
「シャイナー陛下の件で困ったことがありましたらそちらも私の方までご相談ください」
きっちり対処させていただきますと笑って言ってきたキャサリン妃。
俺相手にここまで普通に話してくる女は珍しい。
「わかった。頼りにさせてもらおう」
「ええ。では一先ず今はこの辺で。後でアルフレッド妃殿下がお戻りになりましたらまたお呼びください」
そう言ってキャサリン妃はシャイナーをグイグイ引っ張りながらさっさと退室していった。
「キャシー?!」
「シャイナー陛下。ロキ陛下の様子を見に行くと仰っていませんでしたか?早く行かないと門前払いにされてしまいますわよ?」
「…!それは困る!」
そんなことを口にしながら────。
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