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【シャイナー陛下の婚礼】

170.従兄弟の結婚式②

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その後部屋で寛いでいると、晩餐の準備が整ったと連絡が来たから、セドと並んで案内されるままに歩を進めた。
そしたら主役のシャイナー陛下とロキ陛下が何やら話していて、その後カリン陛下と険悪な雰囲気になっている現場に遭遇してしまう。
明日は結婚式なのに、何があったんだろう?
場合によってはセドが仲裁に入る必要があったりするのかなとヒヤヒヤしてたんだけど、飛び込んできた内容が内容だったから、思わず自分の耳を疑ってしまった。

「カリン…ッ!どうしてお前が?!お前は抱かれる側だろう?!俺のロキを汚すな!」
「明日には結婚する奴が何を言っている。ロキは俺のなんだから抱かれようと抱こうと俺の勝手だ。引っ込んでいろ」

(え…えぇっ?!)

その言葉から予想するに、どうやらカリン陛下がロキ陛下を抱いたからシャイナー陛下が怒ったらしい。
逆にカリン陛下は自分の伴侶を抱こうが抱かれようが自分の勝手だと主張。
言ってることはわかるけど、俺は『え?どっちもアリなのか?!』とビックリしすぎて声が出なかった。
だって相手はあのドSなロキ陛下だぞ?!
絶対大人しく抱かれたりしなさそうなのに…。
そしたら案の定、その当の本人から衝撃的なセリフが飛び出してきて、セドが大ウケしていた。

「兄上、凄く素敵です」
「そうか?」
「ええ。さっきまで俺の腕の中で沢山喘いで可愛かったのに、ギャップ萌えしてしまいました」

折角男らしくロキ陛下は渡さないぞとカリン陛下がシャイナー陛下に牽制をかけてたのに全部台無しだ。
そもそも腕の中で喘いでたってことはやっぱりカリン陛下が抱かれる側だったってことだろ?

(なんだ…やっぱりな)

どうやらカリン陛下の虚勢だったらしいと納得がいった。
そうだよな。
あの人が大人しく抱かれるわけないよな。
わかってた!
だって本当にドSが服着て歩いてるような人だから。
どうやったら姫があの人を抱かれる側に見れるのか、俺にはそっちの方が不思議だった。
見た目は確かにそっちに見えなくもないけど、あの人は絶対こっち側は無理だと思う。

そうして無事に晩餐の席に着いたのだけど、意外なことにロキ陛下の席がセドの真ん前だった。
まあ隣国の国王だし、おかしくはないのかもしれないけど、他にも王族は沢山いるのに明らかな特別扱い。
やっぱりシャイナー陛下のご主人様だから?
結婚するのにそれでいいのかと思ったら、どうやらセドの話によると、この二人が知り合うきっかけを作ったのがロキ陛下だったからというのも大きな理由だったらしい。
なるほど。仲人的な感じか?
それなら納得だ。

(それにしても、意外だな)

ロキ陛下はあんまり他人に興味がない人なのに、キャサリン嬢とは随分親しげだ。
もちろんセドとも話すんだけど、彼女ともすごく楽しそうにロキ陛下は話している。
よっぽど気が合うんだろうか?
凄く友達っぽい雰囲気だなと思った。
その流れからかセドも彼女と話が弾んでいる。

「そうそう。ロキ陛下が『セドリック王子から頂いた筆は選定が素晴らしかった』と仰っていましたわ」
「ああ、あれか。あれは街で買い物をした時に見つけたんだ」
「うふふ。私も是非シャイナー陛下と使ってみたいですわ。こちらでも手に入るものでロキ陛下のお勧めはありますか?」
「それなら今度また俺の方から贈りますよ?良さそうなものを探しておきます」
「まあ、ロキ陛下。ありがとうございます。お道具のことはやっぱりロキ陛下の方がお詳しいですから、お任せしてもよろしいでしょうか?」
「ええ。もちろんです」

「一口に筆と言っても色々あるのでしょうか?」
「そうだな。物によって手触りが大きく違うな」
「セドリック王子に頂いたものと、俺が王宮滞在の際商人から購入したものでも随分違いましたから。やはり実際に手に取って品質を吟味するのが一番ですよね。セドリック王子から頂いたものは兄上もとても悦んでくれたので、大満足でした」
「ククッ。お前も使ってみたか?」
「まあ不本意ながら?あの日はリヒターが長々と使ってきたので泣きそうになりました」
「ハハッ!それは是非見てみたかったな」
「やめてください。本当に大変だったんですから」

楽しそうに話す三人。
仕事道具の話で盛り上がるなんて凄いな。
折角だしシャイナー陛下やカリン陛下も話に混ぜてあげればいいのに。

(まあカリン陛下はセドとは積極的に話したくはないか)

でもシャイナー陛下は物凄く話に加わりたそうだ。
流石に可哀想じゃないか?

「ロキ…酷い」

ほら。案の定そんなことを言い出したじゃないか。
可哀想に。
でもロキ陛下はそんなシャイナー陛下を一瞥しただけで、キャサリン嬢と話を続けてしまう。
一応気を遣ったのか内容は結婚式のものに変えていたけど、放置プレイと言わんばかりだ。
二人でドレスの話で盛り上がっている。
セドは何か知ってるのか、訳知り顔で楽しげにそんな三人を見ているし、よくわからない。

「ロキ!キャシーばかりと話してないで俺とも話そう!」
「はいはい。シャイナー陛下もどんな衣装なのか楽しみですね」

塩対応ここに極まれりというほどのつれない返事。
けれどめげずに会話を繋ぐシャイナー陛下がいじらしい。

「そうか!俺の披露宴の服はキャシーに合わせて黒にしてみたんだ。チーフの色は赤だから一対の絵のようだとデザイナーからは太鼓判を押されたし、楽しみにしていて欲しい」
「そうですか。それはキャサリン嬢の美しさを引き立てるのに向いていそうな衣装ですね。しっかりエスコートして立派にご主人様を輝かせてあげてくださいね。シャイナーならできると信じています」
「もちろんだ!」

(…………え?)

聞き間違い?
一瞬そう思ったけど、ロキ陛下とキャサリン嬢の表情を見て俺は確信した。

(この二人、ご主人様友達だったのか!)

どうやらキャサリン嬢はシャイナー陛下の新しいご主人様だったらしい。
しかもシャイナー陛下はさっきのロキ陛下の言葉に全く違和感を感じていなさそうだし、完全に染められている様子。

(やっぱり怖い!)

セドはその様子がツボにハマったらしく、肩を震わせて笑いをこらえてるけど、笑い事じゃないからな?!


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