【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

オレンジペコ

文字の大きさ
上 下
183 / 215
【シャイナー陛下の婚礼】

閑話11.プロポーズ Side.レオナルド皇子&アルメリア

しおりを挟む
※ただのレオナルド皇子のプロポーズ話です。
スピンオフで読まれた方はご存じだと思いますが、カール王子とユーフェミア王女は和解済みで、ユーフェミア王女は無事にレトロンに帰国しています。
カール王子の件が気になる方はスピンオフの『閑話23.レトロンにて Side.カール王子』をご参考ください。
よろしくお願いしますm(_ _)m

****************

【Side.レオナルド皇子】

ユフィ────ユーフェミア王女をミラルカで保護して暫く経ち、彼女との日々を過ごすうちに好きになって、ガヴァムで行うことになった三か国事業の成功パーティーへも一緒に行った。
綺麗で完璧な、隣国レトロンの王女。
でも素では可愛い面があるって俺はもうちゃんと知っている。

そんな彼女から捨てられるのが怖くて、レトロンに戻してからも何度も会いに行った。
カール王子からもう二度と命を狙われる心配はないし、彼女は無理に俺と婚約し続ける必要はなくなっている。
だからいつ婚約解消を言われてもおかしくはなかった。
元々は保護目的で早急に決めた婚約だったし、彼女が望めばすぐにでも婚約はなかったことになる。
でも────。

「婚約を解消なんてしたくないんだよ~!」

カール王子に何度目かの相談をした際、うんざりした声でさっさと結婚しろと言われた。

「毎回毎回同じことしか言わないし、そろそろ俺を呼び出すのはやめてください」
「だってロキは聞いてくれないんだ!最初はまだ聞いてくれたのに、三回目からは尻叩き用の鞭を目の前でこうぺちぺち振りながら、『レオ?何度兄上との時間を奪えば気が済むんです?』って脅してきたんだ!酷くない?!」
「いえ。ロキ陛下の気持ちの方がよくわかります。俺もその鞭が今凄く欲しいと思いました」
「なんで?!」
「白黒はっきりしない愚痴にいつまでも付き合ってられないっていう話です」

つれなくそんなことを言われてその日は帰ったものの、それからすぐ、何故か彼とその婚約者から呼び出しを受けた。
なんだろう?
もしかして親身なアドバイスでももらえるんだろうか?
そう思いながらいつもの部屋へと通されたのだけど────。

待っていたのはアドバイスではなく説教だった。

「お話は伺いましたわ」

その言葉から始まり、あれこれと叱られたのだけど、一番個人的に胸に刺さった言葉はこれだった。

「はっきりしない男に魅力があるとお思いですか?!潔さを見せるべきところを見せずしていつ男になるのです!将来国を預かる王となるのですから、ここぞという時に動くべきですわ!」

確かに言われてみればその通りで、当たって砕けるのが怖くて二の足を踏んでいたけれど、自分らしくなかったなと深く反省してしまった。

だからその後すぐにユフィにちゃんとプロポーズをしようと行動に移すことに。
断られる可能性は高いかもしれないけど、悔いのないよう俺にできる精いっぱいの方法で想いを伝えようと思った。
バラの花は赤が定番だけど、そんなありきたりなものじゃユフィの心に残るプロポーズにならない気がして、ユフィが大好きな『孤高の王子』の白薔薇でプロポーズをしようと決めた。
花言葉に詳しい母に話も聞きに行き、99本で『永遠の愛』とか101本で『これ以上ないほど愛しています』、108本で『結婚してください』になるらしいと教えてもらった。
どれも魅力的だけどどうしよう?
『孤高の王子』は小ぶりなバラだから量が多くなっても全然大丈夫だし、思い切ってもっと数を増やしてもいいかな?
でも数が多ければいいということでもなさそうだし…。

そうして悩みに悩んだ結果、101本に決めた。
だってユフィが俺を好きだったら『永遠の愛』とか『結婚してください』でもよかったかもしれないけど、向こうは俺の気持ちなんて知らないと思うし、やっぱりここは気持ちを伝えるところからかなと。

そして手ずから薔薇を選んで、庭師に棘を取ってもらって花束としてまとめてもらい、箱に入れてワイバーンに飛び乗った。
もし振られたら泣いて帰ってくればいい。
男を見せよう。
ヨシッと気合を入れて俺はレトロンまでワイバーンを飛ばした。

「レオナルド皇子?」

呼び出されたユフィは俺が手に持った箱をいぶかし気に見ながら声を掛けてきたけど、俺はそっとその箱をユフィへと手渡して、そのままその場で跪いた。

「ユフィ!俺はこの孤高の王子みたいに凛として、どこか可愛い君に気づけば夢中になっていた。君から見たら頼りない俺だろうけど、絶対に浮気はしないし、一生をかけて幸せにすると誓う。だから…俺の為に真っ白なウエディングドレスを着てほしい!結婚してください!」

真っ直ぐ目を見てちゃんと気持ちを伝えたつもりだ。
でも俺はちょっとだけ失敗していた。
花束を箱から出して言えばよかったのに…。
肝心なところで決まらない自分が情けなくなる。
でもユフィの心にはちゃんと俺の真剣な気持ちは伝わったようで、どこか泣き笑いのような顔になった後、箱を開けてみてもいいですかと聞いてきた。

「もちろん!」

そしてテーブルで中を確認して、ポツリとこう言った。

「こんなに沢山、レオナルド皇子は気持ちを込めて贈ってくださったのですね」
「うん!全部で101本、綺麗に咲いてるのを自分の目で見て選んだんだ。ユフィの喜ぶ顔が見たくて」

そう言った俺にユフィは何故か自信なさげに『本当に自分でいいのか』と聞いてきた。
だから俺は自信満々にこう言ったんだ。

「俺はユフィだからプロポーズしようと思ったし、逆にユフィじゃないとダメなんだ。振られるのが怖くてずっと言えなかったけど、俺はユフィのこと本当に愛してる。答えは急がないけど…」

そこまで言うと、涙ながらに俺の胸に飛び込んできて、そのままギュッと抱きつかれた。

「レオナルド皇子。嬉しいです…」

そして自分こそ勇気が出ずに気持ちがずっと言えなかったのだと明かしてくれる。

「堅くて可愛げのない私が、自由で天真爛漫な貴方に受け入れてもらえるなんて思わず、このまま振られるのだとばかり思っていました」

(え?!逆じゃない?!)

俺からしたら完璧なユフィから見たら俺の方がダメダメで受け入れ難いんじゃないかってずっと思ってたんだけど…。

正直そんないつもと違う弱気な態度を見せられるなんて、思ってもみなかった。
『可愛い!』って身悶えそうになった俺は別におかしくないと思う。
本当に素のユフィは可愛くて、俺は一生大事にしようと改めて心に誓ったんだ。

「ユフィ。結婚式の日取り、決めないとね」
「はい」
「いつがいいかな?妹にも手紙で知らせないと」
「はい」
「カール王子達も俺の背中を押してくれたし、報告をしないとね」
「カールが?」
「正確にはその婚約者のレイラ嬢かな?」

そんなことをつらつら口にしながら、俺は幸せいっぱいに愛しいユフィを抱きしめた。


***


【Side.アルメリア】

鉱山ホテルでユーフェミア王女の命がカール王子から狙われた件で彼女をミラルカの城で保護することになり、その一環で一応の婚約者として決まったという話は聞いていた。
けれどその後の二人についてはどうなったのか全く把握してはいなかった。
それとなく父や母に尋ねてはみたけれど、『特に何事もなく、平穏に日々を送ってもらえている』としか返ってこなかった。

(私が知りたいのはそこじゃないのよ~!)

何度そう思いながら撃沈したことか。
結局のところ、兄からの定期的な手紙に書かれてあるものが唯一情報源となっていたというのが現状だった。
でもそこにもそれほど情報は多くはない。

『ロキが心配だから今度ガヴァムに行ってこようと思う』
『ロキがまたものぐさなことを言い出したから、今度ユフィを連れて押しかけようと思うんだ』
『三か国事業パーティーをカリン陛下の提案でガヴァムで行うことになった。本当、ロキはすぐに面倒ごとは回避しようとするんだから困ったものだ。カリン陛下とユフィと俺の三人で協力して頑張るよ』

とこんな感じでほとんどロキ陛下のことだから、あまり欲しい情報はないのだけれど、辛うじてユーフェミア王女のことをユフィと愛称で呼ぶくらいには親しくなれたのかなと微笑ましく思った。

正直言って内容が8割ロキ陛下のことだから、お兄様のことが心配になるレベルで二人の仲をやきもきと見守っていたと思う。

(だってどう見てもユーフェミア王女との仲よりロキ陛下との仲の方が良さそうなんですもの!)

ロキ陛下の近況が知れるのは嬉しいけれど、もっとこう、婚約者との進展具合を手紙に書いてくれればこちらとしても何一つ心配することなく見守れたのにと思わなくはない。

そんな兄とユーフェミア王女だったのだけど、とうとう結婚式の日取りが決まったらしい。
仮初の婚約者のまま終わってしまうんじゃないかとか、婚約者そっちのけで大親友に構い倒す姿に呆れられて愛想を尽かされて捨てられるんじゃないかとか、色々心配していたけれど、無事に結婚が決まったと聞けて心底安心することができた。
そんな兄からは幸せいっぱいのプロポーズ内容と惚気がつらつらとつづられた手紙が送られてきた。
なんでも二人の仲を取り持ったのはユーフェミア王女の弟であるカール王子だったらしい。
正確にはカール王子とその婚約者であるレイラ公爵令嬢のようだけれど。

ある日、二人から呼び出されて説教をされたんだとか。
傍から見たら二人は両想いにしか見えないんだから、男を見せて思い切ってプロポーズをしろと言われたらしい。
特にレイラ公爵令嬢から言われた、『はっきりしない男に魅力があるとお思いですか?!潔さを見せるべきところを見せずしていつ男になるのです!将来国を預かる王となるのですから、ここぞという時に動くべきですわ!』と発破をかけられたのが心に響いたとのこと。

それからユーフェミア王女の好感度を上げつつプロポーズを確実に成功させるためにと色々考えて、実行に移して成功を収めたらしい。
ユーフェミア王女の弟やその婚約者に背中を押してもらったところは情けないの一言だけれど、そこからちゃんと考えて動けたところはよかったと思う。
なんでもユーフェミア王女の方もいつの間にかお兄様のことを好きになってくれていたらしく、晴れて相思相愛になれたと書かれてあった。
本当によかったよかった。

「結婚式には是非参列して直接お祝いが言いたいわ」

二人の幸せそうな姿をこの目に焼き付けたい。
でも参列となるとどうしてもセドリック王子とアルフレッドも一緒となるわけで……。

「はぁ…」

正直言ってそれは気が重くて仕方がなかった。
何とかしたくてもどうにもできないこの状況を打破することなんて不可能だ────そう思っていたのだけれど。

「アルメリア姫。レオナルド皇子とユーフェミア王女の結婚式だが、私と二人で行かないか?セドリックが一緒だとそちらに気を使って心から祝福することができないだろう?」

そんなまさかの言葉をヴィンセント陛下から言っていただけて、思わず『陛下!そんなことを言われたらうっかり惚れてしまいそうですわ!』と歓喜の声を上げてしまった。
それくらい感激してしまったのだ。
そんな私の言葉に気を悪くするでもなく『姫なら大歓迎だ!』と笑って言ってくれて、その大きな手で頭をなでられた。
こんな子ども扱いも陛下がやるとなんだか怒る気にはなれないし、私の無礼を咎めない心の広さはとても安心できる。
この包容力はセドリック王子にはない尊敬すべき点だ。
どうしてこの王からあんな王子が産まれたんだろうと思わなくはない。

「陛下。失言を許していただけて嬉しいですが、甘やかし過ぎですわ。私よりも孫のルカを沢山可愛がってくださいませ」
「もちろんルカも可愛がっているぞ。だが姫も可愛い息子の嫁だ。遠慮せずもっと今みたいに気安く甘えてほしい」

穏やかに接してくださるヴィンセント陛下は本当に私の癒しそのもの。
そんな陛下に可愛がってもらえるルカは幸せ者だ。

「ルカも大きくなったな。ほら、高い高い!」
「陛下!ルカは高い高いが大好きなんです!やり過ぎないよう気をつけてくださいね?また腰を痛めても知りませんよ?」
「ははは。そうならないよう気をつけよう」

なんだかこんな光景を見るとルカの父親がヴィンセント陛下だと錯覚してしまいそうだ。

(そもそもあのセドリック王子が父親だなんて、ルカには絶対にわからないと思うわ)

抱っこもしないし、顔を見に来もしない。
あの王子は父親らしいことなんて何一つしないのだから。
取り敢えずルカがある程度大きくなれば、悪魔の機嫌がいい時を見計らって、あれが父親だと教えてあげようと思う。
下手に幼い時にあの殺気を目の当たりにして、心臓が止まりでもしたら怖いし、タイミングは間違わないようにしよう。

そう思いながら私は今日もヴィンセント陛下と平和で温かな時間を過ごしたのだった。


しおりを挟む
※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
感想 221

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

処理中です...