【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

オレンジペコ

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【ロロイア国訪問】

168.ロロイア国訪問の後日談

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ロロイア国からブルーグレイへと無事に帰ってきて、姫に物凄く心配されてしまった。
どうやら俺が毒を口にしたのを聞いて、気が気でなかったらしい。
でもいくらなんでも『唯一の悪魔のストッパーなんだから体を大事にしてちょうだい』はないと思う。
酷い。

それから『毒耐性をつけるための薬』をひと月ほど飲んでみないかと勧められた。
これは元々王族に嫁いだ貴族女性が飲む慣らし毒で、幼い頃から慣らしている姫達ほどではないけれど、毒に対する耐性がつくから、猛毒でない限りほぼ死ぬことはなくなると教えられた。

「う~ん…」

正直言って悩む。
これまでの俺だったらはっきりと「いらない」と言えただろうけど、今回のような件があるのなら耐性をつけておくに越したことはないと思えたからだ。
でもどれくらい効果が出るのかわからないし、ひと月も飲んで体に副作用的なものは出ないんだろうか?
万が一にでも身体が思うように動かなくなって、その間姫を守れなかったら困る。

「ちょっと考えさせてください」

取り敢えずそう言ってその場では話を預からせてもらったんだけど…。

「飲め」

その日の夕方、セドから問答無用で口に突っ込まれた。
酷過ぎる。

「何すんだよ?!」

『飲んじゃっただろ?!』と嚙みついたら、飲まないという選択肢など存在しないと返された。

「お前が死んだら俺が困る」
「はぁ?!俺の意思は無視か?!」
「当たり前だ。逆に言うが、お前は毒で死にたいのか?お前が大事にしている姫を守れなくなるぞ?」
「ぐっ…!」

それを言われると辛い。
確かにセドが言う通りだからだ。

「ほんのひと月我慢すればいいだけの話だ。おとなしく飲み続けろ」

ちなみにこの薬は取り敢えずひと月飲めばいいだけだけど、耐性が薄れていたら困るからという理由で、毎年同じように飲まないといけないらしい。
なんて面倒な薬なんだ!

「もっと簡単に一回で終わるやつがあればいいのに」

思わずそうボヤいたら、探せばあるだろうけど、その分リスクも上がるはずだと言われた。

「副作用で死んだら元も子もないだろう?」
「まあそうだけどさ」

面倒臭いとついつい思ってしまう。

「そうだ!それならロキ陛下にも勧めてやったらどうだ?あの人も毒に対する耐性がないはずだってセドは言ってたよな?」
「ふん。必要ならカリンが何とかするだろう」
「まあ確かに」

カリン陛下もなんだかんだロキ陛下のこと大事にしてるしな。
俺と同じで今回の件を受けて何かしら対策は取ってるはず。
まあロキ陛下が素直に言うことを聞くかどうかは別だけど。

それから俺はひと月の間毎日全く美味しくもなんともない薬を飲み続けたんだけど、セドが今回のロロイアの件で流してもらえた噂のお礼を言うためロキ陛下に連絡を取った際、何かの拍子にこの毒に対する耐性薬についての話になったらしく、ちゃんと飲んでいるのかと尋ねたら「そんな面倒な薬は飲んでない」と返ってきて、流石に注意を促そうと思ったところで、裏の薬で一回で終わらせたからと返されたらしい。
しかも飲み薬じゃないんだとか。

弱毒化させた毒を無数の細い針に塗布し、まとめて両腕にグサッと一気に刺すらしい。
副作用としては概ね一日二日熱が出るくらいのもので、しかも一回ポッキリで効果抜群。
毎年やる必要はないときた。

「なんだそれ!羨ましい!」

(裏の薬、優秀過ぎだろ?!)

「俺もそれがよかった…」

簡単に終わるならそっちの方が絶対にいいに決まっている。

大体飲んでる間、こっちはずっと身体が怠かったんだ。
こんなもんに負けるか!って思って、負荷トレーニングと思いながらこれまで以上に剣振ってたら熱出して、セドに『この脳筋!』って激怒されて、熱が下がってからは毎夜抱き潰されて散々だった。
『薬で辛いだろうから手加減してやっていたのに、いらなかったようだな』とかなんとか言いながら殺気立たれて、流石にちょっと悪かったかなと反省した。

でも正直言ってもう懲り懲りだし、来年はそっちがいいって言ってみようかな?
これから毎年あんな状態になるのも嫌だし、またセドに相談してみよう。

「そうだ!ユーツヴァルトなら詳しいかも!」

ロキ陛下がやったその方法について安全性を確認する意味でちょっと手紙でも出してみよう。
知っていたらいいけど。




それから数日後、ユーツヴァルトから返事が来た。
『初めて聞いたが、ロキ陛下が試したのなら実績のある方法なんだろうと思う』とのこと。
『もし何の毒に対する耐性かわかるのなら医師として参考までに把握しておきたいから、できれば連絡をくれ』と書かれてあった。
その旨をセドに言ってみたら、すぐにロキ陛下に連絡を入れてくれたけど、ロキ陛下はそういうことには無頓着な人だから、『そういうのは全部闇医者に任せていて、実は良く知らないんです』とか返されたらしい。

「全く参考にならない!」

セドは「ロキらしいな」って笑ってたけど、俺としてはそこは把握しておいてほしかった。
とは言え言っても仕方がないことだとは思う。
ユーツヴァルトには申し訳ないけど、ロキ陛下はこういうところがある人だし、本人から聞き出すのは諦めるほかない。
だから代わりに、『ロキ陛下に訊いたら、闇医者に任せたからわからないって言われた。闇医者はユーツヴァルトの友人だって言ってたよな?悪いけどそっち経由で聞いてみてくれ』と返しておいた。

セドもまた闇医者と話す機会があれば聞いておいてくれるらしい。
俺に使うならそこはしっかり把握しておきたいからと。

まあなんにせよ俺の毒耐性は一応つけられたことだし、来年までにそれの安全性が確認できれば良いから気楽にいこう。

「さ、レオナルド皇子の結婚式に向けて準備、準備!」

意気揚々とそう言った俺に、セドが何故か『違うぞ』と言ってきたけど、無視だ無視!
ミラルカの皇太子の結婚式に姫と俺が行かないなんてあるはずがないしな。

そうして明るく準備を整えていたのに、実際はミラルカに行くのはヴィンセント陛下と姫で、護衛はオーガストとその他陛下の近衛騎士達だと後から知らされた。

「なんでだ?!」

思わずそう叫んだ俺にセドが言う。

「だから言っただろう?」
「何を?!」
「俺達が行くのはレオナルド皇子の結婚式じゃなく、シャイナーの結婚式の方だ」

セドは従兄弟としてそちらの方に参列するんだとか。

「どうして両方お前じゃないんだよ?!」
「父曰く、姫が心からレオナルド皇子を祝福できるよう、ストレスの元である俺は同伴しない方がいいから、らしいぞ?」

その言葉に納得がいくようないかないような、微妙な心持ちになった俺だった。



****************

※これにてこちらのロロイア編も終了です。
お付き合いくださった皆様、ありがとうございました(^^)
ユーツヴァルトにロキが毒耐性があるとバレてしまいましたが、これでアルフレッドにも無事に毒に対する耐性がつけられ一安心。

ちなみにここでアルフレッドに使われたものは、王族に新しく加わる妃向けに調合された、各国でメジャーになっている薬で、姫が言うように猛毒以外では死なないけど、死なないだけで実際は物によっては数日熱を出して寝込んだりはするものだったりします。

ロキがやった方の裏の毒耐性薬の方は、同じ毒でも元が暗殺稼業御用達の薬なぶん耐性は強く、熱が出ても一日二日で復活できる感じ(個人差はあり)で、飲む方の毒だけでなく武器に塗布される方の毒にも対応済み。
媚薬耐性も少しですが含まれます。

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※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
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