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【ロロイア国訪問】
162.ロロイア国へ⑥ Side.セドリック
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ロロイア王の元へ足を向けると当然ながら護衛騎士達の邪魔が入った。
謁見許可を取っていないのだから当然だ。
けれど事は重大だ。
だから食事に毒が盛られていた件を上げ、『こちらを敵に回すつもりならこのまま帰って兵を引き連れ引き返してくるが?』と挑発してやった。
すると蒼白になって少々お待ちくださいと言いながら騎士が王の元へと飛んで行った。
これで話ができることだろう。
そうして王と面会することができたのだが、王の方は蒼白な顔で毒見はしたはずだし、何かの間違いだの一点張り。
けれど現にアルフレッドが毒を摂取したことに間違いはないし、錯乱系の毒草だったことも判明していると言ってやったら、王ではなく王妃の方が顔色を変えた。
どうやら何か知っていそうだ。
「ロロイア王妃。何か知っていそうだな?」
そう低く問いかけると共に威圧をジワリとかけてやる。
すると、すぐさま自分ではないと言い出した。
「わ、私はあの狂王にっ、ロキ陛下に錯乱系の毒を盛るよう指示をしただけです!そちらに盛ったりなど一切していませんわ!」
それに驚いたのはロロイア王だ。
「なっ?!あの狂王に錯乱系の毒だと?!お前はこの城で大量殺人を犯させる気だったのか?!」
とんでもないことだぞとロロイア王は慄いている。
「火でも放たれて、目につく者から嬲り殺しにされでもしたら目も当てられないぞ?!しかもその要因がこちらにあるならガヴァムに何か言うこともできないし、最悪の展開にしかならないではないか!」
ただの共倒れだと王が悲鳴をあげた。
その意見には俺も同意しよう。
狂人に錯乱系はやめた方がいい。
「ち、違いますわ!私はただ自害してくれればと思っただけで…!」
どうやら王妃は随分と目論見が甘かったらしい。
けれどそうなってくると誰がこちらに毒を盛ったのか…。
もしやロキに行く方の皿を誰かが取り替えたのか?
可能性はなくはない。
一先ず状況確認をと揃って厨房へと向かう。
そこで王妃の指示で毒を盛ったらしき男が震えながら『自分が確かにロキ陛下の皿に毒を盛りました』と白状した。
ロロイア王は蒼白な顔で首を振っていたが、俺の前で白状したから言い逃れは不可能だ。
男が毒を盛った皿は二皿。
一皿はロキでもう一皿はカリンだろう。
どちらの皿で食べるかわからないからそうしたのだと思う。
そのうちの一皿か二皿かはわからないが、こちらに回ってきたのは確実だった。
それをした犯人は────一体誰だ?
ロキとカリンは当然だが違う。
あの二人の周りにいた者達もロキの命令でキュリアス王子の相手をしていたから違うだろう。
となると後はロロイア側の者に他ならない。
キュリアス王子以外となると、王と王妃、第二王子、王女、王太子妃の五人。
王は何も知らなそうだし、王妃が毒を指示したのも間違いない。
となると取り替えたのは残った三人の手の者か、悪意を持った使用人か…。
「持っていく前に誰かがここに来なかったか?」
「そう言えば……確かシェイラ王女が来られていたような…」
「シェイラが?」
これには王と王妃も驚いたらしい。
王女自ら厨房に来るなんて、驚くなという方がおかしいのだろう。
「それは何の用で?」
「はい。キュリアス王子があのようなことになって食欲がなくなったらしく、少なめにしてほしいと言いに来られたのです」
まあ理由としては特におかしなものではない。
とは言えこうなったら一応話を聞いておくべきだろう。
そう思いながら今度は王女の部屋へと足を向けた。
けれどそこに王女の姿はどこにもなく、その辺を歩いていた侍女を捕まえて尋ねると、恐らくニーナ王太子妃と一緒に食事をしているのではないかとのことだった。
どうやら二人は仲が良いらしい。
そうしてニーナ王太子妃の部屋へと向かうと、そこでは楽し気に話しながら食事をする二人の姿があった。
ニーナ王太子妃の部屋は城の庭園を突っ切った先にある離れの宮だ。
静かにライトアップされた花々を愛でながら食事をする二人はとても楽しそうに見える。
とてもこちらに毒を盛ったようには見えない。
「シェイラ!」
まずは王が声を掛け、彼女達を振り向かせる。
「まあ陛下。どうかなさいましたか?」
実の父親に対し、シェイラ王女は他人行儀に『陛下』と呼びかけた。
なんだか距離を感じる呼び方だ。
「お前…セドリック王子の夕餉に、ど、毒草を混入したりはしていないだろうな?」
「セドリック王子の夕餉にですか?いいえ。私はしておりませんわ」
その返答に王がホッとしたように息を吐いたが、ここで王妃の方が声を荒らげた。
「本当にやっていないでしょうね?!もし万が一にでもロキ陛下とセドリック王子の皿を交換したなんてことが後からわかったらただじゃ置かないわよ?!」
「……王妃陛下。それはどういうことでしょう?まさかとは思いますが”ロキ陛下の方に毒草を盛った”と、ご自分で白状なさっているのでしょうか?」
その言葉に王妃がグッと言葉に詰まる。
まあ既にバレている話だし、隠し立てするのは不可能ではあるが…。
「ロロイアの王妃がガヴァムの王を暗殺しようとするなんて恐ろしいですわ。もうこの国は終わりですわね」
うふふとどこか嬉しそうに笑うシェイラ王女。
彼女も大抵おかしい気がする。
破滅思考とでも言うのだろうか?
どこかロキと同じ匂いを感じさせる王女だ。
「あ、貴女に何がわかるの?!キュリアスが酷い目に合っているのよ?!」
「あら。それなら王妃陛下が全部肩代わりして差し上げれば良かったのでは?切り取る部位もありませんし、一番平和的解決法だったと思いますわ」
ホホホと王女が楽しげに笑う。
そんな王女に腹を立て、王妃が掴みかかりながら叫んだ。
「そうよ、そうだわ!貴女がキュリアスの代わりに償えば良かったのよ!来なさい!この役立たず!」
そう言いながら髪を鷲掴みにする王妃に、娘への愛情は一欠片も感じられない。
王女はすぐさまその場にしゃがみ込み、身を丸めて死んだような目で感情を切り離していた。
その姿を見て、きっといつもこんな扱いをされているのだろうと一目でわかった。
王女がロキと似ているのも仕方がないのかも知れない。
そうして王妃が一人ギャイギャイ騒いでいるところへ、ロキの暗部らしき男が俺の元へとやってきた。
「セドリック王子。先程ロキ陛下が帰りの挨拶で部屋をお訪ねしたところ、アルフレッド妃殿下が襲撃されておりました。お助け致しましたが、カリン陛下の時同様の香が使われたらしく…。急ぎお越しを」
俺はそれを聞いてすぐさま踵を返し、部屋の方へと駆けた。
その暗部の男も本気の俺の走りにしっかりとついてくる。
試しに『闇医者の名は?』と問えば答えが返ってきた為、裏の人間と思われる。
これなら信用はできそうだと思ったため、そのまま街の方にいるユーツヴァルトという医師の男を連れてきてほしいと頼んだ。
泊っている宿を口にしたらすぐさま動いてくれたから恐らく把握している宿だったのだろう。
この城にいる者は現状誰も信用できない状況だ。
アルフレッドの知り合いの医師を連れてくるのが一番だと判断した。
まだ宿にいてくれるといいが…。
***
【Side.アルフレッド】
毒を吐き出したとはいえ、水を飲んでは吐き飲んでは吐きとしたせいで物凄く疲れ切っていた。
よっぽど強力なものを選んで盛ったのか、少量飲み込んだだけでも気分が悪い。
気づかず肉ごと飲み込んでたら大変なことになるところだった。
「はぁ…」
取り敢えず少し休んだらすぐに良くなるだろうと思って、ベッドにおとなしく横になっておくことに。
セドが無茶をしないかだけが心配だったが、ワンクッション挟んでからロロイア王のところに行くらしいから、ロキ陛下が少しでもセドの怒りを静めてくれることを願おう。
そう思いながらゆっくりと目を閉じた。
異変に気付いたのはそれから暫くしてからだった。
なんだか嗅ぎ慣れない匂いが鼻をくすぐったと思ったら段々と体が重たくなってきたのだ。
(まずい…!)
これは相手の動きを封じる系の香だ。
(誰かが侵入してきたのか?)
でもここにはセドが置いて行った沢山の暗部達が護衛として配置されている。
その暗部達が侵入者を許すとは思えない。
そう思いながら無理やり体を動かし、なるべくこれ以上香を吸い込まないよう気を付けながら気力だけでベッドから抜け出した。
けれどそこに広がっている光景を見て愕然となる。
暗部達が武器を抜く間もなく、全員床に倒れ伏していたからだ。
余程の手練れかと思ったが、侵入者達は特に手練れといった様子はない。
理由はわからないが、暗部達は何らかの方法で全滅させられたようだ。
俺も思うように動けないし、抗うのが精一杯。
犯人はキュリアス王子ではないだろうが、万が一にでもカリン陛下と同じように犯されでもしたら目も当てられない。
何とかこの状況を打破しなければと自分で自分に気合いを入れる。
そうして剣で何とか凌いでいたら、唐突にドアをノックする音が聞こえてきた。
部屋の中に緊張が走る。
どうかセドであってくれと願うが、その願いは叶わず、聞こえてほしくない声が耳に届いて焦って逃げろと叫んでしまった。
だって聞こえてきたのは「アルフレッド妃殿下?ロキですが」だったんだ。
万が一にでもこれで死なれたらシャレにならない。
ロキ陛下は弱いようで強いけど、そう見えてやっぱり俺やセドに比べたらずっと弱いんだから。
けれどどうやら一人で来たわけではなかったようで、護衛騎士のリヒターらしき声がしっかりと聞こえてきてホッとする。
その後扉は開かれ、ロキ陛下についてきていた近衛騎士達の手であっという間に場が制圧された。
窓もしっかり開けられ換気もされたからロキ陛下が倒れる心配もない。
そのことにホッとしたら一気に緊張が解けて、身体から力が抜けていった。
「は…あ…セド……」
今更だけど、セドの方は襲撃にあってはいないだろうか?
まあセドだったら返り討ちにしているだろうけど、万が一ということもなくはない。
どうか無事でいてくれと願いながら、俺はそのまま意識を手放した。
謁見許可を取っていないのだから当然だ。
けれど事は重大だ。
だから食事に毒が盛られていた件を上げ、『こちらを敵に回すつもりならこのまま帰って兵を引き連れ引き返してくるが?』と挑発してやった。
すると蒼白になって少々お待ちくださいと言いながら騎士が王の元へと飛んで行った。
これで話ができることだろう。
そうして王と面会することができたのだが、王の方は蒼白な顔で毒見はしたはずだし、何かの間違いだの一点張り。
けれど現にアルフレッドが毒を摂取したことに間違いはないし、錯乱系の毒草だったことも判明していると言ってやったら、王ではなく王妃の方が顔色を変えた。
どうやら何か知っていそうだ。
「ロロイア王妃。何か知っていそうだな?」
そう低く問いかけると共に威圧をジワリとかけてやる。
すると、すぐさま自分ではないと言い出した。
「わ、私はあの狂王にっ、ロキ陛下に錯乱系の毒を盛るよう指示をしただけです!そちらに盛ったりなど一切していませんわ!」
それに驚いたのはロロイア王だ。
「なっ?!あの狂王に錯乱系の毒だと?!お前はこの城で大量殺人を犯させる気だったのか?!」
とんでもないことだぞとロロイア王は慄いている。
「火でも放たれて、目につく者から嬲り殺しにされでもしたら目も当てられないぞ?!しかもその要因がこちらにあるならガヴァムに何か言うこともできないし、最悪の展開にしかならないではないか!」
ただの共倒れだと王が悲鳴をあげた。
その意見には俺も同意しよう。
狂人に錯乱系はやめた方がいい。
「ち、違いますわ!私はただ自害してくれればと思っただけで…!」
どうやら王妃は随分と目論見が甘かったらしい。
けれどそうなってくると誰がこちらに毒を盛ったのか…。
もしやロキに行く方の皿を誰かが取り替えたのか?
可能性はなくはない。
一先ず状況確認をと揃って厨房へと向かう。
そこで王妃の指示で毒を盛ったらしき男が震えながら『自分が確かにロキ陛下の皿に毒を盛りました』と白状した。
ロロイア王は蒼白な顔で首を振っていたが、俺の前で白状したから言い逃れは不可能だ。
男が毒を盛った皿は二皿。
一皿はロキでもう一皿はカリンだろう。
どちらの皿で食べるかわからないからそうしたのだと思う。
そのうちの一皿か二皿かはわからないが、こちらに回ってきたのは確実だった。
それをした犯人は────一体誰だ?
ロキとカリンは当然だが違う。
あの二人の周りにいた者達もロキの命令でキュリアス王子の相手をしていたから違うだろう。
となると後はロロイア側の者に他ならない。
キュリアス王子以外となると、王と王妃、第二王子、王女、王太子妃の五人。
王は何も知らなそうだし、王妃が毒を指示したのも間違いない。
となると取り替えたのは残った三人の手の者か、悪意を持った使用人か…。
「持っていく前に誰かがここに来なかったか?」
「そう言えば……確かシェイラ王女が来られていたような…」
「シェイラが?」
これには王と王妃も驚いたらしい。
王女自ら厨房に来るなんて、驚くなという方がおかしいのだろう。
「それは何の用で?」
「はい。キュリアス王子があのようなことになって食欲がなくなったらしく、少なめにしてほしいと言いに来られたのです」
まあ理由としては特におかしなものではない。
とは言えこうなったら一応話を聞いておくべきだろう。
そう思いながら今度は王女の部屋へと足を向けた。
けれどそこに王女の姿はどこにもなく、その辺を歩いていた侍女を捕まえて尋ねると、恐らくニーナ王太子妃と一緒に食事をしているのではないかとのことだった。
どうやら二人は仲が良いらしい。
そうしてニーナ王太子妃の部屋へと向かうと、そこでは楽し気に話しながら食事をする二人の姿があった。
ニーナ王太子妃の部屋は城の庭園を突っ切った先にある離れの宮だ。
静かにライトアップされた花々を愛でながら食事をする二人はとても楽しそうに見える。
とてもこちらに毒を盛ったようには見えない。
「シェイラ!」
まずは王が声を掛け、彼女達を振り向かせる。
「まあ陛下。どうかなさいましたか?」
実の父親に対し、シェイラ王女は他人行儀に『陛下』と呼びかけた。
なんだか距離を感じる呼び方だ。
「お前…セドリック王子の夕餉に、ど、毒草を混入したりはしていないだろうな?」
「セドリック王子の夕餉にですか?いいえ。私はしておりませんわ」
その返答に王がホッとしたように息を吐いたが、ここで王妃の方が声を荒らげた。
「本当にやっていないでしょうね?!もし万が一にでもロキ陛下とセドリック王子の皿を交換したなんてことが後からわかったらただじゃ置かないわよ?!」
「……王妃陛下。それはどういうことでしょう?まさかとは思いますが”ロキ陛下の方に毒草を盛った”と、ご自分で白状なさっているのでしょうか?」
その言葉に王妃がグッと言葉に詰まる。
まあ既にバレている話だし、隠し立てするのは不可能ではあるが…。
「ロロイアの王妃がガヴァムの王を暗殺しようとするなんて恐ろしいですわ。もうこの国は終わりですわね」
うふふとどこか嬉しそうに笑うシェイラ王女。
彼女も大抵おかしい気がする。
破滅思考とでも言うのだろうか?
どこかロキと同じ匂いを感じさせる王女だ。
「あ、貴女に何がわかるの?!キュリアスが酷い目に合っているのよ?!」
「あら。それなら王妃陛下が全部肩代わりして差し上げれば良かったのでは?切り取る部位もありませんし、一番平和的解決法だったと思いますわ」
ホホホと王女が楽しげに笑う。
そんな王女に腹を立て、王妃が掴みかかりながら叫んだ。
「そうよ、そうだわ!貴女がキュリアスの代わりに償えば良かったのよ!来なさい!この役立たず!」
そう言いながら髪を鷲掴みにする王妃に、娘への愛情は一欠片も感じられない。
王女はすぐさまその場にしゃがみ込み、身を丸めて死んだような目で感情を切り離していた。
その姿を見て、きっといつもこんな扱いをされているのだろうと一目でわかった。
王女がロキと似ているのも仕方がないのかも知れない。
そうして王妃が一人ギャイギャイ騒いでいるところへ、ロキの暗部らしき男が俺の元へとやってきた。
「セドリック王子。先程ロキ陛下が帰りの挨拶で部屋をお訪ねしたところ、アルフレッド妃殿下が襲撃されておりました。お助け致しましたが、カリン陛下の時同様の香が使われたらしく…。急ぎお越しを」
俺はそれを聞いてすぐさま踵を返し、部屋の方へと駆けた。
その暗部の男も本気の俺の走りにしっかりとついてくる。
試しに『闇医者の名は?』と問えば答えが返ってきた為、裏の人間と思われる。
これなら信用はできそうだと思ったため、そのまま街の方にいるユーツヴァルトという医師の男を連れてきてほしいと頼んだ。
泊っている宿を口にしたらすぐさま動いてくれたから恐らく把握している宿だったのだろう。
この城にいる者は現状誰も信用できない状況だ。
アルフレッドの知り合いの医師を連れてくるのが一番だと判断した。
まだ宿にいてくれるといいが…。
***
【Side.アルフレッド】
毒を吐き出したとはいえ、水を飲んでは吐き飲んでは吐きとしたせいで物凄く疲れ切っていた。
よっぽど強力なものを選んで盛ったのか、少量飲み込んだだけでも気分が悪い。
気づかず肉ごと飲み込んでたら大変なことになるところだった。
「はぁ…」
取り敢えず少し休んだらすぐに良くなるだろうと思って、ベッドにおとなしく横になっておくことに。
セドが無茶をしないかだけが心配だったが、ワンクッション挟んでからロロイア王のところに行くらしいから、ロキ陛下が少しでもセドの怒りを静めてくれることを願おう。
そう思いながらゆっくりと目を閉じた。
異変に気付いたのはそれから暫くしてからだった。
なんだか嗅ぎ慣れない匂いが鼻をくすぐったと思ったら段々と体が重たくなってきたのだ。
(まずい…!)
これは相手の動きを封じる系の香だ。
(誰かが侵入してきたのか?)
でもここにはセドが置いて行った沢山の暗部達が護衛として配置されている。
その暗部達が侵入者を許すとは思えない。
そう思いながら無理やり体を動かし、なるべくこれ以上香を吸い込まないよう気を付けながら気力だけでベッドから抜け出した。
けれどそこに広がっている光景を見て愕然となる。
暗部達が武器を抜く間もなく、全員床に倒れ伏していたからだ。
余程の手練れかと思ったが、侵入者達は特に手練れといった様子はない。
理由はわからないが、暗部達は何らかの方法で全滅させられたようだ。
俺も思うように動けないし、抗うのが精一杯。
犯人はキュリアス王子ではないだろうが、万が一にでもカリン陛下と同じように犯されでもしたら目も当てられない。
何とかこの状況を打破しなければと自分で自分に気合いを入れる。
そうして剣で何とか凌いでいたら、唐突にドアをノックする音が聞こえてきた。
部屋の中に緊張が走る。
どうかセドであってくれと願うが、その願いは叶わず、聞こえてほしくない声が耳に届いて焦って逃げろと叫んでしまった。
だって聞こえてきたのは「アルフレッド妃殿下?ロキですが」だったんだ。
万が一にでもこれで死なれたらシャレにならない。
ロキ陛下は弱いようで強いけど、そう見えてやっぱり俺やセドに比べたらずっと弱いんだから。
けれどどうやら一人で来たわけではなかったようで、護衛騎士のリヒターらしき声がしっかりと聞こえてきてホッとする。
その後扉は開かれ、ロキ陛下についてきていた近衛騎士達の手であっという間に場が制圧された。
窓もしっかり開けられ換気もされたからロキ陛下が倒れる心配もない。
そのことにホッとしたら一気に緊張が解けて、身体から力が抜けていった。
「は…あ…セド……」
今更だけど、セドの方は襲撃にあってはいないだろうか?
まあセドだったら返り討ちにしているだろうけど、万が一ということもなくはない。
どうか無事でいてくれと願いながら、俺はそのまま意識を手放した。
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※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
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