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【ロロイア国訪問】
158.ロロイア国へ②
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翌日ロロイア城へと迎え入れられるとそのまま謁見の間へと通された。
堂々としたセドの姿に皆がひれ伏すように頭を下げていく。
こうやって見るとブルーグレイは本当に小国から恐れられる大国なんだなと改めて実感する。
そして謁見の間へと入るとそこには玉座に座るロロイア王と王妃の姿とキュリアス王子始め他の王子や王女の姿もあった。
キュリアス王子の隣に立っているのは王太子妃だろうか?
控えめな印象を受けるが楚々とした美女だった。
そうして見ていたのが悪かったのか、セドはそんな俺の腰を引き寄せながら王へと挨拶をし始めた。
やめろ。
流石に礼儀がなっていないと思われるぞ?
まあ…立場的にセドの方が上だからかロロイア王は全く気分を害した様子はなかったようだけど。
「セドリック王子、ようこそロロイア国へ」
「ロロイア王。父から世代交代をしても友好的に付き合っていけたら嬉しく思うと伝言を預かってきた。キュリアス王子に挨拶をさせていただいても?」
「もちろんです。キュリアス。セドリック王子にご挨拶を」
そう言ってキュリアス王子がにこやかにこちらへと近づいてくる。
「セドリック王子。お会いできて光栄です」
「……そうか」
(おいぃっ?!)
握手くらいしろよ!
キュリアス王子が困ってるだろ?!
間近にじっくりキュリアス王子を観察したのはしたようだが、握手を見事にスルーするセドに俺は突っ込みを入れたくなった。
昨日ユーツヴァルトと話していた時の方がまだ好意的雰囲気を感じたぞと思いながらハラハラしながら見守っていると、キュリアス王子は笑顔のまま俺にスッと手を向けてきた。
(メンタル強いな?!)
「アルフレッド妃殿下にも友好のご挨拶を」
「あ。よろしく…」
そこまで言ったところで握手をしようとしたらセドに阻止された。
何故だ?!
「キュリアス王子。俺の寵姫に気安く触らないでもらおうか」
「これは失礼を」
そう言ってキュリアス王子は優雅に礼をしてスッと引いてくれた。
セドみたいな傲慢な態度にも怒らないなんて大人だと思う。
それにしてもセドはどうしてこんなにキュリアス王子に塩対応なんだろう?
正直言ってよくわからない。
だからその後部屋に案内された後で直接聞いてみることにした。
「なあセド。なんでそんなにキュリアス王子に冷たいんだ?」
「あんな奴が長々と王位につけるはずがないだろう?逆につけたらこの国はどんどん腐敗が進むだろうな」
そうなったら終わりだとセドが痛烈に批判する。
何がそんな評価に繋がったんだろう?
俺にはさっぱりわからなかった。
まあ兎に角、セドにはキュリアス王子とよろしくする気が全くなかったから握手を拒んだというのだけはよくわかった。
この時は『あんなに大人な対応が取れる人なのになぁ』と思っていたんだけど…。
この後の晩餐で、俺はセドが言っていた意味がちょっとだけわかった。
『あれはない…!』
***
【Side.セドリック】
ロロイア国で近々代替わりがあると父から聞き、面倒だと思いながらもまあアルフレッドがいれば気も紛れるかと思い、招待状を手にわざわざここまで足を運んだ。
最初は気乗りしなかったがアルフレッドの昔の知り合いというユーツヴァルトという男に会って驚いた。
思いもしなかったが医者繋がりであの闇医者の知り合いだったのだ。
意外な繋がりに世間は狭いなと感じたが、なかなか楽しい話も聞けたしよかったと思おう。
そして今日、ロロイアの新王になる予定のキュリアス王子と挨拶をした。
会った感想としてはあまり付き合いたい類の輩ではないなという印象だ。
目が腐っているからどうせ在位期間は短いだろう。
寧ろこういう輩がいつまでも上にいると下が腐るから始末が悪い。
余程心を入れ替えるか、自ら退位しなければ国は衰退の一途だろうと思われた。
ロキのように面白みがあればまだマシだが、この王子はそんなタイプでもなさそうだし、目をかける価値すらない。
そう思ったから握手すら拒否してやった。
そのことに関して後でアルフレッドから叱られたが知ったことか。
その後しばらくのんびり寛いでいたら晩餐の席にご案内しますと侍女がやってきて、案内されるがままに食堂へと向かった。
その場でロロイア王から『今日の晩餐にはガヴァムからの来客も同席されるのですよ』と教えられる。
一瞬ロキかと思ったが続く言葉で違うと悟った。
「先日キュリアスがガヴァムでロキ陛下に粗相を致しまして、是非謝罪とお詫びをと再三お手紙でお願いしたところ、やっと王配であられるカリン陛下がきてくださることになったのです」
ロロイアの王はホッとしたように言っているが、これ自体がロキを怒らせているときっと気づいていないのだろう。
あの男から兄であるカリンを取り上げるなど、一番してはいけないことだ。
できれば今すぐ返してやれと言ってやりたい。
ロキは好戦的なタイプではないが、カリンが絡むと箍が外れる。
自分が狙われる分には全く怒ったりしないから勘違いする馬鹿もいるかもしれないが、そこらへんはしっかり狂王だぞと言ってやりたかった。
(まあ見ている分には面白いし、俺には直接関係ないから別に構わないが)
それにしても粗相とは何をやらかしたのだろう?
最近連絡を入れていなかったから、また揶揄いがてらツンナガールで連絡を入れてみようか?
アルフレッドがそれを見て妬いてくれたら一石二鳥だ。
そんなことを考えながら晩餐の席に着いた。
それから間もなくカリンも晩餐の席へとやってくる。
こちらの事を何も聞いていなかったらしく、俺の顔を見るや否や蒼白になって固まっていた。
ロキがいる時はまだ虚勢が張れていたが、どうやら一人だと無理だったらしい。
座れと珍しく親切に言ってやったのに、一瞬目眩を起こしたかのように手を額に当てた。
アルフレッドの非難の目が俺に突き刺さるからやめろ。
そう思って殺気を飛ばしたら泣きそうな顔でこちらを見てまた固まってしまった。
まさに蛇に睨まれた蛙のようだ。
大人しくしていれば何もしないのに、失礼な奴だな。
後でもう一度釘を刺してやろうか。
そう思っていたらロロイアの王が心配そうにカリンへと声を掛ける。
「カリン陛下。お加減でも?」
「い、いや。大丈夫だ」
そう言って辛うじてカリンは席へと座った。
「本日は大国ブルーグレイのセドリック王子とご寵姫のアルフレッド様、そしてガヴァム王国から王配のカリン陛下をお招きしております。三ヶ国の益々の発展を祈って、乾杯!」
にこやかに乾杯の挨拶をしたロロイア王に形だけ付き合って乾杯してやる。
この微妙な空気を感じ取れないなんて随分呑気なものだ。
「いや~カリン陛下が来て下さって本当に良かった。何度手紙を出してもロキ陛下からは色良いお返事がいただけなかったので、それほどキュリアスの事を怒っておられるのかと心配していたのですよ」
「そ、そうですか。ロキは特に怒ってはいなかったのでご心配なく」
「本当ですか?我が国もメルケやネブリスのように恐ろしい目にはあいたくないですからな。こうしてしっかりと謝罪の場を設けたかったのです」
「…………」
今まさに怒りを買っているぞとカリンも思っている事だろう。
それにしてもネブリス国がメルケ国に取り込まれたとは聞いていたが、ガヴァムが一枚噛んでいるのか?
これは知らなかった。
この二国はアンシャンテとガヴァムの間にある国で、長らく双国間で紛争が絶えなかった。
それが最近一国に統一されたのだが────。
(念のため詳しく調べておくか)
もしかしたら面白い話が出てくるかもしれない。
そうして淡々と情報だけを得て食事を進めていく。
一先ず大人しくしていればアルフレッドも文句はないだろう。
そう思いながら時が過ぎ、メインを食べ終えたタイミングでキュリアス王子がこちらへと話を振ってきた。
「そう言えばロキ陛下はセドリック王子の愛人ではないと否定しておられましたが、実際のところ、どうなのでしょう?」
その言葉に場を共にしていた者達がギョッとしたように顔を上げる。
ほろ酔いなのかキュリアス王子は全く悪びれた様子もなくそんなことを口にした。
「ロキ陛下は色っぽい方ですからね。実にそそられると思ってお声掛けしたのに上手く逃げられてしまいました。セドリック王子とは懇ろの仲だと聞きましたし、何かお誘いしやすい方法があれば是非ご教授いただけないでしょうか?」
(こいつは馬鹿なのか?)
恐らく『粗相』というのはロキに粉をかけたことなんだろう。
それで謝罪のためカリンを呼んだ席でこれを言うとは…。
それを聞いたカリンはあからさまに気分を害しているし、これは俺に対しても失礼だ。
何故俺がロキと懇ろの仲だと言われた挙句、アルフレッド以外を誘うように言われないといけない?
非常に不愉快だ。
「俺の寵姫の前でよくもそんな話をヘラヘラと口にできたものだな?軽口を叩く相手は選んだ方が身のためだぞ?」
「ひっ?!」
ふざけた奴だと本気の殺気を飛ばすとキュリアス王子は怯えてガタガタ震え出した。
相手を見ず舐めてかかるからそうなるのだ。
「セド!ストップ!」
アルフレッドが慌てたように止めにかかるが、この命知らずにはきっちりわからせた方がいいぞと言ってやりたい。
「普通に拒否したらいいだけの話だろ?殺気は引っ込めろ」
「…ふん。友好のためと呼ばれたにもかかわらずこれだぞ?不愉快にも程がある」
「ま、まあそうだけど、ここはカリン陛下を見習って穏便に…」
確かに怒るとしたら圧倒的に向こうではあると思ったためチラリとそちらを見やると、カリンは先程の俺の殺気のせいですっかり食事の手が止まってしまっていた。
その顔は真っ青だ。
正直、怒りより恐怖かと呆れてしまう。
もっと伴侶の為に気をしっかり持てと言ってやりたい。
(情けない奴め)
まあいい。
どうせ普段ロキにぬくぬく守ってもらっているんだ。
そのまま腑抜けていればいい。
「気分が悪い。俺はもう行く。アルフレッド、お前も来い。明日朝にはここを発つぞ。次王の見極めはもう済んだ。これ以上は不要だ」
「セド…?」
「ロロイア王、国が存続できるかは貴殿次第だ。精々愚王を立てることがないよう再検討してみることだ」
そう言って部屋へと引き上げた。
堂々としたセドの姿に皆がひれ伏すように頭を下げていく。
こうやって見るとブルーグレイは本当に小国から恐れられる大国なんだなと改めて実感する。
そして謁見の間へと入るとそこには玉座に座るロロイア王と王妃の姿とキュリアス王子始め他の王子や王女の姿もあった。
キュリアス王子の隣に立っているのは王太子妃だろうか?
控えめな印象を受けるが楚々とした美女だった。
そうして見ていたのが悪かったのか、セドはそんな俺の腰を引き寄せながら王へと挨拶をし始めた。
やめろ。
流石に礼儀がなっていないと思われるぞ?
まあ…立場的にセドの方が上だからかロロイア王は全く気分を害した様子はなかったようだけど。
「セドリック王子、ようこそロロイア国へ」
「ロロイア王。父から世代交代をしても友好的に付き合っていけたら嬉しく思うと伝言を預かってきた。キュリアス王子に挨拶をさせていただいても?」
「もちろんです。キュリアス。セドリック王子にご挨拶を」
そう言ってキュリアス王子がにこやかにこちらへと近づいてくる。
「セドリック王子。お会いできて光栄です」
「……そうか」
(おいぃっ?!)
握手くらいしろよ!
キュリアス王子が困ってるだろ?!
間近にじっくりキュリアス王子を観察したのはしたようだが、握手を見事にスルーするセドに俺は突っ込みを入れたくなった。
昨日ユーツヴァルトと話していた時の方がまだ好意的雰囲気を感じたぞと思いながらハラハラしながら見守っていると、キュリアス王子は笑顔のまま俺にスッと手を向けてきた。
(メンタル強いな?!)
「アルフレッド妃殿下にも友好のご挨拶を」
「あ。よろしく…」
そこまで言ったところで握手をしようとしたらセドに阻止された。
何故だ?!
「キュリアス王子。俺の寵姫に気安く触らないでもらおうか」
「これは失礼を」
そう言ってキュリアス王子は優雅に礼をしてスッと引いてくれた。
セドみたいな傲慢な態度にも怒らないなんて大人だと思う。
それにしてもセドはどうしてこんなにキュリアス王子に塩対応なんだろう?
正直言ってよくわからない。
だからその後部屋に案内された後で直接聞いてみることにした。
「なあセド。なんでそんなにキュリアス王子に冷たいんだ?」
「あんな奴が長々と王位につけるはずがないだろう?逆につけたらこの国はどんどん腐敗が進むだろうな」
そうなったら終わりだとセドが痛烈に批判する。
何がそんな評価に繋がったんだろう?
俺にはさっぱりわからなかった。
まあ兎に角、セドにはキュリアス王子とよろしくする気が全くなかったから握手を拒んだというのだけはよくわかった。
この時は『あんなに大人な対応が取れる人なのになぁ』と思っていたんだけど…。
この後の晩餐で、俺はセドが言っていた意味がちょっとだけわかった。
『あれはない…!』
***
【Side.セドリック】
ロロイア国で近々代替わりがあると父から聞き、面倒だと思いながらもまあアルフレッドがいれば気も紛れるかと思い、招待状を手にわざわざここまで足を運んだ。
最初は気乗りしなかったがアルフレッドの昔の知り合いというユーツヴァルトという男に会って驚いた。
思いもしなかったが医者繋がりであの闇医者の知り合いだったのだ。
意外な繋がりに世間は狭いなと感じたが、なかなか楽しい話も聞けたしよかったと思おう。
そして今日、ロロイアの新王になる予定のキュリアス王子と挨拶をした。
会った感想としてはあまり付き合いたい類の輩ではないなという印象だ。
目が腐っているからどうせ在位期間は短いだろう。
寧ろこういう輩がいつまでも上にいると下が腐るから始末が悪い。
余程心を入れ替えるか、自ら退位しなければ国は衰退の一途だろうと思われた。
ロキのように面白みがあればまだマシだが、この王子はそんなタイプでもなさそうだし、目をかける価値すらない。
そう思ったから握手すら拒否してやった。
そのことに関して後でアルフレッドから叱られたが知ったことか。
その後しばらくのんびり寛いでいたら晩餐の席にご案内しますと侍女がやってきて、案内されるがままに食堂へと向かった。
その場でロロイア王から『今日の晩餐にはガヴァムからの来客も同席されるのですよ』と教えられる。
一瞬ロキかと思ったが続く言葉で違うと悟った。
「先日キュリアスがガヴァムでロキ陛下に粗相を致しまして、是非謝罪とお詫びをと再三お手紙でお願いしたところ、やっと王配であられるカリン陛下がきてくださることになったのです」
ロロイアの王はホッとしたように言っているが、これ自体がロキを怒らせているときっと気づいていないのだろう。
あの男から兄であるカリンを取り上げるなど、一番してはいけないことだ。
できれば今すぐ返してやれと言ってやりたい。
ロキは好戦的なタイプではないが、カリンが絡むと箍が外れる。
自分が狙われる分には全く怒ったりしないから勘違いする馬鹿もいるかもしれないが、そこらへんはしっかり狂王だぞと言ってやりたかった。
(まあ見ている分には面白いし、俺には直接関係ないから別に構わないが)
それにしても粗相とは何をやらかしたのだろう?
最近連絡を入れていなかったから、また揶揄いがてらツンナガールで連絡を入れてみようか?
アルフレッドがそれを見て妬いてくれたら一石二鳥だ。
そんなことを考えながら晩餐の席に着いた。
それから間もなくカリンも晩餐の席へとやってくる。
こちらの事を何も聞いていなかったらしく、俺の顔を見るや否や蒼白になって固まっていた。
ロキがいる時はまだ虚勢が張れていたが、どうやら一人だと無理だったらしい。
座れと珍しく親切に言ってやったのに、一瞬目眩を起こしたかのように手を額に当てた。
アルフレッドの非難の目が俺に突き刺さるからやめろ。
そう思って殺気を飛ばしたら泣きそうな顔でこちらを見てまた固まってしまった。
まさに蛇に睨まれた蛙のようだ。
大人しくしていれば何もしないのに、失礼な奴だな。
後でもう一度釘を刺してやろうか。
そう思っていたらロロイアの王が心配そうにカリンへと声を掛ける。
「カリン陛下。お加減でも?」
「い、いや。大丈夫だ」
そう言って辛うじてカリンは席へと座った。
「本日は大国ブルーグレイのセドリック王子とご寵姫のアルフレッド様、そしてガヴァム王国から王配のカリン陛下をお招きしております。三ヶ国の益々の発展を祈って、乾杯!」
にこやかに乾杯の挨拶をしたロロイア王に形だけ付き合って乾杯してやる。
この微妙な空気を感じ取れないなんて随分呑気なものだ。
「いや~カリン陛下が来て下さって本当に良かった。何度手紙を出してもロキ陛下からは色良いお返事がいただけなかったので、それほどキュリアスの事を怒っておられるのかと心配していたのですよ」
「そ、そうですか。ロキは特に怒ってはいなかったのでご心配なく」
「本当ですか?我が国もメルケやネブリスのように恐ろしい目にはあいたくないですからな。こうしてしっかりと謝罪の場を設けたかったのです」
「…………」
今まさに怒りを買っているぞとカリンも思っている事だろう。
それにしてもネブリス国がメルケ国に取り込まれたとは聞いていたが、ガヴァムが一枚噛んでいるのか?
これは知らなかった。
この二国はアンシャンテとガヴァムの間にある国で、長らく双国間で紛争が絶えなかった。
それが最近一国に統一されたのだが────。
(念のため詳しく調べておくか)
もしかしたら面白い話が出てくるかもしれない。
そうして淡々と情報だけを得て食事を進めていく。
一先ず大人しくしていればアルフレッドも文句はないだろう。
そう思いながら時が過ぎ、メインを食べ終えたタイミングでキュリアス王子がこちらへと話を振ってきた。
「そう言えばロキ陛下はセドリック王子の愛人ではないと否定しておられましたが、実際のところ、どうなのでしょう?」
その言葉に場を共にしていた者達がギョッとしたように顔を上げる。
ほろ酔いなのかキュリアス王子は全く悪びれた様子もなくそんなことを口にした。
「ロキ陛下は色っぽい方ですからね。実にそそられると思ってお声掛けしたのに上手く逃げられてしまいました。セドリック王子とは懇ろの仲だと聞きましたし、何かお誘いしやすい方法があれば是非ご教授いただけないでしょうか?」
(こいつは馬鹿なのか?)
恐らく『粗相』というのはロキに粉をかけたことなんだろう。
それで謝罪のためカリンを呼んだ席でこれを言うとは…。
それを聞いたカリンはあからさまに気分を害しているし、これは俺に対しても失礼だ。
何故俺がロキと懇ろの仲だと言われた挙句、アルフレッド以外を誘うように言われないといけない?
非常に不愉快だ。
「俺の寵姫の前でよくもそんな話をヘラヘラと口にできたものだな?軽口を叩く相手は選んだ方が身のためだぞ?」
「ひっ?!」
ふざけた奴だと本気の殺気を飛ばすとキュリアス王子は怯えてガタガタ震え出した。
相手を見ず舐めてかかるからそうなるのだ。
「セド!ストップ!」
アルフレッドが慌てたように止めにかかるが、この命知らずにはきっちりわからせた方がいいぞと言ってやりたい。
「普通に拒否したらいいだけの話だろ?殺気は引っ込めろ」
「…ふん。友好のためと呼ばれたにもかかわらずこれだぞ?不愉快にも程がある」
「ま、まあそうだけど、ここはカリン陛下を見習って穏便に…」
確かに怒るとしたら圧倒的に向こうではあると思ったためチラリとそちらを見やると、カリンは先程の俺の殺気のせいですっかり食事の手が止まってしまっていた。
その顔は真っ青だ。
正直、怒りより恐怖かと呆れてしまう。
もっと伴侶の為に気をしっかり持てと言ってやりたい。
(情けない奴め)
まあいい。
どうせ普段ロキにぬくぬく守ってもらっているんだ。
そのまま腑抜けていればいい。
「気分が悪い。俺はもう行く。アルフレッド、お前も来い。明日朝にはここを発つぞ。次王の見極めはもう済んだ。これ以上は不要だ」
「セド…?」
「ロロイア王、国が存続できるかは貴殿次第だ。精々愚王を立てることがないよう再検討してみることだ」
そう言って部屋へと引き上げた。
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