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【ミラルカ旅行】
閑話9.イメージアップの後始末 Side.アルメリア
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セドリック王子とアルフレッドがゴッドハルトに出掛けたある日のこと、私はブルーグレイの王であるヴィンセント陛下から呼び出しを受けた。
お茶の日でもないのに珍しいとは思ったものの、そのまま王の執務室へと足を運ぶ。
そこには8割仕事を割り振っていたセドリック王子が不在なせいで仕事が増大した陛下の執務机があり、けれど全く焦った様子もなく余裕の顔で微笑む陛下の姿があった。
大国の王はいつでも貫禄と余裕が感じられて素晴らしいと思う。
「ああ、姫。来てくれたか」
そんな陛下に声を掛けられ、その場でカーテシーをして礼を取った。
「お呼びと伺い馳せ参じました」
「気楽にしてくれ。実は呼び出したのには訳があってな」
そう言いながら陛下は一通の手紙を私へと差し出してくる。
読めと言うことだろう。
そして目を通すと、そこには目を瞠るようなことが書かれてあった。
それは隣国であるリュシーナ国からのものだったのだが、曰く、これまで疎遠だったブルーグレイと友好的な付き合いをしたいというもの。
「実は他にも何通か他国から友誼を結びたいと手紙が来ていてな」
陛下によると私がプロデュースした例の演劇が功を奏し、国民だけではなく近隣国にもセドリック王子のイメージアップが行われたらしい。
けれどちょっと早すぎる気もするのだけれど…。
そう思っていたらこちらの気持ちを察したのか、ヴィンセント陛下はちょっと悪戯っぽい顔をしながらそれはロキ陛下のせいだと言ってきた。
三か国事業が上手くいった関係で他国からその事業を見に来る者が後を絶たないらしく、その際ブルーグレイの技術協力もあったと宣伝してくれたり、仲良くしているという噂を聞いた者がセドリック王子の為人を尋ねる度に『話の分かるいい人』だと伝えてくれていたのだとか。
しかも劇についても話に触れてくれて『大体あの通りの人ですよ』などと言ったらしい。
(ああ…ロキ陛下。あんな悪魔に騙されて…)
とは言えあの二人の仲が良いのは本当だし、言っても仕方がない。
そしてそれを受けて劇に興味を持ってくれた人がわざわざこちらから劇団を呼び寄せ、観劇を楽しんでくれたりもしたのだとか。
思っていた以上の効果だ。
一国の王の後押しの影響は非常に大きいのだと改めて実感してしまう。
でも『それって大丈夫なの?!』と思わなくもない。
確かにイメージアップの為に作った劇だから、沢山の人に観てもらってあの悪魔の印象を良くする狙い的には合ってはいるのだけれど…。
「……あの、それは結果的にこちらにはプラスですが、実際問題があったらロキ陛下にご迷惑がかかるのでは?」
なにせ実際のセドリック王子は劇の人物からはかなりかけ離れている。
それこそ見知った人物が観れば『誰だあれは』とほぼ思う程に。
ほぼ同じだと豪胆に言い切る変わった人物はロキ陛下くらいのものだろう。
あの方は普通にそのまま感じた通りに周囲に言っているのだろうけど、問題はないのだろうかと心配になる。
チワワなロキ陛下が落ち込むようなことにでもなれば私も責任を感じてしまう。
だからこそヴィンセント陛下に恐る恐るそう尋ねてみたのだけれど────。
「まあ彼なら大丈夫だろう」
意外にも陛下からはそう返されてしまった。
どうやらヴィンセント陛下的にロキ陛下に絶大な信頼を置いているらしい。
その上で問題があるとするならこちらだと言ってきた。
どうやらそちらが私を呼び出した本題らしい。
「折角姫とロキ陛下にイメージアップを手伝ってもらい好印象を与えられたのに、ここで躓くわけにはいかないのだ」
「と言いますと?」
「うむ。友誼を結びに各国の者達がここを訪れることも増えるだろう。だから姫には是非協力をしてもらいたい」
つまり、実際にセドリック王子に会った者達が恐怖で震えないよう上手くフォローを入れて欲しいということのようだ。
(物凄く難しいことを言われてしまったわ…!)
でも陛下の言いたいことはよくわかる。
折角恐ろしい悪魔のような王子という印象を払拭できるこれ以上ないほどのチャンスを不意にするのは確かによろしくはない。
「わかりました。私もここは腹を括ります」
「そうしてくれるか」
「はい。二人がゴッドハルトから戻りましたら、私からも話をしてみようと思います」
「そうか。有難い。もちろん私からも伝えておくから、気楽にな」
「ありがとうございます」
そうして私はどうやってあの悪魔の恐ろしさを隠蔽すべきかを考え始めた。
(やっぱり接触は最低限にすべきよね)
接する時間が長くなればなるほど悪魔の怖さは身に染みる。
短時間であればアルフレッドを傍に配置すればマシなはず。
(でもイチャイチャし始めても面倒なのよね)
客人そっちのけと言うのもよくはない。
あと、客人がアルフレッドに興味を持つのも悪魔にスイッチが入るから危険だ。
となるとその間はアルフレッドを傍に置くのではなく、他の近衛に任せて、ご褒美的にアルフレッドを用意した方がいいのかもしれない。
(ご褒美なアルフレッド…ご褒美なアルフレッド……)
「ダメだわ。全然いい案が思い浮かばない…」
仕方がないので身近な侍女や護衛騎士達に相談してみることに。
「ご褒美としての騎士長ですか?」
私の相談に皆がうんうん唸りながら必死に考えてくれる。
「ここはやはり、セドリック王子がお好きそうな寝衣をご用意してみては?」
「具体的には?」
「そうですね…透けているのとか、きわどい物とか…」
「下着にもこだわってみてはどうでしょう?」
「アルフレッドが着てくれるかしら?」
「「「「う~ん……」」」」
それが一番の問題だ。
「それなら一見普通の騎士服だけど脱がせやすいような仕様にして作ってみては?」
「脱がせやすい騎士服?」
「ええ。それか脱がせる楽しみがあるような仕様にするとか…」
確かにそれならあからさまではないからアルフレッドも普通に気づかず着てくれるかもしれない。
「ではそれで仕立ててもらえるようデザイナーと相談してみましょうか」
それからデザイナーと一緒に皆でああでもないこうでもないと言いながら悪魔が喜びそうな服を考えた。
実際に出来上がるのは先になってしまうけれど、客人は次々来る可能性が高いし、最初の客人に間に合わせる必要はない。
「ではこれで」
適度に王子の色を取り入れながら普段使いしやすいミラルカ仕様の形の騎士服が基本。
これは以前も似たようなものを作ったし問題はないだろう。
前回と違う点はジャケットにさり気なくあしらったボタン。
形を工夫し素早く外せるよう設計したので、脱ぎやすい(脱がせやすい)仕様になっている。
シャツのボタンも同様だ。
スラックスの方もストレッチを利かせた布を使い動きやすく、且つできるだけシルエットにもこだわったデザインにしてみた。
これならお尻のラインも綺麗に出るし、王子の目を楽しませつつ尻を撫でる楽しみもあるから良いのではと皆の意見が一致した。
上手く取り入れられたと思うのだけれど、どうだろう?
アルフレッドには『動きやすい生地で作ったから剣を振る動きを邪魔せず快適だと思う』と言えば万事問題なく着てもらえるはずだ。
ちなみにシャツの生地にも一工夫。
剣を振って適度に汗をかいたら仄かに透ける仕様の布をチョイスしてみた。
大体打ち合いをした後で事に及ぶというのが定番だから、これもきっと喜ばれると思う。
後はジャケットの裾や袖ぐりに上品な刺繍を施し綺麗めに仕上げてみた。
これなら一騎士ではなくちゃんと寵姫に見えるだろうし、問題はないはず。
そうして帰ってきたセドリック王子とアルフレッドに客人の話を通し、暫くしてからオーダーしていたその騎士服は出来上がってきた。
「セドリック殿下。こちら、お話ししていたアルフレッド用の騎士服です。どうぞお手に取ってご覧ください」
予め話を通しておいたお陰で怒りを買うことなくその服を手に取ってもらうこともできた。
後は悪魔の承認をもらうのみ。
「………実際にアルフレッドが着てみないことには良さがわからんな」
まあそれはそうだろう。
特段悪戯しやすいような形には作っていないし、アルフレッドが警戒しないよう至って普通にしか見えないよう作ったのだから。
そして実際にアルフレッドを呼び、着てもらったのだけど────。
「新しい騎士服って言うからどんなのかと思ったけど…凄く動きやすくて軽い。シャツも生地が薄いから涼しいし、うん。良い感じ。姫、ありがとうございます!これなら護衛仕事に益々身が入ります!」
最初は来客を迎えるための騎士服だと言ったせいで渋い顔をしていたアルフレッドだったけれど、実際に着てみてその着心地に感動していた。
動きやすいから前より一層剣を振りやすくなったとご満悦だ。
やはり細々とした箇所に騎士達の意見を取り入れたのは正解だった。
そして肝心のセドリック王子の反応はと言うと……。
(怖い怖い怖い…!)
どう見てもニヤッとしか形容できない、物凄く恐ろしい笑みを浮かべている悪魔の姿に寒気が走る。
ダメだったらきっともっと冷めた顔をしていただろうし、これは恐らく気に入ってもらえたということだろう。
それにしても怖い。
アルフレッドには申し訳ないけれど、ブルーグレイの為と思って諦めてもらおうと思いながら、私は無理矢理笑みを作ってこう言った。
「問題がなければ数着用意してアルフレッドに渡しますので」
「ご苦労。アルフレッドも気に入ったようだし、着替え用にシャツは多めに頼む」
「かしこまりました。では失礼します」
パタン。
部屋の中からは動きやすいとはしゃぐアルフレッドの明るい声が聞こえてくるけれど、あの声が甘さを帯び始めるのも時間の問題だろう。
取り敢えず『後は上手くやってちょうだいね』と思いながら私は一仕事終えた気持ちでそっと自室へと戻ることに。
「さ、次のお仕事お仕事…」
こうして私は気持ちを切り替えて、おもてなしへと思いを馳せたのだった。
****************
※スピンオフの方の連載再開に当たっての小話です。
こちらはこちらでおもてなし話も書けたらなと思ってはいたんですが、別作の番外編を先に書く予定なので書くとしても割と先になりそうです。
ブルーグレイは近隣国の話が何故かゴッドハルトしかないので、何かしら書きつつアルフレッドの昔の知り合い的新キャラとかが書けるといいんですが…(^^;)
お茶の日でもないのに珍しいとは思ったものの、そのまま王の執務室へと足を運ぶ。
そこには8割仕事を割り振っていたセドリック王子が不在なせいで仕事が増大した陛下の執務机があり、けれど全く焦った様子もなく余裕の顔で微笑む陛下の姿があった。
大国の王はいつでも貫禄と余裕が感じられて素晴らしいと思う。
「ああ、姫。来てくれたか」
そんな陛下に声を掛けられ、その場でカーテシーをして礼を取った。
「お呼びと伺い馳せ参じました」
「気楽にしてくれ。実は呼び出したのには訳があってな」
そう言いながら陛下は一通の手紙を私へと差し出してくる。
読めと言うことだろう。
そして目を通すと、そこには目を瞠るようなことが書かれてあった。
それは隣国であるリュシーナ国からのものだったのだが、曰く、これまで疎遠だったブルーグレイと友好的な付き合いをしたいというもの。
「実は他にも何通か他国から友誼を結びたいと手紙が来ていてな」
陛下によると私がプロデュースした例の演劇が功を奏し、国民だけではなく近隣国にもセドリック王子のイメージアップが行われたらしい。
けれどちょっと早すぎる気もするのだけれど…。
そう思っていたらこちらの気持ちを察したのか、ヴィンセント陛下はちょっと悪戯っぽい顔をしながらそれはロキ陛下のせいだと言ってきた。
三か国事業が上手くいった関係で他国からその事業を見に来る者が後を絶たないらしく、その際ブルーグレイの技術協力もあったと宣伝してくれたり、仲良くしているという噂を聞いた者がセドリック王子の為人を尋ねる度に『話の分かるいい人』だと伝えてくれていたのだとか。
しかも劇についても話に触れてくれて『大体あの通りの人ですよ』などと言ったらしい。
(ああ…ロキ陛下。あんな悪魔に騙されて…)
とは言えあの二人の仲が良いのは本当だし、言っても仕方がない。
そしてそれを受けて劇に興味を持ってくれた人がわざわざこちらから劇団を呼び寄せ、観劇を楽しんでくれたりもしたのだとか。
思っていた以上の効果だ。
一国の王の後押しの影響は非常に大きいのだと改めて実感してしまう。
でも『それって大丈夫なの?!』と思わなくもない。
確かにイメージアップの為に作った劇だから、沢山の人に観てもらってあの悪魔の印象を良くする狙い的には合ってはいるのだけれど…。
「……あの、それは結果的にこちらにはプラスですが、実際問題があったらロキ陛下にご迷惑がかかるのでは?」
なにせ実際のセドリック王子は劇の人物からはかなりかけ離れている。
それこそ見知った人物が観れば『誰だあれは』とほぼ思う程に。
ほぼ同じだと豪胆に言い切る変わった人物はロキ陛下くらいのものだろう。
あの方は普通にそのまま感じた通りに周囲に言っているのだろうけど、問題はないのだろうかと心配になる。
チワワなロキ陛下が落ち込むようなことにでもなれば私も責任を感じてしまう。
だからこそヴィンセント陛下に恐る恐るそう尋ねてみたのだけれど────。
「まあ彼なら大丈夫だろう」
意外にも陛下からはそう返されてしまった。
どうやらヴィンセント陛下的にロキ陛下に絶大な信頼を置いているらしい。
その上で問題があるとするならこちらだと言ってきた。
どうやらそちらが私を呼び出した本題らしい。
「折角姫とロキ陛下にイメージアップを手伝ってもらい好印象を与えられたのに、ここで躓くわけにはいかないのだ」
「と言いますと?」
「うむ。友誼を結びに各国の者達がここを訪れることも増えるだろう。だから姫には是非協力をしてもらいたい」
つまり、実際にセドリック王子に会った者達が恐怖で震えないよう上手くフォローを入れて欲しいということのようだ。
(物凄く難しいことを言われてしまったわ…!)
でも陛下の言いたいことはよくわかる。
折角恐ろしい悪魔のような王子という印象を払拭できるこれ以上ないほどのチャンスを不意にするのは確かによろしくはない。
「わかりました。私もここは腹を括ります」
「そうしてくれるか」
「はい。二人がゴッドハルトから戻りましたら、私からも話をしてみようと思います」
「そうか。有難い。もちろん私からも伝えておくから、気楽にな」
「ありがとうございます」
そうして私はどうやってあの悪魔の恐ろしさを隠蔽すべきかを考え始めた。
(やっぱり接触は最低限にすべきよね)
接する時間が長くなればなるほど悪魔の怖さは身に染みる。
短時間であればアルフレッドを傍に配置すればマシなはず。
(でもイチャイチャし始めても面倒なのよね)
客人そっちのけと言うのもよくはない。
あと、客人がアルフレッドに興味を持つのも悪魔にスイッチが入るから危険だ。
となるとその間はアルフレッドを傍に置くのではなく、他の近衛に任せて、ご褒美的にアルフレッドを用意した方がいいのかもしれない。
(ご褒美なアルフレッド…ご褒美なアルフレッド……)
「ダメだわ。全然いい案が思い浮かばない…」
仕方がないので身近な侍女や護衛騎士達に相談してみることに。
「ご褒美としての騎士長ですか?」
私の相談に皆がうんうん唸りながら必死に考えてくれる。
「ここはやはり、セドリック王子がお好きそうな寝衣をご用意してみては?」
「具体的には?」
「そうですね…透けているのとか、きわどい物とか…」
「下着にもこだわってみてはどうでしょう?」
「アルフレッドが着てくれるかしら?」
「「「「う~ん……」」」」
それが一番の問題だ。
「それなら一見普通の騎士服だけど脱がせやすいような仕様にして作ってみては?」
「脱がせやすい騎士服?」
「ええ。それか脱がせる楽しみがあるような仕様にするとか…」
確かにそれならあからさまではないからアルフレッドも普通に気づかず着てくれるかもしれない。
「ではそれで仕立ててもらえるようデザイナーと相談してみましょうか」
それからデザイナーと一緒に皆でああでもないこうでもないと言いながら悪魔が喜びそうな服を考えた。
実際に出来上がるのは先になってしまうけれど、客人は次々来る可能性が高いし、最初の客人に間に合わせる必要はない。
「ではこれで」
適度に王子の色を取り入れながら普段使いしやすいミラルカ仕様の形の騎士服が基本。
これは以前も似たようなものを作ったし問題はないだろう。
前回と違う点はジャケットにさり気なくあしらったボタン。
形を工夫し素早く外せるよう設計したので、脱ぎやすい(脱がせやすい)仕様になっている。
シャツのボタンも同様だ。
スラックスの方もストレッチを利かせた布を使い動きやすく、且つできるだけシルエットにもこだわったデザインにしてみた。
これならお尻のラインも綺麗に出るし、王子の目を楽しませつつ尻を撫でる楽しみもあるから良いのではと皆の意見が一致した。
上手く取り入れられたと思うのだけれど、どうだろう?
アルフレッドには『動きやすい生地で作ったから剣を振る動きを邪魔せず快適だと思う』と言えば万事問題なく着てもらえるはずだ。
ちなみにシャツの生地にも一工夫。
剣を振って適度に汗をかいたら仄かに透ける仕様の布をチョイスしてみた。
大体打ち合いをした後で事に及ぶというのが定番だから、これもきっと喜ばれると思う。
後はジャケットの裾や袖ぐりに上品な刺繍を施し綺麗めに仕上げてみた。
これなら一騎士ではなくちゃんと寵姫に見えるだろうし、問題はないはず。
そうして帰ってきたセドリック王子とアルフレッドに客人の話を通し、暫くしてからオーダーしていたその騎士服は出来上がってきた。
「セドリック殿下。こちら、お話ししていたアルフレッド用の騎士服です。どうぞお手に取ってご覧ください」
予め話を通しておいたお陰で怒りを買うことなくその服を手に取ってもらうこともできた。
後は悪魔の承認をもらうのみ。
「………実際にアルフレッドが着てみないことには良さがわからんな」
まあそれはそうだろう。
特段悪戯しやすいような形には作っていないし、アルフレッドが警戒しないよう至って普通にしか見えないよう作ったのだから。
そして実際にアルフレッドを呼び、着てもらったのだけど────。
「新しい騎士服って言うからどんなのかと思ったけど…凄く動きやすくて軽い。シャツも生地が薄いから涼しいし、うん。良い感じ。姫、ありがとうございます!これなら護衛仕事に益々身が入ります!」
最初は来客を迎えるための騎士服だと言ったせいで渋い顔をしていたアルフレッドだったけれど、実際に着てみてその着心地に感動していた。
動きやすいから前より一層剣を振りやすくなったとご満悦だ。
やはり細々とした箇所に騎士達の意見を取り入れたのは正解だった。
そして肝心のセドリック王子の反応はと言うと……。
(怖い怖い怖い…!)
どう見てもニヤッとしか形容できない、物凄く恐ろしい笑みを浮かべている悪魔の姿に寒気が走る。
ダメだったらきっともっと冷めた顔をしていただろうし、これは恐らく気に入ってもらえたということだろう。
それにしても怖い。
アルフレッドには申し訳ないけれど、ブルーグレイの為と思って諦めてもらおうと思いながら、私は無理矢理笑みを作ってこう言った。
「問題がなければ数着用意してアルフレッドに渡しますので」
「ご苦労。アルフレッドも気に入ったようだし、着替え用にシャツは多めに頼む」
「かしこまりました。では失礼します」
パタン。
部屋の中からは動きやすいとはしゃぐアルフレッドの明るい声が聞こえてくるけれど、あの声が甘さを帯び始めるのも時間の問題だろう。
取り敢えず『後は上手くやってちょうだいね』と思いながら私は一仕事終えた気持ちでそっと自室へと戻ることに。
「さ、次のお仕事お仕事…」
こうして私は気持ちを切り替えて、おもてなしへと思いを馳せたのだった。
****************
※スピンオフの方の連載再開に当たっての小話です。
こちらはこちらでおもてなし話も書けたらなと思ってはいたんですが、別作の番外編を先に書く予定なので書くとしても割と先になりそうです。
ブルーグレイは近隣国の話が何故かゴッドハルトしかないので、何かしら書きつつアルフレッドの昔の知り合い的新キャラとかが書けるといいんですが…(^^;)
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※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
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