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【ミラルカ旅行】
閑話8.※14才のアルフレッド Side.セドリック
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※あれだけだと『ああいつもの二人だな』なので、今日は鬼畜なセドの話。
苦手な方はパスで。
宜しくお願いしますm(_ _)m
****************
ミラルカ皇国への旅行から帰って仕事を片付けやっと一息ついた頃、アルフレッドがトルセンから手紙が届いたと言ってやってきた。
トルセンは即位してから忙しいらしく、なかなか鍛錬もできないと書いてきていて、平たく言うとただの近況報告を兼ねた愚痴の手紙だった。
アルフレッドと親しいからこそそんなことを書いてきたのだろうが、アルフレッドとしてはこう言う時こそ息抜きに手合わせをしに行ってやりたいと思ってしまったらしい。
「姫にも相談したんだけど、休暇を取って一週間くらい行ってきてもいいか?」
「ダメだ」
「どうして?」
「俺の手が空かないからだ」
「俺一人で行くつもりなんだけど?」
「却下だ」
予め言いにきてくれたのは有難いが、当然一人で行かせるはずがない。
「トルセンと顔見知りだし、オーガストにでも頼め」
「トルセンは俺の友人だぞ?」
「知っている」
「じゃあどうして行かせてくれないんだよ?!」
「さっき言っただろう?俺の手が空かないからだ」
「子供じゃないんだから一人で行って帰ってきてもいいだろ?!」
「……アルフレッド。俺がそれを許すと思うのか?」
淡々とそう言ってやったら悔しそうに睨みつけ、「もういい!」と言って飛び出していった。
きっとこの分だとまた勝手に行動してしまうことだろう。
仕方がないからすぐさまノヴァに指示を出し、各方面に警戒をしてもらう。
当然姫をはじめとするミラルカサイドにも伝達するのは忘れない。
ワイバーンも押さえればきっと大丈夫だろう。
そう思いながら仕事を片付け部屋へと戻ると、卑怯だぞと思い切り罵られ、それから口を聞いてもらえなくなった。
これは久しぶりに面倒な状況になったなと思っていたら、アルフレッドがオリハルコンの剣で大岩に一撃はなって割砕かれた石つぶてが飛んできて怪我をしたと言う一報が入った。
(何をやっているんだ!)
いくらイラついたからと言って、それくらい避けろと苛々しながらアルフレッドのところに行ったら、物凄く不機嫌そうな顔をされてしまう。
しかも第一声が「誰?」ときた。
なんの嫌がらせだ。
「アルフレッド?夫である俺を忘れたのか?」
けれどここでおかしなことに気が付いた。
(剣を手元に置いていない?)
いつも肌身離さず剣を手の届く場所に置いているアルフレッドが剣を傍に置いていないのだ。
誰かがどけたとしても剣について言及しないアルフレッドはどう考えてもおかしい。
「夫?お前男だろ?嘘つくな」
訝し気に紡がれたその言葉に俺はその場にいた医師にどういうことだと視線を向ける。
「ひっ?!も、申し訳ございません!お、恐らく一時的に記憶を失っているものかと…!」
「…………いつ頃までの記憶ならある?」
直近だけならいいが、もし姫のことまで忘れていたら非常に厄介だ。
アルフレッドをここに繫ぎ止めるのが難しくなってしまう。
「は、はい。少々妃殿下にご質問をさせて頂きます」
そう言って医師はアルフレッドにいくつか質問をしてみた。
「ア、アルフレッド殿。貴方は今おいくつですか?」
「俺か?14才だ」
(14?……犯罪だな)
流石にここで無理矢理襲って思い出させようとしたら犯罪者扱いされてしまいそうだ。
いや。身体は大人だからいいのか?
どうやら流石の俺も動揺しているようだ。
「それよりここどこだよ?!俺、革命軍の募集に向かう途中なんだけど」
「革命軍の…募集?」
「そうだよ!ゴッドハルトの国王軍と戦うためにトルセンって言う奴があっちこっちに声を掛けてたから、俺も乗ろうと思って!」
「……そうか。ちなみに武器は?」
「武器?あー!そう言えば俺の剣!向かってる途中で魔物と戦った時に折れたんだった…!くそっ!」
どうやら剣自体は元々アルフレッド自身の武器だったらしい。
単純に昔は今のアルフレッドほどには剣への愛が深くなかったんだろう。
なんとなく笑える。
「そんな事より俺、急いでんだけど?」
今にも飛びだしていきそうなアルフレッドだが、ここではいそうですかと行かせるはずがない。
けれど今のアルフレッドにもう革命は終わっていると伝えてもきっと理解はできないだろう。
仕方がないから監視をしっかりしておくように指示を出し、俺は部屋から出てツンナガールに説明書を添えてトルセンへと大至急で送っておいた。
ワイバーン便で送ったしきっとすぐにでも連絡はもらえるだろう。
こんなことになるならもっと早くにトルセンにもツンナガールを渡しておけばよかった。
ロキ近辺の普及率が高いからうっかりしていたが、世間一般にはまだまだ全然浸透していないのだ。
裏社会ではこの短期間でかなり普及しているらしいが、一体どれだけ裏で量産しているのやら。
本来なら開発国であるこちらが黙っているいわれはないのだが、静観しているのにはちゃんとした理由がある。
俺自身が裏稼業の連中とパイプが繋がり、利用できるようになったからだ。
ハウルが言うところの『裏稼業連中のネットワーク』はなかなか侮れない。
彼らは協力関係にはあるが別にロキ専属の暗部ではない。
各自で動き各自で仕事として情報を得る。
どこにも報告義務はない代わりに求められればその情報を売ってくれる。
それがツンナガールの普及によって以前よりもずっとスピーディーに手に入れることができるようになったのだ。
「それを使わないなんてただの馬鹿ですよね?」
それはその通りだ。
物によっては情報の裏付けは必要だが、一から暗部を放って情報を取りに行くよりはずっと安全で確実な手段。
その分暗部をもっと有意義に使うことができるようになったと言っても過言ではない。
無駄な場所に人材を割くことなく重要な情報を手に入れる。
それは俺にとってプラスにはなってもマイナスにはならない。
だからこそ裏で勝手に量産することに関して口出しはしないことにしたのだ。
(さて…取り敢えずはアルフレッドだな)
『姫』という枷がなくなったならいつ飛び出して行っても全くおかしくはない。
なんとかトルセンから連絡が来るまで気を引いてここに繋ぎ止めておかないといけない。
「オーガストを呼べ」
そうして呼び出したオーガストに状況を伝えると、物凄く大ウケしていた。
「じゅ、14才?!笑える!」
「何でもいい。俺の手が空くまでアルフレッドを見張って、できればアルフレッドの記憶を取り戻せ」
「見張るのは構いませんけど、記憶に関してはショックでも与えた方が手っ取り早いのでは?」
「例えば?」
「無慈悲な王子に襲われるとか」
やはりそれが一番なんだろうか?
確かにショック療法にはなるかもしれないが、正直トルセンと話していない今の段階では気乗りはしない。
「取り敢えずアルフレッドに逃げられるのが一番困る。トルセンから連絡が来るまでお前に引き留め役を引き受けてもらいたい」
「はいはい。わかりました」
そう言ってアルフレッドの相手を引き受けてくれたオーガストは、何故か子供のアルフレッドのノリに合わせて「特訓だ!」と言い、剣の相手をし始めた。
「やった!」
「今日から俺のことは師匠と呼ぶように!」
「はい!師匠!」
「ブフォッ…!」
絶対にオーガストは楽しんでいる。
その姿を見て思わず殺気を撒き散らしたらドン引きされた。
「師匠…あの王子ってすっげー殺伐としてんな」
「言ってやるな。お前に忘れられて気が立ってるんだ」
オーガストが揶揄うようにそう言ったが、言われた方のアルフレッドは不思議そうに「変なの」と首を傾げるだけだった。
その翌日の夜、無事にトルセンから連絡が入り14才頃のアルフレッドについて話を聞くことができたが、当時は革命軍を募集している真っ最中で、アルフレッドとはまだそこまで親しくなかったんだと聞かされてしまう。
ただ、その頃から負けん気が強かったらしく、剣を片手に色んな相手に稽古してくれと突撃していっていたらしい。
そんな中で剣技を独自に磨き続けていたというのだから凄いものだ。
だから記憶を戻すならやっぱり剣で相手をしてやるのが一番ではないかとのこと。
そういうことならと剣を手にアルフレッドの元へと向かうと、ちょうどオーガストとの手合わせが終わったところだった。
「アルフレッド」
だからそう声を掛けてやったら物凄く胡乱な目で見られてしまう。
昨日殺気を振りまいたのがダメだったんだろうか?
とは言えここで引き下がる気はない。
トルセンの話によるとアルフレッドはこの頃から負けん気が強かったということだし、煽ってやったらすぐにでも乗ってくるだろう。
「肩慣らしに付き合え」
「……っ!」
ギッとこちらを睨みつけてくるアルフレッドの眼差しは変わらないのに、俺が知っているアルフレッドがここにいないと言うのが無性に腹立たしく感じられる。
だからつい────大人げなく叩き潰す勢いで剣を振るったのだが…。
キィンッ!
まるで条件反射と言わんばかりになんなく受け止められる剣戟。
それは確かに自分が知るアルフレッドのもので、わけもなく胸が締め付けられるような気がした。
受け止めた本人も驚いているようだが、きっと身体が覚え込んでいるんだろう。
俺と剣を合わせた数は数知れず、いつだってアルフレッドは嬉々として俺と打ち合っていた。
それならと俺はこれまでの打ち合いを再現するまでと次々と剣戟を打ち込んでいくことに。
「なっ?!くそっ!」
慌てたように剣を振るうがちゃんと俺の速さに目も身体も追いついて対応できている。
「アルフレッド。いつもの賭けの時間だ」
そんな打ち合いの中で俺はアルフレッドに嬉々として話を持ちかけてやった。
「俺が勝ったらお前を抱かせろ」
そう言ってやると驚愕に目を見開いていたが、負けん気の方が勝ったのか、絶対に負けないと言わんばかりに押し返してきた。
「誰がお前なんかに!」
それからは何だかんだと激しい打ち合いを繰り広げたのだが、結果的に俺の方が勝った。
当然だ。
いくら身体が反応したとしても記憶がないせいで先を読む力が足りていないのだから。
「俺の勝ちだ」
そう言いながら余裕の顔でスッと剣を突きつけてやったら物凄く悔しそうな顔をされたが、勝負は勝負だ。
オーガストが後ろで「大人げない」とか「鬼畜ですね」なんて言ってるが知ったことかと一笑に付す。
それから部屋へと連れ去って、アルフレッドを押し倒してやったら思い切り泣きそうな顔になっていた。
「うぅ…。鬼畜王子…」
いつもと同じようでちょっと違うアルフレッドが可愛い。
「いいから早く思い出せ」
「お前なんて知るもんかっ!」
「アルフレッド?あまり俺を怒らせるな」
そう言ってそっと唇を重ねて、その隙に愛撫を開始してやると初々しくヤダヤダと身を捩らせていた。
本人的には初体験といったところなんだろうが、ここは大人のアルフレッドとは少し反応が違っていて面白い。
ここで優しくしてやるのが思いやりなんだろうが、ショック療法でできればさっさと記憶を戻したいしここは強引にいくことに。
(まあいいだろう)
幾度となく俺に抱かれているアルフレッドは少し慣らしてやるだけで俺を受け入れられるようになっている。
だから時間は掛けず、いつも通りに慣らして一応気遣うようにバックで挿入してやることにしたのだが、怖かったのか物凄く泣かれてしまった。
シーツにしがみつくようにギュッと握りしめ、いつもより緊張したように身体に力を入れて締め上げてくる姿に、切ない気持ちが込み上げてくる。
こうして見ると、いつものアルフレッドがどれだけ自分を受け入れてくれていたのかがよくわかってしまったからだ。
「アル。アルフレッド」
いつものお前に会いたい。
そんな気持ちを込めて名を呼び、思い出せとばかりに犯してやった。
鬼畜?なんとでも言え。
俺は元々こう言う性格だ。
そうして体位も変えて責め立ててやったらショックが大きかったらしく、途中で気を失ってしまった。
当然俺はまだイけてないし、全然足りないから頬を軽く叩いて起きろとばかりに下からも突いてやる。
すると「ううん…」と呻いてアルフレッドの意識が戻ってきた。
そして状況を把握するや否や慌てたようにこう言ってきた。
「は?!なんでお前と寝てるんだ?!また寝込みを襲ったのか?!」
「またとは失礼だな。昨日はしてないぞ?」
「嘘つけ!俺がこっそり陛下に話を通して用意してもらった客室に堂々と乗り込んできたくせに!」
その言葉に記憶が戻ったことを確信することができてホッと安堵の息を吐く。
「アル。アルフレッド…。愛してる」
「…へ?」
「お前が好きだ。だから勝手に俺を忘れたりするな」
心の底からそう言って、俺は愛しいアルフレッドの身をギュッと強く抱き締める。
そんな俺に戸惑うようにしながらも、アルフレッドはよくわからないまま俺を抱きしめ返してくれた。
そこからは気持ちを伝えるようにいつも以上に濃厚に愛してやったんだが、後で事情を聞いたアルフレッドから「お前は本当に鬼畜だな?!記憶がないからって腹いせに酷いことするなよな?!」と責められたのは言うまでもない。
アルフレッド的に俺の愛を疑うレベルの酷さ…らしいのだが、こんなに今の剣バカなアルフレッドを愛しているのに失礼な。
そもそも俺はこう言いたい。
俺を忘れるお前が悪い────と。
とは言えちょっと悪かったと反省はしたから、ゴッドハルトに行くのは付き合ってやろうと思う。
せめてもの罪滅ぼしに。
苦手な方はパスで。
宜しくお願いしますm(_ _)m
****************
ミラルカ皇国への旅行から帰って仕事を片付けやっと一息ついた頃、アルフレッドがトルセンから手紙が届いたと言ってやってきた。
トルセンは即位してから忙しいらしく、なかなか鍛錬もできないと書いてきていて、平たく言うとただの近況報告を兼ねた愚痴の手紙だった。
アルフレッドと親しいからこそそんなことを書いてきたのだろうが、アルフレッドとしてはこう言う時こそ息抜きに手合わせをしに行ってやりたいと思ってしまったらしい。
「姫にも相談したんだけど、休暇を取って一週間くらい行ってきてもいいか?」
「ダメだ」
「どうして?」
「俺の手が空かないからだ」
「俺一人で行くつもりなんだけど?」
「却下だ」
予め言いにきてくれたのは有難いが、当然一人で行かせるはずがない。
「トルセンと顔見知りだし、オーガストにでも頼め」
「トルセンは俺の友人だぞ?」
「知っている」
「じゃあどうして行かせてくれないんだよ?!」
「さっき言っただろう?俺の手が空かないからだ」
「子供じゃないんだから一人で行って帰ってきてもいいだろ?!」
「……アルフレッド。俺がそれを許すと思うのか?」
淡々とそう言ってやったら悔しそうに睨みつけ、「もういい!」と言って飛び出していった。
きっとこの分だとまた勝手に行動してしまうことだろう。
仕方がないからすぐさまノヴァに指示を出し、各方面に警戒をしてもらう。
当然姫をはじめとするミラルカサイドにも伝達するのは忘れない。
ワイバーンも押さえればきっと大丈夫だろう。
そう思いながら仕事を片付け部屋へと戻ると、卑怯だぞと思い切り罵られ、それから口を聞いてもらえなくなった。
これは久しぶりに面倒な状況になったなと思っていたら、アルフレッドがオリハルコンの剣で大岩に一撃はなって割砕かれた石つぶてが飛んできて怪我をしたと言う一報が入った。
(何をやっているんだ!)
いくらイラついたからと言って、それくらい避けろと苛々しながらアルフレッドのところに行ったら、物凄く不機嫌そうな顔をされてしまう。
しかも第一声が「誰?」ときた。
なんの嫌がらせだ。
「アルフレッド?夫である俺を忘れたのか?」
けれどここでおかしなことに気が付いた。
(剣を手元に置いていない?)
いつも肌身離さず剣を手の届く場所に置いているアルフレッドが剣を傍に置いていないのだ。
誰かがどけたとしても剣について言及しないアルフレッドはどう考えてもおかしい。
「夫?お前男だろ?嘘つくな」
訝し気に紡がれたその言葉に俺はその場にいた医師にどういうことだと視線を向ける。
「ひっ?!も、申し訳ございません!お、恐らく一時的に記憶を失っているものかと…!」
「…………いつ頃までの記憶ならある?」
直近だけならいいが、もし姫のことまで忘れていたら非常に厄介だ。
アルフレッドをここに繫ぎ止めるのが難しくなってしまう。
「は、はい。少々妃殿下にご質問をさせて頂きます」
そう言って医師はアルフレッドにいくつか質問をしてみた。
「ア、アルフレッド殿。貴方は今おいくつですか?」
「俺か?14才だ」
(14?……犯罪だな)
流石にここで無理矢理襲って思い出させようとしたら犯罪者扱いされてしまいそうだ。
いや。身体は大人だからいいのか?
どうやら流石の俺も動揺しているようだ。
「それよりここどこだよ?!俺、革命軍の募集に向かう途中なんだけど」
「革命軍の…募集?」
「そうだよ!ゴッドハルトの国王軍と戦うためにトルセンって言う奴があっちこっちに声を掛けてたから、俺も乗ろうと思って!」
「……そうか。ちなみに武器は?」
「武器?あー!そう言えば俺の剣!向かってる途中で魔物と戦った時に折れたんだった…!くそっ!」
どうやら剣自体は元々アルフレッド自身の武器だったらしい。
単純に昔は今のアルフレッドほどには剣への愛が深くなかったんだろう。
なんとなく笑える。
「そんな事より俺、急いでんだけど?」
今にも飛びだしていきそうなアルフレッドだが、ここではいそうですかと行かせるはずがない。
けれど今のアルフレッドにもう革命は終わっていると伝えてもきっと理解はできないだろう。
仕方がないから監視をしっかりしておくように指示を出し、俺は部屋から出てツンナガールに説明書を添えてトルセンへと大至急で送っておいた。
ワイバーン便で送ったしきっとすぐにでも連絡はもらえるだろう。
こんなことになるならもっと早くにトルセンにもツンナガールを渡しておけばよかった。
ロキ近辺の普及率が高いからうっかりしていたが、世間一般にはまだまだ全然浸透していないのだ。
裏社会ではこの短期間でかなり普及しているらしいが、一体どれだけ裏で量産しているのやら。
本来なら開発国であるこちらが黙っているいわれはないのだが、静観しているのにはちゃんとした理由がある。
俺自身が裏稼業の連中とパイプが繋がり、利用できるようになったからだ。
ハウルが言うところの『裏稼業連中のネットワーク』はなかなか侮れない。
彼らは協力関係にはあるが別にロキ専属の暗部ではない。
各自で動き各自で仕事として情報を得る。
どこにも報告義務はない代わりに求められればその情報を売ってくれる。
それがツンナガールの普及によって以前よりもずっとスピーディーに手に入れることができるようになったのだ。
「それを使わないなんてただの馬鹿ですよね?」
それはその通りだ。
物によっては情報の裏付けは必要だが、一から暗部を放って情報を取りに行くよりはずっと安全で確実な手段。
その分暗部をもっと有意義に使うことができるようになったと言っても過言ではない。
無駄な場所に人材を割くことなく重要な情報を手に入れる。
それは俺にとってプラスにはなってもマイナスにはならない。
だからこそ裏で勝手に量産することに関して口出しはしないことにしたのだ。
(さて…取り敢えずはアルフレッドだな)
『姫』という枷がなくなったならいつ飛び出して行っても全くおかしくはない。
なんとかトルセンから連絡が来るまで気を引いてここに繋ぎ止めておかないといけない。
「オーガストを呼べ」
そうして呼び出したオーガストに状況を伝えると、物凄く大ウケしていた。
「じゅ、14才?!笑える!」
「何でもいい。俺の手が空くまでアルフレッドを見張って、できればアルフレッドの記憶を取り戻せ」
「見張るのは構いませんけど、記憶に関してはショックでも与えた方が手っ取り早いのでは?」
「例えば?」
「無慈悲な王子に襲われるとか」
やはりそれが一番なんだろうか?
確かにショック療法にはなるかもしれないが、正直トルセンと話していない今の段階では気乗りはしない。
「取り敢えずアルフレッドに逃げられるのが一番困る。トルセンから連絡が来るまでお前に引き留め役を引き受けてもらいたい」
「はいはい。わかりました」
そう言ってアルフレッドの相手を引き受けてくれたオーガストは、何故か子供のアルフレッドのノリに合わせて「特訓だ!」と言い、剣の相手をし始めた。
「やった!」
「今日から俺のことは師匠と呼ぶように!」
「はい!師匠!」
「ブフォッ…!」
絶対にオーガストは楽しんでいる。
その姿を見て思わず殺気を撒き散らしたらドン引きされた。
「師匠…あの王子ってすっげー殺伐としてんな」
「言ってやるな。お前に忘れられて気が立ってるんだ」
オーガストが揶揄うようにそう言ったが、言われた方のアルフレッドは不思議そうに「変なの」と首を傾げるだけだった。
その翌日の夜、無事にトルセンから連絡が入り14才頃のアルフレッドについて話を聞くことができたが、当時は革命軍を募集している真っ最中で、アルフレッドとはまだそこまで親しくなかったんだと聞かされてしまう。
ただ、その頃から負けん気が強かったらしく、剣を片手に色んな相手に稽古してくれと突撃していっていたらしい。
そんな中で剣技を独自に磨き続けていたというのだから凄いものだ。
だから記憶を戻すならやっぱり剣で相手をしてやるのが一番ではないかとのこと。
そういうことならと剣を手にアルフレッドの元へと向かうと、ちょうどオーガストとの手合わせが終わったところだった。
「アルフレッド」
だからそう声を掛けてやったら物凄く胡乱な目で見られてしまう。
昨日殺気を振りまいたのがダメだったんだろうか?
とは言えここで引き下がる気はない。
トルセンの話によるとアルフレッドはこの頃から負けん気が強かったということだし、煽ってやったらすぐにでも乗ってくるだろう。
「肩慣らしに付き合え」
「……っ!」
ギッとこちらを睨みつけてくるアルフレッドの眼差しは変わらないのに、俺が知っているアルフレッドがここにいないと言うのが無性に腹立たしく感じられる。
だからつい────大人げなく叩き潰す勢いで剣を振るったのだが…。
キィンッ!
まるで条件反射と言わんばかりになんなく受け止められる剣戟。
それは確かに自分が知るアルフレッドのもので、わけもなく胸が締め付けられるような気がした。
受け止めた本人も驚いているようだが、きっと身体が覚え込んでいるんだろう。
俺と剣を合わせた数は数知れず、いつだってアルフレッドは嬉々として俺と打ち合っていた。
それならと俺はこれまでの打ち合いを再現するまでと次々と剣戟を打ち込んでいくことに。
「なっ?!くそっ!」
慌てたように剣を振るうがちゃんと俺の速さに目も身体も追いついて対応できている。
「アルフレッド。いつもの賭けの時間だ」
そんな打ち合いの中で俺はアルフレッドに嬉々として話を持ちかけてやった。
「俺が勝ったらお前を抱かせろ」
そう言ってやると驚愕に目を見開いていたが、負けん気の方が勝ったのか、絶対に負けないと言わんばかりに押し返してきた。
「誰がお前なんかに!」
それからは何だかんだと激しい打ち合いを繰り広げたのだが、結果的に俺の方が勝った。
当然だ。
いくら身体が反応したとしても記憶がないせいで先を読む力が足りていないのだから。
「俺の勝ちだ」
そう言いながら余裕の顔でスッと剣を突きつけてやったら物凄く悔しそうな顔をされたが、勝負は勝負だ。
オーガストが後ろで「大人げない」とか「鬼畜ですね」なんて言ってるが知ったことかと一笑に付す。
それから部屋へと連れ去って、アルフレッドを押し倒してやったら思い切り泣きそうな顔になっていた。
「うぅ…。鬼畜王子…」
いつもと同じようでちょっと違うアルフレッドが可愛い。
「いいから早く思い出せ」
「お前なんて知るもんかっ!」
「アルフレッド?あまり俺を怒らせるな」
そう言ってそっと唇を重ねて、その隙に愛撫を開始してやると初々しくヤダヤダと身を捩らせていた。
本人的には初体験といったところなんだろうが、ここは大人のアルフレッドとは少し反応が違っていて面白い。
ここで優しくしてやるのが思いやりなんだろうが、ショック療法でできればさっさと記憶を戻したいしここは強引にいくことに。
(まあいいだろう)
幾度となく俺に抱かれているアルフレッドは少し慣らしてやるだけで俺を受け入れられるようになっている。
だから時間は掛けず、いつも通りに慣らして一応気遣うようにバックで挿入してやることにしたのだが、怖かったのか物凄く泣かれてしまった。
シーツにしがみつくようにギュッと握りしめ、いつもより緊張したように身体に力を入れて締め上げてくる姿に、切ない気持ちが込み上げてくる。
こうして見ると、いつものアルフレッドがどれだけ自分を受け入れてくれていたのかがよくわかってしまったからだ。
「アル。アルフレッド」
いつものお前に会いたい。
そんな気持ちを込めて名を呼び、思い出せとばかりに犯してやった。
鬼畜?なんとでも言え。
俺は元々こう言う性格だ。
そうして体位も変えて責め立ててやったらショックが大きかったらしく、途中で気を失ってしまった。
当然俺はまだイけてないし、全然足りないから頬を軽く叩いて起きろとばかりに下からも突いてやる。
すると「ううん…」と呻いてアルフレッドの意識が戻ってきた。
そして状況を把握するや否や慌てたようにこう言ってきた。
「は?!なんでお前と寝てるんだ?!また寝込みを襲ったのか?!」
「またとは失礼だな。昨日はしてないぞ?」
「嘘つけ!俺がこっそり陛下に話を通して用意してもらった客室に堂々と乗り込んできたくせに!」
その言葉に記憶が戻ったことを確信することができてホッと安堵の息を吐く。
「アル。アルフレッド…。愛してる」
「…へ?」
「お前が好きだ。だから勝手に俺を忘れたりするな」
心の底からそう言って、俺は愛しいアルフレッドの身をギュッと強く抱き締める。
そんな俺に戸惑うようにしながらも、アルフレッドはよくわからないまま俺を抱きしめ返してくれた。
そこからは気持ちを伝えるようにいつも以上に濃厚に愛してやったんだが、後で事情を聞いたアルフレッドから「お前は本当に鬼畜だな?!記憶がないからって腹いせに酷いことするなよな?!」と責められたのは言うまでもない。
アルフレッド的に俺の愛を疑うレベルの酷さ…らしいのだが、こんなに今の剣バカなアルフレッドを愛しているのに失礼な。
そもそも俺はこう言いたい。
俺を忘れるお前が悪い────と。
とは言えちょっと悪かったと反省はしたから、ゴッドハルトに行くのは付き合ってやろうと思う。
せめてもの罪滅ぼしに。
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※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
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