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【ミラルカ旅行】
閑話7.キスの日 Side.セドリック
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※ちょっとどころではなく過ぎてしまいましたが、先日『キスの日』だったと聞いたので閑話で上げておきます。
お暇つぶしにどうぞ。
****************
旅行後、溜まっていた仕事を片付けていると、側近のノヴァが思い出したようにそう言えばと口を開いた。
「侍女達から聞いたのですが、今日はキスの日らしいですよ?」
「キスの日?」
「はい」
(キスの日か…)
キス……アルフレッドからしてもらえたら嬉しいな。
ついそんなことを考えてしまう。
でもきっとアルフレッドからしてくれるなんてまずないだろう。
アルフレッドのキス待ち顔────。
そんなものを不意に想像してしまう。
もしそんなシチュエーションになったら暫く焦らして眺めてしまいそうだ。
まだかまだかと思いながら俺のキスを待つアルフレッド…。
(いいな)
ある意味最高だ。
でもやはりキスで蕩けた顔にしてやるのもいい。
そのままなし崩し的に抱いてあちこちに所有印をつけてやるのもいいかも知れない。
「どう思う?」
折角話を振ってきたのだからとノヴァにそう尋ねたら物凄くクールに返された。
「さあ。わかりかねます」
つまらない奴だ。
そう思っていたらコンコンと執務室の扉がノックされる音が響いた。
そして顔を出したのはまさかのアルフレッド────。
「お仕事中失礼します。姫から差し入れをするようにと言われたのでお持ちしました」
どうやら今は護衛騎士としての職務中らしい。
いい加減いつも通りで構わないのに、どうしてアルフレッドはすぐに脱げる護衛騎士の仮面をかぶりたがるのか。
まあその仮面を剥いでやるのも楽しいからいいと言えばいいんだが。
「そうか。姫には後で礼を言っておくとしよう」
「ではこちらに置いておきますので」
「ああ。そうだ、アルフレッド。先程ノヴァから興味深い話を聞いた。お前にも教えてやろう」
「はあ。なんでしょう?」
訝しげな顔で物凄く警戒している。
そんなアルフレッドも可愛い。
「きっと姫も楽しめる話だ」
「姫も?」
「ああ。ある意味ロマンティックな話だからな」
そう言ってアルフレッドの興味を引いて、ごく自然な感じでこちらへとおびき寄せる。
そして手の届く範囲まで来たところでさり気なさを装って立ち上がり、にこやかに笑ってスッと耳元で囁いてやった。
「今日は女性が喜びそうな、ロマンティックな『キスの日』らしいぞ?」
「…え?」
そう言うや否やしっかりとアルフレッドの逃げ場を塞ぐようにその身を捕まえて、問答無用で唇を塞いでやる。
「んんんっ?!」
「折角だからキスの特訓でもしようか?」
「ば、バカなことを言うな!」
「バカとは失礼だな。側妃とキスの特訓なんて、キスの日に相応しいだろう?」
いいからほらと促して、必死にもがいて逃げようとするアルフレッドの唇を嬉々として奪い続ける。
どこまで抵抗できるかなと思いながら楽しく戯れていると、一定時間が過ぎたところでノヴァからストップが入った。
「休憩時間はそろそろおしまいです。まだまだやりたいことは沢山あるのでしょう?続きは夜にでもゆっくりなさってください」
「無粋だな」
ちょっとは配慮してもう暫く黙って見ていればいいものを。
けれどノヴァは慣れたものでシレッとした顔をするばかり。
そんなやり取りをしていると、隙を突いてアルフレッドが腕の中から抜け出してしまった。
素早く一定距離を置いてこちらを睨みつけてくるその姿はフシャーッと威嚇する猫のようでとても可愛い。
「ふざけんな!続きなんて絶対しないからな!」
今日は絶対に部屋に入れないからと言って、アルフレッドはあっという間に姫のところに戻ってしまう。
残念。逃げられた。
(ふっ…まあいいがな)
以前とは違って今は便利な道具も持っていることだし、いくら対策を取ろうと無駄だ。
発信機だってあるから部屋を移動したとしても居場所はすぐにわかるし、鍵はすぐに開けられる。
精々頑張れと思いながら俺は余裕綽々でニヤリと笑った。
そんな俺にノヴァが溜息を吐きながら小さく言葉を紡ぐ。
「本当に…セドリック殿下もお人が悪い」
「何とでも言え」
さて、今夜はどんな風にアルフレッドを可愛がろうか?
そんな事を考えながら先程以上に素早く、機嫌よく仕事をさばいていったのだった。
****************
※新アイテムに死角はないので、セドの心に余裕が溢れていたりします。
そんなこんなで『キスの日』でした♪
お暇つぶしにどうぞ。
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旅行後、溜まっていた仕事を片付けていると、側近のノヴァが思い出したようにそう言えばと口を開いた。
「侍女達から聞いたのですが、今日はキスの日らしいですよ?」
「キスの日?」
「はい」
(キスの日か…)
キス……アルフレッドからしてもらえたら嬉しいな。
ついそんなことを考えてしまう。
でもきっとアルフレッドからしてくれるなんてまずないだろう。
アルフレッドのキス待ち顔────。
そんなものを不意に想像してしまう。
もしそんなシチュエーションになったら暫く焦らして眺めてしまいそうだ。
まだかまだかと思いながら俺のキスを待つアルフレッド…。
(いいな)
ある意味最高だ。
でもやはりキスで蕩けた顔にしてやるのもいい。
そのままなし崩し的に抱いてあちこちに所有印をつけてやるのもいいかも知れない。
「どう思う?」
折角話を振ってきたのだからとノヴァにそう尋ねたら物凄くクールに返された。
「さあ。わかりかねます」
つまらない奴だ。
そう思っていたらコンコンと執務室の扉がノックされる音が響いた。
そして顔を出したのはまさかのアルフレッド────。
「お仕事中失礼します。姫から差し入れをするようにと言われたのでお持ちしました」
どうやら今は護衛騎士としての職務中らしい。
いい加減いつも通りで構わないのに、どうしてアルフレッドはすぐに脱げる護衛騎士の仮面をかぶりたがるのか。
まあその仮面を剥いでやるのも楽しいからいいと言えばいいんだが。
「そうか。姫には後で礼を言っておくとしよう」
「ではこちらに置いておきますので」
「ああ。そうだ、アルフレッド。先程ノヴァから興味深い話を聞いた。お前にも教えてやろう」
「はあ。なんでしょう?」
訝しげな顔で物凄く警戒している。
そんなアルフレッドも可愛い。
「きっと姫も楽しめる話だ」
「姫も?」
「ああ。ある意味ロマンティックな話だからな」
そう言ってアルフレッドの興味を引いて、ごく自然な感じでこちらへとおびき寄せる。
そして手の届く範囲まで来たところでさり気なさを装って立ち上がり、にこやかに笑ってスッと耳元で囁いてやった。
「今日は女性が喜びそうな、ロマンティックな『キスの日』らしいぞ?」
「…え?」
そう言うや否やしっかりとアルフレッドの逃げ場を塞ぐようにその身を捕まえて、問答無用で唇を塞いでやる。
「んんんっ?!」
「折角だからキスの特訓でもしようか?」
「ば、バカなことを言うな!」
「バカとは失礼だな。側妃とキスの特訓なんて、キスの日に相応しいだろう?」
いいからほらと促して、必死にもがいて逃げようとするアルフレッドの唇を嬉々として奪い続ける。
どこまで抵抗できるかなと思いながら楽しく戯れていると、一定時間が過ぎたところでノヴァからストップが入った。
「休憩時間はそろそろおしまいです。まだまだやりたいことは沢山あるのでしょう?続きは夜にでもゆっくりなさってください」
「無粋だな」
ちょっとは配慮してもう暫く黙って見ていればいいものを。
けれどノヴァは慣れたものでシレッとした顔をするばかり。
そんなやり取りをしていると、隙を突いてアルフレッドが腕の中から抜け出してしまった。
素早く一定距離を置いてこちらを睨みつけてくるその姿はフシャーッと威嚇する猫のようでとても可愛い。
「ふざけんな!続きなんて絶対しないからな!」
今日は絶対に部屋に入れないからと言って、アルフレッドはあっという間に姫のところに戻ってしまう。
残念。逃げられた。
(ふっ…まあいいがな)
以前とは違って今は便利な道具も持っていることだし、いくら対策を取ろうと無駄だ。
発信機だってあるから部屋を移動したとしても居場所はすぐにわかるし、鍵はすぐに開けられる。
精々頑張れと思いながら俺は余裕綽々でニヤリと笑った。
そんな俺にノヴァが溜息を吐きながら小さく言葉を紡ぐ。
「本当に…セドリック殿下もお人が悪い」
「何とでも言え」
さて、今夜はどんな風にアルフレッドを可愛がろうか?
そんな事を考えながら先程以上に素早く、機嫌よく仕事をさばいていったのだった。
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※新アイテムに死角はないので、セドの心に余裕が溢れていたりします。
そんなこんなで『キスの日』でした♪
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※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
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