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【ミラルカ旅行】
148.※ミラルカ旅行⑫
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部屋に戻ると俺はそのままベッドへと放り投げられて、すぐにセドに圧し掛かられてしまう。
その行動は『逃がさないぞ』と言わんばかりだ。
こんな状況に陥るのはもう何度目だろう?
いい加減俺だって学習する。
こうなったセドは絶対俺に吐かせるまでどいてはくれないし、逃げるのは容易ではない。
でも今回は一令嬢の命に関わる事だし、言えないからなんとか上手く誤魔化さないといけなかった。
「アルフレッド。わかっているな?」
「な…なんのことだか」
「ほぉ?そうか。そんなに激しく犯されながら吐かされたいか」
「え?!いや、誰もそんな事、言ってないだろ?!」
「わかっていてそう言ったくせに」
「そ、それは…!でも本当になんでもないし!お前の気のせいだから!」
「俺の気のせい?愛するお前の事ならなんでもわかる俺によくも言えたものだな」
「へ?」
「剣が大好きなお前が剣を振る気になれないほど落ち込むことがあったんだろう?ほら、いいから話してみろ」
セドが笑いながらそう促してくるけど、俺だってここで素直に吐くほど馬鹿じゃない。
とばっちりでレオナルド皇子の想い人が殺されたらたまったものではない。
「いや、だから本当に…!」
何でもないからと言い張ったけど、結局俺はそのまま口づけられてセドに襲われてしまった。
「あ…も、つらい…」
無理な体勢で貫かれて執拗に前立腺を嬲られ、奥がいいと何度言っても聞いてもらえずに、ずっと手前で甘イキ状態。
前でもイカせてもらえなくて笑顔で早く吐けと拷問のように何度も問われる。
「早く吐いた方が楽になれるぞ?ほら、言ってみろ」
声だけはやたらめったら優しくて、ついつい口を割りそうになってしまうけど、俺はふるふる首を振って頑張って耐えた。
「アル…。たまには俺に甘えても誰も怒らないぞ?」
セドがそっと俺を抱きしめながら甘やかすように言ってくるけど、当然だがそれに騙される俺じゃない。
(嘘つけ!吐いたらお前が一番怒るだろ?!)
懐柔しようなんて無駄だとばかりに思い切り睨みつけると、何故かセドにスイッチが入ったのか殊更楽し気に笑われて、しょうがないなと言ってからまさかまさかの鬼畜の所業に出た。
さっきまで散々甘イキさせられていた俺の奥を、いきなり激しく貫いたのだ。
(この、鬼────!!)
「う…あ……っ」
ビクビクッと震えてチカチカと目の前に散る星を見ながらその衝撃に耐えるけど、セドの悪魔のような声が耳を擽ってきた。
「アルフレッド?俺の本気の尋問にどれだけ耐えられるか、試してみるか?」
「ひっ?!」
そこからは焦らしと強い刺激の狭間で翻弄され続け、悲鳴のような嬌声を上げながら犯される羽目になった。
しかも俺の体力をこれでもかと削る無理な体勢ばっかり選んで何度も結腸責めとか酷すぎる。
腹上死したらどうしてくれるんだ?!
「あぅ…も、死ぬぅう……」
「言う気になったか?」
「う…うぅ……言う、言うからぁ…」
「そうか。ほら、言ってみろ」
(ここでまた甘やかすようにそうやって優しく言うくらいなら、鬼畜な責め方するなよ!)
なんだか納得がいかない俺だったけど、これだけは言っておかないとと思って、絶対に殺さないって約束してくれって何度も念押ししてから話をすることに。
でも話を聞いたセドは殺気を抑えてはいたけど、物凄く怖い目でわかったと口にしていたから今一信用はできそうにない。
とは言え俺はちょっとどころではなく疲労困憊状態になってしまっているから、今すぐ動くのは無理だった。
「アルフレッド、安心しろ。俺が全部終わらせてきてやる」
「いやいやいや?!ちょっ!勝手に行くなっ!本気でやめろ!一体何する気だ?!」
「いいから寝ておけ」
そう言ってチュッと軽くキスを落としてセドはするりと部屋から出ていってしまう。
こんなことになるならもうちょっと体力を残した上で吐くんだったと後悔してしまったくらいだ。
(くそっ…!でも何とかしないと…)
絶対殺されると思って、なんとか自分用のツンナガール(未使用)を手に取って、使い方も良くわからないまま姫へと連絡を取ってみる。
セドが姫と自分の連絡先だけあれば十分だろうとそれだけは入れてくれていたから掛けれたようなものだ。
『はい?』
「姫!俺です!アルフレッドです!」
『まあ、アルフレッド!貴方が掛けてくるなんて初めてじゃないかしら。明日は雨ね』
「いやいやいや?!そんな呑気な話じゃないんです!」
そうして穏やかな姫に焦ったように事のあらましを話すと、慌てたようにしながらすぐにオーガストを連れてミーシャ嬢の救出に向かうと言ってくれた。
今回ほどオーガストを連れてきていて良かったと思ったことはない。
オーガストなら俺と同じくらい動けるからセドを止めることは可能だろう。
他の護衛騎士ならそうはいかないから本当に助かった。
「オーガスト。頼んだぞ」
俺の代わりにセドを止めてくれ。
そう願いながら俺はベッドに沈んだ。
***
【Side.レオナルド】
ミーシャ嬢とユーフェミア王女と別れ、一人静かな場所へと足を延ばす。
そして一つのベンチのところまでたどり着くと、力なくそこに座り、彼女達の事を振り返った。
ユーフェミア王女はミーシャ嬢とは違って昔から一応知っている相手で、それこそ公式の場で何度か会ったことはあった。
でもいつだって彼女は凛としていて、とても軽薄に話しかけられる雰囲気ではなかった。
近寄りがたいその迫力に気圧されて、俺は凄く苦手に思ったものだ。
だから縁談の話が来た時もすぐにあり得ないだろうと思ってしまったし、これまでの一線引いた態度を崩すこともなかった。
正直言って、俺は彼女の事はほとんど何も知らないに等しい。
でも────。
(『孤高の王子』は気に入っていたみたいだ…)
あそこに居たと言うことは薔薇が好きなのかもしれないし、そんな中たまたま『孤高の王子』が気になったのかもしれない。
あの姿を見る限り、多分彼女ならあそこにあの薔薇を植えた経緯を話せば理解してくれるような気はした。
(もうちょっと…普通の会話を試みてもいいのかもしれないな)
思えばこれまで向こうの好みの話なんかはしたことがなかった気がする。
これを機に少し機会を設けてみてもいいのかもしれないと、冷静になった今なら少しだけ思うことができた。
対してミーシャ嬢は初めて会った時から可愛らしい令嬢だった。
優しくて可愛らしい癒し系の清楚なご令嬢。
俺と会うといつも嬉しそうに笑ってくれて、話を振るとニコニコと聞いてくれた。
一緒に居て楽しい、そんな相手だった。
だからこれまで何も問題なんて感じなかったし、婚約者にと望んだ。
それなのに、どうして今こんな気持ちになっているんだろう?
思い返してみると、彼女はいつだってロキを下に見てはいなかっただろうか?
俺を持ち上げてくれるのは素直に嬉しかったけど、自国の王であるロキをどこか嫌っているように思えた。
どうして今まで気づかなかったんだろう?
『孤高の王子』を引き立て役と評した彼女の表情はとても癒し系のようには見えなくて、そこにはあからさまな嫌悪感を滲ませていた。
あれは薔薇に対してと言うよりも、ロキが好きな薔薇に対するもののように感じられて仕方がない。
その証拠にカリン陛下は持ち上げていたけど、ロキへの敬意などは一切感じられなかった。
(俺が大好きな大親友なのに…)
そう思ったところでアルメリアが言っていた言葉を思い出す。
『お兄様。悪いことは言いませんから、友情を壊したくなければユーフェミア王女をお選びください』
『どういうこと?』
『ミーシャ嬢は明らかにロキ陛下に対し嫌悪感を持っていますわ。そのうちきっと友情にひびが入りますわよ?』
『そんなまさか。考えすぎだって。大体ミーシャ嬢はガヴァムの公爵令嬢だ。ミーシャ嬢の兄君が補佐官をしているからちょっとロキと距離感が近くて愚痴っぽくなるだけだよ』
あの時はそう答えたけど、本当にそうなのかと今更ながら疑問に思った。
だって振り返れば振り返るほど彼女の口からロキに対する好意的な話は聞けていなかったことに気が付いたから…。
俺がロキの話を振ってもあからさまに否定的なことは言っていなかったけど、肯定もしていなかったように思う。
(どうして…?ロキと何かあったとか?)
そう思ってそっとツンナガールを手に取り、ロキに聞くか聞かないか悩みに悩む。
そして結局────俺はロキの騎士であるリヒターに掛けてみることにした。
何か知っているかもと思ったからだ。
『はい』
「ああ、リヒター。俺。レオナルドだけど」
『ご無沙汰しております』
「今日はロキじゃなくリヒターに聞きたいことがあって」
『なんなりと』
「その……ロキってフィリップの妹から嫌われていたりするのかな?」
『…………』
「正直に教えて欲しいんだ。その…二人に何かあったなら知っておきたいと思って」
『…フィリップ殿の妹と何かあったわけではなく、ロキ陛下はガヴァムの貴族令嬢方から嫌われているのです』
「え?!」
それは知らなかったと思って詳しく聞くと、どうやら前王のせいでロキはガヴァムの貴族から無能呼ばわりされて育ったからそれが根強く残っているのだとか。
(そんな……)
それでロキがお勧めしないと言っていた理由がわかった。
そんな状況なら勧められるわけがなかったのだ。
俺は浮かれていてそんな事情なんて全く考慮していなかった。
ロキからすれば俺がガヴァムの令嬢を選ぶ=友情の終わりとでも感じてしまったかもしれない。
(ロキ……)
そりゃあワイバーンに逆さ吊りにしたくなるよな。
勝手に浮かれてロキを蔑ろにしてしまったんだから。
セドリック王子を怒らせただけだったらきっと前と同様鞭でペンペンくらいで許してくれたはずだし、その後全力で土下座して来いと送り出してくれたはず。
(ゴメン、ロキ。俺、大親友失格だった!)
きっとタメ口で話してくれなかったのもそのせいだ。
カリン陛下との時間を奪ったのも重なって怒りMaxだったのかも。
それから改めてロキとミーシャ嬢を天秤にかけて、自分の中ですんなりと答えが出た。
俺が思うに、本当にミーシャ嬢が優しい人だったらロキを馬鹿にしたりしないと思う。
だからこの件に関してちゃんとミーシャ嬢に聞いてみないといけない。
そしてもしロキとの関係を切れとでも言ってくるようなら俺はミーシャ嬢とは絶対に結婚できないと思った。
友情も大事だけど、それとは別に国として友好関係を結ぶべき相手を切れと言うようなら皇妃失格だからだ。
(俺が結婚する相手は皇太子妃、そして将来の皇妃になる人だ────)
それを忘れないようにしよう。
それを胸に俺は今日の夕食時にちゃんとミーシャ嬢と話してみようと思ったのだった。
その行動は『逃がさないぞ』と言わんばかりだ。
こんな状況に陥るのはもう何度目だろう?
いい加減俺だって学習する。
こうなったセドは絶対俺に吐かせるまでどいてはくれないし、逃げるのは容易ではない。
でも今回は一令嬢の命に関わる事だし、言えないからなんとか上手く誤魔化さないといけなかった。
「アルフレッド。わかっているな?」
「な…なんのことだか」
「ほぉ?そうか。そんなに激しく犯されながら吐かされたいか」
「え?!いや、誰もそんな事、言ってないだろ?!」
「わかっていてそう言ったくせに」
「そ、それは…!でも本当になんでもないし!お前の気のせいだから!」
「俺の気のせい?愛するお前の事ならなんでもわかる俺によくも言えたものだな」
「へ?」
「剣が大好きなお前が剣を振る気になれないほど落ち込むことがあったんだろう?ほら、いいから話してみろ」
セドが笑いながらそう促してくるけど、俺だってここで素直に吐くほど馬鹿じゃない。
とばっちりでレオナルド皇子の想い人が殺されたらたまったものではない。
「いや、だから本当に…!」
何でもないからと言い張ったけど、結局俺はそのまま口づけられてセドに襲われてしまった。
「あ…も、つらい…」
無理な体勢で貫かれて執拗に前立腺を嬲られ、奥がいいと何度言っても聞いてもらえずに、ずっと手前で甘イキ状態。
前でもイカせてもらえなくて笑顔で早く吐けと拷問のように何度も問われる。
「早く吐いた方が楽になれるぞ?ほら、言ってみろ」
声だけはやたらめったら優しくて、ついつい口を割りそうになってしまうけど、俺はふるふる首を振って頑張って耐えた。
「アル…。たまには俺に甘えても誰も怒らないぞ?」
セドがそっと俺を抱きしめながら甘やかすように言ってくるけど、当然だがそれに騙される俺じゃない。
(嘘つけ!吐いたらお前が一番怒るだろ?!)
懐柔しようなんて無駄だとばかりに思い切り睨みつけると、何故かセドにスイッチが入ったのか殊更楽し気に笑われて、しょうがないなと言ってからまさかまさかの鬼畜の所業に出た。
さっきまで散々甘イキさせられていた俺の奥を、いきなり激しく貫いたのだ。
(この、鬼────!!)
「う…あ……っ」
ビクビクッと震えてチカチカと目の前に散る星を見ながらその衝撃に耐えるけど、セドの悪魔のような声が耳を擽ってきた。
「アルフレッド?俺の本気の尋問にどれだけ耐えられるか、試してみるか?」
「ひっ?!」
そこからは焦らしと強い刺激の狭間で翻弄され続け、悲鳴のような嬌声を上げながら犯される羽目になった。
しかも俺の体力をこれでもかと削る無理な体勢ばっかり選んで何度も結腸責めとか酷すぎる。
腹上死したらどうしてくれるんだ?!
「あぅ…も、死ぬぅう……」
「言う気になったか?」
「う…うぅ……言う、言うからぁ…」
「そうか。ほら、言ってみろ」
(ここでまた甘やかすようにそうやって優しく言うくらいなら、鬼畜な責め方するなよ!)
なんだか納得がいかない俺だったけど、これだけは言っておかないとと思って、絶対に殺さないって約束してくれって何度も念押ししてから話をすることに。
でも話を聞いたセドは殺気を抑えてはいたけど、物凄く怖い目でわかったと口にしていたから今一信用はできそうにない。
とは言え俺はちょっとどころではなく疲労困憊状態になってしまっているから、今すぐ動くのは無理だった。
「アルフレッド、安心しろ。俺が全部終わらせてきてやる」
「いやいやいや?!ちょっ!勝手に行くなっ!本気でやめろ!一体何する気だ?!」
「いいから寝ておけ」
そう言ってチュッと軽くキスを落としてセドはするりと部屋から出ていってしまう。
こんなことになるならもうちょっと体力を残した上で吐くんだったと後悔してしまったくらいだ。
(くそっ…!でも何とかしないと…)
絶対殺されると思って、なんとか自分用のツンナガール(未使用)を手に取って、使い方も良くわからないまま姫へと連絡を取ってみる。
セドが姫と自分の連絡先だけあれば十分だろうとそれだけは入れてくれていたから掛けれたようなものだ。
『はい?』
「姫!俺です!アルフレッドです!」
『まあ、アルフレッド!貴方が掛けてくるなんて初めてじゃないかしら。明日は雨ね』
「いやいやいや?!そんな呑気な話じゃないんです!」
そうして穏やかな姫に焦ったように事のあらましを話すと、慌てたようにしながらすぐにオーガストを連れてミーシャ嬢の救出に向かうと言ってくれた。
今回ほどオーガストを連れてきていて良かったと思ったことはない。
オーガストなら俺と同じくらい動けるからセドを止めることは可能だろう。
他の護衛騎士ならそうはいかないから本当に助かった。
「オーガスト。頼んだぞ」
俺の代わりにセドを止めてくれ。
そう願いながら俺はベッドに沈んだ。
***
【Side.レオナルド】
ミーシャ嬢とユーフェミア王女と別れ、一人静かな場所へと足を延ばす。
そして一つのベンチのところまでたどり着くと、力なくそこに座り、彼女達の事を振り返った。
ユーフェミア王女はミーシャ嬢とは違って昔から一応知っている相手で、それこそ公式の場で何度か会ったことはあった。
でもいつだって彼女は凛としていて、とても軽薄に話しかけられる雰囲気ではなかった。
近寄りがたいその迫力に気圧されて、俺は凄く苦手に思ったものだ。
だから縁談の話が来た時もすぐにあり得ないだろうと思ってしまったし、これまでの一線引いた態度を崩すこともなかった。
正直言って、俺は彼女の事はほとんど何も知らないに等しい。
でも────。
(『孤高の王子』は気に入っていたみたいだ…)
あそこに居たと言うことは薔薇が好きなのかもしれないし、そんな中たまたま『孤高の王子』が気になったのかもしれない。
あの姿を見る限り、多分彼女ならあそこにあの薔薇を植えた経緯を話せば理解してくれるような気はした。
(もうちょっと…普通の会話を試みてもいいのかもしれないな)
思えばこれまで向こうの好みの話なんかはしたことがなかった気がする。
これを機に少し機会を設けてみてもいいのかもしれないと、冷静になった今なら少しだけ思うことができた。
対してミーシャ嬢は初めて会った時から可愛らしい令嬢だった。
優しくて可愛らしい癒し系の清楚なご令嬢。
俺と会うといつも嬉しそうに笑ってくれて、話を振るとニコニコと聞いてくれた。
一緒に居て楽しい、そんな相手だった。
だからこれまで何も問題なんて感じなかったし、婚約者にと望んだ。
それなのに、どうして今こんな気持ちになっているんだろう?
思い返してみると、彼女はいつだってロキを下に見てはいなかっただろうか?
俺を持ち上げてくれるのは素直に嬉しかったけど、自国の王であるロキをどこか嫌っているように思えた。
どうして今まで気づかなかったんだろう?
『孤高の王子』を引き立て役と評した彼女の表情はとても癒し系のようには見えなくて、そこにはあからさまな嫌悪感を滲ませていた。
あれは薔薇に対してと言うよりも、ロキが好きな薔薇に対するもののように感じられて仕方がない。
その証拠にカリン陛下は持ち上げていたけど、ロキへの敬意などは一切感じられなかった。
(俺が大好きな大親友なのに…)
そう思ったところでアルメリアが言っていた言葉を思い出す。
『お兄様。悪いことは言いませんから、友情を壊したくなければユーフェミア王女をお選びください』
『どういうこと?』
『ミーシャ嬢は明らかにロキ陛下に対し嫌悪感を持っていますわ。そのうちきっと友情にひびが入りますわよ?』
『そんなまさか。考えすぎだって。大体ミーシャ嬢はガヴァムの公爵令嬢だ。ミーシャ嬢の兄君が補佐官をしているからちょっとロキと距離感が近くて愚痴っぽくなるだけだよ』
あの時はそう答えたけど、本当にそうなのかと今更ながら疑問に思った。
だって振り返れば振り返るほど彼女の口からロキに対する好意的な話は聞けていなかったことに気が付いたから…。
俺がロキの話を振ってもあからさまに否定的なことは言っていなかったけど、肯定もしていなかったように思う。
(どうして…?ロキと何かあったとか?)
そう思ってそっとツンナガールを手に取り、ロキに聞くか聞かないか悩みに悩む。
そして結局────俺はロキの騎士であるリヒターに掛けてみることにした。
何か知っているかもと思ったからだ。
『はい』
「ああ、リヒター。俺。レオナルドだけど」
『ご無沙汰しております』
「今日はロキじゃなくリヒターに聞きたいことがあって」
『なんなりと』
「その……ロキってフィリップの妹から嫌われていたりするのかな?」
『…………』
「正直に教えて欲しいんだ。その…二人に何かあったなら知っておきたいと思って」
『…フィリップ殿の妹と何かあったわけではなく、ロキ陛下はガヴァムの貴族令嬢方から嫌われているのです』
「え?!」
それは知らなかったと思って詳しく聞くと、どうやら前王のせいでロキはガヴァムの貴族から無能呼ばわりされて育ったからそれが根強く残っているのだとか。
(そんな……)
それでロキがお勧めしないと言っていた理由がわかった。
そんな状況なら勧められるわけがなかったのだ。
俺は浮かれていてそんな事情なんて全く考慮していなかった。
ロキからすれば俺がガヴァムの令嬢を選ぶ=友情の終わりとでも感じてしまったかもしれない。
(ロキ……)
そりゃあワイバーンに逆さ吊りにしたくなるよな。
勝手に浮かれてロキを蔑ろにしてしまったんだから。
セドリック王子を怒らせただけだったらきっと前と同様鞭でペンペンくらいで許してくれたはずだし、その後全力で土下座して来いと送り出してくれたはず。
(ゴメン、ロキ。俺、大親友失格だった!)
きっとタメ口で話してくれなかったのもそのせいだ。
カリン陛下との時間を奪ったのも重なって怒りMaxだったのかも。
それから改めてロキとミーシャ嬢を天秤にかけて、自分の中ですんなりと答えが出た。
俺が思うに、本当にミーシャ嬢が優しい人だったらロキを馬鹿にしたりしないと思う。
だからこの件に関してちゃんとミーシャ嬢に聞いてみないといけない。
そしてもしロキとの関係を切れとでも言ってくるようなら俺はミーシャ嬢とは絶対に結婚できないと思った。
友情も大事だけど、それとは別に国として友好関係を結ぶべき相手を切れと言うようなら皇妃失格だからだ。
(俺が結婚する相手は皇太子妃、そして将来の皇妃になる人だ────)
それを忘れないようにしよう。
それを胸に俺は今日の夕食時にちゃんとミーシャ嬢と話してみようと思ったのだった。
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