【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

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【ミラルカ旅行】

136.ロキ陛下への相談 Side.アルメリア

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ガヴァムからのお客様であるロキ陛下とカリン陛下が帰ってしまった。

ロキ陛下はセドリック王子に可愛がられていたし、滞在中は随分雰囲気緩和に貢献してくれたように思う。

「だってあのいつも不機嫌な冷酷王子がず~っと毎日ニコニコ、ニコニコ気味が悪いくらい機嫌が良かったのよ?」

王太子妃の仕事をしながら隣に立っていた今日の護衛騎士オーガストにそう溢したら、『あれは凄かったですね』と答えが返ってきた。

「いや~本当にロキ陛下効果は凄かったです」
「それに騎士長の嫉妬にも一役買ってましたよね」

そう。それもまた一つの要因だったと思う。
ロキ陛下の凄いところはあの悪魔と仲良くすることによって、アルフレッドの嫉妬まで引き出してしまったところにある。
あれで更に悪魔の機嫌は良くなったのだ。
周りの者達からすれば本当に奇跡的としか思えなかった。
他の護衛騎士も感心するようにうんうんと頷いている。

悪魔があまりにも上機嫌だったから、ブルーグレイ側の者達はほぼ全員『ロキ陛下万歳』と褒め称えていたくらいの平和な毎日で、ちょっと攫われたりして問題はあったけどまた来てほしいと皆が皆言っていた。
でも────。

「喉元過ぎたら…の典型よね」

あんなに嫉妬に駆られてあの悪魔に自分から甘えに行っていたアルフレッドが、ロキ陛下が帰って数日で元通りになって、気の迷いだったとばかりにまた剣に夢中になったから悪魔の機嫌が急降下したのだ。

「ちょっとあまりにも酷くないかしら?」
「俺もそう思います」

折角セドリック王子がアルフレッドに優しく接しようと試みても、アルフレッドはつれない態度ばかり。
『これから鍛錬だから』『新しい技考えたから練習したい』『姫の手伝いがあるから』『姫の用事で忙しい』etc.
巻き込まれるこちらの身にもなってほしい。
久し振りの王子の殺気は物凄く心臓に悪かった。

アルフレッドがそうやってずっとつれない態度で接するせいで王宮内はすっかり以前と同じような雰囲気に逆戻りしてしまったし、私はまた怯えながら日々を送らざるを得なくなっている。

「これはマズいわ」

だから思い切ってロキ陛下に手紙を書いて相談してみることに。
なんだかんだとロキ陛下は悪魔に好かれていたし、仲も良いようだったから相談相手にももってこいだと考えたからだ。
そして最速のワイバーン便で手紙を送ってみた所、数日で返事が返ってきた。

「ええと…何々……」

『アルメリア姫。滞在中はお世話になり本当にありがとうございました。あの時購入した茶葉をシャイナー陛下と御婚約者のキャサリン嬢にお出ししたところとても喜んでいただくことができました』

「まあ!もうご挨拶に来られたのね」

どうなったのか気になっていたのでちょうどよかった。
茶葉も気に入ってもらえたようでホッとする。

『姫のお陰でキャサリン嬢のもてなしもそつなくこなせたように思います。改めてお礼を言わせてください』

「そんなの、別に構わないのに…」

『やっぱりロキ陛下はほっこり和むわ~』と久方ぶりに肩の力が抜けた気がした。
思い浮かべるのはあの可愛いらしい笑みだ。

『お手紙でセドリック王子とアルフレッド妃殿下の仲が心配とありましたが、その後如何でしょう?お話を伺う限りアルフレッド妃殿下はセドリック王子の愛情を沢山受け取って安心したからこそそのような態度をとっている可能性もあるので、あまり責めたりなさらないであげてくださいね』

「あら、もしかしてそうだったのかしら?」

『こちらも帰る目前に兄と誤解からすれ違いがあったのであまり他人事とも思えません。仲睦まじいお二人の仲がこじれるのもよくないと思うので、こちらからもセドリック王子にお手紙を送らせて頂きます』

「まあ…ロキ陛下。流石だわ」

(なんてできた方なのかしら)

あの悪魔にこんなにもあっさり手紙を送ってくれるなんて本当に有難い限りだ。
気遣いもできて素晴らしいわ。
目に浮かぶのは穏やかに微笑む姿やちょっと申し訳なさそうに苦笑する姿など可愛らしい姿ばかり。

なのにアルフレッドは言うのだ。
あの人は全然そんな人じゃないんだ。怖い人なんだと。
でも兄だって『ロキ陛下は天然』と言っていたし、実際会って話してみてもちょっとズレたところがある可愛い天然な人といった感じだった。
兄とも凄く親しそうだったしアルフレッドが言うような印象なんて全くなかったと思う。
だから怖いイメージなんて本当にないのだけれど…。

「どこをどう誤解したらそうなるのかしら?」

思わずそう呟いたらオーガストが「ああ、そう言えば怒らせると凄く怖いらしいですよ?攫われた際、救出に行ってた騎士から聞きましたけど、笑顔だからこそ余計に怖かったとかなんとか」と言ってきた。
でもそんなの誰だって怒らせたら怖いと思うし、ロキ陛下だけじゃないと思う。
それにどんなに怖くてもあの悪魔よりはマシなはず。

(そもそも笑顔だからこそ怖いっておかしいでしょ?)

「あんなに可愛いチワワみたいな方ですもの。絶対怒っても怖くないと思うわ」

寧ろカリン陛下の方が怒り心頭になった姿は容易に想像できる気がする。

カリン陛下と言えば久しぶりに会ったけれど元気そうで良かったと安堵していた。
悪魔に怯えてはいたけれどロキ陛下と普通に話していたし、これならもうすっかり大丈夫なのではと思うことができたからだ。
あれも愛のなせる業なのだろうか?

「きっと毎夜優しく愛情で包み込みながら、可愛らしく甘えてカリン陛下の心を癒してあげたのね…」

ロキ陛下ならきっとそうやって傷ついたカリン陛下を慰めて正気に返してあげたんだろうなと容易に想像できてほっこりしてしまった。

けれどそんなほっこりタイムも噴き出す様な声と共に終了を迎えてしまう。

「ブフッ…ひ、姫?」
「え?!セ、セドリック王子?!」

まさかアルフレッドもいないのに悪魔がこちらに来るとは思いもよらなくて、驚きに飛び上がりそうになった。

「今のはまさかと思うが、ロキのことか?」
「え?ええ。そうですが?」
「そうか…ぷっ…ククッ…。あり得なさ過ぎて、は、腹が痛い…」

どうしてそんな風に笑われるのかがさっぱりわからない。
でもどうやら機嫌はすこぶる良さそうだ。
何か良い事でもあったのだろうか?

「まあいい。今日ロキから手紙が来てな」
「え?あ、はい!」

どうやらロキ陛下はセドリック王子にも同時に手紙を送ってくれていたらしい。
手紙一つで悪魔の機嫌を直してしまうとは、流石救いの神。
頼って本当に良かった。

「是非と勧められたし、仕事を調整して今度アルフレッドとミラルカの鉱山ホテルに行ってこようと思う」

悪魔曰く、その手回しを頼みたいとのこと。
そういうことならアルフレッドがいない時にこちらへとやってきたのも納得だ。

「はい。お任せください」

それにしても鉱山ホテルと言うのはあの兄が話していたホテルだろうか?
ロキ陛下考案の鉱山を生かしたホテルで、極最近オープンしたらしい。
色んな要望に応えられるよう隅々まで気を配った素晴らしいホテルのようなので、私も興味津々だ。

(ロキ陛下も少し話してくださったけど、確か素敵な噴水前でプロポーズできる部屋とか、結婚式も挙げられる教会風の部屋なんかもあるのよね)

二人きりでダンスが踊れるシャンデリアが素敵な部屋もあるらしく、恋人同士で利用する客も多いのではと言っていた。
ロキ陛下が泊まった部屋は全面鏡張りになっている部屋だったらしいのだけど、兄が花を沢山用意してあげたとかで、床に撒いたらまるで花畑にいるようで凄く素敵だったらしい。

(とってもロマンティックね)

兎に角他も全て兄がこだわりにこだわった部屋の数々なのだと聞かされた。

(ロキ陛下が凄く良かったんですって褒めるたびにお兄様も喜んでいたものね)

兄は大親友に褒められてこれ以上ないほど照れて嬉しそうだった。
『アルメリアも機会があったら是非来てくれ!』と自信満々に言っていたし、気になると言えば気になる。

本来ならこちらで留守番が筋だし、わざわざ好き好んで同行する必要はない。
でも折角の機会だし自分も一度は行ってみたいという気持ちはある。
枯渇したミラルカの国庫を救う一大事業となれば猶更だ。

「その…私もご一緒しても構いませんか?」
「姫も?」
「はい」

珍しいなという顔をされたが、意外にも即却下はされなかった。

「邪魔さえしなければ構わないが?」
「もちろん邪魔などいたしませんし、終始別行動で構いませんわ」
「そうか。姫はワイバーンは乗れるのか?」
「兄に乗せてもらったことはありますが、ワイバーンの操縦までは無理です」

これは無理かと諦めようとしたところで、オーガストが声を上げてくれた。

「それなら俺が姫を乗せましょう。姫が安全にワイバーンに乗れるよう出発までに訓練しておきますので」
「オーガスト…」
「ただ、俺とアルフレッドが抜ける形になるので、セドリック王子にはこちらの騎士達とブルーグレイの騎士達が合同訓練と言う形で動けるよう手配をお願いしたいのですが?」
「ああ、それは確かにその通りだな」

そうは答えてくれたものの、セドリック王子はアルフレッドと二人で行きたいのが物凄く透けて見えた。
きっと二人きりでイチャイチャしたいのだろう。
けれどここでオーガストがダメ押しとばかりにもう一言添えてくれる。

「ワイバーンはどうせ別々に用意しますし、姫も同行した方がアルフレッドも二つ返事で頷いてくれるのでは?」
「よし、そうしよう」

悪魔の返事は物凄く速かった。
確かに二人で旅行に行こうと誘っても今のアルフレッドは私の護衛を持ち出して素直に頷いたりはしないだろう。
納得させるのは酷く手間だと思う。
それが私も同行することですぐに行くと答えが返ってくるのなら面倒はないし、なんならすぐにでも旅行の手筈は整うはず。

「では姫の方も仕事の調整をしておくように」
「かしこまりました」

こうして私達のミラルカ旅行は決定したのだった。

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※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
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