【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

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【ガヴァムからの来客】

124.ガヴァムからの来客⑦ Side.セドリック

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その日の昼下がり、ロキと商人の元で楽しく商品を選んだ。
こういった道具類は拷問官達の使い勝手でいつも購入させているからなかなか実物を自分の手で手に取る機会もないし、なかなか新鮮で自分も楽しめたように思う。

(こういうのはアルフレッドも付き合ってくれないからな)

そんな事を考えていると、ロキから笑顔で礼を言われた。

「ありがとうございます。なかなかこういった物をわかってくれる相手もいないので、これまで裏ルートで手に入れてたんですよね」

ガヴァムの裏マーケットではこういう品物も多々扱われているらしい。
城に商人を呼ぶより自分の足でそちらに行くというのがなんともロキらしかった。

「そうか。拷問官が使う道具の類はそれなりにどこの国にも商人の取り扱いがあるはずだ。一度問い合わせてみるといい」
「ありがとうございます。勉強になりました」
「喜んでもらえてよかった。ああそうだ。…もう暫くで到着するらしいぞ?」
「ああ、レオナルド皇子が来るんでしたよね?俺も出迎えた方がよさそうですか?」
「そうだな。きっとその方があっちも・・・・喜ぶだろう」
「わかりました。ではまた後程」
「ああ。では後で」

ロキはカリンを見てどんな顔をするだろう?
楽しみだと思いながら一度別れて父の元へと向かう。

「父上」
「なんだ、セドリックか。どうした?」
「はい。ロキの滞在ですが、数日伸びても?」
「…?明日朝一番で帰ると言っていなかったか?」
「ええ。ですが、レオナルド皇子と一緒にカリン…陛下が来るようなので必要かと」
「おお、そうか!それなら是非追加で滞在してもらおう」

観光もしたいだろうしなと父は笑顔で言うがそういう意味で言ったのではない。

(まあいいか)

「それと、恐らく今日の夕餉はロキは同席できないと思うのでそちらもご了承を」
「何故だ?」
「恐らく…仕置きで忙しいかと」
「仕置きか。よくわからんが、私の目にはロキ陛下は穏やかな人物にしか見えんぞ?」
「あれは温和に見えてドSですよ?連絡もなしにカリン陛下が来れば、恐らく激怒すると思います」
「まあお前がそこまで言うなら夕食は後で部屋に届けられるよう手配をしておこう」
「ありがとうございます」

そうして話をつけたところでレオナルド皇子が見えたとの一報が入ったので、足早に出迎えへと向かう。

やってきたのはレオナルド皇子が乗ったワイバーンとお付きの者達のワイバーンが数匹。
レオナルド皇子のワイバーンにカリンも乗っているが、それを見つめるロキの目は先程までとは一変し、光を失ったように昏くなっていた。
怒っているのは確実だ。

(まああれだけ目の前で好きな相手が他の男に抱き着いていたら怒りたくもなるか)

どうもカリンはワイバーンに乗るのが苦手なのか、怖いと言わんばかりにレオナルド皇子にギュウギュウ抱きついていたのだ。
普通の移動ならもしかしたらロキもここまで怒らなかったかもしれないが、事ここに至っては俺が思っていた激怒の範疇を超えるのではないだろうか?
精々縛り上げて部屋に籠ってお仕置きとなると踏んでいたのだが、これは多分それ以上の仕置きになりそうな気がする。

「セドリック王子にはご機嫌麗しゅう」
「ああ、レオナルド皇子。長距離移動大変だったな。ゆっくり休むといい」
「セドリック王子…ご無沙汰しています」
「カリン陛下。息災で何よりだ」

そしてそっと耳元に毒を含んだ言葉を囁いてやる。

「ロキに滞在は伸びても構わないと言っておいてやったぞ」

精々可愛がってもらうといい────そう、ほくそ笑んでやった。
カリンはそのまま顔色悪く一礼し、安全な場所へ避難とばかりにロキの方へと急いで向かうが、事ここに至っては一番危険な場所に自ら向かったと言っても過言ではない。

「ロキ!」

表情が抜け落ちたようなロキがカリンを見つめ口を開く。

「…………兄上。俺に何か言うことは?」
「会いたかった?」
「……それだけですか?」

バカな奴だ。
ここでさっさと謝っておけば少しはマシだっただろうに。

「……怒ってるのか?」
「逆に怒られないと思っていたんですか?」
「喜んでもらえるかと思ってたんだが…」

どこまでも愚かで────間抜けなカリン。

「そうですか。セドリック王子。申し訳ないのですが、今夜はご一緒できないと陛下にお伝えください」
「わかった。他に入用のものは?」
「10名ほどご用意いただければありがたいのですが?」

その言葉にロキの怒りの凄まじさが窺い知れる。
道具が欲しいなら貸してやるぞと思って言ったのに、まさかの人員要求に内心驚きを隠せない。
その表情はすでにいつもの穏やかさなど一ミリもなく、ドSそのものに変わってしまっている。
どこからどう見てもカリンを輪姦してやると言わんばかり。

「へ、陛下!そこまでしなくても!」
「リヒター?俺は怒っているんだが?」

ロキを良く知るリヒターが慌てて取り成すが、ロキの怒りは相当だ。
きっとゼロにはならないだろう。
そう思ったが────。

「流石に可哀想です!せめて俺とカーライルと、その他三名ほどで如何でしょう?」
「お前は参加しなくていい。隣で俺の相手をしろ」
「…御意」

意外にも妥協案を出したところで人数は減った。
これはリヒターへの信頼度が高いからなのかもしれない。

「セドリック王子。5名ほどお借りできますか?」
「そうか。では選りすぐりの者を貸そう。カリン陛下?人数が半分になって良かったな?」

良かったとは言い難いだろうが、半分は半分だ。
とは言え言われた方のカリンは当然真っ青になっている。

「ロキ?!」
「兄上?以前言いましたよね?俺を怒らせた時は多人数で犯していいと」
「…………っ」

どうやら言われていたにもかかわらずの所業らしい。

(これはもう逃げ場はないな)

カリンの自業自得だ。

「リヒター、連れていけ」
「……はっ」
「ロキッ!」

冷たい言葉で命令し、ロキが連れられて行くカリンの背を忌々し気に見遣る。
ロキの愛情は相当歪んでいるなと思いながら俺は拷問官の手配をしてやった。

「ロキ、なかなか楽しめたぞ?」
「悪趣味ですね。ご存じだったのでしょう?」
「そうだな」

サラッと言ってやったら、珍しく怒ったように俺を見つめてきた。
周囲の者達は突然の展開に全くついて来れていないが、俺はロキがこういう奴だとわかっていたからどこ吹く風だ。

「まあいいです。ちょうど兄上を抱きたいと思っていましたし、精々可愛がってあげますよ」
「ククッ…。俺はそちらのドSなロキも好きだぞ?」
「それはどうもありがとうございます」
「レオナルド皇子の方はいいのか?」
「レオはワイバーンを操るので精一杯だったでしょうし、そこは別に構いません」

意外にもロキの中でレオナルド皇子の方はどうでもよかったらしい。

(俺なら即牢にでも放り込んで酷い目に合わせてやるがな)

そう思いながらお咎めなしとなったレオナルド皇子へと声を掛けてやる。

「だ、そうだ。良かったな?レオナルド皇子?」
「ええっ?!あ、はい!」

連れていかれたカリンを気にして視線を彷徨わせていたレオナルド皇子が慌てたように返事をしてくる。

「レオ。アルメリア姫が夕餉を共にできるのを楽しみにしていたので、俺の分まで楽しんでください」
「わ、わかった…。でもロキ……」
「では俺はこれで。失礼します」

口調は丁寧だが有無を言わさぬ態度でロキは踵を返し、カリンが連れていかれた方へと向かって去って行った。




「それで?ロキ陛下は結局カリン陛下と話し合いか?」
「ククッ。拷問官まで派遣したのにそんなわけないでしょう?」

一応報告に行くと心配した父がそんな風に尋ねてきたが、当然そんなはずがない。
今頃カリンは犯しまくられて大変なことになっていることだろう。
いくら俺でもアルフレッドを多人数で輪姦しようなんて考えたことはないが、ロキはその点とても冷徹だ。
泣き喚くカリンを前にしても冷たく視姦し続けるかもしれない。
そう思ったから、一人────以前カリンを快楽堕ちさせた拷問官を混ぜておいてやった。
仲直りの切っ掛けにでもしてもらえればいい。
きっと恐慌状態に陥ったカリンに少しは留飲を下げて優しくなれるはずだ。




その後レオナルド皇子を含め夕食をとり、部屋でアルフレッドとまったりしていたらドアをノックする音が響いた。

「入れ」
「はっ」

やってきたのは派遣していた拷問官の一人。件のカリンを快楽堕ちさせた男だった。

「二人は落ち着いたか?」
「恐らくもう暫くかかるかと」
「お前達は引っ込めて二人でお楽しみ中と言ったところか」
「はい」

腕の中でアルフレッドが何があったんだと心配そうにしているが、アルフレッドにはカリンが来たということしか言っていない。
レオナルド皇子も先程の食事の席では暗い表情をしていたが、長距離移動で疲れたのだろうと皆から受け取られていた。
事の経緯を知っているのは出迎えの場にいた者達だけだ。

(まあ、それさえ全容を把握している者は俺以外いなさそうだが…)

恐らく殆どの者は穏やかなロキのイメージが先行して、半信半疑といったところだと思う。

「それで?ロキはどうだった?」
「いやぁ…私も拷問官としてこれまで色んな方を見てきましたが、あれだけ壊れた人はなかなかいないなと思いましたよ?」
「ほぉ?」
「カリン陛下を容赦なく縛り上げて、私共に玩具で嬲れと指示されまして、ご自分は椅子に腰かけそれを見ながら騎士と暗部と見せつけるようにキスしてましたしね」
「ほぉ?」
「その後玩具で嬲りながらどうして怒ってるかわかるかと尋ねられて…」
「それでカリンは?」
「わからないって答えたら幻滅したと言わんばかりに冷たく見遣って、そのまま中イキさせた後私共に犯せと仰いましたね」
「酷いな」
「まあ私がいることに気づいたカリン陛下が悲鳴を上げたらご自身も参戦されましたが、それでもご自分の伴侶が目の前で犯されているというのに楽し気な顔でキスするばかり。いやぁ…本当にいいのかと手加減しそうになったんですが、加減なんて不要だと言われてしまいました。本当にドSここに極まれりという感じで、壊れ具合が半端なかったです」
「そうか。ロキを怒らせるとそうなるんだな」
「ま、面白かったから構いませんけど」

拷問官の男は実に楽し気にしながらロキが退位したら拷問官として引き抜いたらどうかと言ってきた。
玩具の使い方も上手かったし、限界の見極めも上手かったからお勧めだと言われた。

「そんなこと、言われなくてもわかっている」

あれは王よりずっと拷問官向きだ。

「セ、セド?」
「なんだ?アルフレッド」
「ロキ陛下ってカリン陛下大好きじゃなかったか?」
「大好きだな」
「じゃあなんで他の奴に抱かせてんだよ?!」
「腹が立ったからだろう?」
「はぁあっ?!」
「だから、腹が立ったから他の男に犯させた。それがすべてだ」
「おかしいだろ?!」
「だから、あいつは壊れてると言ってるじゃないか」
「うぅ…カリン陛下が可哀想だ」
「そうか?アレはお仕置きされたくてやったとしか思えんがな」
「そんなわけあるかっ!」

納得いかないとアルフレッドは言うが、ロキは常識の型にはまらないのだから仕方がないではないか。

「お前はどう思う?」

俺は実際にロキのお仕置きに接した拷問官に尋ねてみたが、拷問官の返事も俺と似たり寄ったりだ。

「ま、ロキ陛下の性格を知っていてやらかしたのなら自業自得なのでは?カリン陛下もロキ陛下に抱かれてからは幸せそうな顔でやったぁと言わんばかりに悦んでおられましたよ?」
「えぇぇ…?」
「あの二人にしかわからないこともあるんだ。お前がとやかく言うことはない」

カリンが悦んでいたと言うのなら、ロキはそれが見たくてやった可能性だってある。
他の男より自分で満たされる姿を見てカリンの愛情を確認している可能性はなきにしもあらずだ。
外野がとやかく言うべき事ではない。

「そ…そうかなぁ?」
「心配なら後で様子を見に行こうじゃないか」

あまりに心配そうなアルフレッドにそう言うが、アルフレッドはこの後少しレオナルド皇子の様子も見に行くつもりだからと言ってきた。
そんなもの、行かなくてもいいのに。

「だっていつも明るいレオナルド皇子がすっごい落ち込んでて、姫も心配してたんだ」
「どうせロキ絡みだろう?明日本人にフォローを入れさせればいい」
「そうかもしれないけど…」

それでもどうしても行くと言うので渋々許可し、俺は俺でロキの部屋へと行ってみることにした。

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※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
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