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【ガヴァムからの来客】
117.とある日の騒動 後編
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それからロキ陛下がシャイナー陛下を迎えに来たのは少し経ってからのこと。
あの後俺も心配で何度かシャイナー陛下の様子を見に行ったりしてたんだけど、それで俺との時間が減ったとセドの機嫌は日増しに酷くなってしまっていた。
でもあんな状態のシャイナー陛下を気にかけるなって言う方がどうかと思う。
セドは陛下からも宥められてはいたけど、焼け石に水の如くイライラは募る一方で、周囲はずっとヒヤヒヤしっぱなしだった。
ちなみにシャイナー陛下本人は憔悴はしているようだけど、アンシャンテの侍女達がこれでもかと気を配り『ロキ陛下が迎えに来てくださった時にきちんと改めて謝罪をすれば大丈夫ですわ』『そうです。お優しい方ですもの。きっと許してくださいますわ』と優しく言い聞かせて食が進むよう甲斐甲斐しく世話を焼いていたから少しは落ち着いた様子。
とは言え俺からしたら「そうかなぁ??」と首を傾げざるを得ない言葉の数々なんだけど。
(だってロキ陛下って基本的にカリン陛下だけが大好きな人だし)
そんな人が冤罪吹っかけられてそう簡単に許すとはとても思えないんだけど…。
(俺の目から見てもロキ陛下って優しいって言うよりもちょっと常識外で怖い人って感じだからなぁ…)
生い立ちが生い立ちだけに仕方がないところがあるんだけど、触らぬ神に祟りなしっていうやつだ。
でも迎えに来てくれないとセドの機嫌も直らないから困るのは困る。
(最悪俺がワイバーンで迎えに行こうかな…)
思わずそんなことまで考えてしまうほど、早く迎えにきて欲しくて仕方がなかった。
そして待ちに待ったロキ陛下が今日漸く到着したのだが、その頃にはセドの機嫌も最悪になっていた。
迎えの面々がセドから発せられる殺気で震え、立っているのもやっとなほど怯えていて、なんだったら空気もビリビリ震えているような気がする。
これだけ機嫌が悪いと流石のロキ陛下も怯えるんじゃないかなとちょっと思ったんだけど、やってきたロキ陛下は良くも悪くもロキ陛下だった。
「ロキ陛下。随分遅かったな?」
セドが超低音で威嚇しながら皮肉を口にしたにもかかわらず、全く怯える様子も見せず、少し困った顔で軽く謝ってきたのだ。
「すみません。ご迷惑をおかけしてしまったようで」
「…………」
まあわからなくはない。
ロキ陛下からしたらなんでシャイナー陛下を自分がわざわざ迎えに来ないといけないんだという気持ちでいっぱいだったんだろうから。
でもここでそれをサラッと言ってくるところが凄いのだ。
なかなか怒り心頭なセドにこれができる相手はいないと思う。
しかもその後も非常にマイペースにセドに話しかけていく。
「取り敢えず後回しにすると渡し忘れそうなので先にこれを。前回手紙で問い合わせしてもらった物になります」
「…もらおうか」
これにはセドも少し気を削がれた様子で、何か頼んでいたらしいものを素直に受け取っている。
「ええ。あと、こちらは前回頂いたツンナガールの御礼にお持ちしました。そちらを見に行った際に楽しそうな物を見つけたので、是非活用していただけたらと思って」
「どんな物だ?」
「はい。セドリック王子がお好きそうな応用が利きそうな機器です」
ここにきて初めて場の空気が変わった。
それはもう物の見事に先程までの誰か死ぬんじゃないかと言う空気が霧散したのだ。
(えええっ?!)
ロキ陛下はセドの取扱説明書でも持ってるんだろうか?
もし持っているなら是非譲って欲しいと思う。
それくらい鮮やかな手腕で空気を一変させてしまったのだ。
誰だって驚くと思う。
あからさまに媚びたわけじゃなく、自然体だからこそセドを刺激しないんだろうか?
「聞こうか。ここではなんだ。部屋に案内しよう」
「そうですか?」
「ああ。シャイナーよりこちらの方が楽しそうだ」
「ですよね?俺もこれを見つけた時にセドリック王子と話したいと思ったんですよ」
その二人の姿はまさに友人同士と言った感じで、随分仲が良さそうに見えた。
一応姫からのミッション(ロキ陛下は兄の大親友だから、斬り捨てられそうになったら守ってあげてほしいと言うもの)があるから俺も同席させてもらうつもりだけど、できるだけ邪魔はしないようにそっと見守ろうと思う。
そしてセドはロキ陛下を応接間へと通して、仲良く話し始めた。
もちろん最初はまだ少し不機嫌そうだったんだけど、話しているうちに機嫌もすっかり直ったのか、なんだか小難しい話で随分盛り上がっている様子。
途中からは侍女を呼んでお茶まで出していたし、どうやらロキ陛下の命は助かったらしいとホッと胸を撫で下ろす。
「さて。じゃあそろそろ面倒ですがシャイナーに会いに行きますか」
一通り話し終わったところでそう言えばここに来た目的はそれだったなと初めて思い出したほど、二人はずっと楽し気に話し込んでいたように思う。
俺?俺はロキ陛下の前だと基本空気だから。
セドに腰を抱かれながらおとなしく座ってただけですんだ。
セドが剣を抜かなかったから『俺いらなかったな…』なんて思ったほど平和的に終わってしまった。
「ロキ陛下にとってはそちらの方がついでだったようだな」
「それはそうですよ。面倒臭い。セドリック王子と話す方が気楽で楽しいに決まっています」
「そうか」
この言葉に俺は心底驚いたし、セドが少しだけ楽し気に笑ったから更に驚きを隠せなかった。
まさかロキ陛下がセドと話すのが楽しいとここまで言いきるとは思いもしなかったし、セドがそれを自然と嬉しく思っているのがまた新鮮だった。
(これはもう本人達がいくら否定しようと『親友』だよな)
うんうんと頷きながら俺はちょっと安心していた。
だってセドにはこれまで友達らしい友達なんていなかったんだから。
(セドに友達…)
これで少しは丸くなってくれたらいいんだけど…。
今日は料理長に頼んで鯛でも焼いてもらおうか?
とってもめでたい気がするし。
そんなことを考えている俺を傍目に二人の会話は進んでいく。
「随分シャイナーを嫌っているな。親しくしていたのではなかったのか?」
「兄上を嵌めて冤罪を吹っかけてきたので躾けて国に返してやったらまたこんな面倒を起こしてきたんですよ?嫌うなという方がおかしいです」
どうやらシャイナー陛下はロキ陛下の地雷を踏んだせいであんな状態にされてしまったらしい。
やっぱりロキ陛下は怖い。
「なるほどな」
「あ。シャイナーを鞭で縛り上げて連れ帰ろうと思ってるんですが、場所はどこでしょう?」
「ああ、俺も一緒に行こう。面白いものが見られそうだしな」
「そうですか?では」
話している内容は酷いものだが、ある意味この二人は類友なんだろうと思った。
大事に思っている相手を害されたら許さない所なんかそっくりだ。
いつもセドは酷いなと思っていたけどロキ陛下も大概だと思う。
どうやら二人はこの後シャイナー陛下のところに行くつもりのようだし、俺は一先ずここまでの状況を陛下と姫に知らせに行くためその場からそっと離れた。
その後ロキ陛下はシャイナー陛下と無事に話し合いをしてるとかで、セドは機嫌良さげにしながらアンシャンテの者達を労いつつ、帰り支度をするよう伝えていた。
セドはロキ陛下が確実にシャイナー陛下を連れ帰ると確信している様子。
そんな姿に俺からの報告を聞いた上で様子を見に来た国王も目を丸くして驚いている。
「まさかあのセドリックに、ここまで仲良くできる友人ができるとは…」
まるで信じられないものを見たと言わんばかり。
そして『ロキ陛下とは戴冠式以来だし、一度ゆっくり話してみたいものだな』と陛下は言ったのだけど、多分今回は無理だと思う。
シャイナー陛下のあの様子だときっとロキ陛下と一緒じゃないと帰らないと言い出しそうだから。
(もしかして愛人とかに収まったりするのかな?)
国王同士なのにその辺はどうなんだろう?
思わずそんな心配をしてしまったけど、後からセドにそれだけはないだろうと笑い飛ばされてちょっと恥ずかしくなった。
「ロキはそんなに単純な男じゃないぞ?カリンを嵌めた相手を簡単に許すはずがない。面倒と切り捨てるか残酷なことを言いながら長々と嬲るか…。まあよくてペット扱いだろう」
一国の王をペット……。
それは流石にやめてあげて欲しい。
「何にせよ暗部からの報告ではシャイナーはこちらには今後一切迷惑をかけないよう身をもって教え込まれていたらしい。だからそう気にするな」
「……え?」
(それはあれか?鞭でビシビシ躾けちゃったとか?足で踏んで嬲ったとかそういう奴か?)
俺はふるふる頭を振ってそんなまさかと邪念を振り払う。
だって国王同士だし!ちゃんと『話し合い』をしてるに決まってる。
うん。そうだ。そうに違いない!
というわけで俺は信じたい方を信じてシャイナー陛下達が来るのを待った。
その後何故かふらふらなシャイナー陛下がロキ陛下の近衛騎士に支えられてアンシャンテの者達に引き渡されていた。
それを見てしまうと、ロキ陛下が笑顔でセドへと声を掛けてくる姿が却って怖く感じてしまう。
きっと暗部からの報告を聞いてセドも満足のいくお仕置きだったんだろう。
あのセドが全く殺気すら滲ませずこれっぽっちも怒ってないのがその証拠だ。
「セドリック王子。今回は本当にお騒がせして申し訳ありませんでした」
「いや。有意義な話が主だったしな。結果的に悪くはなかった」
「そう言っていただけて良かったです。また手紙で近況をお伝えしますし、何かまたご希望があればその際にでもお知らせくださいね」
「ああ」
「では。これで」
全く危なげなく鮮やかにアンシャンテのワイバーンに乗って笑顔で去っていったロキ陛下に、ブルーグレイの城の者達が感嘆の吐息を吐きながら見送ったのは仕方のないことだろう。
これを機にロキ陛下はセドの友人という認識が完全に周知され、後日国王直々にガヴァムへとブルーグレイへの招待状が送られた。
セドはカリン陛下が来ないならロキ陛下も首を縦に振らないのではと言っていたけど、国王自らの呼び出しなら断れないんじゃないかな?
そんなことを思いつつ、俺は一先ず去った嵐にホッと息を吐いたのだった。
****************
※一応セドとロキは仲の良い先輩後輩みたいなイメージで書いてるので、ちょっとでも伝わるといいなぁと思ったり思わなかったり…。
あの後俺も心配で何度かシャイナー陛下の様子を見に行ったりしてたんだけど、それで俺との時間が減ったとセドの機嫌は日増しに酷くなってしまっていた。
でもあんな状態のシャイナー陛下を気にかけるなって言う方がどうかと思う。
セドは陛下からも宥められてはいたけど、焼け石に水の如くイライラは募る一方で、周囲はずっとヒヤヒヤしっぱなしだった。
ちなみにシャイナー陛下本人は憔悴はしているようだけど、アンシャンテの侍女達がこれでもかと気を配り『ロキ陛下が迎えに来てくださった時にきちんと改めて謝罪をすれば大丈夫ですわ』『そうです。お優しい方ですもの。きっと許してくださいますわ』と優しく言い聞かせて食が進むよう甲斐甲斐しく世話を焼いていたから少しは落ち着いた様子。
とは言え俺からしたら「そうかなぁ??」と首を傾げざるを得ない言葉の数々なんだけど。
(だってロキ陛下って基本的にカリン陛下だけが大好きな人だし)
そんな人が冤罪吹っかけられてそう簡単に許すとはとても思えないんだけど…。
(俺の目から見てもロキ陛下って優しいって言うよりもちょっと常識外で怖い人って感じだからなぁ…)
生い立ちが生い立ちだけに仕方がないところがあるんだけど、触らぬ神に祟りなしっていうやつだ。
でも迎えに来てくれないとセドの機嫌も直らないから困るのは困る。
(最悪俺がワイバーンで迎えに行こうかな…)
思わずそんなことまで考えてしまうほど、早く迎えにきて欲しくて仕方がなかった。
そして待ちに待ったロキ陛下が今日漸く到着したのだが、その頃にはセドの機嫌も最悪になっていた。
迎えの面々がセドから発せられる殺気で震え、立っているのもやっとなほど怯えていて、なんだったら空気もビリビリ震えているような気がする。
これだけ機嫌が悪いと流石のロキ陛下も怯えるんじゃないかなとちょっと思ったんだけど、やってきたロキ陛下は良くも悪くもロキ陛下だった。
「ロキ陛下。随分遅かったな?」
セドが超低音で威嚇しながら皮肉を口にしたにもかかわらず、全く怯える様子も見せず、少し困った顔で軽く謝ってきたのだ。
「すみません。ご迷惑をおかけしてしまったようで」
「…………」
まあわからなくはない。
ロキ陛下からしたらなんでシャイナー陛下を自分がわざわざ迎えに来ないといけないんだという気持ちでいっぱいだったんだろうから。
でもここでそれをサラッと言ってくるところが凄いのだ。
なかなか怒り心頭なセドにこれができる相手はいないと思う。
しかもその後も非常にマイペースにセドに話しかけていく。
「取り敢えず後回しにすると渡し忘れそうなので先にこれを。前回手紙で問い合わせしてもらった物になります」
「…もらおうか」
これにはセドも少し気を削がれた様子で、何か頼んでいたらしいものを素直に受け取っている。
「ええ。あと、こちらは前回頂いたツンナガールの御礼にお持ちしました。そちらを見に行った際に楽しそうな物を見つけたので、是非活用していただけたらと思って」
「どんな物だ?」
「はい。セドリック王子がお好きそうな応用が利きそうな機器です」
ここにきて初めて場の空気が変わった。
それはもう物の見事に先程までの誰か死ぬんじゃないかと言う空気が霧散したのだ。
(えええっ?!)
ロキ陛下はセドの取扱説明書でも持ってるんだろうか?
もし持っているなら是非譲って欲しいと思う。
それくらい鮮やかな手腕で空気を一変させてしまったのだ。
誰だって驚くと思う。
あからさまに媚びたわけじゃなく、自然体だからこそセドを刺激しないんだろうか?
「聞こうか。ここではなんだ。部屋に案内しよう」
「そうですか?」
「ああ。シャイナーよりこちらの方が楽しそうだ」
「ですよね?俺もこれを見つけた時にセドリック王子と話したいと思ったんですよ」
その二人の姿はまさに友人同士と言った感じで、随分仲が良さそうに見えた。
一応姫からのミッション(ロキ陛下は兄の大親友だから、斬り捨てられそうになったら守ってあげてほしいと言うもの)があるから俺も同席させてもらうつもりだけど、できるだけ邪魔はしないようにそっと見守ろうと思う。
そしてセドはロキ陛下を応接間へと通して、仲良く話し始めた。
もちろん最初はまだ少し不機嫌そうだったんだけど、話しているうちに機嫌もすっかり直ったのか、なんだか小難しい話で随分盛り上がっている様子。
途中からは侍女を呼んでお茶まで出していたし、どうやらロキ陛下の命は助かったらしいとホッと胸を撫で下ろす。
「さて。じゃあそろそろ面倒ですがシャイナーに会いに行きますか」
一通り話し終わったところでそう言えばここに来た目的はそれだったなと初めて思い出したほど、二人はずっと楽し気に話し込んでいたように思う。
俺?俺はロキ陛下の前だと基本空気だから。
セドに腰を抱かれながらおとなしく座ってただけですんだ。
セドが剣を抜かなかったから『俺いらなかったな…』なんて思ったほど平和的に終わってしまった。
「ロキ陛下にとってはそちらの方がついでだったようだな」
「それはそうですよ。面倒臭い。セドリック王子と話す方が気楽で楽しいに決まっています」
「そうか」
この言葉に俺は心底驚いたし、セドが少しだけ楽し気に笑ったから更に驚きを隠せなかった。
まさかロキ陛下がセドと話すのが楽しいとここまで言いきるとは思いもしなかったし、セドがそれを自然と嬉しく思っているのがまた新鮮だった。
(これはもう本人達がいくら否定しようと『親友』だよな)
うんうんと頷きながら俺はちょっと安心していた。
だってセドにはこれまで友達らしい友達なんていなかったんだから。
(セドに友達…)
これで少しは丸くなってくれたらいいんだけど…。
今日は料理長に頼んで鯛でも焼いてもらおうか?
とってもめでたい気がするし。
そんなことを考えている俺を傍目に二人の会話は進んでいく。
「随分シャイナーを嫌っているな。親しくしていたのではなかったのか?」
「兄上を嵌めて冤罪を吹っかけてきたので躾けて国に返してやったらまたこんな面倒を起こしてきたんですよ?嫌うなという方がおかしいです」
どうやらシャイナー陛下はロキ陛下の地雷を踏んだせいであんな状態にされてしまったらしい。
やっぱりロキ陛下は怖い。
「なるほどな」
「あ。シャイナーを鞭で縛り上げて連れ帰ろうと思ってるんですが、場所はどこでしょう?」
「ああ、俺も一緒に行こう。面白いものが見られそうだしな」
「そうですか?では」
話している内容は酷いものだが、ある意味この二人は類友なんだろうと思った。
大事に思っている相手を害されたら許さない所なんかそっくりだ。
いつもセドは酷いなと思っていたけどロキ陛下も大概だと思う。
どうやら二人はこの後シャイナー陛下のところに行くつもりのようだし、俺は一先ずここまでの状況を陛下と姫に知らせに行くためその場からそっと離れた。
その後ロキ陛下はシャイナー陛下と無事に話し合いをしてるとかで、セドは機嫌良さげにしながらアンシャンテの者達を労いつつ、帰り支度をするよう伝えていた。
セドはロキ陛下が確実にシャイナー陛下を連れ帰ると確信している様子。
そんな姿に俺からの報告を聞いた上で様子を見に来た国王も目を丸くして驚いている。
「まさかあのセドリックに、ここまで仲良くできる友人ができるとは…」
まるで信じられないものを見たと言わんばかり。
そして『ロキ陛下とは戴冠式以来だし、一度ゆっくり話してみたいものだな』と陛下は言ったのだけど、多分今回は無理だと思う。
シャイナー陛下のあの様子だときっとロキ陛下と一緒じゃないと帰らないと言い出しそうだから。
(もしかして愛人とかに収まったりするのかな?)
国王同士なのにその辺はどうなんだろう?
思わずそんな心配をしてしまったけど、後からセドにそれだけはないだろうと笑い飛ばされてちょっと恥ずかしくなった。
「ロキはそんなに単純な男じゃないぞ?カリンを嵌めた相手を簡単に許すはずがない。面倒と切り捨てるか残酷なことを言いながら長々と嬲るか…。まあよくてペット扱いだろう」
一国の王をペット……。
それは流石にやめてあげて欲しい。
「何にせよ暗部からの報告ではシャイナーはこちらには今後一切迷惑をかけないよう身をもって教え込まれていたらしい。だからそう気にするな」
「……え?」
(それはあれか?鞭でビシビシ躾けちゃったとか?足で踏んで嬲ったとかそういう奴か?)
俺はふるふる頭を振ってそんなまさかと邪念を振り払う。
だって国王同士だし!ちゃんと『話し合い』をしてるに決まってる。
うん。そうだ。そうに違いない!
というわけで俺は信じたい方を信じてシャイナー陛下達が来るのを待った。
その後何故かふらふらなシャイナー陛下がロキ陛下の近衛騎士に支えられてアンシャンテの者達に引き渡されていた。
それを見てしまうと、ロキ陛下が笑顔でセドへと声を掛けてくる姿が却って怖く感じてしまう。
きっと暗部からの報告を聞いてセドも満足のいくお仕置きだったんだろう。
あのセドが全く殺気すら滲ませずこれっぽっちも怒ってないのがその証拠だ。
「セドリック王子。今回は本当にお騒がせして申し訳ありませんでした」
「いや。有意義な話が主だったしな。結果的に悪くはなかった」
「そう言っていただけて良かったです。また手紙で近況をお伝えしますし、何かまたご希望があればその際にでもお知らせくださいね」
「ああ」
「では。これで」
全く危なげなく鮮やかにアンシャンテのワイバーンに乗って笑顔で去っていったロキ陛下に、ブルーグレイの城の者達が感嘆の吐息を吐きながら見送ったのは仕方のないことだろう。
これを機にロキ陛下はセドの友人という認識が完全に周知され、後日国王直々にガヴァムへとブルーグレイへの招待状が送られた。
セドはカリン陛下が来ないならロキ陛下も首を縦に振らないのではと言っていたけど、国王自らの呼び出しなら断れないんじゃないかな?
そんなことを思いつつ、俺は一先ず去った嵐にホッと息を吐いたのだった。
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※一応セドとロキは仲の良い先輩後輩みたいなイメージで書いてるので、ちょっとでも伝わるといいなぁと思ったり思わなかったり…。
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