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【王妃の帰還】
111.※王妃の帰還⑩ Side.セドリック
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※今回はやり過ぎたセドの反省回です。
実は大変だったのねと、深く突っ込まずサラッと読んでいただけたら幸いです。
そんなセドは見たくないよ~!な方は、一話飛ばして次回の上書きラブラブエッチからどうぞ。
****************
部屋には淫靡な空気が満ちていて、荒い息と嬌声だけが響いている。
どうしてあんな女を嫌がることなく受け入れたんだと怒りをぶつける俺をアルフレッドはひたすら受け止める羽目になっていた。
あんな女に口づけられて恥じらう顔なんて見たくなかった。
俺よりあんな女を選ばれたくなかった。
(お前は俺のものだろう?!)
余所見なんてする余裕なんて一切ないように全部奪ってやると言わんばかりに快楽へと突き落とし、そのままどっぷりと沈めにかかった。
そうする事で二度と誰にも奪われなくなると、そう思った。
それなのに……。
「セドリック様!」
アルフレッドを嬲っていると、突然暗部がベッド脇に降り立ち、それ以上はマズいからやめろと止めに入ってくる。
何故止めると睨んだが、よく見ろと言われアルフレッドを見、一気に頭が冷えた。
暗部が止めに入ったのも納得の堕ち具合に自分でも思わず固まってしまう。
どうして気づかなかったんだろう?
「アルフレッド殿!お気を確かに!」
ズルッと引き抜かれた淫具がカツンと硬い音を立て床へと落ちる。
暗部が声を掛けるがアルフレッドの焦点は全く合っていない。
全身を震わせ、完全に快楽堕ちしてしまっている。
どう見てもやり過ぎだ。
焦らしに焦らしてからの強烈な快感の連続。
気絶しても逃さず何度も起こしてはまたその身に快楽を教え込んだせいでまずいことになってしまっていた。
「あ…う……」
「アルフレッド」
触れるだけで恍惚とした顔で虚ろに喘ぐアルフレッドは、いつもとは違いまるで壊れた人形のようだ。
そんなアルフレッドを見て、これは下手をすると精神的に壊れてしまうかもと暗部から言われて蒼白になった。
父からも温情をと言われていたのに、完全に頭から飛んでしまっていた。
「取り敢えず、アルフレッド殿の精神の強靭さに賭けましょう。ええと…そ、そうですね!大好きな剣の話でも耳元で囁いてあげてはいかがでしょう?運が良ければ元に戻ってくれるんじゃないでしょうか?」
全く自信がない様子で目を泳がせる暗部にジトリとした目を向け、わかったから下がれと言って下がらせる。
それからアルフレッドの身を清めて、悪かったと言いながらそっと腕の中に閉じ込めた。
(ここまでする気はなかったのに…)
チュッと優しく口づけるとその口から甘い言葉がこぼれ落ちるが、相変わらず焦点が合うことはない。
いつも俺が酷く抱く時でもこんな風になったことはなかった。
壊れた人形のようになったアルフレッドを見て、俺は初めて深く後悔した。
これまで一度もこんな気持ちになったことなんてなかったのに…。
「アルフレッド…」
睨まれて嫌われてもお前がお前のままで側にいてほしい。
だから…戻ってきてくれと苦しい思いを抱えながら強く抱き締めた。
翌朝、父から呼び出され、渋々そちらへと向かう。
案の定これ以上ないほど叱られたが、俺が心底反省しアルフレッドについていてやりたいと言うとちょっと驚いたようになって、ちゃんと何度でも謝ってしっかり面倒を見るようにと言われた。
目が覚めたら必要に応じて医者も手配するからと痛ましげに言われ、益々不安になる。
そして朝食を手に部屋へと戻ると……何故か剣を抱えて眠るアルフレッドの姿があった。
もしかして一度目を覚ましたのだろうか?
幸せそうに眠っているが、剣はアルフレッドの精神安定剤のようなもの。
このまま起こさず寝かせてやる方がいいのかと逡巡する。
はっきり言って気が触れたようになるアルフレッドは見たくない。
とは言え自分でやったことの責任はちゃんと取ろうと思い、気鬱を抱えながらアルフレッドが目を覚ますのを待った。
それからアルフレッドが目を覚ましたのは夕方になってからのこと。
パチッと目を開け大きく伸びをして、いつもと変わらない様子で「あ~よく寝た」と言ってはたとこちらを見た。
「うわっ?!お前いたのか?」
ビビったと言いながらもアルフレッドはいつも通りだ。
「お前昨日やり過ぎただろ?本当、やめろよな?俺じゃなかったら壊れてるぞ?」
「…………」
「まあ俺もその…悪かったけどな?キスの件は不可抗力だったし、咄嗟に隠したのは判断としては間違ってなかったと思うけど、忘れてたのは悪かった」
「…………」
「ごめんな?あれ?セド?おーい?寝てるのか?」
目の前にいつも通りのアルフレッドがいる。
そんな当たり前のことが嬉しくて、気づけば勝手に頬に涙が伝っていた。
「ちょっ?!何泣いてんだよ?!」
「アルフレッド…すまない。悪かった」
俺はそのままアルフレッドを抱き込んで、何度も何度も謝った。
でもアルフレッドは全く気にした様子もなく、あっけらかんと言い放つ。
「お前の怒りはちゃんと受け止めるって言っただろ?俺、頑丈だから平気だって!」
それから一先ず食事を摂らせ、『まだ動けないってどんな酷い抱き方したんだよ!』と言われながら、他愛のない話をして過ごす。
そうしているうちに気持ちも段々落ち着いてきた。
「お前が正気に戻ってくれて良かった…」
「え?!そんな精神崩壊系の薬でも盛ったのか?!」
「いや?ただ…道具も使って快楽堕ちさせてたら暗部に止めに入られた」
「マジか…。あ~それでだな記憶飛んだの」
「…?」
「俺、基本的には気絶しない限りほとんどお前との行為はほぼ全部薄っすらとでも記憶に残るんだけどさ、今回綺麗に途中から全く思い出せないんだよな」
「…………」
それは知らなかった。
まさかほぼ覚えていたとは。
「で、俺って戦場で辛い思いしたり、エグ過ぎる光景見たりとかしたら精神守るためだと思うんだけど、スコンと一時的にその部分の記憶を消すっぽいんだよ。勝手に」
自己防衛本能って凄いよなとアルフレッドは笑うが、今回はそれに助けられたと言うことか。
「良かった…」
本当にアルフレッドが強くて良かったと思う。
そんな俺に何を思ったのか、いきなりアルフレッドからキスをしてこられた。
「俺はお前が鬼畜だって知ってるし、そんなお前をわかった上で好きになったんだからな?」
「アルフレッド…」
「反省は大事だし成長には不可欠だけど、そんなに落ち込むなよ。悪かったって思うなら、もっといい男になって俺が目を離せなくなるほど成長してみせろよ」
俺が好きな、強い意志が煌めく瞳が真っ直ぐに俺の心を貫いていく。
好きで好きでたまらないこのアルフレッドを失わなくて良かった。
そう思いながら腕の中に閉じ込めて、もう二度と我を忘れたりしないと心に誓い、アルフレッドをちゃんと大事にすると猛省した。
そんな俺にアルフレッドはどこか嬉しそうに笑って、今度はあんな一方的な冷たい抱かれ方じゃなくて、ちゃんと愛し合いたいと言われた。
これまでアルフレッドがそんな風に言うことなんてなかったから、正直意外だったが不思議に思って尋ねると、ものすごく言いにくそうにしながらも教えてもらえる。
「俺、なんだかんだでお前が俺に夢中なの、嬉しいみたい…なんだ」
「アルフレッド…」
「重いのは重いけどな。だから、その……」
照れたその表情が愛おしくて、ついそのまま抱き寄せ口づけで唇を塞いでしまった。
その日はそのまま休んで、翌日大丈夫だったことを父へと報告すると『流石英雄の片腕…』と驚愕していた。
それはそうだろう。
あの状態から医者にかからず自力で生還したのだから。
「姫、早く帰ってこないかな…」
すっかり元気に動けるようになったアルフレッドが溜息を吐きながらそんなことを口にする。
連絡は入れておいたが、癒しが欲しいと嘆くアルフレッドの元に姫が帰ってくるまであと数日。
その間、剣を合わせながらそう言えばと思い出したことを尋ねてみる。
「どうしてキスの件で問い詰めた時に恥ずかしがっていたんだ?」
あれがなければあそこまで激怒しなかっただろうにと返事を待つと、真っ赤な顔でアルフレッドは思いがけないことを口にしてきた。
「あれはっ…その、俺がたまに剣にキスしてるのがバレたのかと思って…」
恥ずかしかったんだよと逆ギレされたが、思わず笑ってしまう。
アルフレッドが剣に愛着があるなんてとっくにわかっていて今更だし、キスしていると聞いて嫉妬するにしてもささやかなものだ。
あのバカ女と比べるべくもない。
(いや…でも、確かに以前ならそれくらいで怒っていたな)
なんて幼稚だったんだろう?
もっと余裕をもって大らかに構えていればよかった。
「可愛いな、アルフレッド」
「可愛いって言うな!」
「褒めているのにそう怒るな」
「怒るに決まってるだろ?!俺は男なんだから!」
プンプンと怒るアルフレッドが愛おしい。
こうして元気にいてくれるだけで幸せだ。
そう思った。
けれどこの後アルフレッドから言われた言葉は正直思ってもみなかった言葉で────。
「そう言えばお前さ、剣筋に全部出てるぞ?」
「何がだ?」
「……だから、俺への接し方が分からなくなってるだろ?」
いつもと変わらず剣を合わせていたはずだった。
いつもと変わらず揶揄って、愛しいと思うその気持ちのままに見つめていた。
けれど────アルフレッドには全部お見通しだったらしい。
迷いがいつもの剣筋を鈍らせ、精彩を欠いてしまっていると言われてしまった。
「はぁ…こんなこと言いたくなかったけど、しょうがないな」
そしてアルフレッドは大好きな手合わせもそこそこに、真っ直ぐ俺を見てこう言ったのだった。
『ベッド行くぞ』
実は大変だったのねと、深く突っ込まずサラッと読んでいただけたら幸いです。
そんなセドは見たくないよ~!な方は、一話飛ばして次回の上書きラブラブエッチからどうぞ。
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部屋には淫靡な空気が満ちていて、荒い息と嬌声だけが響いている。
どうしてあんな女を嫌がることなく受け入れたんだと怒りをぶつける俺をアルフレッドはひたすら受け止める羽目になっていた。
あんな女に口づけられて恥じらう顔なんて見たくなかった。
俺よりあんな女を選ばれたくなかった。
(お前は俺のものだろう?!)
余所見なんてする余裕なんて一切ないように全部奪ってやると言わんばかりに快楽へと突き落とし、そのままどっぷりと沈めにかかった。
そうする事で二度と誰にも奪われなくなると、そう思った。
それなのに……。
「セドリック様!」
アルフレッドを嬲っていると、突然暗部がベッド脇に降り立ち、それ以上はマズいからやめろと止めに入ってくる。
何故止めると睨んだが、よく見ろと言われアルフレッドを見、一気に頭が冷えた。
暗部が止めに入ったのも納得の堕ち具合に自分でも思わず固まってしまう。
どうして気づかなかったんだろう?
「アルフレッド殿!お気を確かに!」
ズルッと引き抜かれた淫具がカツンと硬い音を立て床へと落ちる。
暗部が声を掛けるがアルフレッドの焦点は全く合っていない。
全身を震わせ、完全に快楽堕ちしてしまっている。
どう見てもやり過ぎだ。
焦らしに焦らしてからの強烈な快感の連続。
気絶しても逃さず何度も起こしてはまたその身に快楽を教え込んだせいでまずいことになってしまっていた。
「あ…う……」
「アルフレッド」
触れるだけで恍惚とした顔で虚ろに喘ぐアルフレッドは、いつもとは違いまるで壊れた人形のようだ。
そんなアルフレッドを見て、これは下手をすると精神的に壊れてしまうかもと暗部から言われて蒼白になった。
父からも温情をと言われていたのに、完全に頭から飛んでしまっていた。
「取り敢えず、アルフレッド殿の精神の強靭さに賭けましょう。ええと…そ、そうですね!大好きな剣の話でも耳元で囁いてあげてはいかがでしょう?運が良ければ元に戻ってくれるんじゃないでしょうか?」
全く自信がない様子で目を泳がせる暗部にジトリとした目を向け、わかったから下がれと言って下がらせる。
それからアルフレッドの身を清めて、悪かったと言いながらそっと腕の中に閉じ込めた。
(ここまでする気はなかったのに…)
チュッと優しく口づけるとその口から甘い言葉がこぼれ落ちるが、相変わらず焦点が合うことはない。
いつも俺が酷く抱く時でもこんな風になったことはなかった。
壊れた人形のようになったアルフレッドを見て、俺は初めて深く後悔した。
これまで一度もこんな気持ちになったことなんてなかったのに…。
「アルフレッド…」
睨まれて嫌われてもお前がお前のままで側にいてほしい。
だから…戻ってきてくれと苦しい思いを抱えながら強く抱き締めた。
翌朝、父から呼び出され、渋々そちらへと向かう。
案の定これ以上ないほど叱られたが、俺が心底反省しアルフレッドについていてやりたいと言うとちょっと驚いたようになって、ちゃんと何度でも謝ってしっかり面倒を見るようにと言われた。
目が覚めたら必要に応じて医者も手配するからと痛ましげに言われ、益々不安になる。
そして朝食を手に部屋へと戻ると……何故か剣を抱えて眠るアルフレッドの姿があった。
もしかして一度目を覚ましたのだろうか?
幸せそうに眠っているが、剣はアルフレッドの精神安定剤のようなもの。
このまま起こさず寝かせてやる方がいいのかと逡巡する。
はっきり言って気が触れたようになるアルフレッドは見たくない。
とは言え自分でやったことの責任はちゃんと取ろうと思い、気鬱を抱えながらアルフレッドが目を覚ますのを待った。
それからアルフレッドが目を覚ましたのは夕方になってからのこと。
パチッと目を開け大きく伸びをして、いつもと変わらない様子で「あ~よく寝た」と言ってはたとこちらを見た。
「うわっ?!お前いたのか?」
ビビったと言いながらもアルフレッドはいつも通りだ。
「お前昨日やり過ぎただろ?本当、やめろよな?俺じゃなかったら壊れてるぞ?」
「…………」
「まあ俺もその…悪かったけどな?キスの件は不可抗力だったし、咄嗟に隠したのは判断としては間違ってなかったと思うけど、忘れてたのは悪かった」
「…………」
「ごめんな?あれ?セド?おーい?寝てるのか?」
目の前にいつも通りのアルフレッドがいる。
そんな当たり前のことが嬉しくて、気づけば勝手に頬に涙が伝っていた。
「ちょっ?!何泣いてんだよ?!」
「アルフレッド…すまない。悪かった」
俺はそのままアルフレッドを抱き込んで、何度も何度も謝った。
でもアルフレッドは全く気にした様子もなく、あっけらかんと言い放つ。
「お前の怒りはちゃんと受け止めるって言っただろ?俺、頑丈だから平気だって!」
それから一先ず食事を摂らせ、『まだ動けないってどんな酷い抱き方したんだよ!』と言われながら、他愛のない話をして過ごす。
そうしているうちに気持ちも段々落ち着いてきた。
「お前が正気に戻ってくれて良かった…」
「え?!そんな精神崩壊系の薬でも盛ったのか?!」
「いや?ただ…道具も使って快楽堕ちさせてたら暗部に止めに入られた」
「マジか…。あ~それでだな記憶飛んだの」
「…?」
「俺、基本的には気絶しない限りほとんどお前との行為はほぼ全部薄っすらとでも記憶に残るんだけどさ、今回綺麗に途中から全く思い出せないんだよな」
「…………」
それは知らなかった。
まさかほぼ覚えていたとは。
「で、俺って戦場で辛い思いしたり、エグ過ぎる光景見たりとかしたら精神守るためだと思うんだけど、スコンと一時的にその部分の記憶を消すっぽいんだよ。勝手に」
自己防衛本能って凄いよなとアルフレッドは笑うが、今回はそれに助けられたと言うことか。
「良かった…」
本当にアルフレッドが強くて良かったと思う。
そんな俺に何を思ったのか、いきなりアルフレッドからキスをしてこられた。
「俺はお前が鬼畜だって知ってるし、そんなお前をわかった上で好きになったんだからな?」
「アルフレッド…」
「反省は大事だし成長には不可欠だけど、そんなに落ち込むなよ。悪かったって思うなら、もっといい男になって俺が目を離せなくなるほど成長してみせろよ」
俺が好きな、強い意志が煌めく瞳が真っ直ぐに俺の心を貫いていく。
好きで好きでたまらないこのアルフレッドを失わなくて良かった。
そう思いながら腕の中に閉じ込めて、もう二度と我を忘れたりしないと心に誓い、アルフレッドをちゃんと大事にすると猛省した。
そんな俺にアルフレッドはどこか嬉しそうに笑って、今度はあんな一方的な冷たい抱かれ方じゃなくて、ちゃんと愛し合いたいと言われた。
これまでアルフレッドがそんな風に言うことなんてなかったから、正直意外だったが不思議に思って尋ねると、ものすごく言いにくそうにしながらも教えてもらえる。
「俺、なんだかんだでお前が俺に夢中なの、嬉しいみたい…なんだ」
「アルフレッド…」
「重いのは重いけどな。だから、その……」
照れたその表情が愛おしくて、ついそのまま抱き寄せ口づけで唇を塞いでしまった。
その日はそのまま休んで、翌日大丈夫だったことを父へと報告すると『流石英雄の片腕…』と驚愕していた。
それはそうだろう。
あの状態から医者にかからず自力で生還したのだから。
「姫、早く帰ってこないかな…」
すっかり元気に動けるようになったアルフレッドが溜息を吐きながらそんなことを口にする。
連絡は入れておいたが、癒しが欲しいと嘆くアルフレッドの元に姫が帰ってくるまであと数日。
その間、剣を合わせながらそう言えばと思い出したことを尋ねてみる。
「どうしてキスの件で問い詰めた時に恥ずかしがっていたんだ?」
あれがなければあそこまで激怒しなかっただろうにと返事を待つと、真っ赤な顔でアルフレッドは思いがけないことを口にしてきた。
「あれはっ…その、俺がたまに剣にキスしてるのがバレたのかと思って…」
恥ずかしかったんだよと逆ギレされたが、思わず笑ってしまう。
アルフレッドが剣に愛着があるなんてとっくにわかっていて今更だし、キスしていると聞いて嫉妬するにしてもささやかなものだ。
あのバカ女と比べるべくもない。
(いや…でも、確かに以前ならそれくらいで怒っていたな)
なんて幼稚だったんだろう?
もっと余裕をもって大らかに構えていればよかった。
「可愛いな、アルフレッド」
「可愛いって言うな!」
「褒めているのにそう怒るな」
「怒るに決まってるだろ?!俺は男なんだから!」
プンプンと怒るアルフレッドが愛おしい。
こうして元気にいてくれるだけで幸せだ。
そう思った。
けれどこの後アルフレッドから言われた言葉は正直思ってもみなかった言葉で────。
「そう言えばお前さ、剣筋に全部出てるぞ?」
「何がだ?」
「……だから、俺への接し方が分からなくなってるだろ?」
いつもと変わらず剣を合わせていたはずだった。
いつもと変わらず揶揄って、愛しいと思うその気持ちのままに見つめていた。
けれど────アルフレッドには全部お見通しだったらしい。
迷いがいつもの剣筋を鈍らせ、精彩を欠いてしまっていると言われてしまった。
「はぁ…こんなこと言いたくなかったけど、しょうがないな」
そしてアルフレッドは大好きな手合わせもそこそこに、真っ直ぐ俺を見てこう言ったのだった。
『ベッド行くぞ』
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