108 / 215
【国際会議】
99.国際会議㊲ Side.セドリック
しおりを挟む
カリン王子の姿を見つけこちらから声を掛けると、案の定飛び上がられてしまった。
一体何の用だと言わんばかりに今にも泣き出しそうな怯えの表情を浮かべられたが、逃げはしなかった。
ロキが行方知れずになっているためなんとか正気を保っていると言ったところか。
ロキの件について話があると振ってやると、気持ちを落ち着かせて『聞かせてもらおう』と言い、そのまま別室へと案内された。
本人的には藁にも縋る気持ちだっただろう。
なにせ手掛かり一つ掴めてはいなかったのだから────。
因みに部屋にいるのは俺とアルフレッドとカリン王子の他にもう一人、レオナルド皇子が同席している。
どうやら個人的に大親友とやらの捜索に加わっていたらしい。
「ロキ陛下の行方について、何か掴めたか?」
「いや…こちらでは何も」
「そうか。実は俺の暗部がロキの無事を既に確認している」
「……え?」
「そしてロキを攫った犯人も突き止め済みだ」
「なっ?!」
「一体誰が?!」
「アンシャンテのシャイナー王だ」
「シャイナー王が犯人だと?!」
その言葉に驚いたカリン王子がガタッと席を立ち、驚愕に目を見開く。
まあそれはそうだろう。驚くのも無理はない。
普通はあり得ないことだからだ。
けれどここで更にあり得ないことを伝えなくてはならない。
「シャイナーは教会でカリン王子を抱くロキを見て、欲しくなったらしい」
その言葉に案の定、カリン王子は驚き過ぎて言葉が咄嗟に出なくなってしまっていた。
国の利の為でもなく、何らかの交渉のためといったわけでもない。
個人的にロキに惚れこんで欲しくなったから攫ったと聞き、驚き過ぎて思考がうまく働かないようだ。
けれどそんなカリン王子を戻したのはレオナルド皇子だった。
「ロキ陛下、モッテモテだね。俺もロキ陛下にならちょっと可愛がられたいなって思ったことがあるし、気持ちもわからないではないなぁ」
「……っ?!なっ…!」
「あ、もちろん今は友情100%だからご心配なく」
「~~~~っ!!」
そんな軽い口調ではあったが、意外にもその目は座っていた。
どうやらレオナルド皇子は結構本気で怒っているらしい。
けれどカリン王子の手前それ以上言う気はないようだ。
なのでこちらも普通に話を続けていく。
「既にロキの身柄はここから遠く離れた山の側だ。護衛騎士が誰もついていなかったのが悪かったな。暗部が一人近くにいた騎士に声を掛けてから追っていったようだが、その後は連絡手段がないようでついていくしかできなかったようだ」
「う…」
「まあそのあたりは言っても仕方がない。だが……この先事態は動くぞ?」
「と言うと?」
「ロキが脱出したと先程報告が入った」
「……え?」
ここでカリン王子は一般的に考えられる言葉を口に出した。
「それならすぐに迎えを…!」
けれど、ロキはそんな『普通』の枠には全く納まりはしないのだ。
「いや。それは必要ない。あの男は本当に面白くてな…」
そしてロキは走る馬車から上手く脱出した後、山中で月華と言う薬効を持つ植物をゲットし街まで移動。
そこで薬師ギルドに入りそれを売り払って金を作ったらしいと教えてやる。
「……逞しいな」
「その後酒場で裏カジノの情報を得て裏カジノに潜入。資金を稼いだ上に裏家業の者を味方につけて裏の者専用の宿を紹介してもらったらしい。あいつは本当に王族か?あれは流石に俺でも無理だぞ?」
「……ロキ」
それを聞いてカリン王子は脱力して肩を落とすが、どこかホッとしたように安堵の息を吐いた。
「まあそういうことで、逃げ出したとしてもあれなら捕まることなく自力でここまで帰ってこれるだろう」
「ああ」
これでロキはある程度安全だと察し、改めてこちらへと真剣な目を向けてくる。
「ということは…」
「そうだ」
カリン王子達がすることはロキを救出しに行くことではない。
「アンシャンテのシャイナー王を捕縛しなければならないということか…」
「ああ」
とは言え彼は他国の王だ。
安易に拘束するなどできはしない。
余程の証拠を揃えなければまず無理だろう。
だからこそ────持参したものが役に立つ。
「どうすれば…」
「どうせそろそろロキが逃げたと報告が入る頃だ。暗部に見張らせておけばいい」
「それで尻尾を出すと?」
「ああ。だが暗部の証言だけでは難しいだろう。だからこのシャメルとこちらの機器…ロックオンを貸してやろう。短時間なら映像を撮ることが可能だ」
ブルーグレイの最新機器を前にカリン王子が驚いたように目を瞠る。
「……これは」
「使い方は簡単だ。精々上手く使って証拠を固めろ。俺が手を貸してやるのはここまでだ」
「あ……」
「ロキに言っておけ。これで貸し一つだとな」
「あり…ありがとう、ございます」
カリン王子の目にじわりと涙が浮かぶが、それは喜びからか悔しさからか。
グッと握り込まれた拳は微かに震えていた。
その後カリン王子は自分の暗部にそれを預け、速やかに主要メンバーを集めにかかる。
レオナルド皇子も引き続き同席するようだ。
乗り掛かった舟だからと言ってはいたが、その目はガヴァムの騎士達に大親友を預けられないと言わんばかりに昏く燃えていた。
どうやらあのポンコツ皇子から見ても今回の騎士達の動きは最悪だったらしい。
アルフレッドがこっそり言っていたが、ミラルカは国際会議の時こそ警備上失態を犯してしまっていたが、基本的に騎士達に対して実力主義を謳っているらしく弛んでいる者は許されないらしい。
なので個々人の実力は当然ガヴァムより上だし、上からの命令に対しきっちり機敏に動けるとの事。
そんな中で育ってきたからこそ余計にレオナルド皇子はガヴァムの騎士達の不甲斐なさに腹を立てているのだろう。
(さて…これでどうなるか)
自分は同席しないが、この先どうなるか気にはなるので引き続き暗部へと指示を出す。
「引き続き双方の様子を確認し、報告を入れろ」
「御意」
こうして怒涛の一日を終え、翌日になったのだが────。
(まさか俺の暗部を撒くとはな…)
ロキの姿が途中で消えたと報告を受けいつの間にか攫われたのかと思ったが、どうやら暗部を撒いて独自のルートで城へと戻ったらしいことが判明した。
表向きのルートではなく、裏稼業の者達特有のルートが使われたらしい。
恐らく地下だろうが、他国のそう言った場所にまではこちらも精通していないため仕方がない。
そして城に戻ったロキはカリン王子達をも煙に巻き、一番信用を置いている近衛を一人連れてシャイナーへと突撃した。
これは正直言って予想外だ。
てっきりカリン王子あたりが始末をつけると思っていたのに……。
しかも別に調教したわけでもなく、穏やかな話し合いでこれでもかと利を毟り取っていったらしい。
ここ半年でロキは国政についても学んだらしく、無駄なく搾取に踏み切ったようだった。
元々培っていた裏稼業の知識がここにきて花開いたのだろう。
あれを育てた裏稼業の者達の腕は大したものだ。
様子を窺っていた暗部曰く、見事なほど交渉には裏稼業の手口が使われており、アンシャンテ王は機嫌よくその利をロキに差し出していたとか。
けれどそれでアンシャンテが傾くかと言うとそういう訳でもないらしい。
細く長くアンシャンテから利を得るために、相手から多くを奪いながらも上手く餌も撒いていた。
その一つが三ヵ国事業への参入だ。
ガヴァムとアンシャンテの間にある小競り合いの絶えない二国の厄介な交渉までシャイナーに丸投げし、アンシャンテまでレールを繋ぐという甘美な餌を撒いたのだ。
アンシャンテにも大きな利のある話だし、双方が繋がればロキに会いやすくなるとシャイナーは張りきり随分意気込んでいたそうだが、なかなかどうして難しい案件だろう。
(まああの優秀そうな男ならやってのけてしまいそうではあるがな…)
それにしても恋心を利用して掌の上で転がすとは…女相手に聞き込みを得意とする情報スパイの知り合いでもいるのだろうか?
あまりにも手口が鮮やか過ぎる。
ロキは思いつきで言っただけかもしれないが、これが実行できたらガヴァムにもより大きな利が転がり込むはずだ。
アンシャンテは衰退傾向にあるとは言え、新王はなかなか優秀だし、やりようによってはまだまだ栄えていく可能性が高い。
そんな相手をロキは見極め利用したのだ。
まさかこんな風に自分を攫った相手を上手く懐に取込んでしまうとは思っても見なかった。
色仕掛けともまた違う手法に驚きを隠せない。
キスの一つもせずによくも上手く転がしたものだ。
こうなってみるとシャイナーも存外可愛いものだと笑いたくなる。
優秀なくせにその恋心故にロキに利用されるなんて…本当におかしくてたまらない。
これはある意味俺には思いつかない手法だった。
恐れられることが多い俺には絶対に真似できない手だ。
もしかしたらロキはこの先大化けするかもしれない。
(これでは今回の手助けはロキへの貸しにはならないな…)
自力で帰還し、自力で交渉して相手を懐に抱き込み、利益を確保しつつ自分の安全までをも確保したのだから恐れ入る。
この事業の話が出たことで、国と国の間に重要な案件が発生し、シャイナーは国王としてロキを攫うことができなくなったと言っても過言ではないのだから…。
終わってみればガヴァムの問題点が浮き彫りになっただけで、ロキ自身にマイナスになる事など何一つなかった。
誰の手も借りず、ほぼ一人で解決したようなものだ。
これでは恩に着せることもできやしない。
(ああ…本当に見ていて全く飽きない男だ)
きっとこれから先もロキは俺を存分に楽しませてくれることだろうし、益々目が離せなくなった。
それならそれでこちらからもレールを繋ぐ手伝いくらいはしてやろうか?
アンシャンテの手前で逆側に分岐させルートを確保すればブルーグレイまで繋いでいくのもそう難しい話ではない。
そうなればミラルカに行くにも時間短縮になるし、姫のためにとアルフレッドも協力的になるかもしれない。
ロキ達を利用しつつアルフレッドとやってみようか?
夫婦で取り組む初事業と言うのも悪くはない。
できればそれを使ってレオナルド皇子が作るという鉱山ホテルにも行ってみたい。
その頃にはきっと完成していることだろう。
仕事次第ではあるがアルフレッドとのんびり旅行に行くのも悪くはないし、夢は広がる一方だ。
とりあえず、後で面白いものを見せてくれたロキの顔でも見に行こうか。
あの狂王子ならぬ、狂王が周辺諸国の者達に良い意味で見直されるその姿を、きっと見られると思うから……。
一体何の用だと言わんばかりに今にも泣き出しそうな怯えの表情を浮かべられたが、逃げはしなかった。
ロキが行方知れずになっているためなんとか正気を保っていると言ったところか。
ロキの件について話があると振ってやると、気持ちを落ち着かせて『聞かせてもらおう』と言い、そのまま別室へと案内された。
本人的には藁にも縋る気持ちだっただろう。
なにせ手掛かり一つ掴めてはいなかったのだから────。
因みに部屋にいるのは俺とアルフレッドとカリン王子の他にもう一人、レオナルド皇子が同席している。
どうやら個人的に大親友とやらの捜索に加わっていたらしい。
「ロキ陛下の行方について、何か掴めたか?」
「いや…こちらでは何も」
「そうか。実は俺の暗部がロキの無事を既に確認している」
「……え?」
「そしてロキを攫った犯人も突き止め済みだ」
「なっ?!」
「一体誰が?!」
「アンシャンテのシャイナー王だ」
「シャイナー王が犯人だと?!」
その言葉に驚いたカリン王子がガタッと席を立ち、驚愕に目を見開く。
まあそれはそうだろう。驚くのも無理はない。
普通はあり得ないことだからだ。
けれどここで更にあり得ないことを伝えなくてはならない。
「シャイナーは教会でカリン王子を抱くロキを見て、欲しくなったらしい」
その言葉に案の定、カリン王子は驚き過ぎて言葉が咄嗟に出なくなってしまっていた。
国の利の為でもなく、何らかの交渉のためといったわけでもない。
個人的にロキに惚れこんで欲しくなったから攫ったと聞き、驚き過ぎて思考がうまく働かないようだ。
けれどそんなカリン王子を戻したのはレオナルド皇子だった。
「ロキ陛下、モッテモテだね。俺もロキ陛下にならちょっと可愛がられたいなって思ったことがあるし、気持ちもわからないではないなぁ」
「……っ?!なっ…!」
「あ、もちろん今は友情100%だからご心配なく」
「~~~~っ!!」
そんな軽い口調ではあったが、意外にもその目は座っていた。
どうやらレオナルド皇子は結構本気で怒っているらしい。
けれどカリン王子の手前それ以上言う気はないようだ。
なのでこちらも普通に話を続けていく。
「既にロキの身柄はここから遠く離れた山の側だ。護衛騎士が誰もついていなかったのが悪かったな。暗部が一人近くにいた騎士に声を掛けてから追っていったようだが、その後は連絡手段がないようでついていくしかできなかったようだ」
「う…」
「まあそのあたりは言っても仕方がない。だが……この先事態は動くぞ?」
「と言うと?」
「ロキが脱出したと先程報告が入った」
「……え?」
ここでカリン王子は一般的に考えられる言葉を口に出した。
「それならすぐに迎えを…!」
けれど、ロキはそんな『普通』の枠には全く納まりはしないのだ。
「いや。それは必要ない。あの男は本当に面白くてな…」
そしてロキは走る馬車から上手く脱出した後、山中で月華と言う薬効を持つ植物をゲットし街まで移動。
そこで薬師ギルドに入りそれを売り払って金を作ったらしいと教えてやる。
「……逞しいな」
「その後酒場で裏カジノの情報を得て裏カジノに潜入。資金を稼いだ上に裏家業の者を味方につけて裏の者専用の宿を紹介してもらったらしい。あいつは本当に王族か?あれは流石に俺でも無理だぞ?」
「……ロキ」
それを聞いてカリン王子は脱力して肩を落とすが、どこかホッとしたように安堵の息を吐いた。
「まあそういうことで、逃げ出したとしてもあれなら捕まることなく自力でここまで帰ってこれるだろう」
「ああ」
これでロキはある程度安全だと察し、改めてこちらへと真剣な目を向けてくる。
「ということは…」
「そうだ」
カリン王子達がすることはロキを救出しに行くことではない。
「アンシャンテのシャイナー王を捕縛しなければならないということか…」
「ああ」
とは言え彼は他国の王だ。
安易に拘束するなどできはしない。
余程の証拠を揃えなければまず無理だろう。
だからこそ────持参したものが役に立つ。
「どうすれば…」
「どうせそろそろロキが逃げたと報告が入る頃だ。暗部に見張らせておけばいい」
「それで尻尾を出すと?」
「ああ。だが暗部の証言だけでは難しいだろう。だからこのシャメルとこちらの機器…ロックオンを貸してやろう。短時間なら映像を撮ることが可能だ」
ブルーグレイの最新機器を前にカリン王子が驚いたように目を瞠る。
「……これは」
「使い方は簡単だ。精々上手く使って証拠を固めろ。俺が手を貸してやるのはここまでだ」
「あ……」
「ロキに言っておけ。これで貸し一つだとな」
「あり…ありがとう、ございます」
カリン王子の目にじわりと涙が浮かぶが、それは喜びからか悔しさからか。
グッと握り込まれた拳は微かに震えていた。
その後カリン王子は自分の暗部にそれを預け、速やかに主要メンバーを集めにかかる。
レオナルド皇子も引き続き同席するようだ。
乗り掛かった舟だからと言ってはいたが、その目はガヴァムの騎士達に大親友を預けられないと言わんばかりに昏く燃えていた。
どうやらあのポンコツ皇子から見ても今回の騎士達の動きは最悪だったらしい。
アルフレッドがこっそり言っていたが、ミラルカは国際会議の時こそ警備上失態を犯してしまっていたが、基本的に騎士達に対して実力主義を謳っているらしく弛んでいる者は許されないらしい。
なので個々人の実力は当然ガヴァムより上だし、上からの命令に対しきっちり機敏に動けるとの事。
そんな中で育ってきたからこそ余計にレオナルド皇子はガヴァムの騎士達の不甲斐なさに腹を立てているのだろう。
(さて…これでどうなるか)
自分は同席しないが、この先どうなるか気にはなるので引き続き暗部へと指示を出す。
「引き続き双方の様子を確認し、報告を入れろ」
「御意」
こうして怒涛の一日を終え、翌日になったのだが────。
(まさか俺の暗部を撒くとはな…)
ロキの姿が途中で消えたと報告を受けいつの間にか攫われたのかと思ったが、どうやら暗部を撒いて独自のルートで城へと戻ったらしいことが判明した。
表向きのルートではなく、裏稼業の者達特有のルートが使われたらしい。
恐らく地下だろうが、他国のそう言った場所にまではこちらも精通していないため仕方がない。
そして城に戻ったロキはカリン王子達をも煙に巻き、一番信用を置いている近衛を一人連れてシャイナーへと突撃した。
これは正直言って予想外だ。
てっきりカリン王子あたりが始末をつけると思っていたのに……。
しかも別に調教したわけでもなく、穏やかな話し合いでこれでもかと利を毟り取っていったらしい。
ここ半年でロキは国政についても学んだらしく、無駄なく搾取に踏み切ったようだった。
元々培っていた裏稼業の知識がここにきて花開いたのだろう。
あれを育てた裏稼業の者達の腕は大したものだ。
様子を窺っていた暗部曰く、見事なほど交渉には裏稼業の手口が使われており、アンシャンテ王は機嫌よくその利をロキに差し出していたとか。
けれどそれでアンシャンテが傾くかと言うとそういう訳でもないらしい。
細く長くアンシャンテから利を得るために、相手から多くを奪いながらも上手く餌も撒いていた。
その一つが三ヵ国事業への参入だ。
ガヴァムとアンシャンテの間にある小競り合いの絶えない二国の厄介な交渉までシャイナーに丸投げし、アンシャンテまでレールを繋ぐという甘美な餌を撒いたのだ。
アンシャンテにも大きな利のある話だし、双方が繋がればロキに会いやすくなるとシャイナーは張りきり随分意気込んでいたそうだが、なかなかどうして難しい案件だろう。
(まああの優秀そうな男ならやってのけてしまいそうではあるがな…)
それにしても恋心を利用して掌の上で転がすとは…女相手に聞き込みを得意とする情報スパイの知り合いでもいるのだろうか?
あまりにも手口が鮮やか過ぎる。
ロキは思いつきで言っただけかもしれないが、これが実行できたらガヴァムにもより大きな利が転がり込むはずだ。
アンシャンテは衰退傾向にあるとは言え、新王はなかなか優秀だし、やりようによってはまだまだ栄えていく可能性が高い。
そんな相手をロキは見極め利用したのだ。
まさかこんな風に自分を攫った相手を上手く懐に取込んでしまうとは思っても見なかった。
色仕掛けともまた違う手法に驚きを隠せない。
キスの一つもせずによくも上手く転がしたものだ。
こうなってみるとシャイナーも存外可愛いものだと笑いたくなる。
優秀なくせにその恋心故にロキに利用されるなんて…本当におかしくてたまらない。
これはある意味俺には思いつかない手法だった。
恐れられることが多い俺には絶対に真似できない手だ。
もしかしたらロキはこの先大化けするかもしれない。
(これでは今回の手助けはロキへの貸しにはならないな…)
自力で帰還し、自力で交渉して相手を懐に抱き込み、利益を確保しつつ自分の安全までをも確保したのだから恐れ入る。
この事業の話が出たことで、国と国の間に重要な案件が発生し、シャイナーは国王としてロキを攫うことができなくなったと言っても過言ではないのだから…。
終わってみればガヴァムの問題点が浮き彫りになっただけで、ロキ自身にマイナスになる事など何一つなかった。
誰の手も借りず、ほぼ一人で解決したようなものだ。
これでは恩に着せることもできやしない。
(ああ…本当に見ていて全く飽きない男だ)
きっとこれから先もロキは俺を存分に楽しませてくれることだろうし、益々目が離せなくなった。
それならそれでこちらからもレールを繋ぐ手伝いくらいはしてやろうか?
アンシャンテの手前で逆側に分岐させルートを確保すればブルーグレイまで繋いでいくのもそう難しい話ではない。
そうなればミラルカに行くにも時間短縮になるし、姫のためにとアルフレッドも協力的になるかもしれない。
ロキ達を利用しつつアルフレッドとやってみようか?
夫婦で取り組む初事業と言うのも悪くはない。
できればそれを使ってレオナルド皇子が作るという鉱山ホテルにも行ってみたい。
その頃にはきっと完成していることだろう。
仕事次第ではあるがアルフレッドとのんびり旅行に行くのも悪くはないし、夢は広がる一方だ。
とりあえず、後で面白いものを見せてくれたロキの顔でも見に行こうか。
あの狂王子ならぬ、狂王が周辺諸国の者達に良い意味で見直されるその姿を、きっと見られると思うから……。
37
あなたにおすすめの小説
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます
天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。
広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。
「は?」
「嫁に行って来い」
そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。
現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる!
……って、言ったら大袈裟かな?
※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。
僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!
迷路を跳ぶ狐
BL
社交界での立ち回りが苦手で、よく夜会でも失敗ばかりの僕は、いつも一族から罵倒され、軽んじられて生きてきた。このまま誰からも愛されたりしないと思っていたのに、突然、ろくに顔も合わせてくれない公爵家の男と、婚約することになってしまう。
だけど、婚約なんて名ばかりで、会話を交わすことはなく、同じ王城にいるはずなのに、顔も合わせない。
それでも、公爵家の役に立ちたくて、頑張ったつもりだった。夜遅くまで魔法のことを学び、必要な魔法も身につけ、僕は、正式に婚約が発表される日を、楽しみにしていた。
けれど、ある日僕は、公爵家と王家を害そうとしているのではないかと疑われてしまう。
一体なんの話だよ!!
否定しても誰も聞いてくれない。それが原因で、婚約するという話もなくなり、僕は幽閉されることが決まる。
ほとんど話したことすらない、僕の婚約者になるはずだった宰相様は、これまでどおり、ろくに言葉も交わさないまま、「婚約は考え直すことになった」とだけ、僕に告げて去って行った。
寂しいと言えば寂しかった。これまで、彼に相応しくなりたくて、頑張ってきたつもりだったから。だけど、仕方ないんだ……
全てを諦めて、王都から遠い、幽閉の砦に連れてこられた僕は、そこで新たな生活を始める。
食事を用意したり、荒れ果てた砦を修復したりして、結構楽しく暮らせていると思っていた矢先、森の中で王都の魔法使いが襲われているのを見つけてしまう。
*残酷な描写があり、たまに攻めが受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる