【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

オレンジペコ

文字の大きさ
106 / 215
【国際会議】

97.国際会議㉟ Side.セドリック

しおりを挟む
その後疲れ切ったアルフレッドを部屋へと運び、目が覚めるまでゆっくり休ませるよう指示を出してからパーティーへと向かった。
結婚祝いに来ているのだからこのパーティーには適当に参加すべきだろう。
そう思いながらロキに祝いの言葉を述べ、例の機器───シャメルについての話を行う。
それによるとやはり多岐に渡って使用したいとのことで、取り敢えず三ヵ国事業のやり取りで使いたい旨を伝えられた。
その後詳細を詰め、レオナルド皇子や他の三ヵ国事業の主要メンバーとの顔合わせもしてもらい、技術協力をしているフォルティエンヌも含めた四カ国での需要が本決まりになった。
かなり大きな需要が見込めるため、ブルーグレイにとっても美味しい話だ。
それこそ発案者であるロキにマージンを回しても問題がないほどの儲け話だったので、後できちんと契約書を用意しようと言っておいた。
レオナルド皇子とは例の鉱山の話もしたのだが、マニアックな鉱山ホテル計画は順調のようで俺にまでどんな部屋が好みか聞いてきた。
それに対して俺は素直に声が響く教会風の部屋がいいと伝えておく。
あれは本当に最高だったからだ。
するとロキの方からもレオナルド皇子に勧めてくれたので、意外にもその案はあっさりと通り快諾してもらうことができた。
それを聞き、完成した暁には是非アルフレッドを連れて利用したいものだと密かに思ったのだった。


***


それから暫くしてアルフレッドが会場へと顔を出した。

「お前、起こせよな!」

そんな風に真っ赤になりながら言ってきたが、このパーティーは夜まで続くらしいから別に焦る必要はない。
ゆっくり休んでから来ても十分ロキと話す時間はあるのだから気にするなと言って流してやった。
そして改めて祝辞を二人揃って言いに行くと、カリン王子が戻ってくる姿が見えたので長居はせずさらりとその場を離れバルコニーへと向かう。

今回のパーティーではあちらこちらに休憩室も用意されていて、二人でしけこむことも難しくはないらしい。
けれど今日は既に教会でやっているので、たまにはのんびりアルフレッドと酒でも傾けながら語らおうと思った。

「はぁ…パーティーもいいけど、こうも長いと疲れるな」
「そう言うな。ロキ達は主役だから夜までずっとだぞ?」
「お前いつからロキ陛下を呼び捨てにしてるんだよ?」

随分仲が良いなと言われたが、別に本人の前では呼び捨てにはしていない。

「本人の前で呼び捨てにはしないぞ?単に俺がそう呼びたくて勝手に呼んでいるだけだ」
「へぇ…。ま、いいけど。どうせ変態同士仲間意識でも強いんだろ?」
「アルフレッド。焼きもちか?可愛いものだな」

ククッと笑ってやると顔を真っ赤にして噛みついてくる。

「誰がだ!あ~もう!剣を二本持ってくればよかった!」

そうしたらこっそり庭で手合わせもできたかもしれないのにとアルフレッドは言うが、それが照れ隠しだということを俺は知っているので、微笑ましく見遣った。
そんな俺達の元へ何故か暗部がやってきて報告があると言ってきた。
アルフレッドがいる前に出てくるのは珍しいので、同席してでも伝えたい何かかと尋ねるとそうだという答えが返ってくる。

「何があった?」

よもやまた刺客でも湧いて出たのかと尋ねると、全く違う話で────。

「ロキ陛下がアンシャンテのシャイナー陛下の指示で連れ去られました」
「…………は?」

一瞬聞き間違いかと思ったがどうやら違ったらしい。

「ロキはガヴァムの王だぞ?近衛はどうした?」
「それが…近衛騎士も護衛騎士もついておらず、ただ一人ついていた暗部が慌てたように追いかけては行ったのですが…」
「こちらの手の者は?」
「三人で尾行中です」

その返答にホッと安堵の息を吐く。
それにしても一国の王が護衛もつけずに暗部一人で護っているとはどういう状況なのだろう?
ロキ自身が腕が立つならまだしもそうではないのだ。
いくらなんでも一国の王が無防備過ぎる。

「それで?シャイナーの目的は?」

どうせ衰退の一途をたどっているアンシャンテをなんとか立て直そうと暴挙に出たのだろう。
愚かにも程がある。
普通に祝いにかこつけて三か国事業に上手く取り入れば済むだけの話なのに────。
そう思っていたところ、それが大きな勘違いだということに驚愕を覚えた。

「シャイナー陛下は婚礼の儀でロキ陛下を見初めてしまったらしく、どうしても手に入れて恋人にしたかったようです」
「…………おかしいだろう」

お互いに王なのに流石にそれはどう考えてもおかし過ぎる。
実行する前にやめようとは思わなかったのだろうか?
無防備なロキも、王に惚れた王もどちらもおかしすぎてとても現実とは思えない。

そう思っていると、どうも側近が躊躇うシャイナーを唆したらしいということが分かった。
おそらくではあるが、きっとその男が野心家だったのだろう。
あわよくば政変をとでも考えたのかもしれない。

(もしくはただの馬鹿かのどちらかだな)

代替わりに伴いアンシャンテの様子を探っていただけだったのだが、思いもよらぬところでそれが役に立った。

「それでガヴァムの方は?」
「はっ。現在騎士団長始め情報局長などが動き始め情報収集に動きながら城内をくまなく捜索しているようです」
「はぁ…既に城外に出ているということすら把握できていないのか。後手に回りすぎだ」
「はい。いかがいたしましょう?」

情報を共有するのは簡単だし、ロキを救出するのもこちらの手の者を使えば簡単にできるだろう。
だがカリン王子に恩を売っても然程大きな利はないし、そもそも声を掛けるだけで怯えられるのがオチだ。
敢えて言うならロキに恩を売った方が利は大きいが、あの男がすんなり助けを求めるとも思えない。
なんだったら自力で何とかして戻ってきそうな気もしないでもない。
あれは裏稼業の者と親しくしているらしいので、王宮よりも外での方がその本領を発揮してきそうだ。
それならそれでこちらはシャイナーの動向を追って拉致の証拠を押さえた方がずっと有意義な気がする。

「ロキの方は所在確認だけでいい。こちらはシャイナーの動向を探れ」
「かしこまりました」

そう言って暗部はすぐさまその場を離れたので、これまで黙って話を聞いていたアルフレッドへと目線を向けてやった。

「お前ならどうする?」

ガヴァム側にこの情報を渡してやるか、黙ってこの先の展開を見届けるか。
そんな思いで尋ねてやると、アルフレッドは実に護衛騎士らしい答えを返してきた。

「まずはガヴァム側と連携するのが最優先だろ?攫われたのなら真っ先に助けに行くべきだ」

馬の用意が必要だからカリン王子に言ってくると踵を返し今にも飛んでいきそうになったので、素早く捕まえて腕の中へと閉じ込める。

「アルフレッド。ここは他国だ。ガヴァムとアンシャンテの問題にブルーグレイが大っぴらに首を突っ込むのは感心しないな?」
「でもっ!」
「もちろん何とかしたいお前の気持ちはわからないでもない。だからこそ────裏で動いて恩を売るんだ」

結婚祝いに来たのに花婿が攫われたのだ。
少しくらい手を貸してやってもおかしくないだろうと言って笑ってやったらアルフレッドから思い切り睨まれて、素直に助けてやりたいって言えばいいだろと言われてしまった。
まあ…攫われた相手がカリン王子だったなら放っておいただろうが、相手が気に入っているロキなら話は別だ。
そんな思いがアルフレッドには透けて見えたのだろう。

「ロキがいないとシャメルの販路を確保するのも手間だしな」

そんな言い訳を口にしながら、俺はクッと笑みを浮かべたのだった。

しおりを挟む
感想 221

あなたにおすすめの小説

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜

鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。 そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。 あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。 そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。 「お前がずっと、好きだ」 甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。 ※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます

天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。 広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。 「は?」 「嫁に行って来い」 そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。 現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる! ……って、言ったら大袈裟かな? ※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。

僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐
BL
 社交界での立ち回りが苦手で、よく夜会でも失敗ばかりの僕は、いつも一族から罵倒され、軽んじられて生きてきた。このまま誰からも愛されたりしないと思っていたのに、突然、ろくに顔も合わせてくれない公爵家の男と、婚約することになってしまう。  だけど、婚約なんて名ばかりで、会話を交わすことはなく、同じ王城にいるはずなのに、顔も合わせない。  それでも、公爵家の役に立ちたくて、頑張ったつもりだった。夜遅くまで魔法のことを学び、必要な魔法も身につけ、僕は、正式に婚約が発表される日を、楽しみにしていた。  けれど、ある日僕は、公爵家と王家を害そうとしているのではないかと疑われてしまう。  一体なんの話だよ!!  否定しても誰も聞いてくれない。それが原因で、婚約するという話もなくなり、僕は幽閉されることが決まる。  ほとんど話したことすらない、僕の婚約者になるはずだった宰相様は、これまでどおり、ろくに言葉も交わさないまま、「婚約は考え直すことになった」とだけ、僕に告げて去って行った。  寂しいと言えば寂しかった。これまで、彼に相応しくなりたくて、頑張ってきたつもりだったから。だけど、仕方ないんだ……  全てを諦めて、王都から遠い、幽閉の砦に連れてこられた僕は、そこで新たな生活を始める。  食事を用意したり、荒れ果てた砦を修復したりして、結構楽しく暮らせていると思っていた矢先、森の中で王都の魔法使いが襲われているのを見つけてしまう。 *残酷な描写があり、たまに攻めが受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。

処理中です...