【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

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【国際会議】

83.国際会議㉑

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翌日、俺は朝から思いっきりセドを避けていた。
だってそうだろう?
あんな恥ずかしいことをいっぱい言われて、挙句の果てに名前まで…!
もうどんな顔で顔を合わせたらいいのかわからない。

(でも…流石に馬車は一緒になるんだよな?)

それがすごく憂鬱で、トルセンに言って馬を用意してもらおうかと本気で考えていたら、そのトルセンが俺の方にやってきて、思いがけないことを言ってきた。

「アルフレッド!なんか王子が姫と仕事の話があるから、それが終わるまでお前がルカ殿下を見とけってさ」
「え?」

その言葉には本気で驚かざるを得ない。
まあ確かに姫がセドと話をするならいつ泣き出すかわからない赤子と一緒はマズいだろう。
でもその場合でも姫はセドを怖がっているから、子は乳母に任せて自分は同席させられると思ったんだけど……。

(いいのかな?)

本当に同席しなくていいんだろうか?
確かに今のこの心境なら同席せずに済むのならそのほうが有難いのは有難いんだが…。

「ま、お前今日は朝から挙動不審だし、気を遣ってくれたのもあるんじゃないか?」

ちょっと息抜きに元仲間達と話したら気分転換になるって思ってもらえたんじゃないかとトルセンに言われ、励ますように笑顔で背中を思い切り叩かれた。
確かにそれはあるのかもしれない。
なので姫には悪いけど、最初の休憩場所までの行程は俺と姫は馬車を交代という形で乗り込むことになった。




「それで、どうして今日はそんなに王子から逃げてんだ?」

馬車が進み、途中おむつ替えとかで乳母が席を外した隙にトルセンがこっそり俺に尋ねてきてくれて、実はと昨日のことを少しだけ話してみた。
まあ端的に言えば俺がセドと夫婦だと自覚したってだけの話なんだけど…。
そしたら自覚がなかったのかと驚かれ、いい切っ掛けになって良かったなと笑われた。
だって仕方がないじゃないか。
これまで周囲は普通に男女の夫婦しかいなかったんだからと言ってやったら、別にいないこともないぞと教えられた。
それこそ貴族なら愛人に同性だっているし、後妻として同性を娶ることはあるらしい。
後継を考えなければ別におかしな話じゃないだろと言われて、渋々ながら俺も肯定する。
でも最初が無理矢理から始まっているから何とも言えない気持ちにさせられるのだ。

「あ~…まあそりゃ、少しはわかるけどな」

それでも気持ちを自覚した時にそこまで思い至らなかったのは俺が鈍いせいだと言われてしまった。

「ま、順序は違ったけど、要は一目惚れしたお前をあの王子があの手この手で口説き落としたって話だろ?」
「……そうなるのか?」
「そうなるな」

思いっきり惚れられてるなって揶揄われたけど、言われてみれば確かにその通りで、セドはやけに最初っから俺に執心していた。
気持ちが通じ合ってからは強引さは鳴りを潜めて少しくらいは俺の意志も尊重してくれるようになったし、最近では少しずつお互いの譲れる点や譲れない点をすり合わせてきたように思うから進歩はしてると思うけど…。
そんな事をぽつぽつと口にしていたら、それはもう普通に夫婦だってまた笑われてしまった。

「でも、そうか…それなら帰ってからが大変かもな」
「え?」

どうしてだと首を傾げたら、もうただの護衛騎士ではいられないだろうと言われてしまう。
でも俺が姫の護衛騎士なのは変わらないから言われている意味がさっぱり分からない。

「ま、そこらへんは王子や姫次第でどうとでもなるか。取り敢えず悩み相談は俺かマリーに手紙でも送ってくれたらいくらでも返事は返してやるよ」
「悩み相談なんて…!」
「そんなこと言ってまたこっちに突撃されたらそっちの方が大変だ。頼むから夫婦喧嘩もほどほどにな」
「うぅ…」

前例があるから流石にこれ以上は口を噤まざるを得ない。

「お待たせしました」

そんな話をしていると、乳母がルカ王子を腕に抱いて戻ってきた。

「ついでにミルクも飲ませて差しあげたらぐっすり眠っていただけたので、暫く大丈夫だと思います」
「そうですか。よかった」

一時的に止まっていた馬車もこれでまた動き出せる。
そう思ったところで外から声を掛けられた。

「アルフレッド殿。姫がお呼びです」

どうやら姫の恐怖がピークに達してしまったらしい。
やっぱり長時間は無理だったようだ。

「悪いなトルセン。ちょっと行ってくる」
「ああ。じゃあまた後でな」

そして俺は姫とセドの待つ馬車へと向かったのだが……。




「アルフレッド!待ってたわ!」

そこには予想通り顔色は悪かったが意外と元気そうな姫と、どこか悪巧みをしていそうなセドの姿が。
正直いつもの前例があるので姫を虐めてないだろうなと思わず避けていたのも忘れて睨みつけてしまう。
そんな俺にセドはチラッと目を向けたかと思うと、取り敢えずそこに座れと姫の隣を指さした。
自分の隣に座らせないところを見るに、何か俺にも話があるようだと察しが付く。
一体なんだろうと思いながら取り敢えず座り、話を促してみるとどうやらそれは姫の仕事に関することらしいことがわかった。

「アルメリア姫には王太子妃としての仕事をしてもらっているが、実は王妃としての仕事も一部担ってもらっていてな」

どうやらセドの母親である王妃が国に帰っている関係で姫がその分負担して仕事をやっているらしい。
仕事をしていること自体は知っていたものの、詳細までは把握していなかったから正直少し驚いてしまった。

「それで…今回の国際会議で二か月ほど国を空けることになっただろう?」
「え?ああ…確かに」
「そうなの。それで帰ったら溜まったお仕事を片付けないといけないんだけど…」
「姫は子育てにも手は抜きたくないらしくてな」
「ああ…なるほど」

これは乳母を手伝ってやれ的な話なのかと思い、それならできる範囲で手伝いますよと俺は口にした。
そう。あくまでも『ルカ殿下のお世話』という意味でそう言ったのだ。
なのに────。

「まあ、アルフレッド!お仕事を手伝ってくれるの?とっても助かるわ」
「え?いや、俺は子育てを…」
「あら、子育ては私がしたいのよ?ただお仕事のせいでその時間が取れそうになくて…」
「そうだ。だからお前が姫の仕事を手伝ってやって欲しいと思ってな」
「え?!俺が?!」
「もちろんその分の手当てはブルーグレイからも出るし、お前の大事な姫の負担もお前が手伝うことで減らせるだろう?悪い話ではないはずだ」
「いや、手伝いたいのは山々だけど、俺はミラルカ所属のただの護衛騎士だし…」
「あら。聞いているわよ。アルフレッドもブルーグレイの王族の名を頂いているでしょう?私の仕事にはブルーグレイの大事な書類が含まれるから側妃である貴方以外に私を手伝える人はいないわ」
「そうだな。お前の筆頭騎士長の仕事は副長のオーガストに少しくらい丸投げしてやっても困らないが、姫は誰にも丸投げできない仕事を沢山抱えている。側妃の名目でかまわん。少し手伝ってやってくれないか?」
「そ…そんな……」

確かに手伝いたい気持ちはあるけど、正直言ってあまり自信はない。

「でもトルセン様のところで補佐の仕事もやっていたんでしょう?」
「え?ま、まあ…」
「ちなみに、これを見て何か思うところはあるかしら?」
「…?予算案ですか?…………少し補修費用が少なすぎるように思いますね。もう少し軍事費を押さえてでも建物の補修はすべきかと」
「そう。じゃあこっちは?」
「……これ、おかしくないですか?姫の後宮の掃除にこんなに費用は掛かりませんよ。人件費はこちらの侍女達が多く担っている関係上ミラルカからの支出になりますし、外部からのみの分がここに計上されるならここまで必要じゃありません。絶対精査すべき案件です」
「そうよね?両方の視点から見てくれるアルフレッドの目は確かだわ。如何でしょう、セドリック王子」
「そうだな。何の問題もなさそうだ」
「では…?」
「ああ。アルフレッド。姫の負担を減らしてやってくれるか?」
「え…。ま、まあ姫の為なら少しくらいは…」

今くらいの内容なら一応俺でも判断がつくし、手伝うことはできそうだと渋々了承する。

「でもこれくらいならセ…王子が目を通したらすぐに終わりそうに思うんですが…?」
「ごめんなさいね、アルフレッド。セドリック王子もこれから陛下から8割も仕事が降ってくるらしいからあまり負担はかけられなくて…」
「え?!8割?!」
「そうなの。以前陛下とお茶を飲んだ時に仰っていてね」

どうやらセドはセドで仕事がこれから大変になるらしい。
それは確かに姫の仕事を気遣う余裕なんてなくなるだろう。
今ここでこんな話をしてきたのも先を見越してのことだったのだと納得がいく。
自分が手伝えない分、俺に姫をフォローしてやってくれと。そういうことだったらしい。

「わかりました!そういうことなら俺に出来る分はバンバン振ってください!仕事が落ち着くまではオーガストに騎士達の面倒を任せてフォローさせて頂きます!」
「ありがとう、アルフレッド。じゃあ後で聞いてないと言われたくないから、この書類をよく読んでここに署名をお願いできるかしら?」
「わかりました」

勿論姫のことは信用しているが、セドが絡んで万が一騙されないとも限らないのできちんと書面は確認しておく。

『アルフレッド=ゴッドハルト=ブルーフェリアは正妃アルメリア=ミラルカ=ブルーフェリアの補佐を行い、妃としての仕事を行う見返りとして、ブルーグレイ王国国王の名のもとに正当な報酬を受け取る権利があることをここに保障する。契約に基づき、万が一未払い等が発生した際は裁判を起こす権利も与えるものとする』

まあ簡単に言えば姫の仕事を手伝ったら給与が正式にブルーグレイから出るよってことだよな。
不当な未払いが発生したらちゃんと保証するって書かれているし不審な点は特にはない。
セドの名前が入ってたら多分何度も不審な点がないか読んだと思うけど、国王陛下のお墨付きだし大丈夫だろう。
見る限り定型文といった感じだし安心だなと思いながらその書類へとサインを入れた。
後は国に帰ってから国王の御璽をもらえばいいだけとなる。

「ありがとう。これでよろしいですか?セドリック王子」
「ああ。問題ない」
「では私はこれで」
「ああ。国に帰ったらよろしく頼む」

そんな言葉と共に姫とセドは笑みを交わし合い、姫は俺と交代するようにトルセンの馬車へと乗り込んだ。

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※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
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