上 下
78 / 215
【国際会議】

69.国際会議⑦

しおりを挟む
※今回ちょっとドSな表現が含まれるので、苦手な方は一話飛ばしていただけたらと思います。

端的に言うと、ロキ王子とカリン王子が刺客に襲われ、そこをアルフレッド達が目撃したというそんな話です。
最終的にアルフレッドがセドに『抱いて』って言ったことだけわかっていただければ問題ないので、宜しくお願いしますm(_ _)m

****************

「それで、オーガストにオリハルコンの剣を貸したらすっごい興奮してさ、試し斬りとか言って大岩に向かって剣戟を繰り出して…」
「割ったのか?」
「そう!俺、それ見て思わず『俺の剣…!』て叫んじゃってさ。皆から『あんな大岩を割ったことをまず驚きましょうよ』とかなんとか言われたんだよな…」
「ハハハッ!お前らしいな。オリハルコンの剣なら刃こぼれ一つしなかっただろうに」
「まあ、そうなんだけどさ。それでもつい…」

そんな風にトルセンと話し込んでいるといつの間にか姿を消していたセドがどこか楽し気にしながら戻ってきた。
何かいいことでもあったんだろうか?
そう思って聞いてみると、先程今回の国際会議の担当者に話を聞いてきたのだという。

「何か面白い話が聞けたとか?」
「ああ。情報は正しかったな。ロキ王子には感謝だ」

少しくらいは便宜を図ってやってもいいとか言ってご機嫌に笑っているから、いつの間にかあの王子と仲良くなったらしい。

「ふ~ん…」

するとここでトルセンが話に加わってきた。

「ロキ王子ってあの鞭を腰に携えてた?」

それを聞いてそうだったっけとふと思ったが、どうやらそれは正しかったようでセドはすぐにそうだと答えていた。
俺は気づかなかったが、剣とは逆側に鞭も持っていたらしい。

「ほら。あそこで鞭コレクターのクレメンツ国の宰相と話しているだろう?」
「あ、本当だ」

随分親し気に楽しそうに話している。

「剣より鞭なのかな?」
「恐らくそうだな。似合いの武器だ」

鞭が似合ってるというのも変な話だが、まあ剣が苦手だから代わりに腰に携えやすいのがそれだったとかそういうオチだろう。

「剣が使えないと色々大変だな」
「人には向き不向きというのがある。あの王子はたまたま鞭だったんだろう」
「まあそうか」

そしてその場ではその話は終わったんだが、その後暫く話した後トルセンと別れセドと二人で会場を出たところで俺の中のロキ王子の印象がガラリと変わってしまった。

ロキ王子は強くはない。
戦ったら当然俺が一瞬で勝てる相手だ。
でもなんだろう?この逆らったらマズいと思わせてくる異様な存在感は?




「カリン王子!刺客が一人そちらにっ!」

最初は遠くからそんな声が聞こえてきて…。
カリン王子がそれに反応した時にはロキ王子に誰かが襲いかかっていた。

あ、これはやられたなと確信したはずなのに、ロキ王子は懐から出した何かで刺客の武器を巻き取って動きを牽制し、カリン王子がすぐさま横から刺客を思い切り蹴りつけた。

「グフッ!」

苦しそうにのたうつ刺客。
きっと護衛以外武器を持ち込んではいけない夕食会の後だからこそ襲撃にもってこいだと狙ってきたのだろう。
何故か王子二人に護衛がついていなかったし、まさに狙い時とも言えるこの状況。

「ロキ王子!ご無事ですか?!」

遅ればせながら駆けつけてくる近衛騎士達。
どうやら一応近くにはいたらしい。

どうしてそんなに離れていたんだろうと首を傾げてしまったが、どうやらロキ王子自身が指示を出していたようだと次の言葉で納得がいった。

「兄上との逢瀬を邪魔して…ただで済むと思っているのか?」

セドの重厚で低い声とは違う。聞きようによっては優しくて柔らかな声のはずなのに、凍った湖の上を歩かされているかのように不安定でどこか狂気を孕んだような声に背筋が震える。
どうしてこの声がこれ程怖く感じるんだろう?

(…え?俺の方が強いよな?)

混乱する頭でそう考えるのに、身体が勝手に恐怖を感じ取る。

「どうやらあっちが本性のようだな」

セドは平気そうだが、それでも何か感じるものはあるようだ。

ロキ王子はどこからか取り出した縄で刺客を縛り上げ、口にも何やら取り付けると全く躊躇することなく思い切り踏みつけグリグリと靴底で踏み躙り始めた。
なのにカリン王子に向ける口調だけは優しくて……。

「兄上。兄上のお陰で助かりました。ありがとうございます。でも折角の時間が台無しになって残念です。本当は兄上のために特別に作らせたこの首輪を使って楽しみたかったんですけど…」

きっとロキ王子はカリン王子が大好きなはずだ。
少なくとも声と目は愛情に溢れていると思う。
おかしいのはその口から飛び出す言葉と行動だ。
いつの間にかロキ王子は刺客の股間を容赦なく足で嬲っていて、いつ踏み潰されるかと刺客はブルブル震えている。
俺もあんなことされたらと考えるだけで身が竦んでしまう。

「こ、怖い……」

正直生まれて初めて泣きそうな恐怖に襲われて、そっとセドに身を寄せてしまった。
そしたらセドが嬉しそうに抱き寄せてきて、ああいうのはサディストって言うのだと教えてくれた。
多分かなりのドSだなって笑って言ってくるんだけど、それ、カリン王子は大丈夫なのか?
あの二人がそういう関係っぽいのは何となく察したけど、あんなロキ王子を見てしまうとついついそんな心配をしてしまう。

「ロキ」
「何ですか?兄上」
「礼は素直に受け取ろう。でも…実はかなり怒っているだろう?取り敢えず落ち着こうか」

(おぉ!兄っぽい!ちゃんと弟を宥めてる!)

そう思って安心したのも束の間、ロキ王子はやっぱりおかしかった。

「そうですね。折角兄上に助けてもらって嬉しかったのに、怒ってしまったら台無しですよね」

そうやって反省したように言ったにも関わらず、いつの間にか手に持っていた鎖のついた首輪をそっとカリン王子に嵌めて、笑顔で言い切ったのだ。

「ではここは近衛達に任せて部屋に戻りましょうか。報告はそこで聞けばいいですし、その後は安全の為リヒターに同席してもらって楽しみましょう」
「……え?」
「楽しみですね?兄上が沢山身悶えしている恥ずかしい姿をこれでもかとリヒターに視姦してもらいましょうね?」
「え…、や……」
「もちろん逆でもいいですよ?それとも3人でやりますか?恥ずかしい格好で縛った兄上を二人で可愛がるのも楽しそうですね?二人で沢山責め立てて、気絶するまで虐めてあげますからね?」
「や…それはいやぁ……」

優しげな口調とは裏腹に紡がれる言葉はどこまでも淫猥で、とうとうカリン王子に泣きが入った。
まさか第三者を混ぜようとしてくるなんて…酷すぎる。

あれは泣く!
俺でも泣く!

しかも一瞬耳がおかしくなったのかと混乱する中で、クスクスと楽しげに笑われながらクイッと引き寄せられ、絶対に逃げられないのだと思い知らされながら首輪の鎖を弄ばれるのだ。
恐怖以外の何物でもない。

「俺…相手がセドでよかった」

あの王子を見ているとセドの方がずっと真面に見えてきて、無性に抱かれたくなった。
理屈じゃないのだ。怖い。

「セド……この後部屋に戻って抱いてくれないか?」

いつもはセドの方から誘ってきてって感じなんだけど、俺は気づけばそうやってセドを誘ってしまっていた。
頼むから俺に『普通』を思い出させてほしい。

「……ロキ王子は本当に予想外に使えるな」

小さく呟かれたその言葉はよく聞こえなかったけど、セドは満足そうな笑みを浮かべて俺を部屋へと連れ帰りそっとベッドへと押し倒した。

「アルフレッド…」
「セド…」

トサッと軽い音を立てたベッドの上で、セドがどことなく楽し気に俺を見下ろしてくる。
いつもとは少し違うシチュエーションにやけに胸が弾んでしまっている気はするけれど、セドはそこから動こうとはしない。
これは……どうしたらいいんだろう?

「えっと…俺が脱がした方がいいか?」

誘ったのは俺だしなと何となくそんな言葉を口にしただけだったのに、それを聞いたセドに物凄く楽しそうに笑われてしまった。

「好きにやってみろ」

初めての状況に異様な興奮に襲われるけど、まあ自分のペースでできるからいいかとそっとセドの服に手を伸ばす。
いつも通りの二人のはずなのに、どうしてこんなにドキドキしてしまうんだろう?
指先が震えて上手くボタンが外せない。

(も、もどかしい……)

それでも懸命にセドの服を脱がせようと奮闘し、全部のボタンをはずし終わったところでホッとしてセドの顔を見たら色気がヤバいことになっていた。
目は楽しそうなのにどこか情欲を孕みながら俺を見ていて、はだけた胸元はチラチラと俺の目を奪ってくる。
セドの姿なんて見慣れているはずなのに、思わずゴクリと唾を呑み込むほどに魅了されてしまうのはどうしてだろう?

(正装で前をはだけさせただけだろ?!)

全部脱いだわけでもないのにどうしてこんなに色気を出してるんだと真っ赤になって思わず顔を手で覆ってしまった。

「アルフレッド。どうかしたか?」
「うぅ…。お前、色っぽすぎ。なんだよその色気。さっさとしまえよ……」

目の毒以外の何ものでもないからと口にしたら、クスクス笑われてそのまま伸し掛かられた。

「ああ、本当にたまらないな」
「……何が?」
「今のお前の全てが、だ」

今一言われていることが分からないけど、セド的にはかなりなツボだったらしい。

「さあ、アルフレッド。初めてお前の方から誘ってくれたんだ。今夜は寝かせないぞ?」
「え?ちょっと待っ…!」
「俺のこの手で、じっくりと快楽に堕としてやるからな?」

そんな言葉に慄きながら、俺はそのまま美味しくセドに食べられてしまったのだった。

しおりを挟む
感想 221

あなたにおすすめの小説

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

トップアイドルα様は平凡βを運命にする

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?

トール
BL
一般家庭に生まれ、ごく普通の人生を歩んで16年。凡庸な容姿に特出した才もない平凡な少年ディークは、その容姿に負けない平凡な毎日を送っている。と思っていたのに、周りから見れば全然平凡じゃなかった!? 実はこの世界の創造主(神王)を母に持ち、騎士団の師団長(鬼神)を父に持つ尊い血筋!? 両親の素性を知らされていない世間知らずな少年が巻き起こすドタバタBLコメディー。 ※「異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ」の主人公の息子の話になります。 こちらを読んでいなくても楽しめるように作っておりますが、親の話に興味がある方はぜひズボラライフも読んでいただければ、より楽しめる作品です。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。 かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。 後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。 群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って…… 冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。 表紙は友人絵師kouma.作です♪

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

処理中です...