【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

オレンジペコ

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【アルフレッドの家出】

52.※アルフレッドの家出⑩

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「甘すぎる……!」

何が甘いってセドがいちいち甘いのだ。
何もおかしくはないと言うけど、絶対におかしいだろ?!
ここは食堂で、男達がわいわい飯を食うところだ。
そんな場所で食べさせ合う男なんてどこにもいない!!

前にパーティーでも食べさせようとしてきたし、なんだったら俺が寝込んでいる時にも粥をひと匙ひと匙掬って食べさせてくれた。
でもそれは特殊な状況下だったから受け入れただけで、日常的に受け入れる気はない!

「セド!こういうのは女とやるもんだぞ!……たぶん?」

勢いよく言ったものの、言ってからちょっと自信がなくなって『たぶん』と付け足したらセドに面白そうに笑われてしまった。

「ぷっ…くははっ!」
「笑うな!」
「ふはっ…はははっ……!」

腹を抱えて笑わなくてもいいじゃないかと抗議するけど、セドは凄く楽しそうに笑うばかり。

「……最悪」
「そう怒るな。お前は本当に面白くて飽きないなと思っただけだ」

そう言いながらそっと俺の頬に手をやり、愛おしげに見てくるのはどうかと思うが?
しかも俺がドン引いたのを感じるや否や軽く殺気を飛ばして機嫌を取ってくるなんて器用なことまでやってくるからたまらない。

「セド。俺で遊んでるだろ?」
「さあ、どうかな?気のせいだろう」
「絶対遊んでる!」
「まあ好きに受け取れ」

ククッと笑うセドが憎たらしい。

(全く……)

まあそれは兎も角、オーガストという好敵手に出会えたんだから早く剣を合わせたい。

「いつやる?」

トルセンの横にいるオーガストにそう尋ねたらいつでも大歓迎と言ってもらえたから、嬉々としてじゃあこの後すぐと言おうとしたらセドに止められてしまう。

「今日はもう遅い。トルセンは明日と言っていなかったか?」
「え?でも、早い方がいいし」
「その男もさっきの今で疲れているだろう。ベストな状態でやった方がいいんじゃないのか?」
「なるほど。一理あるな」
「明日30分と時間を区切って勝負しろ」
「なんで30分?!短すぎる!せめて二時間だろ?!」
「ダメだ」

それでもやりたいやりたいって何度も言ってたら一時間だと言って殺気を巻き散らされた。

「やった!じゃあ風呂に行く前に今日はセドが相手をしてくれ。軽くでいいから」

この殺気がたまらないから我慢できないと言ったら何故か機嫌が直ったようだけど、殺気は引っ込めないで欲しかった。




それから訓練を兼ねた軽い手合わせをして満足したのは良かったものの、セドの方がオーガストとの打ち合いで興奮した熱が治まりきっていなかったのか、そのまま風呂場で襲われ貪るように抱かれてしまう。

「ひぁっ!」

立ったままやるのは少し苦手なせいか、つい甘い声が口から飛び出して自分で自分を制御することができない。

「アル。そう興奮するな」
「だっ…て……っ」
「そんなに殺気を向けられるのが好きか?」
「アッアッ…感じるっ…感じちゃう…からっ…!」

しかもそんな風に殺気まで駆使して嬲られたらもう何も言えなかった。

「んぁああああっ!」
「今日も最高だな」
「奥っ、入ってるっ!刺さってるからぁっ!」

急に持ち上げて思い切り奥まで突き上げてくるなんて鬼畜じゃないか?!

「あっ…あぁぅ…っ」
「アルフレッド…。お前が誰のものなのか、ちゃんと思い出したか?」
「はぁっ…はぁっ…」
「お前は俺のものだ。浮気はするな」

(浮気なんてしてないだろ?!)

思わず心の中でツッコミを入れたけど、続く言葉に何も言えなくなってしまう。

「あの男をあんなに舐めまわすように視姦するのは浮気以外の何ものでもないだろう?今日はこのままお仕置きだ」
「ぁあっ…!そこ、ダメだったらっ!ひぁああっ!」

そうして俺はお仕置きと称してこれでもかとまた抱かれ、ベッドに戻ってからも散々啼かされてしまったのだった。


***


「うぅ…セドめぇ……っ」

酷い目に合ったと思いながら腰をさすりトルセンの元に向かうと、既にオーガストとセドの打ち合いは始まっていると聞かされて益々腹立たしい気持ちになった。
セドが俺を起こさなかったのはこれがあったからだろう。
下手に一から見せたらまた俺の視線の先が気になって嫉妬すると考え、敢えて起こさなかったと見た。
けれどやっぱり二人の実力は拮抗していてなかなか勝負はつかないようで……。

(セドって打ち合っている間にも勝手に成長していくからなぁ……)

天才というのはどこまでも凄いなと思わざるを得ない。
あんな風に瞬時に相手の技を吸収できるのはある意味羨ましい限りだ。

「はぁ…はぁ…。やっぱ、やるな」
「お前こそ」
「なあ…条件替えてもいいか?」
「なんだ?」
「王子が勝ったらオリハルコンの剣を渡す、俺が勝ったらオリハルコンの剣をもらうだったよな?」
「ああ」
「じゃあ、俺が勝ったらオリハルコンの剣を手にブルーグレイの騎士団に入るってことにしていいか?」
「断る!」
「どうして?!王子にもプラスだろう?!」
「アルフレッドが入り浸りになるからだ!暗殺されたくなかったらおとなしくミラルカへ帰れ!」
「そうは言ってもミラルカには今強い奴がいないんだよ」
「他をあたれ」
「それができたら苦労はない」

(うわ~…物凄くわかる)

セドはあっさり断ってたけど、そっちがダメならこっちに取り込めないか交渉してみようか?
都合のいいことにオーガストはミラルカ出身だし、きっと俺の副官的に頼めば姫もOKをくれるはず。
腕は確かだから、俺の代理も十分務まるだろう。
そんなことを考えてたらこっそりトルセンがアドバイスをくれた。

「────で、────って言ったら多分いけると思う」
「なるほど!流石トルセン!」

それならまず間違いないと笑顔で話してたら、なんと一気に勝負が決まってしまった。
よっぽどオーガストに来てほしくなかったんだろう。
気合一閃。セドの剣が一瞬の隙を突いてオーガストの剣を弾き飛ばしたようだ。

「俺の勝ちだ。さっさと諦めて国に帰れ」

荒く息を吐きながらも冷たい眼差しでオーガストを見下ろすセド。
そんなセドに降参とばかりに手を上げてオーガストはゆっくりと立ち上がる。

「剣が手に入らないのは残念だったが、満足のいくいい勝負だった。機会があればまた手合わせ願いたい」
「二度と御免だ」

冷たく言い放ったセドの言葉にオーガストは残念そうに肩をすくめたが、これはチャンスだ!

「オーガスト!今度は俺とやろう!俺ならセドとは違って何回だって手合わせOKだぞ!いっそ俺の副官にスカウトさせてほしいんだけどっ…!」
「この、馬鹿っ…!」

考えてみないかと続けようとしたところで慌ててトルセンが口を塞いでくるが時すでに遅し。

「アルフレッド?」
「…………あ」

トルセンからは順序が大事だと言われていたのにうっかりやってしまった。

そして俺はそのままズルズル部屋に連行されて、『機嫌が直るまでのご奉仕』という名の苦行を強いられたのだった。

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※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
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