41 / 215
【恋の自覚なんてしたくない】
35.恋の自覚なんてしたくない②
しおりを挟む
「はぁ……」
本当に理不尽にも程があるが、一応王子に平和的に交渉はできたと思いながら姫の元へと戻って報告する。
「姫、王子にはちゃんと言ってきましたので」
「本当に?」
「ええ。何も問題はありません。ちなみに三日だけ俺を貸し出すと王子から言付かりましたが、俺は姫の護衛騎士なのでお気になさらず」
「み、三日?どういうこと?」
「実は……」
それから俺は王子が言っていたことを姫に話したんだが、姫もこれには驚愕していてすぐに調整に入ると言って素早く部屋から飛び出そうとしたので俺もすぐに付き添った。
「セ、セドリック殿下!使節団の件につきアルメリアが参りました!」
「ああ、姫。ちょうどよかった。アルフレッドを貸し出せるのは三日だと聞いたか?」
「は、はい。その件で話を詰めた方が良いと判断させて頂きました」
「そうか。では……アルフレッド、お前は部屋の外で護衛に励め。俺は姫と極秘の打合せをしないといけないんでな」
「……かしこまりました」
珍しく護衛に徹していいと言ってもらえたので俺はそのままおとなしく部屋の外へと出てその場で待機する。
いつもこうだったら有難いのになと思いながら職務を全うした。
***
【Side.アルメリア】
「そ、それで私はどうすれば?」
アルフレッドが王子の元に行ってから戻ってきたのは良かったけれど、ひと月の予定を三日にするとか言われて驚き過ぎて腰を抜かすかと思った。
普通に考えてそんなことはあり得ないからだ。
だからこうして苦手な悪魔のところまで足を運んだのだけど……。
「まず最初に言っておくが、使節団の滞在期間をひと月から一週間に短縮するよう調整を掛ける」
「は、はい」
「そのうちの三日で交渉を終わらせるつもりだから、アルフレッドを姫の護衛につけるのはその三日間のみにして欲しい」
「わ、わかりました」
「それと、交渉を三日で終わらせるためにこちらはこれから忙しくなる。その分アルフレッドの監視はそちらの侍女や護衛騎士に任せたい」
「かしこまりました」
「それと姫の周囲の護衛で特に優秀な者を十名選んで報告を」
「それは…?」
「アルフレッドの代わりだ。交渉を三日で終わらせるつもりではあるが、それ以外のもてなしの時にアルフレッドをつけさせる気は一切ない。もてなしを含めて一週間、姫には上手く乗り切って欲しい」
「か、かしこまりました。ではすぐに護衛の選定をしておきますわ」
「念のため今回の使節団について詳細を覚え込める人材にしておけ。不審な行動をするような輩がいればそのほうが動きやすくなるだろう」
「かしこまりました。他には?」
「そうだな…姫には重要な仕事も与えておこうか」
「と言いますと?」
「……あちらの王子がどう動いてくるのか探れ。鼠が動いていたようだしな。何かしら目的があって来るはずだ」
「あ、暗部に動いてもらった方がよいのでは?」
「そちらはそちらで探らせるが、こちらも備えておくに越したことはないだろう?」
「わ、私にできるとは思えませんが?」
「…………俺の正妃なのだからそれくらいして欲しいものだな」
(こ、この悪魔~~~~っ!!)
他国の王子の接待だけでいいのかと思いきや、わざわざこちらに足を運んでくる理由を私に探らせるなんて鬼畜もいいところだ。
それこそアルフレッドに頼んでくれたらいいのに…。
(いえ…そんなことを口にした途端殺されそうだわ。やめておきましょう)
突き刺さるような冷徹な目に射抜かれて、私はあっさりと口を噤む。
だってまだ殺されたくはない。命は大事だ。
とは言え流石にこれは自分には荷が重すぎる。絶対に後でアルフレッドに相談しなければ。
そしてアルフレッドに頼るのならばできる限りこっそりとしなければならない。
箝口令を敷いて周囲に根回しもしておかなければ。
万が一にでもアルフレッドに何かあれば王子にバレた途端殺されかねない。
(はぁ~…。そう考えるとひと月も胃をキリキリさせるより一週間かそこらで終わるならそちらの方がずっといいわね)
「では、私はこれで失礼いたします」
「ああ。護衛の件…くれぐれも頼んだぞ」
「万事お任せくださいませ」
そしてきっちり礼をして部屋の外にいたアルフレッドを連れて自室へと戻る。
「姫。王子に虐められませんでしたか?」
「大丈夫よ。後で胃薬でも用意してちょうだい」
「わかりました。大変ですけど俺もできるだけフォローするので頑張りましょうね」
「そうしてもらえると嬉しいわ。アルフレッドだけが頼りよ」
本当に、王子が暴走しないようにできるだけしっかり捕まえておいてほしい。
「はぁ~…アップルパイが食べたいわ」
「疲れた時は甘い物に限りますからね。後で言っておきます」
「アッサムティーも飲みたいわ」
「それも伝えておきます」
「花湯にも浸かってのんびりしたいわ」
「そんなにお疲れですか?庭師か王子の侍女にでも聞いてみましょうか?」
「そうしてちょうだい。あ、もちろん全部王子経由でね」
「王子経由だと遅くなるので直接聞きますよ?」
「王・子・経・由・で・ね!」
「…………わかりました」
全くアルフレッドは相変わらずわかってないんだからと溜め息が出る。
こちらは王子のご機嫌取りもしてるのだからちょっとは察してほしい。
あの人がアルフレッドに求めているのは接点なのよ?
好きな相手に自分のところまで来てほしいっていう恋心なのよ?
ああ見えて好きな相手を構いたくて構いたくて仕方がないのよ?
上手くいかない時は特に周囲を威圧してきてたちが悪いし、物凄くプレッシャーだからつべこべ言わずに行ってきてちょうだい!
「取り敢えずアルフレッド、まずは護衛騎士の選別のお仕事よ!」
「護衛騎士の選別ですか?」
「ええ。王子から特に優秀な者を10名選出しろと言われたのよ。ああ、腕の方は勿論、頭の方も良い者がいいわ。あちらの王子に失礼があってもいけないしね。誰がいいかしら?」
「そうですね…それなら────」
そしてその日からバタバタと使節団を迎える準備に入ったのだった。
本当に理不尽にも程があるが、一応王子に平和的に交渉はできたと思いながら姫の元へと戻って報告する。
「姫、王子にはちゃんと言ってきましたので」
「本当に?」
「ええ。何も問題はありません。ちなみに三日だけ俺を貸し出すと王子から言付かりましたが、俺は姫の護衛騎士なのでお気になさらず」
「み、三日?どういうこと?」
「実は……」
それから俺は王子が言っていたことを姫に話したんだが、姫もこれには驚愕していてすぐに調整に入ると言って素早く部屋から飛び出そうとしたので俺もすぐに付き添った。
「セ、セドリック殿下!使節団の件につきアルメリアが参りました!」
「ああ、姫。ちょうどよかった。アルフレッドを貸し出せるのは三日だと聞いたか?」
「は、はい。その件で話を詰めた方が良いと判断させて頂きました」
「そうか。では……アルフレッド、お前は部屋の外で護衛に励め。俺は姫と極秘の打合せをしないといけないんでな」
「……かしこまりました」
珍しく護衛に徹していいと言ってもらえたので俺はそのままおとなしく部屋の外へと出てその場で待機する。
いつもこうだったら有難いのになと思いながら職務を全うした。
***
【Side.アルメリア】
「そ、それで私はどうすれば?」
アルフレッドが王子の元に行ってから戻ってきたのは良かったけれど、ひと月の予定を三日にするとか言われて驚き過ぎて腰を抜かすかと思った。
普通に考えてそんなことはあり得ないからだ。
だからこうして苦手な悪魔のところまで足を運んだのだけど……。
「まず最初に言っておくが、使節団の滞在期間をひと月から一週間に短縮するよう調整を掛ける」
「は、はい」
「そのうちの三日で交渉を終わらせるつもりだから、アルフレッドを姫の護衛につけるのはその三日間のみにして欲しい」
「わ、わかりました」
「それと、交渉を三日で終わらせるためにこちらはこれから忙しくなる。その分アルフレッドの監視はそちらの侍女や護衛騎士に任せたい」
「かしこまりました」
「それと姫の周囲の護衛で特に優秀な者を十名選んで報告を」
「それは…?」
「アルフレッドの代わりだ。交渉を三日で終わらせるつもりではあるが、それ以外のもてなしの時にアルフレッドをつけさせる気は一切ない。もてなしを含めて一週間、姫には上手く乗り切って欲しい」
「か、かしこまりました。ではすぐに護衛の選定をしておきますわ」
「念のため今回の使節団について詳細を覚え込める人材にしておけ。不審な行動をするような輩がいればそのほうが動きやすくなるだろう」
「かしこまりました。他には?」
「そうだな…姫には重要な仕事も与えておこうか」
「と言いますと?」
「……あちらの王子がどう動いてくるのか探れ。鼠が動いていたようだしな。何かしら目的があって来るはずだ」
「あ、暗部に動いてもらった方がよいのでは?」
「そちらはそちらで探らせるが、こちらも備えておくに越したことはないだろう?」
「わ、私にできるとは思えませんが?」
「…………俺の正妃なのだからそれくらいして欲しいものだな」
(こ、この悪魔~~~~っ!!)
他国の王子の接待だけでいいのかと思いきや、わざわざこちらに足を運んでくる理由を私に探らせるなんて鬼畜もいいところだ。
それこそアルフレッドに頼んでくれたらいいのに…。
(いえ…そんなことを口にした途端殺されそうだわ。やめておきましょう)
突き刺さるような冷徹な目に射抜かれて、私はあっさりと口を噤む。
だってまだ殺されたくはない。命は大事だ。
とは言え流石にこれは自分には荷が重すぎる。絶対に後でアルフレッドに相談しなければ。
そしてアルフレッドに頼るのならばできる限りこっそりとしなければならない。
箝口令を敷いて周囲に根回しもしておかなければ。
万が一にでもアルフレッドに何かあれば王子にバレた途端殺されかねない。
(はぁ~…。そう考えるとひと月も胃をキリキリさせるより一週間かそこらで終わるならそちらの方がずっといいわね)
「では、私はこれで失礼いたします」
「ああ。護衛の件…くれぐれも頼んだぞ」
「万事お任せくださいませ」
そしてきっちり礼をして部屋の外にいたアルフレッドを連れて自室へと戻る。
「姫。王子に虐められませんでしたか?」
「大丈夫よ。後で胃薬でも用意してちょうだい」
「わかりました。大変ですけど俺もできるだけフォローするので頑張りましょうね」
「そうしてもらえると嬉しいわ。アルフレッドだけが頼りよ」
本当に、王子が暴走しないようにできるだけしっかり捕まえておいてほしい。
「はぁ~…アップルパイが食べたいわ」
「疲れた時は甘い物に限りますからね。後で言っておきます」
「アッサムティーも飲みたいわ」
「それも伝えておきます」
「花湯にも浸かってのんびりしたいわ」
「そんなにお疲れですか?庭師か王子の侍女にでも聞いてみましょうか?」
「そうしてちょうだい。あ、もちろん全部王子経由でね」
「王子経由だと遅くなるので直接聞きますよ?」
「王・子・経・由・で・ね!」
「…………わかりました」
全くアルフレッドは相変わらずわかってないんだからと溜め息が出る。
こちらは王子のご機嫌取りもしてるのだからちょっとは察してほしい。
あの人がアルフレッドに求めているのは接点なのよ?
好きな相手に自分のところまで来てほしいっていう恋心なのよ?
ああ見えて好きな相手を構いたくて構いたくて仕方がないのよ?
上手くいかない時は特に周囲を威圧してきてたちが悪いし、物凄くプレッシャーだからつべこべ言わずに行ってきてちょうだい!
「取り敢えずアルフレッド、まずは護衛騎士の選別のお仕事よ!」
「護衛騎士の選別ですか?」
「ええ。王子から特に優秀な者を10名選出しろと言われたのよ。ああ、腕の方は勿論、頭の方も良い者がいいわ。あちらの王子に失礼があってもいけないしね。誰がいいかしら?」
「そうですね…それなら────」
そしてその日からバタバタと使節団を迎える準備に入ったのだった。
61
お気に入りに追加
3,635
あなたにおすすめの小説
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる