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【その後の話】
14.これは断じてデートじゃない②
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「今日はデートだな」
「そうですね。(姫とのな)」
馬車へと乗り込むと早速と言うように王子がそんなことを言ってきた。
「どこか見たいところはあるか?」
「姫はドレスや靴を見たがると思いますが?」
「姫は関係ない。お前の行きたいところに好きなだけ付き合おう」
姫とのデートのくせにその言い方だと俺とのデートみたいになってないか?
この王子は一体何を言ってるんだろう?
ほら、姫も……。ああ、全くこっち見てないな。全力で空気になろうとしてるな。
これは本気で全部俺が相手をしろと言うことか?面倒なっ……!
「姫と王子のデートでしょう?俺はただの付き添いです」
「そんなつれないことを言わないでくれ。姫はついでだ。側妃とのデートを折角企画したんだから、お前は素直にデートを楽しんでくれればいい」
どうやら俺をデートとやらに連れ出したくて姫で釣ったらしい。
なんて酷い奴だ。姫が怯え損じゃないか。
「姫は姫で護衛をつけるから嫌なら途中で別れて好きな店を回らせればいいだろう?さあどこに行きたい?」
確かにそれなら終始怯えなくて済むかもしれないけど……それって何かおかしくないか?
とは言え姫にずっと丸一日付き合えというのも可哀想だし……様子をみて途中で切り上げるのが妥当かもしれない。
そうだ!どこか…王子が興味なさそうで俺が興味のある店はないだろうか?
それならつまらないと思って王子も早く帰る気になるかもと思い立つ。
(う~ん……。そうだな)
「行きたいところがあるとすれば、武器防具店…ですかね」
俺としては最新の防具なんかも見れるから興味津々だったりするけど、王子からしたら街の武器屋なんて興味すら湧かないだろう。
基本的に有名鍛冶師とか王室御用達の職人が王宮に出入りしてるようだからまず間違いないはず。
そんなことを考えながら口にすると、何故か王子は笑顔で付き合うと言ってきた。
「あとは…そうだな。闘技場での催しに興味はないか?今日は有名な戦士が戦うらしいのだが…」
なんと戦士の決闘が見られるらしい。これは楽しそうだ。
「見たいです」
「そうか。ではそちらに寄りつつ武器屋も覗いて、一緒に食事をとってから帰ろうか」
「いいですね」
想定外に楽しそうな話を用意され、俺は気づけばウキウキと話に乗っていた。
そんな俺を王子が満足げに見ているとも気づかずに。
***
街に着いたので揃って馬車から降りる。
すると姫は明後日の方を向きながら、あからさまに芝居がかった口調でこう宣った。
「わ、私は闘技場なんて野蛮な場所には行きたくありませんの。申し訳ないですがここからは別行動にさせていただきますわ。帰りも馬車は自分達で手配いたしますのでお気遣いなく」
「そうか。それは残念だ。俺はアルと楽しんでくるから其方は自由に楽しんでから帰ってくれ」
「嬉しいお言葉有難うございます。申し訳ないですが護衛は全て私が引き取っても構いませんか?女一人では色々不安もございますので。アルフレッドは騎士長を務めるほどの腕前ですし、セドリック王子には彼だけで十分かと思います」
「そうだな。アルの腕は俺が一番よく知っている。何も問題はないだろう。では気を付けて」
「はいッ!では私はこれで失礼させて頂きますッ!」
────俺は目の前でなんの三文芝居を見せられているのだろう?
王子から早く逃げ出したい姫と、俺と二人きりになりたいだけの王子……。
もうこれ、あからさまに最初から決まっていた流れだよな?嵌められたんだよな?
二人のやり取りはどう見ても今思いついてといった感じではない。出来過ぎだ!
(くそっ…!二度とこんな風に騙されないからな!)
ちょっとでも姫に同情した自分が馬鹿だった。
「アル、では行こうか」
「……もう二度と同じ手は通用しませんから」
もう絶対騙されないぞと強い意志を込めてそう言い放つが、王子は何食わぬ顔でサラリと流し言葉を紡いだ。
「では今日は夜まで楽しまないといけなくなるな」
「は?」
「手合わせで勝たなくても今日は抱かせてくれるか?」
「お断りします」
「ならそんなことは言わずに、何度でも喜んでお付き合いしますと…そう言ってくれないか?」
「……お断りします」
下手な言質なんて取らせたりしない。
この王子は本当に油断も隙もないのだから。
「仕方がないな」
なのに王子はそんな言葉を口にした後、俺の手を取ってグイグイ歩き出し裏道へと続く脇道へと入って、人けが無い場所で壁際へと追い込むとすぐさま俺の唇を塞いできた。
「んんぅ…っ!」
こんな場所で一体何をと声をあげようとするとするりと舌が忍び込んできて、そのままあっという間に口内を蹂躙されてしまう。
「あ…あふっ……」
「んっ…アル、いい加減俺のものだと自覚して諦めたらどうだ?」
「はぁ…っ、誰…がッ…!んんんっ…!」
「こんな場所でこんな風に触られて感じているお前に拒否権があるとでも?」
「や…やめ……っ」
こんなところで襲ってくるなんて一体何を考えているんだ?!
正直俺にはこの王子の考えていることがさっぱりわからなかった。
でも前回抱かれた時に教え込まれたあれこれが勝手にその先の快感を予想させ、ゾクゾクとした感覚を湧き上がらせる。
押し返したいのに押し返せなくて、縋るように服を握るのがやっとだった。
「アル…ほら、いつまでも意地を張らず教えたように言ってみろ」
「絶対…言わない……んぁッ…!」
「強情だな」
「うぅ…」
その後俺は激しい口づけを受け入れながら散々身体をいじられてしまった。
「や…やぁ……」
「こんなに涙目になって…。そろそろ言う気になったか?」
「ふ…ぅ、無…理……」
既に腰が立たなくなってしまっている俺を支えながら王子が楽しげに笑う。
「じゃあ仕方がないな。馬車に戻ろう」
そしてそのまま抱き上げられて、俺は目立たない場所へと移動済みの馬車へと運ばれてしまった。これはマズい。
ちなみに御者は金を握らされ暫く遠ざけられたようだ。この展開に俺の焦りは増すばかり。
「や…やだ……」
「諦めろ。どうせこのままだとお前が辛いだけだ」
そして嬉々として王子は俺へと襲い掛かったのだった。
****************
※次回R‐18展開です。苦手な方はお気を付けください。
「そうですね。(姫とのな)」
馬車へと乗り込むと早速と言うように王子がそんなことを言ってきた。
「どこか見たいところはあるか?」
「姫はドレスや靴を見たがると思いますが?」
「姫は関係ない。お前の行きたいところに好きなだけ付き合おう」
姫とのデートのくせにその言い方だと俺とのデートみたいになってないか?
この王子は一体何を言ってるんだろう?
ほら、姫も……。ああ、全くこっち見てないな。全力で空気になろうとしてるな。
これは本気で全部俺が相手をしろと言うことか?面倒なっ……!
「姫と王子のデートでしょう?俺はただの付き添いです」
「そんなつれないことを言わないでくれ。姫はついでだ。側妃とのデートを折角企画したんだから、お前は素直にデートを楽しんでくれればいい」
どうやら俺をデートとやらに連れ出したくて姫で釣ったらしい。
なんて酷い奴だ。姫が怯え損じゃないか。
「姫は姫で護衛をつけるから嫌なら途中で別れて好きな店を回らせればいいだろう?さあどこに行きたい?」
確かにそれなら終始怯えなくて済むかもしれないけど……それって何かおかしくないか?
とは言え姫にずっと丸一日付き合えというのも可哀想だし……様子をみて途中で切り上げるのが妥当かもしれない。
そうだ!どこか…王子が興味なさそうで俺が興味のある店はないだろうか?
それならつまらないと思って王子も早く帰る気になるかもと思い立つ。
(う~ん……。そうだな)
「行きたいところがあるとすれば、武器防具店…ですかね」
俺としては最新の防具なんかも見れるから興味津々だったりするけど、王子からしたら街の武器屋なんて興味すら湧かないだろう。
基本的に有名鍛冶師とか王室御用達の職人が王宮に出入りしてるようだからまず間違いないはず。
そんなことを考えながら口にすると、何故か王子は笑顔で付き合うと言ってきた。
「あとは…そうだな。闘技場での催しに興味はないか?今日は有名な戦士が戦うらしいのだが…」
なんと戦士の決闘が見られるらしい。これは楽しそうだ。
「見たいです」
「そうか。ではそちらに寄りつつ武器屋も覗いて、一緒に食事をとってから帰ろうか」
「いいですね」
想定外に楽しそうな話を用意され、俺は気づけばウキウキと話に乗っていた。
そんな俺を王子が満足げに見ているとも気づかずに。
***
街に着いたので揃って馬車から降りる。
すると姫は明後日の方を向きながら、あからさまに芝居がかった口調でこう宣った。
「わ、私は闘技場なんて野蛮な場所には行きたくありませんの。申し訳ないですがここからは別行動にさせていただきますわ。帰りも馬車は自分達で手配いたしますのでお気遣いなく」
「そうか。それは残念だ。俺はアルと楽しんでくるから其方は自由に楽しんでから帰ってくれ」
「嬉しいお言葉有難うございます。申し訳ないですが護衛は全て私が引き取っても構いませんか?女一人では色々不安もございますので。アルフレッドは騎士長を務めるほどの腕前ですし、セドリック王子には彼だけで十分かと思います」
「そうだな。アルの腕は俺が一番よく知っている。何も問題はないだろう。では気を付けて」
「はいッ!では私はこれで失礼させて頂きますッ!」
────俺は目の前でなんの三文芝居を見せられているのだろう?
王子から早く逃げ出したい姫と、俺と二人きりになりたいだけの王子……。
もうこれ、あからさまに最初から決まっていた流れだよな?嵌められたんだよな?
二人のやり取りはどう見ても今思いついてといった感じではない。出来過ぎだ!
(くそっ…!二度とこんな風に騙されないからな!)
ちょっとでも姫に同情した自分が馬鹿だった。
「アル、では行こうか」
「……もう二度と同じ手は通用しませんから」
もう絶対騙されないぞと強い意志を込めてそう言い放つが、王子は何食わぬ顔でサラリと流し言葉を紡いだ。
「では今日は夜まで楽しまないといけなくなるな」
「は?」
「手合わせで勝たなくても今日は抱かせてくれるか?」
「お断りします」
「ならそんなことは言わずに、何度でも喜んでお付き合いしますと…そう言ってくれないか?」
「……お断りします」
下手な言質なんて取らせたりしない。
この王子は本当に油断も隙もないのだから。
「仕方がないな」
なのに王子はそんな言葉を口にした後、俺の手を取ってグイグイ歩き出し裏道へと続く脇道へと入って、人けが無い場所で壁際へと追い込むとすぐさま俺の唇を塞いできた。
「んんぅ…っ!」
こんな場所で一体何をと声をあげようとするとするりと舌が忍び込んできて、そのままあっという間に口内を蹂躙されてしまう。
「あ…あふっ……」
「んっ…アル、いい加減俺のものだと自覚して諦めたらどうだ?」
「はぁ…っ、誰…がッ…!んんんっ…!」
「こんな場所でこんな風に触られて感じているお前に拒否権があるとでも?」
「や…やめ……っ」
こんなところで襲ってくるなんて一体何を考えているんだ?!
正直俺にはこの王子の考えていることがさっぱりわからなかった。
でも前回抱かれた時に教え込まれたあれこれが勝手にその先の快感を予想させ、ゾクゾクとした感覚を湧き上がらせる。
押し返したいのに押し返せなくて、縋るように服を握るのがやっとだった。
「アル…ほら、いつまでも意地を張らず教えたように言ってみろ」
「絶対…言わない……んぁッ…!」
「強情だな」
「うぅ…」
その後俺は激しい口づけを受け入れながら散々身体をいじられてしまった。
「や…やぁ……」
「こんなに涙目になって…。そろそろ言う気になったか?」
「ふ…ぅ、無…理……」
既に腰が立たなくなってしまっている俺を支えながら王子が楽しげに笑う。
「じゃあ仕方がないな。馬車に戻ろう」
そしてそのまま抱き上げられて、俺は目立たない場所へと移動済みの馬車へと運ばれてしまった。これはマズい。
ちなみに御者は金を握らされ暫く遠ざけられたようだ。この展開に俺の焦りは増すばかり。
「や…やだ……」
「諦めろ。どうせこのままだとお前が辛いだけだ」
そして嬉々として王子は俺へと襲い掛かったのだった。
****************
※次回R‐18展開です。苦手な方はお気を付けください。
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