【完結】王子の本命~姫の護衛騎士は逃げ出したい~

オレンジペコ

文字の大きさ
上 下
9 / 215
【本編】

5.平和が一番のはずだったのに…。

しおりを挟む
やった!今日は久しぶりに清々しい朝だと俺は朝日に向かって伸びをして、意気揚々と朝稽古へと向かった。
剣の型は幾通りもあるからそれをこなしながら鍛錬を続ける。
鋭く、速く、正確に────。
感覚を研ぎ澄まし、周囲へと意識を向けながらも集中する。
これが意外にも難しいのか今回連れてきている護衛騎士達の中で完璧にできる者は俺以外いない。
せめて一人くらい居てくれたならそいつに全部任せてさっさとここをおさらばできるのに、そう上手くはいかないらしい。
これでもご主人様であるアルメリア王女の事はそれなりに気遣っているつもりだ。
信頼して任せてもらった職務なのだから当然と言えば当然だろう。
けれどそれでも理不尽を押し付けられてまで忠義を通すかと言えばそこまでの義理はないと答える以外にない。
精々が騎士団で世話になった二年分の恩義に報いる程度ではないだろうか。
そんなことを考えながらもどんどん剣戟のスピードを上げていくと、死角から近づく者の気配を感じ、鋭くそちらへと剣を振りぬいた。

キィンッ!!

しっかりと受け止められた剣戟の先を見遣ると、そこには意外な人物────セドリック王子の姿があった。

「…気配は消していたつもりだが?」
「……すみません。普段なら兎も角、鍛錬中は感覚を研ぎ澄ませているので気配を消されていても気づいてしまうんです」

俺は剣を鞘へと仕舞って、王子へと頭を下げる。

「ご無礼を…」

剣を振ってる最中に気配を消して死角に入ってきた王子の方がどう考えても悪いし、最悪殺されていても文句は言えなかったぞと思いつつ、そんなことはまるっと隠して礼をとった。
そんな俺にセドリック王子は満足げに笑い、不意打ちのように引き寄せてきた。

「へ…?」

そして気づいた時には時すでに遅し。
逃げられないように後頭部と腰を抑えられ、唇を重ねられていた。

「んんんっ?!んっ!んんぅーーー!」

いきなり何するんだと懸命に胸を押すが、王子は俺の口内にまで舌を潜り込ませて好き勝手に蹂躙し始めた。

(何すんだ?!)

俺は必死に抵抗して逃げようとするけれど、セドリック王子はそんな俺を楽しむように見つめながら舌を絡めたり歯列をチロチロと嬲ったり、最悪なことに俺の舌を捕まえて吸い上げにかかった。
ジュッと勢いよく吸われた俺は初めての感覚に力が抜けそうになる。

「ふ…うぅ…んぅ……」
「ふっ…気持ちいいか?」
「ふざ…けないでほし…ぃ」
「その割にはフラフラなようだが?」

そして楽し気にしながらまた思う様俺の唇を貪ってくる。
一体何なんだ?!昨日は姫を抱いてご満悦じゃなかったのか?

「も…やめ……」
「やめなくてもいいだろう?お前は俺の側室なのだから」
「それは断ったはず…っ!んんんッッ…!」
「残念。もう王の裁可も貰ったから正式に受理されている。今更逃げられると思うな」

その言葉に俺は愕然としてしまった。
どうして王の裁可がそんな簡単に降りているのだろう?
側室だからって適当なのか?
男同士だぞ?本気か?!

「ああ、いいな。そのショックを受けた顔…」
「へんた…ぃ……っっ!ふぁッ…!」
「ククッ…そこがいいのだと少しは理解した方がいいぞ?」

どうやら反抗的な態度がこの王子のツボに嵌るらしく、益々キスは深くなる一方だった。

「う…っ、うぅ…っ……」
「可愛いな」

はぁはぁとキスの合間に必死に息を整えていると、意図せず縋りつくように手が王子の服をギュッと握ってしまい、それを見た王子が更に気を良くしていく。

「今夜は…俺のところに来てくれるな?」

だがそんな風に甘く誘われようと俺の答えは断固拒否に決まっていた。
取り敢えずすぐに口を塞がれてしまうので首を振ることで応えようと思ったのに、王子はそれさえ許さないとばかりに頭を抑え込む。

「お前に許された答えは『ハイ』か『イエス』か『喜んで』だ」

それ全部OKの言葉じゃないか!ふざけんな!
とは言えこのままじゃマズいことだけはわかる。
こんな時は交渉だ。
絶対に思い通りになんてさせるものか…。

「んっんー!」
「答えは決まったか?」
「んっ…はぁ…っ、はぁ…っ」
「アルフレッド…答えは?」
「剣で……」
「ん?」
「剣で勝負して、王子が勝ったなら、抱かれてやってもいい!」

俺は絶対に負けないと睨みながらそんな風に提案する。
この条件なら俺が負けない限り抱かれることはないからだ。
簡単に負ける気はないし、王子だって面白いと乗ってくる可能性が高い。

「ほぉ…?この俺に戦いを挑むか」

案の定王子が物凄く楽し気に笑みを浮かべそんな風に聞いてきたので、俺は一も二もなく頷きその条件でなら受けて立つと言い切った。

「クッ…本当に面白い男だ。いいだろう。その代わり一度限りの勝負などと言わず、俺が抱きたいと思ったら都度勝負を挑むがいいか?」
「もちろん。受けて立ちます」
「ならばいい。取り敢えず今日の分の勝負は…そうだな、午後の執務後に挑むとしようか。構わないか?」
「わかりました。時間の方のご連絡はお待ちしております」

王子が一先ず引き下がってくれたので俺も口調を改めおとなしくそう返す。
これで後は勝負に勝つだけだ。
王子も自信ありげだが、あんまり俺を舐めるなよと言ってやりたい。
そう簡単に抱けると思ったら大間違いだ。

こうして俺と王子の剣での闘いの日々が幕を開けたのだった。


しおりを挟む
※皆様いつもありがとうございます♪この度スピンオフ作品をアップしましたので、ご興味のある方はそちらも宜しくお願いしますm(_ _)m『王子の本命~ガヴァム王国の王子達~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/91408108/52430498
感想 221

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

不憫王子に転生したら、獣人王太子の番になりました

織緒こん
BL
日本の大学生だった前世の記憶を持つクラフトクリフは異世界の王子に転生したものの、母親の身分が低く、同母の姉と共に継母である王妃に虐げられていた。そんなある日、父王が獣人族の国へ戦争を仕掛け、あっという間に負けてしまう。戦勝国の代表として乗り込んできたのは、なんと獅子獣人の王太子のリカルデロ! 彼は臣下にクラフトクリフを戦利品として側妃にしたらどうかとすすめられるが、王子があまりに痩せて見すぼらしいせいか、きっぱり「いらない」と断る。それでもクラフトクリフの処遇を決めかねた臣下たちは、彼をリカルデロの後宮に入れた。そこで、しばらく世話をされたクラフトクリフはやがて健康を取り戻し、再び、リカルデロと会う。すると、何故か、リカルデロは突然、クラフトクリフを溺愛し始めた。リカルデロの態度に心当たりのないクラフトクリフは情熱的な彼に戸惑うばかりで――!?

処理中です...