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第五章 油断大敵
86.油断も隙もない
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翌朝、昨夜の記憶が半分ないというディオに再度『玩具は使うのは禁止』と言い聞かせながら朝食を食べさせ、仕事へと送り出す。
ヴィオレッタ王女が来るのは午後かららしいから、それまでは騎士や文官達の指導をこれまで通り引き受け、時間になったら抜けさせてもらうことに。
午後────やってきたヴィオレッタ王女を応接間で出迎える。
ディオも一緒だ。
まあ元々ディオに用があって来たのだから当然だが。
「ヴィオレッタ王女。いらっしゃい」
「ディオ陛下にはご機嫌麗しく。本日はルーセウス陛下もご一緒ですのね。久し振りにお会いできて嬉しいですわ」
ニコニコと挨拶してくれるヴィオレッタ王女は相変わらずだ。
「やっぱりルーセウス陛下の愛の力は偉大ですわ。ディオ様をあっという間に元気にしてくださったんですもの」
そうやって褒めてもらえるのは嬉しいが、俺は油断しないぞ?
だってもしアレがディオのではなく俺のを模したもののサイズ確認だった場合、初夜の際、ヴィオレッタ王女がアレでディオを可愛がる可能性が高いんだ。
ディオを喘がせて可愛い姿を見れるのは俺だけだと、ちゃんと言っておかないと。
いくら友人枠とは言え、許容範囲外のこともあるんだから。
「それで、如何でした?ディオ様」
「ああ────」
早速とばかりにディオへと尋ねるヴィオレッタ王女と答えようとするディオ。
そんな二人の話に割り込み、先に確認させてもらうことに。
「ちょっと待った。ヴィオレッタ王女。その件について一応確認したい事があるんだが」
「まあ、なんでしょう?」
「ソレは初夜の場で使う予定だと聞いたが、『誰が』使うんだ?」
「まあ!勿論ディオ様ですわ」
やっぱり。
これは『ディオに挿れる』ってことだなと確信した。
なのにディオは別方向に受け取ったようで…。
「ルーセウス。昨日も言っただろう?コレは俺が勃たなかった時に使うんだって。ヴィオレッタ王女にわざわざ聞き直さなくても────」
女性に直球で聞くなんて失礼だと困ったように注意されるけど、『違う!いや、そうかもしれないけど、聞いて確認すべき内容だったんだ!』と言い訳したい。
だってディオは絶賛勘違い中なんだから。
いっそのこと『誰に』使うかを聞いた方が良かったのかもしれない。
そしてヴィオレッタ王女もまたそんなディオを見て、察したように俺へと小さく頷いてくる。
「ディオ。シャメルで撮った絵を忘れずにちゃんと渡せよ?職人に二度手間をかけさせるわけにはいかないし、すごく大事だから撮ったものは全部添付するように」
「ああ、それは勿論」
「それと、ちょっとヴィオレッタ王女と他に話したい事があるんだ。だからディオは先に仕事に戻っていて欲しい」
「え?」
「ディオ様。きっと結婚式当日の注意事項ですわ。私も色々打ち合わせておきたいと思っていましたし、ここはディオ様の伴侶同士できっちり擦り合わせをしておきますので、どうか安心してお仕事に励んでくださいませ」
ニッコリ笑ってディオを送り出そうとしてくれるヴィオレッタ王女に感謝しつつ、俺もディオを抱き寄せチュッと髪へと口づけを一つ落とし、安心させるように笑顔で促す。
「大丈夫。ディオと俺の幸せの為に、しっかり打ち合わせておくからな」
「え?あ、うん?わかった…」
そうして渋々仕事へ戻っていくディオを二人で笑顔で見送り、ちゃんと気配が遠ざかったところで口火を切った。
「ヴィオレッタ王女。ディオを喘がせるのは禁止だ」
「まあ!ルーセウス王子。うちはロキ陛下に快楽堕ちさせられた父を母がずっとお慰めしてましたのよ?ちゃんと父にも相談して色々アドバイスもいただいて勉強致しましたし、問題ありませんわ。父から放置された側の辛さを切々と教えていただいて、今回私も反省致しましたの。ですから鋭意努力させていただこうと思っております。ルーセウス王子もそこはディオ様のために妥協すべきでは?」
アンシャンテの事情なんて知らないし、どうでもいい。
これは俺が他の誰かにディオを啼かされたくなんてないから言っているんだ。
「断る。ディオの可愛い姿を誰にも見せたくない」
「では…ディオ様の勘違い通り、ディオ様のモノでディルドを用意して、私だけ可愛いがってもらえと?」
「それで頼む」
そこを許す気はないとしっかりと言っておく。
「正直言ってルーセウス王子のディオ様への愛を疑ってしまいますわ。今回ルーセウス王子が来られるまでのディオ様の様子を見るに、遅かれ早かれ必要となるのは確かでしょう?」
「そこは心配しなくても大丈夫だ。結婚式までは必要がない限りはゴッドハルトに戻らずここにいる予定だし、元々挙式後にこっちに腰を据える予定だったからそれも決定事項と思ってくれていい」
「つまり基本的にディオ様の側から離れないから必要ない、と?」
「そうだ」
(まさかヴィオレッタ王女にまで俺のディオへの愛情を疑われるなんて…)
どうやら今回の件で余計な気遣いをされてしまったようだが、ここはちゃんと必要ないと言っておかないと。
「わかりましたわ。では後は結婚式当日ですわね。元々ルーセウス王子達の結婚式が戴冠式後の三ヶ月後。私達の結婚式が半年後という予定でしたが…うちの父が私達の結婚式を早めて、ルーセウス王子とディア王女の結婚式と一緒に同日、もしくは翌日にガヴァムでしたらどうだと言っておりましたわ。招待客もその方がアンシャンテやゴッドハルトにスケジュールを調整して行ったり来たりせずに済むからと。そちらについては如何です?」
それは確かに良さそうな案だ。
「先日までのディオ様なら忙しさの中で潰れそうになっていらしたので難しかったかもしれませんが、ルーセウス王子のお陰でお元気になられたようですし、私的にはいけるのではないかと。早めに結婚式を済ませれば私もディオ様のお仕事を手伝えるようになりますし、負担軽減に繋がりますわ」
「なるほど」
ディオの負担が減るならそれに越したことはない。
「アリだな」
「ご了承いただけますか?」
「ああ」
「ではディア王女に連絡を取って、あちらでの調整をしてもらってください。こちらの方は私が調整いたします。ディオ様にも後でその旨ご連絡を。やることは沢山あるので少し忙しくなると思います。それに関してもご理解を」
「わかった」
「ディオ様にお願いして、ルーセウス王子が使いやすい侍従を数名つけてもらうことをお勧めしますわ。彼らを使えばディオ様の側から必要以上に離れることもなく動けるようになるでしょう。こちらとの連携も取りやすくなりますし、一石二鳥。是非ご一考を」
「わかった。助かる」
「いいえ。他ならぬディオ様の為ですもの。できることは全て実行致しますわ」
ニコリとヴィオレッタ王女が綺麗に笑う。
「ロクサーヌ嬢もディオ様を心配していましたし…どうかしっかりディオ様を支えてあげてくださいませ」
久し振りに聞いたその名にドキリとする。
「ロクサーヌ嬢が…?」
「ええ。彼女は今アンシャンテにおりますから。またもし今回のような事があれば、直接こちらへと様子見に来てしまうかもしれませんわよ?」
それを聞き、俺は冷や汗をかいた。
今回は大丈夫だったが、弱ってる時にディオがロクサーヌ嬢と再会でもしていたら、またそっちにフラッと気持ちが戻ってもおかしくはない。
(色々危なかった…)
パーシバルといい、ヴィオレッタ王女といい、ロクサーヌ嬢といい、次から次に俺の危機感を煽ってくるのはどういうことだ。
やっぱりディオから目を離すのは危険過ぎる。
取り敢えず、しっかり目を光らせてこれ以上ライバルが増えないよう注意しておこう。
そう誓った午後だった。
ヴィオレッタ王女が来るのは午後かららしいから、それまでは騎士や文官達の指導をこれまで通り引き受け、時間になったら抜けさせてもらうことに。
午後────やってきたヴィオレッタ王女を応接間で出迎える。
ディオも一緒だ。
まあ元々ディオに用があって来たのだから当然だが。
「ヴィオレッタ王女。いらっしゃい」
「ディオ陛下にはご機嫌麗しく。本日はルーセウス陛下もご一緒ですのね。久し振りにお会いできて嬉しいですわ」
ニコニコと挨拶してくれるヴィオレッタ王女は相変わらずだ。
「やっぱりルーセウス陛下の愛の力は偉大ですわ。ディオ様をあっという間に元気にしてくださったんですもの」
そうやって褒めてもらえるのは嬉しいが、俺は油断しないぞ?
だってもしアレがディオのではなく俺のを模したもののサイズ確認だった場合、初夜の際、ヴィオレッタ王女がアレでディオを可愛がる可能性が高いんだ。
ディオを喘がせて可愛い姿を見れるのは俺だけだと、ちゃんと言っておかないと。
いくら友人枠とは言え、許容範囲外のこともあるんだから。
「それで、如何でした?ディオ様」
「ああ────」
早速とばかりにディオへと尋ねるヴィオレッタ王女と答えようとするディオ。
そんな二人の話に割り込み、先に確認させてもらうことに。
「ちょっと待った。ヴィオレッタ王女。その件について一応確認したい事があるんだが」
「まあ、なんでしょう?」
「ソレは初夜の場で使う予定だと聞いたが、『誰が』使うんだ?」
「まあ!勿論ディオ様ですわ」
やっぱり。
これは『ディオに挿れる』ってことだなと確信した。
なのにディオは別方向に受け取ったようで…。
「ルーセウス。昨日も言っただろう?コレは俺が勃たなかった時に使うんだって。ヴィオレッタ王女にわざわざ聞き直さなくても────」
女性に直球で聞くなんて失礼だと困ったように注意されるけど、『違う!いや、そうかもしれないけど、聞いて確認すべき内容だったんだ!』と言い訳したい。
だってディオは絶賛勘違い中なんだから。
いっそのこと『誰に』使うかを聞いた方が良かったのかもしれない。
そしてヴィオレッタ王女もまたそんなディオを見て、察したように俺へと小さく頷いてくる。
「ディオ。シャメルで撮った絵を忘れずにちゃんと渡せよ?職人に二度手間をかけさせるわけにはいかないし、すごく大事だから撮ったものは全部添付するように」
「ああ、それは勿論」
「それと、ちょっとヴィオレッタ王女と他に話したい事があるんだ。だからディオは先に仕事に戻っていて欲しい」
「え?」
「ディオ様。きっと結婚式当日の注意事項ですわ。私も色々打ち合わせておきたいと思っていましたし、ここはディオ様の伴侶同士できっちり擦り合わせをしておきますので、どうか安心してお仕事に励んでくださいませ」
ニッコリ笑ってディオを送り出そうとしてくれるヴィオレッタ王女に感謝しつつ、俺もディオを抱き寄せチュッと髪へと口づけを一つ落とし、安心させるように笑顔で促す。
「大丈夫。ディオと俺の幸せの為に、しっかり打ち合わせておくからな」
「え?あ、うん?わかった…」
そうして渋々仕事へ戻っていくディオを二人で笑顔で見送り、ちゃんと気配が遠ざかったところで口火を切った。
「ヴィオレッタ王女。ディオを喘がせるのは禁止だ」
「まあ!ルーセウス王子。うちはロキ陛下に快楽堕ちさせられた父を母がずっとお慰めしてましたのよ?ちゃんと父にも相談して色々アドバイスもいただいて勉強致しましたし、問題ありませんわ。父から放置された側の辛さを切々と教えていただいて、今回私も反省致しましたの。ですから鋭意努力させていただこうと思っております。ルーセウス王子もそこはディオ様のために妥協すべきでは?」
アンシャンテの事情なんて知らないし、どうでもいい。
これは俺が他の誰かにディオを啼かされたくなんてないから言っているんだ。
「断る。ディオの可愛い姿を誰にも見せたくない」
「では…ディオ様の勘違い通り、ディオ様のモノでディルドを用意して、私だけ可愛いがってもらえと?」
「それで頼む」
そこを許す気はないとしっかりと言っておく。
「正直言ってルーセウス王子のディオ様への愛を疑ってしまいますわ。今回ルーセウス王子が来られるまでのディオ様の様子を見るに、遅かれ早かれ必要となるのは確かでしょう?」
「そこは心配しなくても大丈夫だ。結婚式までは必要がない限りはゴッドハルトに戻らずここにいる予定だし、元々挙式後にこっちに腰を据える予定だったからそれも決定事項と思ってくれていい」
「つまり基本的にディオ様の側から離れないから必要ない、と?」
「そうだ」
(まさかヴィオレッタ王女にまで俺のディオへの愛情を疑われるなんて…)
どうやら今回の件で余計な気遣いをされてしまったようだが、ここはちゃんと必要ないと言っておかないと。
「わかりましたわ。では後は結婚式当日ですわね。元々ルーセウス王子達の結婚式が戴冠式後の三ヶ月後。私達の結婚式が半年後という予定でしたが…うちの父が私達の結婚式を早めて、ルーセウス王子とディア王女の結婚式と一緒に同日、もしくは翌日にガヴァムでしたらどうだと言っておりましたわ。招待客もその方がアンシャンテやゴッドハルトにスケジュールを調整して行ったり来たりせずに済むからと。そちらについては如何です?」
それは確かに良さそうな案だ。
「先日までのディオ様なら忙しさの中で潰れそうになっていらしたので難しかったかもしれませんが、ルーセウス王子のお陰でお元気になられたようですし、私的にはいけるのではないかと。早めに結婚式を済ませれば私もディオ様のお仕事を手伝えるようになりますし、負担軽減に繋がりますわ」
「なるほど」
ディオの負担が減るならそれに越したことはない。
「アリだな」
「ご了承いただけますか?」
「ああ」
「ではディア王女に連絡を取って、あちらでの調整をしてもらってください。こちらの方は私が調整いたします。ディオ様にも後でその旨ご連絡を。やることは沢山あるので少し忙しくなると思います。それに関してもご理解を」
「わかった」
「ディオ様にお願いして、ルーセウス王子が使いやすい侍従を数名つけてもらうことをお勧めしますわ。彼らを使えばディオ様の側から必要以上に離れることもなく動けるようになるでしょう。こちらとの連携も取りやすくなりますし、一石二鳥。是非ご一考を」
「わかった。助かる」
「いいえ。他ならぬディオ様の為ですもの。できることは全て実行致しますわ」
ニコリとヴィオレッタ王女が綺麗に笑う。
「ロクサーヌ嬢もディオ様を心配していましたし…どうかしっかりディオ様を支えてあげてくださいませ」
久し振りに聞いたその名にドキリとする。
「ロクサーヌ嬢が…?」
「ええ。彼女は今アンシャンテにおりますから。またもし今回のような事があれば、直接こちらへと様子見に来てしまうかもしれませんわよ?」
それを聞き、俺は冷や汗をかいた。
今回は大丈夫だったが、弱ってる時にディオがロクサーヌ嬢と再会でもしていたら、またそっちにフラッと気持ちが戻ってもおかしくはない。
(色々危なかった…)
パーシバルといい、ヴィオレッタ王女といい、ロクサーヌ嬢といい、次から次に俺の危機感を煽ってくるのはどういうことだ。
やっぱりディオから目を離すのは危険過ぎる。
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そう誓った午後だった。
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