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第四章 思わぬ誤解とライバル出現に焦る俺
78.巻き返しはこれからだ!
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俺もパフェを頼んで一緒に食べる。
ディオはこのパフェに使われている悪魔の実をバロン国に輸出したいらしい。
「悪魔の実ってこの辺りでは出回り始めたけど、それ以外はまだ全然なんだよな?ロキ陛下がブルーグレイに送って、アルメリア妃がすごく気に入ってたってルカから聞いたことがある」
「うん。定期的に送るよう手配してるみたいだよ」
────気まずい。
表面上はいつも通りのディオなのに、明らかに線を引かれてる。
「ん。確かにこれは美味いな。ロキ陛下が渋々でも認めざるを得なかった気持ちはわかる美味さだ。ちなみに日持ちはするという話だが、どれくらい持つんだ?ヴァレトミュラでうちまで運べば確かにワイバーンで運ぶより量は多くなるだろうが、着いてから腐ってたら意味がないぞ?」
「早めに収穫して追熟させるから大丈夫だ。収穫から三週間以上経ってからが食べ頃と考えてくれていい」
「なるほど。それなら大丈夫そうだな。価格は?さっき果物屋で見た値より上がるんだろう?」
「まあ輸送コストもかかるから三倍くらいじゃないかな?」
「ぼったくりか。良い根性してるな?」
「味は申し分ないんだし、高級路線で売ったらいいじゃないか。やりようはいくらでもあるんだし、上手く商人を使って広めてくれ」
「上等だ。お前にもうちの商品を売りつけて同じ思いを味合わせてやる」
「どうぞご自由に。商売関連はうちは強いから、下手を打つことはないよ」
俺には見せない、挑発するような笑みを浮かべるディオ。
その表情があまりに艶やかで、俺が知るディオじゃないように感じられた。
手が届かないところにいるように見えて胸が苦しくなる。
(嫌だ…)
対等に話せるパーシバルにどうしようもなく嫉妬してしまう。
「ディ…んグッ?!」
何とか割り込めないかと口を開けた瞬間、正面から問答無用でスプーンを口に突っ込まれた。
「お前は黙ってろ。俺とディオの会話に口を挟むな」
冷たい眼差しで凄んでくるパーシバル。
でも俺はモグモグしながら睨むことしかできない。
悔しい。
そう思ってたら横からディオがそっと口を拭いてくれる。
「パーシバル。ルーセウスに手出しは無用と言っただろう?契約違反だ」
「あれは害さないという意味合いだろう?これには当てはまらない。それにさっき俺がディオに食べさせたら怒っていたじゃないか。こうした方が嫉妬しなくて済むんじゃないか?」
挑発的に言ってくるパーシバル。
でもディオはそれを聞いてちょっと悲しげな表情になってしまう。
「嫉妬なんて…するはずがないだろう?」
(ディオぉおおっ?!)
嫉妬しまくりなのに、嫉妬なんてしないと思われてる?!
そんなに愛が枯渇したと思われてたなんて…!
「ディオ。接待はやめにして今すぐ帰らないか?ちょっとゆっくり話した方がいい気がする」
「えっ…」
そんな怯えたように体全部で嫌だと主張されたらすごく傷つくんだが?!
「ハハハッ!帰りたいなら一人で帰れ。今日は契約の元ディオの時間は俺が貰ってるんだ。夜までずっとディオは俺と一緒だ。そうだな?ディオ」
それに対してディオがコクリと頷く。
(夜までずっと一緒だと?!)
シグから話を聞いてなかったら絶対に浮気判定をしていただろう。
事情を知らず俺よりこんな奴を優先されたら絶対そう思ったはずだ。
(落ち着け。これは明らかな挑発行為だ)
シグは何と言っていた?
上手く宥めて連れ帰れと言わなかったか?
つまり何とかこの男をやりこめて、安全にディオを連れ帰るのが俺に与えられたミッションだ。
「具体的には?ディオ、何時までだ?」
「パーシバルからは半日くれとだけ」
「確認するが、契約と言うからにはこれは仕事なんだな?」
「…うん」
「わかった。じゃあ文官の終業時間である五時半までが契約だ。プライベートじゃないならそれ以上は認めない」
断固として言い切ったらパーシバルから思い切り睨まれ、『ディオの気持ち的にはどうなんだ?帰りたくないなら時間延長は全然大丈夫だが?』と挑発される。
「俺は…」
「ディオ。先触れを伝えた時、後でちゃんと話そうって言ったよな?」
逃げるなとばかりに強い口調で言うと益々表情が曇ったけど、ここは絶対に妥協すべきじゃない。
「大丈夫だ。俺が伝えたいのは俺がどれだけディオのことを愛してるかって事だけだからな!ちょっと誤解がありそうだからそれもちゃんと解きたい。だから一緒に帰ろう?」
真っ直ぐディオの方を向いて、信じてもらえるように言葉を尽くす。
瞳を揺らすディオにちゃんと伝わるほど情熱的に。
「ディオ。俺の気持ちは何も変わってない。信じてもらえないなら今日からずっとガヴァムで暮らしたっていい。毎日好きだって伝え続けるし、四六時中くっついてる!だからこれからも俺だけを変わらず愛してほしい」
「ルーセウス…」
ディオが泣きそうな顔で俺を見て、今にも俺の胸に飛び込んでくれそうになったところで、邪魔が入った。
「はい、ストップ」
「な?!」
「熱烈な告白は後にしてくれ。ディオ、私情に流されるな。いつも冷静なお前らしくないぞ?仕事は仕事だろう?契約書がある分、こちらが優先だ」
「パーシバル…」
「さ、じゃあ次はヴァレトミュラの駅だな。具体的に用意すべき物資のことも聞かせてくれ」
ガタリと席を立ち、契約を盾にディオを連れて行こうとするパーシバル。
そんなパーシバルを見てディオもこれは仕事だったと思い出したように動き出す。
「ルーセウス。その…ちゃんと帰るから、先に帰って待っててく────」
「俺も行くに決まってるだろう?ディオが心配だから着いていく」
「え?」
「今のディオは隙だらけだから絶対一人にはしない。護衛の一人だと思ってくれてもいいから、俺も連れていってくれ」
そしてパッとディオの手を取ってそのままパーシバルの後を追う。
勿論問答無用の指を絡めた恋人繋ぎだ。
これなら絶対逃げられないだろう。
「ルーセウス…」
戸惑いながらも受け入れてくれるディオに優しく微笑んで、『俺ともまたデートしような』と言っておいた。
絶対あんな男に盗られないようにしっかり捕まえておかないと。
ディオはこのパフェに使われている悪魔の実をバロン国に輸出したいらしい。
「悪魔の実ってこの辺りでは出回り始めたけど、それ以外はまだ全然なんだよな?ロキ陛下がブルーグレイに送って、アルメリア妃がすごく気に入ってたってルカから聞いたことがある」
「うん。定期的に送るよう手配してるみたいだよ」
────気まずい。
表面上はいつも通りのディオなのに、明らかに線を引かれてる。
「ん。確かにこれは美味いな。ロキ陛下が渋々でも認めざるを得なかった気持ちはわかる美味さだ。ちなみに日持ちはするという話だが、どれくらい持つんだ?ヴァレトミュラでうちまで運べば確かにワイバーンで運ぶより量は多くなるだろうが、着いてから腐ってたら意味がないぞ?」
「早めに収穫して追熟させるから大丈夫だ。収穫から三週間以上経ってからが食べ頃と考えてくれていい」
「なるほど。それなら大丈夫そうだな。価格は?さっき果物屋で見た値より上がるんだろう?」
「まあ輸送コストもかかるから三倍くらいじゃないかな?」
「ぼったくりか。良い根性してるな?」
「味は申し分ないんだし、高級路線で売ったらいいじゃないか。やりようはいくらでもあるんだし、上手く商人を使って広めてくれ」
「上等だ。お前にもうちの商品を売りつけて同じ思いを味合わせてやる」
「どうぞご自由に。商売関連はうちは強いから、下手を打つことはないよ」
俺には見せない、挑発するような笑みを浮かべるディオ。
その表情があまりに艶やかで、俺が知るディオじゃないように感じられた。
手が届かないところにいるように見えて胸が苦しくなる。
(嫌だ…)
対等に話せるパーシバルにどうしようもなく嫉妬してしまう。
「ディ…んグッ?!」
何とか割り込めないかと口を開けた瞬間、正面から問答無用でスプーンを口に突っ込まれた。
「お前は黙ってろ。俺とディオの会話に口を挟むな」
冷たい眼差しで凄んでくるパーシバル。
でも俺はモグモグしながら睨むことしかできない。
悔しい。
そう思ってたら横からディオがそっと口を拭いてくれる。
「パーシバル。ルーセウスに手出しは無用と言っただろう?契約違反だ」
「あれは害さないという意味合いだろう?これには当てはまらない。それにさっき俺がディオに食べさせたら怒っていたじゃないか。こうした方が嫉妬しなくて済むんじゃないか?」
挑発的に言ってくるパーシバル。
でもディオはそれを聞いてちょっと悲しげな表情になってしまう。
「嫉妬なんて…するはずがないだろう?」
(ディオぉおおっ?!)
嫉妬しまくりなのに、嫉妬なんてしないと思われてる?!
そんなに愛が枯渇したと思われてたなんて…!
「ディオ。接待はやめにして今すぐ帰らないか?ちょっとゆっくり話した方がいい気がする」
「えっ…」
そんな怯えたように体全部で嫌だと主張されたらすごく傷つくんだが?!
「ハハハッ!帰りたいなら一人で帰れ。今日は契約の元ディオの時間は俺が貰ってるんだ。夜までずっとディオは俺と一緒だ。そうだな?ディオ」
それに対してディオがコクリと頷く。
(夜までずっと一緒だと?!)
シグから話を聞いてなかったら絶対に浮気判定をしていただろう。
事情を知らず俺よりこんな奴を優先されたら絶対そう思ったはずだ。
(落ち着け。これは明らかな挑発行為だ)
シグは何と言っていた?
上手く宥めて連れ帰れと言わなかったか?
つまり何とかこの男をやりこめて、安全にディオを連れ帰るのが俺に与えられたミッションだ。
「具体的には?ディオ、何時までだ?」
「パーシバルからは半日くれとだけ」
「確認するが、契約と言うからにはこれは仕事なんだな?」
「…うん」
「わかった。じゃあ文官の終業時間である五時半までが契約だ。プライベートじゃないならそれ以上は認めない」
断固として言い切ったらパーシバルから思い切り睨まれ、『ディオの気持ち的にはどうなんだ?帰りたくないなら時間延長は全然大丈夫だが?』と挑発される。
「俺は…」
「ディオ。先触れを伝えた時、後でちゃんと話そうって言ったよな?」
逃げるなとばかりに強い口調で言うと益々表情が曇ったけど、ここは絶対に妥協すべきじゃない。
「大丈夫だ。俺が伝えたいのは俺がどれだけディオのことを愛してるかって事だけだからな!ちょっと誤解がありそうだからそれもちゃんと解きたい。だから一緒に帰ろう?」
真っ直ぐディオの方を向いて、信じてもらえるように言葉を尽くす。
瞳を揺らすディオにちゃんと伝わるほど情熱的に。
「ディオ。俺の気持ちは何も変わってない。信じてもらえないなら今日からずっとガヴァムで暮らしたっていい。毎日好きだって伝え続けるし、四六時中くっついてる!だからこれからも俺だけを変わらず愛してほしい」
「ルーセウス…」
ディオが泣きそうな顔で俺を見て、今にも俺の胸に飛び込んでくれそうになったところで、邪魔が入った。
「はい、ストップ」
「な?!」
「熱烈な告白は後にしてくれ。ディオ、私情に流されるな。いつも冷静なお前らしくないぞ?仕事は仕事だろう?契約書がある分、こちらが優先だ」
「パーシバル…」
「さ、じゃあ次はヴァレトミュラの駅だな。具体的に用意すべき物資のことも聞かせてくれ」
ガタリと席を立ち、契約を盾にディオを連れて行こうとするパーシバル。
そんなパーシバルを見てディオもこれは仕事だったと思い出したように動き出す。
「ルーセウス。その…ちゃんと帰るから、先に帰って待っててく────」
「俺も行くに決まってるだろう?ディオが心配だから着いていく」
「え?」
「今のディオは隙だらけだから絶対一人にはしない。護衛の一人だと思ってくれてもいいから、俺も連れていってくれ」
そしてパッとディオの手を取ってそのままパーシバルの後を追う。
勿論問答無用の指を絡めた恋人繋ぎだ。
これなら絶対逃げられないだろう。
「ルーセウス…」
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