王子の本命~無自覚王太子を捕まえたい〜

オレンジペコ

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第四章 思わぬ誤解とライバル出現に焦る俺

68.会えなくて

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ガヴァムでいっぱいディオと愛し合ってから、ディア王女と一緒にゴッドハルトへと帰ってきた。
すっかりこちらでの生活に馴染んだディア王女は、『はぁ…ここは必要以上に気を張らなくていいから、とっても落ち着きますわ』なんて言っていた。
うん。それだけ馴染んでもらえると俺も心置きなく定期的にディオのところへ向かえるから有り難い。

「ディア王女。俺がディオに会いに行く時はワイバーンで単独行動しても構わないか?」
「せめて貴方と同じくらいワイバーンを操れる護衛の兵士を同行させてくださいな。それなら構いませんわ」

同乗ではなく同行できる者がいればいいとディア王女は言う。
ガヴァムの王配として周知されたのだから、それができないなら移動はヴァレトミュラを使うようにと釘を刺されてしまった。

でも確かに言われてみればその通りだし、ここは父にも相談して、同行できる者を数人借りれるようにしておこう。



そこまで決まったものの、それからの日々はディオに会えない日々が続いた。
しかもそれだけではなく、ツンナガールで話す時間まで減ってしまった。
かなり疲れているのかディオが寝落ちすることが多くて、俺が気を遣って早く切るようになったからだが。

本音を言うとできるだけ早くディオの元へ行って、側で手助けしてやりたい。
でも中途半端に行ったり来たりしても気を遣わせるだけだろう。

(却って邪魔になりそうな気もするんだよな)

即位してまだ少ししか経っていないから、仕事が大変なのは十分想像がつく。
ガヴァムの事を殆ど知らない俺にできる事は然程多くはないから、精神的支えになってやれるくらいのものじゃないだろうか?

そう思って、ディオに負担が掛からないよう、労わりながら泣く泣く短時間通話を心掛けた。
会えないだけじゃなく声が聞ける時間も短いなんて最悪だ。
恋しい。

でも唯一ディア王女の目を俺に向けさせる方は成功していると言っていい。
食事はなるべく三食一緒に摂るようにしたし、不満がないか探りも入れている。結婚式の準備も積極的に取り組んでるし、何だったら褒め言葉もつけるようにした。
剣の手合わせだって毎日誘ってるし、ディア王女も困惑しつつ嫌がってるわけでもなさそうだから、このまま結婚式まで突っ走ればもうディオの側妃云々言い出すこともないだろう。

ちなみに『そろそろディオに会いに行ったらどうです?』とか『暗部からディオに報告が入ってるってわかっていますわよね?』とか何度も言われたけど、ディア王女はわかっていない。

俺だってディオに会いたい!
でもこの今一番大変な時期に、邪魔になるとわかってて会いに行けるはずがないだろう?
暗部からの報告は気にしない。
だってディオが会えない俺の様子を少しでも知りたいって思ってくれてる証拠だから。
それだけ気遣ってくれてるって事だろう?
感謝する以外に、何かあるとでも?

首を傾げる俺にディア王女は毎回重い溜め息を吐いてくる。

そして今日、とうとう限界だとばかりに言われたのがこの言葉だ。

「ルーセウス王子?いい加減にしてください!ディオに愛想を尽かされる前にやめた方が賢明ですわよ?」

ディオに会いた過ぎて、ディア王女との結婚式が待ち切れず、正直に『早くディア王女と結婚したい。式の日を早めないか?』って言ったら言われてしまったのだ。

別にせっつくように言ったわけじゃなく、穏やかに笑顔で提案したのに、酷くないか?

そもそも俺は早くディオのところに行きたいんだ!
我慢も一ヶ月が限界だった。
後二ヶ月も待てない。
結婚式さえ終えられればずっと一緒にいられるんだ。
それはディオだって知っているし問題はない。
多少式の日が早まったってディオならわかってくれる。
俺がディオとの日々に想いを馳せてそうしたんだって。
だから自信を持って応えた。

「大丈夫だ。ディア王女と結婚後はずっとディオと一緒にいるつもりだし、ディオならわかってくれる」

なのにディア王女はちっとも聞く耳を持ってはくれない。

「まだ殺されたくないので、ディオを優先してください!」
「優先してるからこそ言ってるんだが?」
「絶対にわかってないですわ!」

地団駄を踏むディア王女はかなりのレアだな。
ちょっと面白い。
この調子でどんどん素を出していって、ディオとヴィオレッタ王女のような仲の良い友人関係のようになれるといいんだが。


***


【Side.ディオ】

王太子の時からロキ父様の仕事は手伝ってきたし、カリン父様にも仕事を教えてもらっていた。
大臣や文官達との関係も良好だし、即位後もそれほど大きな問題は発生しないだろうと思っていた。
そう。自分さえ仕事をしっかり把握し、皆に指示を出せば大丈夫だと思っていたのだが────。

「はぁ…」

溜め息を吐く者の多い事と言ったらなかった。

「あぁ…ロキ陛下」
「お仕置きがないとモチベーションが上がらない…」

まさかのロキ父様ロスで動けなくなる者達が続出。
俺に対する不満があるわけではないらしいのだが、刺激が足りなくてモチベーションが上がらないそうだ。

「ディオ陛下。試しに鞭とか持ってみませんか?」
「それは名案だ!ディオ陛下、是非!お願いします!」
「断る」

本当に文官まで変態が多過ぎて嫌になる。
実力主義で王立学園の新卒者から優秀な者達を新たに配置して何とか回しているが、それでもあちらこちらで支障が出始めた。

しかも引退すると言い出す者まで続出する始末。
辞める辞めないとハッキリしない者も多いし、引き継ぎが各所で中途半端に行われ、右往左往する者が大量に出てきた。
王としての仕事はちゃんとやるつもりだけど、書類があちこちで停滞しているから、こちらまで回ってこなくて非常に困る。

できる限り自分に足で各部署を回って状況を把握し混乱を捌く日々が続き、夜は疲れ果てて寝落ちするのが当たり前になった。
せめてもの癒しでルーセウスとツンナガール越しに話しはするものの、ルーセウスも俺が疲れているのがわかるからか、最近では15分ほどで通話を終えてしまう。
切ない。

会いたい。
でも時間がない。

せめて昼間に少しでもツンナガールで話せればと思うものの、お互い忙しいからか時間が合わない。

ディアはたまに連絡をくれるし、暗部からも定期報告が入るから、ルーセウスの元気な様子は伝わってくるのだけど、ただそれだけだ。

ルーセウスは今、結婚式を早めようかなと言い出しているらしい。
最近ディアと仲睦まじく過ごしているらしく、その関係でそんな事を言い出したのかもしれない。
この分だと結婚後こちらに来るという話も流れる可能性が高い。
気持ちが離れたんじゃと不安になってしまう。

グシャリ。

思わず手元の書類を握りつぶしてしまった。
寝不足とストレスのせいで余計に余裕が持てないのかもしれない。

(気分転換が必要だ)

このままだと使えない奴らにナイフを投げたくなってしまうかもしれない。
危険だ。

「ちょっと気分転換に街の視察へ行ってくる」
「はっ!では近衛をすぐに手配致します!」
「五分で出る。迅速に頼む」
「ははっ!」

新卒上がりの彼アージルは真面目な性格でキビキビ動いてくれるから、非常に助かっている。
ちゃんと五分でバタバタと近衛を連れてきてくれて、準備万端街へと出ることができた。


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