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第三章 戴冠式は波乱含み
48.心配事 Side.レオナルド皇王
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いよいよ戴冠祝賀パーティーが始まった。
この後何が発表されるのか正直全く想像がつかない。
賊の襲撃自体はまあ特に驚くことなくあっさり受け入れられた。
だってロキが予め『うちは恨みを結構買ってるから、襲撃もあるかもしれません。護身の剣は持ち込み可能としますので、どうぞ自衛をしっかりしてくださいね?うちは頼りない変態騎士しかいませんので』なんて各国の賓客達に通達を出していたからだ。
普通なら受け入れられないであろうこんな通達も、ロキが言えばあっさり通るから凄いと思う。
ロキ陛下は裏の連中の元締めだし恨まれることもあるかも。まあしょうがない。
ガヴァムの騎士達が変態なのは有名だから、自衛もやむなし。
皆にそう思わせる空気があるのだ。
お蔭で襲撃も皆驚きはしたものの、すぐに鎮圧の動きに移れたし、特に大きな混乱には至らなかった。
破天荒な親友は最後の最後まで色々やってくれる。
まあだからこそ現場での心の余裕もあって、ルーセウス王子がディオ陛下の方へ走る姿を冷静に見ていられたのだけど。
正直その姿は愛する者を守る男そのもので、絶対に守ると言う強い意志が感じられたほどだった。
何も知らなくても『この二人、デキてるな』と気づいた者も何人かいるんじゃないだろうか?
だから、ふと思ったんだ。
未だ現れないロクサーヌ。ディオ陛下を守ろうとするルーセウス王子。そして何より賊の正体がニッヒガングの者達という点。
(ガヴァムと全く関係ないニッヒガングに戦争回避の為とは言えディオ陛下が手を打ったのか…)
これが戦争が起こった後ならわからなくはない。
戴冠式の出席者が国の大事で急遽帰国することになったため、友人として手を貸すことにした等言い訳もできるからだ。
でも予め手を打ったということは、情報を予め得て早々に対策をとったということ。
しかもルーセウス王子には何も知らせず、ディオ陛下の独断で、だ。
何故?
ルーセウス王子への愛情からだけとは言い難い。
ディア王女から情報をもらったとしても、ディオ陛下は国同士の線引きはちゃんとする方だと思う。
アドバイスはしても、実際に動くのはルーセウス王子であるべきだし、百歩譲ってギリギリ婚約者であるディア王女であるべきだ。
ディオ陛下の出る幕はないはず。
そう考えたところで、もしかして今日のサプライズ発表はディオ陛下とルーセウス王子の婚約なのではと思い至った。
普通なら王太子と王の婚約なんてあり得ない。
でもロキならやらかしかねない。
『遠距離でも本人達が想い合ってたらなんとかなるんじゃない?』と笑って言うような気がしてきた。
そしてその説が正しければディオ陛下が自らニッヒガングに手を下したのも納得がいく。
婚約者の国を守るため────。
そう思ってルーセウス王子に確認をとったのに、ハッキリ違うと言い切られた。
二人が想い合ってるのは確かなのにとモヤモヤする。
だからディア王女とはどうせ白い結婚なんだろうと言ってやったのに、それもまた違うらしい。
ディア王女はルーセウス王子との初夜を楽しみにしているのだとか。
白い結婚だったら時期を見てそれを証明して、こっちに貰い受けることだってできただろうに。
ブランの失恋は確実だ。
残念で仕方がない。
(はぁ…最近ブランの様子もおかしいし、朗報を持って行ってやれれば良かったんだけど)
ブランは『何度デートに誘ってもディア王女から断られる』と言っていて、どこか纏う空気がピリピリするようになっていた。
普通ならもう他の王子の婚約者になった女性をデートになんて誘わない。
だからやめるように言ったのだけど、それに対して『ローズマリーは応援してあげるのに、どうして俺には諦めろと言うんです?酷いです!』と睨んでくる始末。
でも側妃としての希望はまだあるローズマリーと、そうでないブランの差は非常に大きい。
とは言え息子の気持ちもわからなくはないし、白い結婚だったら貰い受けるのもアリかなとちょっと思ったのだ。
(まあ結果はダメだったけど)
兎に角ブランが暴走しないよう目を光らせておきたいところではある。
気になるのは鉱山ホテルの件。
数回に渡って視察に行ったかと思ったら、『そろそろ各部屋をリニューアルさせませんか?』と言ってきた。
具体的にはと尋ねたら、そこは今度ディア王女に聞いてみますなんて言う始末。
それを餌にディア王女を釣るつもりなんだろうか?
もう一つ気になるのはブランの隣の部屋を整え始めたこと。
あんなにフラれているのに、絶対にディア王女と結ばれるから準備は万端にするんだといそいそとディア王女が好みそうな家具や壁紙、カーテン、果てはドレスまで用意し始める始末。
正直言ってドン引きだ。
そういうのはちゃんと婚約できてからにしろと言ったけど、『それならルーセウス王子に暗殺者でも送ってください!』と逆ギレされた。
ちょっと情緒不安定っぽいし、心配になって医者にも診せたけど、『恋煩いに出せる薬はない』なんて言われてどうしようもなかった。
取り敢えず今日各国の賓客の前でディア王女がルーセウス王子の婚約者としてわかりやすくお披露目されれば、いくらブランでも諦めがつくだろう。
そう思いながら壇上に勢揃いしたガヴァムの王族達へと目を向ける。
(さて、何が発表されるのかな)
場合によってはブランだけじゃなく、ローズマリーも慰めてやらないといけなくなる。
だから心を落ち着かせながら、満面の笑みで挨拶を始めた大親友へと目を向けた。
この後何が発表されるのか正直全く想像がつかない。
賊の襲撃自体はまあ特に驚くことなくあっさり受け入れられた。
だってロキが予め『うちは恨みを結構買ってるから、襲撃もあるかもしれません。護身の剣は持ち込み可能としますので、どうぞ自衛をしっかりしてくださいね?うちは頼りない変態騎士しかいませんので』なんて各国の賓客達に通達を出していたからだ。
普通なら受け入れられないであろうこんな通達も、ロキが言えばあっさり通るから凄いと思う。
ロキ陛下は裏の連中の元締めだし恨まれることもあるかも。まあしょうがない。
ガヴァムの騎士達が変態なのは有名だから、自衛もやむなし。
皆にそう思わせる空気があるのだ。
お蔭で襲撃も皆驚きはしたものの、すぐに鎮圧の動きに移れたし、特に大きな混乱には至らなかった。
破天荒な親友は最後の最後まで色々やってくれる。
まあだからこそ現場での心の余裕もあって、ルーセウス王子がディオ陛下の方へ走る姿を冷静に見ていられたのだけど。
正直その姿は愛する者を守る男そのもので、絶対に守ると言う強い意志が感じられたほどだった。
何も知らなくても『この二人、デキてるな』と気づいた者も何人かいるんじゃないだろうか?
だから、ふと思ったんだ。
未だ現れないロクサーヌ。ディオ陛下を守ろうとするルーセウス王子。そして何より賊の正体がニッヒガングの者達という点。
(ガヴァムと全く関係ないニッヒガングに戦争回避の為とは言えディオ陛下が手を打ったのか…)
これが戦争が起こった後ならわからなくはない。
戴冠式の出席者が国の大事で急遽帰国することになったため、友人として手を貸すことにした等言い訳もできるからだ。
でも予め手を打ったということは、情報を予め得て早々に対策をとったということ。
しかもルーセウス王子には何も知らせず、ディオ陛下の独断で、だ。
何故?
ルーセウス王子への愛情からだけとは言い難い。
ディア王女から情報をもらったとしても、ディオ陛下は国同士の線引きはちゃんとする方だと思う。
アドバイスはしても、実際に動くのはルーセウス王子であるべきだし、百歩譲ってギリギリ婚約者であるディア王女であるべきだ。
ディオ陛下の出る幕はないはず。
そう考えたところで、もしかして今日のサプライズ発表はディオ陛下とルーセウス王子の婚約なのではと思い至った。
普通なら王太子と王の婚約なんてあり得ない。
でもロキならやらかしかねない。
『遠距離でも本人達が想い合ってたらなんとかなるんじゃない?』と笑って言うような気がしてきた。
そしてその説が正しければディオ陛下が自らニッヒガングに手を下したのも納得がいく。
婚約者の国を守るため────。
そう思ってルーセウス王子に確認をとったのに、ハッキリ違うと言い切られた。
二人が想い合ってるのは確かなのにとモヤモヤする。
だからディア王女とはどうせ白い結婚なんだろうと言ってやったのに、それもまた違うらしい。
ディア王女はルーセウス王子との初夜を楽しみにしているのだとか。
白い結婚だったら時期を見てそれを証明して、こっちに貰い受けることだってできただろうに。
ブランの失恋は確実だ。
残念で仕方がない。
(はぁ…最近ブランの様子もおかしいし、朗報を持って行ってやれれば良かったんだけど)
ブランは『何度デートに誘ってもディア王女から断られる』と言っていて、どこか纏う空気がピリピリするようになっていた。
普通ならもう他の王子の婚約者になった女性をデートになんて誘わない。
だからやめるように言ったのだけど、それに対して『ローズマリーは応援してあげるのに、どうして俺には諦めろと言うんです?酷いです!』と睨んでくる始末。
でも側妃としての希望はまだあるローズマリーと、そうでないブランの差は非常に大きい。
とは言え息子の気持ちもわからなくはないし、白い結婚だったら貰い受けるのもアリかなとちょっと思ったのだ。
(まあ結果はダメだったけど)
兎に角ブランが暴走しないよう目を光らせておきたいところではある。
気になるのは鉱山ホテルの件。
数回に渡って視察に行ったかと思ったら、『そろそろ各部屋をリニューアルさせませんか?』と言ってきた。
具体的にはと尋ねたら、そこは今度ディア王女に聞いてみますなんて言う始末。
それを餌にディア王女を釣るつもりなんだろうか?
もう一つ気になるのはブランの隣の部屋を整え始めたこと。
あんなにフラれているのに、絶対にディア王女と結ばれるから準備は万端にするんだといそいそとディア王女が好みそうな家具や壁紙、カーテン、果てはドレスまで用意し始める始末。
正直言ってドン引きだ。
そういうのはちゃんと婚約できてからにしろと言ったけど、『それならルーセウス王子に暗殺者でも送ってください!』と逆ギレされた。
ちょっと情緒不安定っぽいし、心配になって医者にも診せたけど、『恋煩いに出せる薬はない』なんて言われてどうしようもなかった。
取り敢えず今日各国の賓客の前でディア王女がルーセウス王子の婚約者としてわかりやすくお披露目されれば、いくらブランでも諦めがつくだろう。
そう思いながら壇上に勢揃いしたガヴァムの王族達へと目を向ける。
(さて、何が発表されるのかな)
場合によってはブランだけじゃなく、ローズマリーも慰めてやらないといけなくなる。
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