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第二章 側妃問題はそっちのけでイチャつきたい!
42.セレナとディオの手合わせ
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思う存分愛し合った翌日、俺達は午後から鍛錬場へ出て剣を振っていた。
言わずもがなセレナがディオと手合わせしたいと言っていたからだ。
仕事は午前中に終わらせてあるから思う存分打ち合える。
一通り基礎鍛錬をして肩慣らしをし終えたところで手合わせだ。
「ディオ!まずは俺と…」
「先に私ですわ。約束しましたものね?ディオ王子」
セレナが自分が先約だと言ってディオを奪っていく。
「お手柔らかにお願いします」
そう言って手合わせを始める二人。
とは言えこれは中々見応えがあった。
セレナはいつもガタイの良い男達を相手に戦ってきたから、どうしても戦い方が決まってしまっていたのだ。
けれどディオはセレナより少し背が高い程度。且つ細身で、力任せではなく受け流し重視。
動きも軽やかで、ここぞと言う隙を狙ってくる感じだ。
俺と以前手合わせした際はそこに体術も加わっていたが、今回は剣術だけで対応する様子。
セレナはディオとの手合わせが余程楽しかったのか、舌舐めずりするかの如く思いつく限りの剣戟を試し始めた。
「流石兄妹。獲物を見つけた獣って感じで、ソックリですわ」
不意に見学していたディア王女がそんな事を言ってくる。
それは以前俺と打ち合った時のことを思い出してのことだろうか?
「やりがいがある相手と戦ったら、誰だって楽しいだろう?」
「私はそこまで脳筋にはなれないので」
「そう言うものか?」
「ちなみにディオも一緒ですわよ?ディオが得意なのは剣ではなく暗器なのはご存知でしょう?」
「ああ。まあ」
それで戦っているところは見たことはないが、知っているのは知っている。
「ディオは効率重視なので、殺る時は一瞬で終わらせます。楽しむとかそう言うのはなく、お仕事感覚なんです。剣はそう言った意味で体力作りにやっているだけなので、そこに強さや楽しみは求めていないんです」
「ふーん?」
それにしては技術が凄いけどなと思ってしまう。
護身だけの為にはとても見えない卓越した剣技だ。
「……驚かないのですね?」
「何をだ?」
「ディオが人を手にかけたことがあることに」
「??別に珍しくはないだろう?ブルーグレイのルカとは昔からの友人だが、また懲りずに刺客が来たから斬り殺してやったって何度か聞かされたぞ?」
「……あー。ブルーグレイは敵が多そうですものね。なるほど?」
「大国の王子は大変だなって思ったものだ」
「本当に動じませんわね。まあそれならそれで、ディオから離れていくこともなさそうですし、安心できますけれど」
「……もしかしてロクサーヌ嬢はそれもあって、ディオから離れたのか?」
ふと思い尋ねてみると、それは違うと答えが返ってきた。
「ロクサーヌは自分で自分を追い込んでしまっただけだと思いますわ。自分の方が年上だからとディオに甘えることも頼ることもせず、一人で耐えて耐えて…最終的に逃げたんです。恐らく結婚するという話も嘘でしょう」
「え?!」
「彼女は貴方と違って真面な思考回路の持ち主でしたし、あの王宮で長く暮らしたにもかかわらず一切変態に染まることのなかった稀有な方でした。だからこそディオの目には輝いて見えたんだと思います。考えても見てくださいな。王太子が好きだと公言する女性に結婚を申し込む男性がいると思いますか?」
「それは…」
「いないでしょう?どこかの無謀な脳筋王子じゃあるまいし、普通に考えてあり得ない話なんです」
「……どうでも良いが、あからさまに俺を貶すのはやめてもらえないか?流石に酷いぞ?」
「あら。失礼。てっきりご自覚がないのかと思っていましたわ」
ディア王女はたまに辛辣だ。
実は俺のことが嫌いなんじゃないだろうか?
キンッ!
話している途中でどうやら決着がついたようだ。
ディオの剣がセレナの剣を弾き飛ばしていた。
「素晴らしいですわ、ディオ王子!是非この後も続けて手合わせしてください!」
「ありがとうございます。セレナ王女」
「うふふ。ディオ王子にとっては強さの探究というより、心の鍛錬のお時間になってしまいそうですが、プラスに考えていただけたら嬉しいです」
「…セレナ王女にはお見通しみたいですね。でもルーセウスと前向きなところがそっくりです。よかったらもう一手お付き合いいただけますか?それとも反省会をしてから打ち合いますか?」
「反省会?!是非!さっきの打ち合いでディオ王子が綺麗に受け流していた時、二撃目も反応しつつ動いていたでしょう?あの時の体捌きが気になっていて────」
何故かそのまま二人で楽しそうに盛り上がり始める。
こっちに戻ってきてくれればいいのに。
そんなにセレナとの手合わせが気に入ったんだろうかとモヤッとしてしまう。
「お互いにヤキモチを妬きあっていて見ていられませんわ。全く」
ディア王女の呆れた声をスルーして俺はディオを回収しに行こうと思ったのだが、そのタイミングで思いがけない来客の知らせが飛び込んできて、目が丸くなった。
「失礼します!本日この後ミラルカ皇国からブラン皇太子とローズマリー皇女がお見えになるそうです。陛下からルーセウス王子とディア王女に出迎えを頼みたいとのことです!」
どうやら先触れが来たらしい。
一体何をしに来るんだろう?
ローズマリー皇女も一緒というのが非常に気になる。
ディオを追いかけてきたんだろうか?
ディア王女の方を見ると如何にも嫌そうな顔になっているし、もしかしたらディア王女にブラン皇子が会いに来ただけかもしれないが…。
言わずもがなセレナがディオと手合わせしたいと言っていたからだ。
仕事は午前中に終わらせてあるから思う存分打ち合える。
一通り基礎鍛錬をして肩慣らしをし終えたところで手合わせだ。
「ディオ!まずは俺と…」
「先に私ですわ。約束しましたものね?ディオ王子」
セレナが自分が先約だと言ってディオを奪っていく。
「お手柔らかにお願いします」
そう言って手合わせを始める二人。
とは言えこれは中々見応えがあった。
セレナはいつもガタイの良い男達を相手に戦ってきたから、どうしても戦い方が決まってしまっていたのだ。
けれどディオはセレナより少し背が高い程度。且つ細身で、力任せではなく受け流し重視。
動きも軽やかで、ここぞと言う隙を狙ってくる感じだ。
俺と以前手合わせした際はそこに体術も加わっていたが、今回は剣術だけで対応する様子。
セレナはディオとの手合わせが余程楽しかったのか、舌舐めずりするかの如く思いつく限りの剣戟を試し始めた。
「流石兄妹。獲物を見つけた獣って感じで、ソックリですわ」
不意に見学していたディア王女がそんな事を言ってくる。
それは以前俺と打ち合った時のことを思い出してのことだろうか?
「やりがいがある相手と戦ったら、誰だって楽しいだろう?」
「私はそこまで脳筋にはなれないので」
「そう言うものか?」
「ちなみにディオも一緒ですわよ?ディオが得意なのは剣ではなく暗器なのはご存知でしょう?」
「ああ。まあ」
それで戦っているところは見たことはないが、知っているのは知っている。
「ディオは効率重視なので、殺る時は一瞬で終わらせます。楽しむとかそう言うのはなく、お仕事感覚なんです。剣はそう言った意味で体力作りにやっているだけなので、そこに強さや楽しみは求めていないんです」
「ふーん?」
それにしては技術が凄いけどなと思ってしまう。
護身だけの為にはとても見えない卓越した剣技だ。
「……驚かないのですね?」
「何をだ?」
「ディオが人を手にかけたことがあることに」
「??別に珍しくはないだろう?ブルーグレイのルカとは昔からの友人だが、また懲りずに刺客が来たから斬り殺してやったって何度か聞かされたぞ?」
「……あー。ブルーグレイは敵が多そうですものね。なるほど?」
「大国の王子は大変だなって思ったものだ」
「本当に動じませんわね。まあそれならそれで、ディオから離れていくこともなさそうですし、安心できますけれど」
「……もしかしてロクサーヌ嬢はそれもあって、ディオから離れたのか?」
ふと思い尋ねてみると、それは違うと答えが返ってきた。
「ロクサーヌは自分で自分を追い込んでしまっただけだと思いますわ。自分の方が年上だからとディオに甘えることも頼ることもせず、一人で耐えて耐えて…最終的に逃げたんです。恐らく結婚するという話も嘘でしょう」
「え?!」
「彼女は貴方と違って真面な思考回路の持ち主でしたし、あの王宮で長く暮らしたにもかかわらず一切変態に染まることのなかった稀有な方でした。だからこそディオの目には輝いて見えたんだと思います。考えても見てくださいな。王太子が好きだと公言する女性に結婚を申し込む男性がいると思いますか?」
「それは…」
「いないでしょう?どこかの無謀な脳筋王子じゃあるまいし、普通に考えてあり得ない話なんです」
「……どうでも良いが、あからさまに俺を貶すのはやめてもらえないか?流石に酷いぞ?」
「あら。失礼。てっきりご自覚がないのかと思っていましたわ」
ディア王女はたまに辛辣だ。
実は俺のことが嫌いなんじゃないだろうか?
キンッ!
話している途中でどうやら決着がついたようだ。
ディオの剣がセレナの剣を弾き飛ばしていた。
「素晴らしいですわ、ディオ王子!是非この後も続けて手合わせしてください!」
「ありがとうございます。セレナ王女」
「うふふ。ディオ王子にとっては強さの探究というより、心の鍛錬のお時間になってしまいそうですが、プラスに考えていただけたら嬉しいです」
「…セレナ王女にはお見通しみたいですね。でもルーセウスと前向きなところがそっくりです。よかったらもう一手お付き合いいただけますか?それとも反省会をしてから打ち合いますか?」
「反省会?!是非!さっきの打ち合いでディオ王子が綺麗に受け流していた時、二撃目も反応しつつ動いていたでしょう?あの時の体捌きが気になっていて────」
何故かそのまま二人で楽しそうに盛り上がり始める。
こっちに戻ってきてくれればいいのに。
そんなにセレナとの手合わせが気に入ったんだろうかとモヤッとしてしまう。
「お互いにヤキモチを妬きあっていて見ていられませんわ。全く」
ディア王女の呆れた声をスルーして俺はディオを回収しに行こうと思ったのだが、そのタイミングで思いがけない来客の知らせが飛び込んできて、目が丸くなった。
「失礼します!本日この後ミラルカ皇国からブラン皇太子とローズマリー皇女がお見えになるそうです。陛下からルーセウス王子とディア王女に出迎えを頼みたいとのことです!」
どうやら先触れが来たらしい。
一体何をしに来るんだろう?
ローズマリー皇女も一緒というのが非常に気になる。
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