王子の本命~無自覚王太子を捕まえたい〜

オレンジペコ

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第二章 側妃問題はそっちのけでイチャつきたい!

41.※嫉妬が過ぎて

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波乱の晩餐を終え、夜────。

「んっんっ…」

予想外にセレナからも別れを促されてディオは部屋に戻るなり俺に抱きついて、激しく口づけてきた。

「ルーセウス…」

珍しく不安げに瞳を揺らすディオに心揺さぶられる。
さっきはあんなに堂々としていたのに、俺の前だとこんなに弱い一面を見せてくるから庇護欲が湧いてきて、甘やかしてやりたくなった。
俺だけが知ってるディオの素の姿が愛おしい。

「ディオ。大丈夫。大丈夫だ。俺は絶対にディオを手放したりしない」
「うん…わかってる」

そう言いながらも縋り付くように抱きついてくるから可愛すぎる。

「はぁ…今日はちょっと意地悪をしようかと思ってたのに」
「え?」
「皆が俺からディオを取ろうとするのに、ディオは平気そうだったから」

そう言いながら唇を塞いで、顎を持ち上げて口内を余すところなく蹂躙していく。

「あ…はふっ…んんぅ…」

みるみる内に幸せそうに蕩けていく表情を見ながら、俺は心満たされるのを感じた。

「ディオ。すごく嬉しいって顔になってる」
「はっ…あ…。だって、嫉妬してもらえてたんだって思って…」
「いつだって俺は嫉妬しまくりだ。ディオはモテるから」
「…俺なんて、好きな人一人振り向かせられなかったつまらない男だって知ってるだろう?でもルーセウス。俺はそれでもルーセウスだけは手放したくない」

ディオに『手放したくない』と言われて嬉しい気持ちが湧き上がってくる。

「ディオはつまらない男なんかじゃない。少なくとも俺は絶対に手放したくないと思う。だから一緒に幸せになろう?」

ディオを幸せにするのは他の誰でもない。
俺自身だ。

コツンと額を合わせて、柔らかく微笑み合う。

それからベッドへ移動して、服を脱がせあった。
滑らかな白い肌は何度味わっても飽きることがない。
毎日愛し合ってるから、感度も上がってすぐに良い反応が返ってくる。

「ンッ…ふっ…うぅ…」
「ディオ。甘やかしたい気持ちと、焦らしたい気持ちが今日は半々だから、覚悟しろよ?」
「え?」
「全身余すところなく可愛がってから挿れてやる」
「え?!やっ…!それは嫌っ!」
「楽しみだな。どれだけ乱れてくれるのか」
「ルーセウスッ…!」

手を掬い取り、そっとその指を口に含んでチロリと舐めてやると、真っ赤になって恥じらう。
期待が透けて見えて嬉しくなったから、俺は嬉々としてディオを愛し始めた。
ヤダヤダと言いながら身悶えるディオを堪能し、早く挿れてと涙目になる度に宥めて、ここにちょうだいと実力行使で俺を誘惑し始めたディオの媚態を味わいたくなる本能を理性で抑えつけて、たっぷり時間をかけて焦らし切る。

そうしてピクピク甘イキして震えるディオに、問い掛けた。

「ディオ。どの体位で挿れられたい?」
「あ…膝に乗って、抱き締められながら…挿れられた…い」
「わかった」

そう言ってヒョイと抱き上げて座り、膝の上へと跨らせてゆっくりと腰を落とさせ、対面座位で抱き合いながらそのままぴったりと一つになる。

「あっ、あぁ────ッ!」

でもどうやら焦らし過ぎたらしく、ディオは俺に貫かれた瞬間激しく達してしまった。

「あ…あぅ…」
「ディオ?」

(しまった…)

「ディオ。ディオ?」

ダメだ。完落ちして全く起きそうにない。
呆気なく気絶させてしまったディオを前に後悔する。
流石にここで全く意識のないディオを好き勝手に襲うほど俺は鬼畜じゃない。
物凄く残念だが、諦めて寝よう。

でもせめてと思いながら繋がったままディオを俺の上に乗せて横たわる。
この重みと温もりを感じながら眠るのも悪くない。
そう思いながら、煩悩を明後日の方へ追いやりながら眠りについた。

でも…。

「んっ…」

夜中に揺さぶられてる気がして目を覚ましたら、ディオが騎乗位の体勢で俺を見下ろしていて、ツッと指先で唇をなぞられ目を奪われた。

「ディオ?」
「抜いてなかったルーセウスが悪い」

妖艶という言葉がこれほど似合う相手もいないだろう。

「それで寝込みを襲ってたのか?」

思わずクスリと笑ってしまう。

「ルーセウスが焦らしすぎるから気絶したんだろう?しかもその後続きもしてなさそうだったし。墓穴を掘った可哀想な伴侶に尽くしたいと思ったっていいと思う」

どうやら続きをしていいらしい。
俺は愛しさと喜びで胸がいっぱいになりながら、丁寧にディオの身体を愛し尽くした。

「あっんっ…ルーッ、俺が気絶してもっ、犯してい…からっ、許すっから、抱いてほしっ」
「ディオ。嬉しい。愛してる」
「あぁっ!ルーセウス!気持ちいいっ!もっとっ!」

本当に俺の嫁は可愛い。
俺が大好きって言ってるようなこの幸せに蕩け切った表情は何物にも代え難い。

そして何度も何度も口づけを交わし合い、お互いに満足がいくまで抱き合って、幸せいっぱいに眠りについた。


***


【Side.ディオ】

物心ついた頃から、周囲にいる者達が『普通』だと思っていた。
でも子育てアドバイザーとしてアンシャンテからやってきたロクサーヌの母エメラルダ夫人曰く、それは違うとのこと。
だから市井や他国に出て時折ディアと共に『普通』を見聞した。
なるほど。うちは特殊だった。
そしてガヴァムの王宮の中ではエメラルダ夫人一家くらいしか普通と言える人達はいなかった。
それは俺の目にはとても眩しく映って、『温かく安らげる家族っていいな』と思うのにそう時間は掛からなかった。

どれだけ仕事に追われようと、安らげる場所があるというのは素晴らしい事だ。
将来王としての責務がのしかかってくる自分にとって必要不可欠なもの。その見本がまさに目の前にあった。

いつかこんな家庭を築きたい。

別に今の家族が嫌いなわけじゃない。
皆優しいし、大事だと思う。
でも『普通』に対する憧憬の念はずっと心にあった。
だって、この王宮にはどうしようもない変態が溢れかえっていて、そういうものにも段々気づいてしまっていたから。

そんな中、俺はロクサーヌに恋をした。
いつも優しく温かな彼女。
彼女といる時は何も隠さず素の姿でいることができたし、心が満たされるような安心感を覚え彼女の一挙手一投足がキラキラ輝いて見えて、目を奪われてしょうがなかった。

勿論双子の兄妹でもあるディアの前でだって素の姿は出せるけど、それとこれとは別だ。

俺にとっての特別な存在。それがロクサーヌだった。
でもあんなに好意を伝えてきたはずなのに、結局振られてしまった。

今改めて振り返ってみれば、ロクサーヌは一度も俺を頼ってくれたことはなかったように思う。
それは俺が子供だったからかもしれない。

どんなに背伸びして努力しても、5才の年の差は縮まらない。
当時の俺はだからこそ努力して、頼れる姿を見せたかった。

シェリル嬢の件だって、俺に頼って欲しかった。
陰でできる限りの手助けはしたけれど、それ以上のことは本人が訴えてこない限り手は出せない。
ロクサーヌは結局それで疲弊し、俺の元から去ってしまったんだ。

ロクサーヌと比較するとルーセウスは強い。
身体的にもだけど、何より心が強かった。
何度振られても諦めないし、俺に対して劣等感を抱くこともない。
心が柔軟でとても素直だ。
年下の俺にだって普通に頼ってくれるし、なんの含みもなくロクサーヌ以上に笑顔で『ディオはすごい!』と褒めてくれる。

そして何より俺に対して惜しみなく愛情を注いでくれる。
何度も、何度も。
『別れない!』と揺るぎなく言われる度に嬉しくて、ルーセウスだけはずっと自分から離れていかないだろうと信じることができた。

ルーセウスとならどんな困難も乗り越えていける。
いっぱい頼ってもらいたいし、自分も頼りたい。
そうやってすごく前向きになれた。

だから俺は絶対に別れない。
ルーセウスの全部を受け止める。
俺も揺るぎなくルーセウスの隣に立ちたい。
今日はそう思えた一日だった。

なのにルーセウスは何故か今日、焦らしに焦らしてちっとも挿れてくれなかった。
酷い。
早く抱いて欲しかったのに。
待って待って待ち続けて、やっともらえた時には快感が過ぎて気絶してしまった。
泣きたい。
いっぱい愛し合いたかったのに。

でも目が覚めたらちゃんと抱き締めててくれて、しかも何故か入りっぱなしだったんだ。
これは俺と離れ難かったんだと思っていいのかな?
そっと腰を動かしてみるけど、中に出された様子もないし、スムーズに動くような感覚もない。
どうやら俺が気を失った後、ルーセウスは我慢して何もしなかったようだ。

あんなに性欲が強いのに、ちゃんと配慮してくれてるところに胸がキュッと締めつけられてたまらなかった。
大事にしてもらえてる────それが伝わってくる。
そんなルーセウスが愛おしい。

(ちゃんと言っておこう)

別に俺の意識がなくったって、ルーセウスなら好きに抱いてくれていい。
だってきっとそんな時でもルーセウスなら愛情たっぷりに抱いてくれるのは間違いないだろうし。

そう思いながら寝込みを襲ったら、すぐに起きてくれて、怒ることもなく嬉しそうに俺を抱いてくれた。
幸せだ。

皆はルーセウスに問題があるように言うけれど、問題があるとしたら俺自身にだと思う。
ルーセウスを好きになり過ぎて、ディアへの嫉妬がすぐに顔を出してしまうんだから。

(はぁ…こんなつもりじゃ、なかったんだけどな)

ディアが側妃となるのを認めたのは自分だし、嫉妬はしたけど自分が正妃ならそれでいいと割り切っていたはずが、気づけば暴走気味とは情けなさすぎる。

でもだからと言って婚約解消させるわけにもいかないのがなんとも辛いところだったりする。

どうやらこれから必要になるのは、精神修行となりそうだ。




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