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第二章 側妃問題はそっちのけでイチャつきたい!
35.息子が嫁を連れてきた Side.トルセン
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ルーセウスが爆弾発言を口にしてガヴァムへと旅立った。
現在滞在中のルイージ王子は任されたと請け負ったものの、問題は妻だ。
「貴方?ルーセウスの妃、とは?私、聞いてませんけれど?」
ニコリ。微笑む妻が怖い。
とは言えここで黙るのもどうかと思い、半年ほど前にロキ陛下から受け取った手紙と婚姻証明書をマリアンヌへと見せた。
ついでにルーセウスの方からガンガン攻めまくって口説き落とした話もしておいた。
なんだったら出会った初日に手を出して手篭めにしたのもルーセウスだ。
そう言った諸々を正直に話したら、マリアンヌは激怒していた。
「どこに王太子を口説き落とす王太子がいるの?!あのっ脳筋バカ息子!!」
帰ってきたら往復ビンタだと憤る妻が怖過ぎる。
「しかもディア王女は隠れ蓑?!一国の王子と王女を独り占めなんて、あり得ないわ!ガヴァムは歴史ある国なのよ?しかも経済大国なのよ?うちが属国なんかにできるような廃れかけの国とかじゃないのよ?!どうするつもりなのよぉおっ!」
それは、うん。俺も凄く思う。
うちがガヴァムを属国にするなんてどう考えても無理無理。国力的にあり得ない。
逆なら或いはとは思うけど、属国云々は多分考えない方がいい気がする。
この結婚はただの遠距離婚でいいんじゃないだろうか?
ロキ陛下もそんな軽いニュアンスだったし、深く考えたら負けだ。
「俺も譲位を考えた方がいいのかな…」
ルーセウスにちゃんと自分のやらかした責任を取らせるのも親の責務かも?
そう思って呟いたら、妻から全力で止められた。
「待って!早まらないで!現実逃避はしちゃダメよ!絶対に譲位はまだ早いわ!」
と言うわけで、ルーセウスが帰ってきたら家族会議を開くことにして、取り敢えずルイージ王子のもてなしを優先することに。
「ディア王女とルーセウス王子はこの悪天候の中、どちらに?」
「ガヴァムのディオ王子が体調を崩したと聞いて、お見舞いに向かいました。どうやら寝込むほど酷いらしくて」
「なるほど。ディア王女は確かディオ王子と仲の良い双子の兄妹でしたね。きっと人一倍心配でしょう」
ルイージ王子は痛ましげにそう言ってくれるが、どちらかと言うと心配して飛んでったのはうちの息子の方だからなんとも言い難い。
「ディオ王子はもうすぐ戴冠式も控えていますし、心配ですわね。やはり仕事の引き継ぎやら戴冠式の準備等で無理をされているのではないかしら?」
セレナもちょっと心配そうにしている。
「セレナ王女はディオ王子とこの間のパーティーでお話しに?」
「あ、いいえ。この間のパーティーではルイージ王子にしか目がいかなくて、夢中で話しかけている内に気づいたらお姿が消えておりましたわね、確か」
「え?!」
「す、すすす、すみません!なんでもないです!」
何やらセレナが自爆して真っ赤になりながら俯いてしまってる。
これはなんだ?フォローすべきなのか?どうなんだ?
ルイージ王子もそんなセレナに動揺して同じく真っ赤になって口をパクパクしてるし、ある種二人揃って初々しい。
どこかの出会った初日にいきなりガッツいたバカとは大違いだ。
「え…ええと、取り敢えずルイージ王子」
「は、はい?!」
「ええと、セレナは貴方の事がその、気になって仕方がないようなので、もしご迷惑でないのならご一考願えないでしょうか?その、婚約者候補の一人として」
これくらいなら許してもらえるだろうか?
(ロロイア国もガヴァムと同じく歴史ある国なんだよな…。遠方だし)
どうしてこうルーセウスと言いセレナと言い、ある種似た相手を選ぶのか。
本気で胃が痛い。
国内の誰かと結婚してくれればよかったのに。
「そ、そうですか。その…婚約者候補は特にまだいないので、できるだけ前向きに検討はさせていただきます」
その言葉にセレナがパッと顔を輝かせる。
「ほ、本当ですか?!」
「は、はい。その…母は父のことで随分苦労したそうで、一途な方と出会えたらちゃんと相手を見て大事にしてあげなさいと。なので、その、まずはお互いを知るところから始められればと思うのですが…」
「はい!よ、よろしくお願いします!きっとルイージ王子に振り向いていただけるよう、頑張ります!」
なんだかよくわからないがこれは取り敢えず上手くいったと思っていいんだろうか?
婚約というよりはまずはお付き合い、的な?
チラリとマリアンヌの方を見ると力強く頷いてくれたから、もうここは流れに任せよう。
「では、取り敢えず交流を持つということで、よろしくお願いします」
「不束な娘ですが、性根は真っ直ぐなのでダメなところはどんどん言って矯正していただければと思います」
「はい。よろしくお願いします」
よし。上手くまとまった。
これで一安心だ。
そう。普通はこういう初々しい交際が最初だよな?
若しくは婚約の打診が先だ。
間違っても出会ってすぐに身体の関係を持ったり、付き合ってもなくフラれてばかりの相手と一足飛びに結婚なんてしないし、隠れ蓑に妹を婚約者に据えたりしないぞ?
一歩間違えたらただのクズになってしまうじゃないか。
ディオ王子はあんな息子のどこを好きになってくれたんだろう?
なかなか会えないから聞けないけど、実はただ単に押し負けただけなんじゃないかと疑っている。
若しくは渋々しょうがなく付き合ってくれてるか。
(戴冠前の忙しい時期に煩わしいことは避けたいだろうしな)
ちょっとディオ王子が可哀想になってきた。
やっぱりしっかり家族会議を開いて、どうするつもりなのかルーセウスにちゃんと聞いておこう。
***
「…で、なんでお前は嫁を連れ帰ってきてるんだ?!見舞いに行ったはずだろ?!」
ルイージ王子をブルーグレイへと送り出し、ホッとしたのも束の間。
まさかまさかでルーセウスがディオ王子を連れて帰ってきた。
「この、バカ息子!!」
バシィッ!バチーン!
満面の笑みで『ただいま!ディオを連れて来た!』なんて言って帰ってくるからマリアンヌの怒りが頂点に達して、思い切り平手打ち…いや往復ビンタが炸裂。
しかも両手を使った本気の往復ビンタだ。
自業自得とは言え、これは痛い。
「ル、ルーセウス?!」
「だ、大丈夫だ、ディオ。えっと…多分病み上がりのお前を連れてきたせいだと思う」
そこをちゃんと把握できてるならなんで連れてきたのか。
そう思っていたら、スッとディオ王子が居住まいを正し、俺とマリアンヌに礼をとった。
「両陛下にご挨拶させていただきます。ディオ=ハイルング=ヴァドラシアです。ご挨拶が遅れ大変申し訳ございません。本日は父の許可を得て結婚のご挨拶にまかり越しました。誤解を与えてしまい、深くお詫び申し上げます」
どうやらルーセウスが攫ってきたわけじゃなく、ロキ陛下の許可の元、挨拶に来てくれただけらしい。
ルーセウスはとばっちりで往復ビンタを食らったわけだが…日頃の行いが悪いからしょうがない。
ちょっとここらで自分の行動を振り返ってくれるといいんだが。
「まあまあまあ!ディオ王子は本当にできた方ですわ!本当にうちの愚息とは大違い!こんな息子、嫌になったらいつでも捨ててやってくださいね?」
オホホと誤魔化し半分に笑うマリアンヌ。
いや。まあ確かにそもそも不釣り合いだからしょうがないんだが…言ってることは酷いな?!
(ルーセウスも一応頑張ってくれてるんだけどな)
単に諸々手探りだから色々不足しているだけなんだが…。
(比べてやったら可哀想だぞ?)
そう思っていたら…。
「ルーセウス王子にはいつも支えてもらっているので、捨てるだなんてそんな勿体無いことはできません。王太子妃として認めていただけるよう頑張りますので、どうぞ宜しくお願いします」
笑顔でフォローするディオ王子は嫁の鑑だった。
(うわぁ…うちには勿体ない嫁が来た)
ルーセウスには本当に勿体なさ過ぎる。
ディア王女もそうだけど、ディオ王子はキラッキラしてる。
ルーセウスが惚れるのもわかる気がする。
夫をちゃんと立てる妻って感じ。男だけど。
「あー…、一先ず部屋に案内するから、まずはゆっくりしてもらって…」
病み上がりでの遠距離移動で疲れただろうしとそう促したら、ルーセウスの仕事が溜まっているのではないかと心配され、荷物を置いたら執務室に行きたいと言われた。
「こちらに見舞いに来てもらったせいで仕事が滞ってしまって申し訳ないので、晩餐までに片付けられるだけ片付けられればと思います。王太子妃として、できる範囲でお手伝いさせていただいても構わないでしょうか?」
そう言われ、ちょっと考えてみる。
婚約者ならダメだろうけど、ディオ王子はガヴァムの王太子ではあるが、ちゃんと籍も入ってるルーセウスの妃だ。
線引きもちゃんとしてくれそうな気もするし、試しに任せてみてもいいかもしれない。
多分ルーセウスにとっても良い勉強になるんじゃないだろうか?
「わかった。じゃあ頼もうか」
やらせてみて問題がありそうなら対処しよう。
そう思ったのに…晩餐までに仕事はサクサク片付けるわ、ルーセウスの仕事の理解度を上げつつ知識の底上げ、補佐も完璧だわ、滞ってる案件の改善案の提出もしてくれるし、その上計算ミスまでチェック済みだと?!
いくらなんでも凄過ぎないか?!
「あ、この資料もよかったら活用してください。周辺各国の動きをまとめたものになります。色々読み取れるので便利ですよ。例えば───」
取り敢えず終わったところまで報告に来ましたと言い、そのまま国益貢献の情報提供に、不穏な動きがある国の指摘、今後考えられる問題点等々色々教えてくれたんだが?!
「優秀過ぎる!ルーセウスっ!お前、自分の足りてないところを全部補ってくれるスペシャルな嫁を見つけてきたのか?そうなのか?!」
「え?そう言うのは全然考えてなかったけど?」
単に本気で惚れただけだと惚気られるその精神がすごい。
マリアンヌじゃないけど、息子のどこが良かったんだと言いたくなる。
無理して付き合ってくれてる様子でもないのがせめてもの救いだ。
(やっぱり家族会議は必須だな)
晩餐後はディオ王子には部屋で休んでもらって、ルーセウスは呼び出しだ!
現在滞在中のルイージ王子は任されたと請け負ったものの、問題は妻だ。
「貴方?ルーセウスの妃、とは?私、聞いてませんけれど?」
ニコリ。微笑む妻が怖い。
とは言えここで黙るのもどうかと思い、半年ほど前にロキ陛下から受け取った手紙と婚姻証明書をマリアンヌへと見せた。
ついでにルーセウスの方からガンガン攻めまくって口説き落とした話もしておいた。
なんだったら出会った初日に手を出して手篭めにしたのもルーセウスだ。
そう言った諸々を正直に話したら、マリアンヌは激怒していた。
「どこに王太子を口説き落とす王太子がいるの?!あのっ脳筋バカ息子!!」
帰ってきたら往復ビンタだと憤る妻が怖過ぎる。
「しかもディア王女は隠れ蓑?!一国の王子と王女を独り占めなんて、あり得ないわ!ガヴァムは歴史ある国なのよ?しかも経済大国なのよ?うちが属国なんかにできるような廃れかけの国とかじゃないのよ?!どうするつもりなのよぉおっ!」
それは、うん。俺も凄く思う。
うちがガヴァムを属国にするなんてどう考えても無理無理。国力的にあり得ない。
逆なら或いはとは思うけど、属国云々は多分考えない方がいい気がする。
この結婚はただの遠距離婚でいいんじゃないだろうか?
ロキ陛下もそんな軽いニュアンスだったし、深く考えたら負けだ。
「俺も譲位を考えた方がいいのかな…」
ルーセウスにちゃんと自分のやらかした責任を取らせるのも親の責務かも?
そう思って呟いたら、妻から全力で止められた。
「待って!早まらないで!現実逃避はしちゃダメよ!絶対に譲位はまだ早いわ!」
と言うわけで、ルーセウスが帰ってきたら家族会議を開くことにして、取り敢えずルイージ王子のもてなしを優先することに。
「ディア王女とルーセウス王子はこの悪天候の中、どちらに?」
「ガヴァムのディオ王子が体調を崩したと聞いて、お見舞いに向かいました。どうやら寝込むほど酷いらしくて」
「なるほど。ディア王女は確かディオ王子と仲の良い双子の兄妹でしたね。きっと人一倍心配でしょう」
ルイージ王子は痛ましげにそう言ってくれるが、どちらかと言うと心配して飛んでったのはうちの息子の方だからなんとも言い難い。
「ディオ王子はもうすぐ戴冠式も控えていますし、心配ですわね。やはり仕事の引き継ぎやら戴冠式の準備等で無理をされているのではないかしら?」
セレナもちょっと心配そうにしている。
「セレナ王女はディオ王子とこの間のパーティーでお話しに?」
「あ、いいえ。この間のパーティーではルイージ王子にしか目がいかなくて、夢中で話しかけている内に気づいたらお姿が消えておりましたわね、確か」
「え?!」
「す、すすす、すみません!なんでもないです!」
何やらセレナが自爆して真っ赤になりながら俯いてしまってる。
これはなんだ?フォローすべきなのか?どうなんだ?
ルイージ王子もそんなセレナに動揺して同じく真っ赤になって口をパクパクしてるし、ある種二人揃って初々しい。
どこかの出会った初日にいきなりガッツいたバカとは大違いだ。
「え…ええと、取り敢えずルイージ王子」
「は、はい?!」
「ええと、セレナは貴方の事がその、気になって仕方がないようなので、もしご迷惑でないのならご一考願えないでしょうか?その、婚約者候補の一人として」
これくらいなら許してもらえるだろうか?
(ロロイア国もガヴァムと同じく歴史ある国なんだよな…。遠方だし)
どうしてこうルーセウスと言いセレナと言い、ある種似た相手を選ぶのか。
本気で胃が痛い。
国内の誰かと結婚してくれればよかったのに。
「そ、そうですか。その…婚約者候補は特にまだいないので、できるだけ前向きに検討はさせていただきます」
その言葉にセレナがパッと顔を輝かせる。
「ほ、本当ですか?!」
「は、はい。その…母は父のことで随分苦労したそうで、一途な方と出会えたらちゃんと相手を見て大事にしてあげなさいと。なので、その、まずはお互いを知るところから始められればと思うのですが…」
「はい!よ、よろしくお願いします!きっとルイージ王子に振り向いていただけるよう、頑張ります!」
なんだかよくわからないがこれは取り敢えず上手くいったと思っていいんだろうか?
婚約というよりはまずはお付き合い、的な?
チラリとマリアンヌの方を見ると力強く頷いてくれたから、もうここは流れに任せよう。
「では、取り敢えず交流を持つということで、よろしくお願いします」
「不束な娘ですが、性根は真っ直ぐなのでダメなところはどんどん言って矯正していただければと思います」
「はい。よろしくお願いします」
よし。上手くまとまった。
これで一安心だ。
そう。普通はこういう初々しい交際が最初だよな?
若しくは婚約の打診が先だ。
間違っても出会ってすぐに身体の関係を持ったり、付き合ってもなくフラれてばかりの相手と一足飛びに結婚なんてしないし、隠れ蓑に妹を婚約者に据えたりしないぞ?
一歩間違えたらただのクズになってしまうじゃないか。
ディオ王子はあんな息子のどこを好きになってくれたんだろう?
なかなか会えないから聞けないけど、実はただ単に押し負けただけなんじゃないかと疑っている。
若しくは渋々しょうがなく付き合ってくれてるか。
(戴冠前の忙しい時期に煩わしいことは避けたいだろうしな)
ちょっとディオ王子が可哀想になってきた。
やっぱりしっかり家族会議を開いて、どうするつもりなのかルーセウスにちゃんと聞いておこう。
***
「…で、なんでお前は嫁を連れ帰ってきてるんだ?!見舞いに行ったはずだろ?!」
ルイージ王子をブルーグレイへと送り出し、ホッとしたのも束の間。
まさかまさかでルーセウスがディオ王子を連れて帰ってきた。
「この、バカ息子!!」
バシィッ!バチーン!
満面の笑みで『ただいま!ディオを連れて来た!』なんて言って帰ってくるからマリアンヌの怒りが頂点に達して、思い切り平手打ち…いや往復ビンタが炸裂。
しかも両手を使った本気の往復ビンタだ。
自業自得とは言え、これは痛い。
「ル、ルーセウス?!」
「だ、大丈夫だ、ディオ。えっと…多分病み上がりのお前を連れてきたせいだと思う」
そこをちゃんと把握できてるならなんで連れてきたのか。
そう思っていたら、スッとディオ王子が居住まいを正し、俺とマリアンヌに礼をとった。
「両陛下にご挨拶させていただきます。ディオ=ハイルング=ヴァドラシアです。ご挨拶が遅れ大変申し訳ございません。本日は父の許可を得て結婚のご挨拶にまかり越しました。誤解を与えてしまい、深くお詫び申し上げます」
どうやらルーセウスが攫ってきたわけじゃなく、ロキ陛下の許可の元、挨拶に来てくれただけらしい。
ルーセウスはとばっちりで往復ビンタを食らったわけだが…日頃の行いが悪いからしょうがない。
ちょっとここらで自分の行動を振り返ってくれるといいんだが。
「まあまあまあ!ディオ王子は本当にできた方ですわ!本当にうちの愚息とは大違い!こんな息子、嫌になったらいつでも捨ててやってくださいね?」
オホホと誤魔化し半分に笑うマリアンヌ。
いや。まあ確かにそもそも不釣り合いだからしょうがないんだが…言ってることは酷いな?!
(ルーセウスも一応頑張ってくれてるんだけどな)
単に諸々手探りだから色々不足しているだけなんだが…。
(比べてやったら可哀想だぞ?)
そう思っていたら…。
「ルーセウス王子にはいつも支えてもらっているので、捨てるだなんてそんな勿体無いことはできません。王太子妃として認めていただけるよう頑張りますので、どうぞ宜しくお願いします」
笑顔でフォローするディオ王子は嫁の鑑だった。
(うわぁ…うちには勿体ない嫁が来た)
ルーセウスには本当に勿体なさ過ぎる。
ディア王女もそうだけど、ディオ王子はキラッキラしてる。
ルーセウスが惚れるのもわかる気がする。
夫をちゃんと立てる妻って感じ。男だけど。
「あー…、一先ず部屋に案内するから、まずはゆっくりしてもらって…」
病み上がりでの遠距離移動で疲れただろうしとそう促したら、ルーセウスの仕事が溜まっているのではないかと心配され、荷物を置いたら執務室に行きたいと言われた。
「こちらに見舞いに来てもらったせいで仕事が滞ってしまって申し訳ないので、晩餐までに片付けられるだけ片付けられればと思います。王太子妃として、できる範囲でお手伝いさせていただいても構わないでしょうか?」
そう言われ、ちょっと考えてみる。
婚約者ならダメだろうけど、ディオ王子はガヴァムの王太子ではあるが、ちゃんと籍も入ってるルーセウスの妃だ。
線引きもちゃんとしてくれそうな気もするし、試しに任せてみてもいいかもしれない。
多分ルーセウスにとっても良い勉強になるんじゃないだろうか?
「わかった。じゃあ頼もうか」
やらせてみて問題がありそうなら対処しよう。
そう思ったのに…晩餐までに仕事はサクサク片付けるわ、ルーセウスの仕事の理解度を上げつつ知識の底上げ、補佐も完璧だわ、滞ってる案件の改善案の提出もしてくれるし、その上計算ミスまでチェック済みだと?!
いくらなんでも凄過ぎないか?!
「あ、この資料もよかったら活用してください。周辺各国の動きをまとめたものになります。色々読み取れるので便利ですよ。例えば───」
取り敢えず終わったところまで報告に来ましたと言い、そのまま国益貢献の情報提供に、不穏な動きがある国の指摘、今後考えられる問題点等々色々教えてくれたんだが?!
「優秀過ぎる!ルーセウスっ!お前、自分の足りてないところを全部補ってくれるスペシャルな嫁を見つけてきたのか?そうなのか?!」
「え?そう言うのは全然考えてなかったけど?」
単に本気で惚れただけだと惚気られるその精神がすごい。
マリアンヌじゃないけど、息子のどこが良かったんだと言いたくなる。
無理して付き合ってくれてる様子でもないのがせめてもの救いだ。
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