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第二章 側妃問題はそっちのけでイチャつきたい!
31.帰国の同行者は…
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ディオが元気になった。
それはすごく良かったのだけど────。
「ディオ。元気になって良かった」
「ご心配をお掛けしてすみませんでした」
「すっかり元気になったし、これ以上ルーセウス王子をここに引き留めてはダメだぞ?王太子の仕事を置いて駆けつけてくれたようだからな」
ガヴァムの王族一同が揃う朝食の席でカリン陛下にそう言われて、俺は慌てて口を開いた。
「いえ、大丈夫で────」
「いや。忙しいに決まっている。置いてきた仕事だけではなく、ディアから聞いたが暗部の仕事を担う部署も作るのだろう?それにこちらの騎士の更生にも有り難い申し出をしてくれたそうじゃないか。どちらもルーセウス王子の発案だ。トルセン陛下にも早めに話して計画を立てるべきだ。こちらもできる限り力添えをするから安心して取り組んでほしい」
「あ、ありがとうございます?」
カリン陛下の笑顔の圧が怖い。
言ってる内容はその通りなんだが、さっさと帰れと言われている気がしてならない。
恐らく俺が連日ディオの部屋に泊まってるのを知り気に入らないのだろうけど、なかなか会えない仲なのだし、ちょっとくらい大目に見てくれないだろうか?
「兄上。そんなにルーセウス王子を帰そう帰そうとしないでください。大人気ないですよ?」
「なっ?!」
困っていると、有り難い事にロキ陛下が間に入ってくれた。
「ロキ!そうは言ってもディオは病人だったんだぞ?!そこに連泊するなんてあまりにも不謹慎だ!」
「主に添い寝に決まってるでしょう?ディオ。そうだよね」
「ええ。主に添い寝です」
主に添い寝?
ま、まあそうなの…か?
初日は本当に添い寝だったし、昨夜は短時間で終わらせて後は添い寝だ。
うん。概ね間違ってはいない。
「ほら。何も問題ないじゃないですか」
「そんなわけがあるか!わかってて言ってるだろう?!」
「癒しでちょっとイチャつくくらい別にいいでしょう?煩い親は嫌われますよ?」
「……っ!」
見事にロキ陛下はカリン陛下を丸め込んだ。
しかもそのまま話を丸っと替えてしまう。
「そうだ、ディオ。ディアがゴッドハルトに戻るのにヴァレトミュラでの移動を希望してるんだ」
「え?」
「でもルーセウス王子が乗ってきたワイバーンをこっちに置いたままにはできないだろう?悪いんだけど、ディアの代わりに護衛を兼ねてディオがワイバーンに同乗してルーセウス王子をゴッドハルトまで送っていってくれないか?」
ロキ陛下からの思いがけないその言葉に、俺達は揃って目を丸くしてしまった。
「ディア?」
「だって本当に有り得ないアクロバティックな飛び方をされたのよ?!吐く!次は絶対に吐くわ!」
ディオの窺う眼差しにディア王女が噛み付くように答える。
断固拒否と言った様子でディア王女に同乗拒否されて、そんなに酷かっただろうかと思い返すが自分ではよくわからない。
とは言えそこまで怖がらせてしまったのなら申し訳なかった。
「まあそういうわけだから頼むよ。ついでに騎士達も数人連れて行って、合同鍛錬…だっけ?その話もしてきてくれないか?ディオなら交渉は得意だし、ちょうどいい」
「わかりました」
「ああ、トルセン陛下にもよろしく。ほら、お互い忙しくてまだ挨拶ができてないだろう?手紙でしかやり取りしてないからちょっと気になってたんだ。ディオが直接挨拶してきてくれると嬉しいな」
「確かに。そういう事なら是非行かせていただきます」
「頼んだよ」
ロキ陛下はどうやらディオに結婚の挨拶の機会を作ってくれたらしい。
確かに結婚したにも関わらず、俺だけ一方的にガヴァム側に挨拶済みでディオはできていない。
一部にしかバレていない極秘結婚だから仕方がない一面はあるものの、ロキ陛下も気を遣ってくれたんだろう。
怖い面もあるけどこうして優しく頼りになる面もあるから、俺の中でロキ陛下の好感度は上がる事はあっても下がる事はない。
(ディオと一緒にゴッドハルトに帰れる…!)
ずっと抱き締めて空が飛べるなんて幸せ過ぎるだろう。
なのにカリン陛下はそんな俺の希望を砕こうとしてきた。
「ロキ。ディオは病み上がりだ。元気なディアが慄くほど酷い飛び方をされて、また体調を崩したらどうする?ズルズル準備が遅れて戴冠式に支障が出ればお前が困るだけだぞ?」
優しく飛ぶ!怖がらせたりしない!だから許可を!と訴えようとしたけれど、その前にロキ陛下が返事を返してしまう。
「確かに。でも挨拶は大事ですし…。そうだ!兄上。それなら俺と兄上で挨拶に行きませんか?久し振りにワイバーンで兄上に抱きつかれながら飛びたいです」
ダメだ!
その場合ディオは留守番になるって事だ。
(俺の幸せ計画が…!)
「ロキ陛下。今の時期、ゴッドハルトの天候は荒れやすいので、不慣れならお勧めできませんよ?」
「そう?ついでにゴッドハルト経由でブルーグレイに遊びに行ってもいいかと思ったんだけど」
「ヒィッ!」
そう言えばロキ陛下はセドリック王子と仲が良いんだったか?
でもさっきから何故かカリン陛下が怯えまくってるけど、それは気にしないんだろうか?
(ワイバーンが苦手なのか?それともセドリック王子?)
気にはなるものの、そこに踏み込むのは憚られる。
「ブルーグレイに行くならゴッドハルト経由じゃなくレイフォン経由で向かった方が飛びやすいですよ?多分」
あちらの方が風は荒れにくく飛びやすいと聞いたことがあった。
「なるほど。だからレオはいつもそっちで行ってたのかな?」
どうやらロキ陛下はミラルカのレオナルド皇王とブルーグレイに何度か行ったことがあるらしい。
「ロキ!お、俺は行かない!どうしても行くならヴァレトミュラでゴッドハルトにだけ行く!」
カリン陛下はブルーグレイには行きたくないようで、かなり必死だ。
「それだと本末転倒じゃないですか」
『それならやっぱりディオが適役ですよ』と話をまとめ、上手い具合に俺とディオが旅立てるように話を持って行ってくれた。
「じゃあ荷物をまとめ次第出発できるよう手配しておくから、気をつけて」
「ありがとうございます」
「ディアはヴァレトミュラだし、騎士達はそっち経由でゴッドハルトに送るよ。天候が荒れる可能性が高いならその方がいいだろう?その代わりディオは何がなんでも守ってあげてほしい」
「当然です」
俺の護衛名目での同乗だけど、実質嫁は自分で守れよと言われ、俺は力強く頷く。
ディオと二人旅なんて嬉し過ぎる。
急いで帰らずちょっとゆっくり帰ろうかな?
どうせ国に帰ったらなんだかんだと邪魔が入って、思うようにイチャイチャできないだろうし。
でも仕事も溜まっているなら迷惑かもしれない。
できたとしても休憩に寄る街でデートくらいだろうか?
後でディオに相談してみよう。
それはすごく良かったのだけど────。
「ディオ。元気になって良かった」
「ご心配をお掛けしてすみませんでした」
「すっかり元気になったし、これ以上ルーセウス王子をここに引き留めてはダメだぞ?王太子の仕事を置いて駆けつけてくれたようだからな」
ガヴァムの王族一同が揃う朝食の席でカリン陛下にそう言われて、俺は慌てて口を開いた。
「いえ、大丈夫で────」
「いや。忙しいに決まっている。置いてきた仕事だけではなく、ディアから聞いたが暗部の仕事を担う部署も作るのだろう?それにこちらの騎士の更生にも有り難い申し出をしてくれたそうじゃないか。どちらもルーセウス王子の発案だ。トルセン陛下にも早めに話して計画を立てるべきだ。こちらもできる限り力添えをするから安心して取り組んでほしい」
「あ、ありがとうございます?」
カリン陛下の笑顔の圧が怖い。
言ってる内容はその通りなんだが、さっさと帰れと言われている気がしてならない。
恐らく俺が連日ディオの部屋に泊まってるのを知り気に入らないのだろうけど、なかなか会えない仲なのだし、ちょっとくらい大目に見てくれないだろうか?
「兄上。そんなにルーセウス王子を帰そう帰そうとしないでください。大人気ないですよ?」
「なっ?!」
困っていると、有り難い事にロキ陛下が間に入ってくれた。
「ロキ!そうは言ってもディオは病人だったんだぞ?!そこに連泊するなんてあまりにも不謹慎だ!」
「主に添い寝に決まってるでしょう?ディオ。そうだよね」
「ええ。主に添い寝です」
主に添い寝?
ま、まあそうなの…か?
初日は本当に添い寝だったし、昨夜は短時間で終わらせて後は添い寝だ。
うん。概ね間違ってはいない。
「ほら。何も問題ないじゃないですか」
「そんなわけがあるか!わかってて言ってるだろう?!」
「癒しでちょっとイチャつくくらい別にいいでしょう?煩い親は嫌われますよ?」
「……っ!」
見事にロキ陛下はカリン陛下を丸め込んだ。
しかもそのまま話を丸っと替えてしまう。
「そうだ、ディオ。ディアがゴッドハルトに戻るのにヴァレトミュラでの移動を希望してるんだ」
「え?」
「でもルーセウス王子が乗ってきたワイバーンをこっちに置いたままにはできないだろう?悪いんだけど、ディアの代わりに護衛を兼ねてディオがワイバーンに同乗してルーセウス王子をゴッドハルトまで送っていってくれないか?」
ロキ陛下からの思いがけないその言葉に、俺達は揃って目を丸くしてしまった。
「ディア?」
「だって本当に有り得ないアクロバティックな飛び方をされたのよ?!吐く!次は絶対に吐くわ!」
ディオの窺う眼差しにディア王女が噛み付くように答える。
断固拒否と言った様子でディア王女に同乗拒否されて、そんなに酷かっただろうかと思い返すが自分ではよくわからない。
とは言えそこまで怖がらせてしまったのなら申し訳なかった。
「まあそういうわけだから頼むよ。ついでに騎士達も数人連れて行って、合同鍛錬…だっけ?その話もしてきてくれないか?ディオなら交渉は得意だし、ちょうどいい」
「わかりました」
「ああ、トルセン陛下にもよろしく。ほら、お互い忙しくてまだ挨拶ができてないだろう?手紙でしかやり取りしてないからちょっと気になってたんだ。ディオが直接挨拶してきてくれると嬉しいな」
「確かに。そういう事なら是非行かせていただきます」
「頼んだよ」
ロキ陛下はどうやらディオに結婚の挨拶の機会を作ってくれたらしい。
確かに結婚したにも関わらず、俺だけ一方的にガヴァム側に挨拶済みでディオはできていない。
一部にしかバレていない極秘結婚だから仕方がない一面はあるものの、ロキ陛下も気を遣ってくれたんだろう。
怖い面もあるけどこうして優しく頼りになる面もあるから、俺の中でロキ陛下の好感度は上がる事はあっても下がる事はない。
(ディオと一緒にゴッドハルトに帰れる…!)
ずっと抱き締めて空が飛べるなんて幸せ過ぎるだろう。
なのにカリン陛下はそんな俺の希望を砕こうとしてきた。
「ロキ。ディオは病み上がりだ。元気なディアが慄くほど酷い飛び方をされて、また体調を崩したらどうする?ズルズル準備が遅れて戴冠式に支障が出ればお前が困るだけだぞ?」
優しく飛ぶ!怖がらせたりしない!だから許可を!と訴えようとしたけれど、その前にロキ陛下が返事を返してしまう。
「確かに。でも挨拶は大事ですし…。そうだ!兄上。それなら俺と兄上で挨拶に行きませんか?久し振りにワイバーンで兄上に抱きつかれながら飛びたいです」
ダメだ!
その場合ディオは留守番になるって事だ。
(俺の幸せ計画が…!)
「ロキ陛下。今の時期、ゴッドハルトの天候は荒れやすいので、不慣れならお勧めできませんよ?」
「そう?ついでにゴッドハルト経由でブルーグレイに遊びに行ってもいいかと思ったんだけど」
「ヒィッ!」
そう言えばロキ陛下はセドリック王子と仲が良いんだったか?
でもさっきから何故かカリン陛下が怯えまくってるけど、それは気にしないんだろうか?
(ワイバーンが苦手なのか?それともセドリック王子?)
気にはなるものの、そこに踏み込むのは憚られる。
「ブルーグレイに行くならゴッドハルト経由じゃなくレイフォン経由で向かった方が飛びやすいですよ?多分」
あちらの方が風は荒れにくく飛びやすいと聞いたことがあった。
「なるほど。だからレオはいつもそっちで行ってたのかな?」
どうやらロキ陛下はミラルカのレオナルド皇王とブルーグレイに何度か行ったことがあるらしい。
「ロキ!お、俺は行かない!どうしても行くならヴァレトミュラでゴッドハルトにだけ行く!」
カリン陛下はブルーグレイには行きたくないようで、かなり必死だ。
「それだと本末転倒じゃないですか」
『それならやっぱりディオが適役ですよ』と話をまとめ、上手い具合に俺とディオが旅立てるように話を持って行ってくれた。
「じゃあ荷物をまとめ次第出発できるよう手配しておくから、気をつけて」
「ありがとうございます」
「ディアはヴァレトミュラだし、騎士達はそっち経由でゴッドハルトに送るよ。天候が荒れる可能性が高いならその方がいいだろう?その代わりディオは何がなんでも守ってあげてほしい」
「当然です」
俺の護衛名目での同乗だけど、実質嫁は自分で守れよと言われ、俺は力強く頷く。
ディオと二人旅なんて嬉し過ぎる。
急いで帰らずちょっとゆっくり帰ろうかな?
どうせ国に帰ったらなんだかんだと邪魔が入って、思うようにイチャイチャできないだろうし。
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