王子の本命~無自覚王太子を捕まえたい〜

オレンジペコ

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第二章 側妃問題はそっちのけでイチャつきたい!

26.見舞い客達

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ディオと話していると時間はあっという間に過ぎていく。
昼食も食べさせ合っていたら、もうヴィオレッタ王女達が見舞いに来る時間になってしまった。

「俺も同席しようか?」
「嬉しいけど、ルーセウスばっかり見てしまいそうだから、ディアとお茶でもしててくれ。暇なら鍛錬場も使ってくれていいから」
「…わかった」

正直同席したい気持ちでいっぱいだが、ここは仕方がない。
我慢だ。

「無理はしないように」

そう言ってチュッと額にキスを落としてから俺は部屋を出る。
外に控えていた侍従にディア王女はどこか尋ねると、案内してもらえたが、そこにはこれからディオが会う予定の三人が勢揃いしていた。

皆見舞いという事で控えめな装いで、それぞれ花を持っている。
最大限ディオを気遣いつつ、好印象を持ってもらおうと努力しているのが一目でわかった。
花の一輪も用意せずやってきた俺とは大違いだ。

「あらルーセウス王子。お見舞いはお済みですか?」

にこやかにディア王女が話しかけてくれて、どうやら俺が『今日』見舞いに来たと印象付けてくれた様子。
確かにここはそうしておいた方が無難かもしれないと笑顔で話を引き取ることに。
下手な事は言わないように気をつけながら済ませよう。

「ああ。顔色も思った以上に良さそうで安心した」
「そうですか。良かったですわ。私は彼女達を案内してきますから、テラスでお待ちいただけますか?その後鍛錬場などお好きな場所へご案内致しますね」
「ああ、ありがとう」

そしてゾロゾロとディオの元へ向かうディア王女達を見送り、俺は案内されるままテラスへと向かった。


***


【Side.ディオ】

ルーセウスの背を見送り暫くするとコンコンというノックが聞こえ、ディアが王女達を引き連れやってきた。

「ディオ王子。お加減はいかがですか?」
「心配致しました」
「お花をお持ち致しましたので、どうぞひと時の心の安らぎにして下さいませ」

口々に見舞いの言葉を掛けてくれる彼女達に笑みをもって礼を言う。

「ありがとう。綺麗な花に癒されてすぐに元気になれそうだ」

まあその前にルーセウスに沢山癒してもらえたから、だいぶ元気になれたというのはある。

「顔色も良さそうで安心致しましたわ」
「昨夜は薬も効いてぐっすり眠れたから」
「もしやディア王女が処方を?」
「いや。暗部が闇医者のところでもらってきてくれたんだ」
「それなら納得ですわ。王宮医が処方するものより断然効きが良いといつもロキ陛下が仰っておりますもの」

にこやかにヴィオレッタ王女始め他の二人も話に加わってくる。
このまま穏便に見舞いを終えて帰ってほしい。
そう思いはするものの、やはりそう簡単に事は運ばなかった。

「ディオ様。お父様にもお話ししたのですが、滞在を前倒しにして、手厚く看病致したく思っておりますの。いつもお忙しいディオ様と交流できる貴重な時間ですし、構いませんわよね?」
「ローズマリー皇女…」
「なっ?!ズルいですわ!それなら私も是非ディオ様のお世話をさせていただきます!まさかローズマリー皇女にだけお許しにはなりませんわよね?!」
「シェリル公爵令嬢…」

やっぱり思った通りの展開になった。
うんざりだ。
チラリとヴィオレッタ王女へと視線を向けると、彼女は心得たとばかりににこりと微笑み、言い争いをする二人の間へと入ってくれる。

「お二人とも、どうぞ落ち着いてくださいな。病み上がりなのにディオ様がお可哀想ですわ。ねぇ?ディオ様」
「ああ。二人共騒ぐなら外に出てくれないか?後はディアとヴィオレッタ王女に頼むから」

その方が気が楽だから追い出しにかかったのだけど、二人は引き下がらない。

「ディオ様。ディア王女はルーセウス王子とテラスで待ち合わせをしておりました。引き止めてはお可哀想ですわ」
「ええ。鍛錬場へ案内するとここに来る前に仰られているのを私も聞きましたわ。婚約者同士の時間を奪うくらいなら是非私をお頼りください!」

それを聞いてそれならさっさと解放してもらって、夫婦の時間が欲しいと思ったけど、グッと気持ちを押し込めディアへと目を向ける。
もうここはディアに引率を任せて丸投げしよう。
これじゃあちっとも休まらないし、また熱でもぶり返してルーセウスに心配を掛けたくはない。

「ディア。ルーセウスと鍛錬場に行くなら是非手合わせに付き合ってあげてほしい。それと、ローズマリー皇女はここの変態に耐性があるところを示したくて滞在を希望しているんだ。ついでにシェリル公爵令嬢と一緒に鍛錬場に連れて行って、二人にどれくらい耐性があるか判断してきてくれないかな?勿論一人で大変だったらヴィオレッタ王女に手伝ってもらって構わないから、後で報告だけくれないか?疲れたから休みたいんだ」

俺の言葉にちょっと嫌そうな顔はされたけど、俺が病み上がりなのもわかっているから条件付きで引き受けてくれる。

「…………髪飾り」
「魔道具仕様でどう?」
「…武器仕込みの方がいいわ」
「いくつか持って来させる」

面倒事を引き受けてくれるんだから、いくらでも好きな物を買ってあげよう。

ワイヤーが仕込まれたやつなんてどうだろう?
結構使えそうな気がする。
折りたたみナイフみたいなのもアリだし、針を数本仕込めるのを追加で買ってもいい。
デザインも豊富だし、選び甲斐はある。

「ヴィオレッタ王女にも一つ贈らせてもらうよ」

面倒ごとに巻き込んだお詫びにと暗に言えば、彼女は笑顔で報酬を口にした。

「ありがとうございます。私、どうせいただけるのでしたらブルーグレイ製の録音機能付きネックレスが嬉しいですわ。可愛いデザインが多いらしいんです」
「じゃあそれも手配しておく」

嬉しそうに微笑むヴィオレッタ王女。
これくらいで厄介事を引き受けてくれるのだから有り難い限りだ。

他の二人は羨ましそうにしているけど、妹と婚約者へ面倒を掛ける謝罪の品だから。

「じゃあそろそろ行くわ。ゆっくり休んでね。ディオ」
「ありがとう。ディア。ちょっと横になるよ。皆今日はお見舞いに来てくれてありがとう。風邪がうつっても良くないし、短いけど今日はこの辺で」
「ええ。早く良くなってくださいませ。それでは」

ディアとヴィオレッタ王女が問答無用で残りの二人も連れて行ってくれてホッとする。
ここで居残るなんて言われたらどうしようかと思っていたくらいだから。

「シグ。ちょっとお遣いを頼む」
「もう指示済みでっす!」
「ありがとう」

できる暗部がいて本当に良かった。

「疲れたから寝る。護衛は頼んだ」

それに頷きシグがスッと気配を消す。

「はぁ…早く夜になればいいのに」

ちょっとだけ…ほんの少しだけルーセウスをディアに取られたような気分になりながら、俺はギュッと枕を抱いて眠りについた。


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