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第二章 側妃問題はそっちのけでイチャつきたい!
25.お見舞い Side.ディオ
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体調を崩しルーセウスの声が聞けなかった二日間、凄く寂しくて会いたい気持ちが増してしまった。
(元気になったら会いに行こう)
本当はワイバーンの方が早いが、ヴァレトミュラで行けば移動しながら仕事もできる。
上手く仕事をやりくりして、絶対に会いに行こう。
そう思っていた三日目の夕飯後、来客があるとかで外が準備のため賑やかになった。
誰だろう?
ヴィオレッタ王女始めローズマリー皇女やシェリル嬢は揃って明日の昼過ぎ頃見舞いに来ると手紙を受け取っているし、違うはず。
(まあ俺は今動けないし、考えてもしょうがないか)
熱は下がったものの、昨日から咳が出始め喉が痛い。
だから食事も摂る気になれなくて、スープだけ受け取ってなんとか流し込み、風邪薬を飲んだ。
カリン父様が見舞いに来てくれて、『これから見舞いに来る馬鹿がいるが、明日にしてもらうから気にせずゆっくり休め』と言ってくる。
誰だろう?
気になる。
それから暫くして、こちらにバタバタと駆けてくる足音が聞こえてきた。
それを聞き、心臓がドクリと跳ねる。
まさかと思ったからだ。
こんなに存在感があって、気配を全く隠そうともしない真っ直ぐな存在を自分は他に知らない。
ドクドクと期待に胸が震える。
コンコンコン。
「はい」
震えそうになる声で答えると、返ってきたのは思った通りルーセウスのもので…。
「ディオ?ルーセウスだ。見舞いに来たんだが、入っていいか?」
「……っ!ゴホッ。ルーセウス?本当に?」
「ああ」
扉が開き、ずっと会いたかったルーセウスの顔を見て呆然としてしまう。
もしかして風邪薬効果でいつの間にか寝入ってしまって、夢を見てるんじゃないかと思ってしまったからだ。
「ルーセウス。夢じゃ…?」
「夢じゃない。寝込んだって聞いたから即ワイバーンを飛ばしてここまで来たんだ。体調は?しんどくはないか?」
ルーセウスがすぐ側まで来てくれて、気遣いながらそっと触れてくる。
「ほら。ちゃんと寝ろ。ん。熱はないな。薬は?もう飲んだか?食事は?」
「ルーセウス…」
(夢じゃ…ない)
紛れもなくこれは現実だ。
それなら風邪をうつしてしまう可能性があるのでは?
「どうした?」
「風邪…移るから」
側に居てくれるのは嬉しいけど、うつすのはマズいから離れてもらった方がいい。
そう思ったのに、ルーセウスはそれをあっさり笑顔で吹き飛ばす。
「大丈夫だ。伊達に鍛えてない。俺は病気知らずだから、好きなだけ甘えてくれ」
ああ本当に、どうしていつもルーセウスはこんなに太陽みたいに眩しいんだろう?
思わず素直に抱き着き、会いたかったと言って甘えてしまう。
俺が頼りたいと思える数少ない人────。
「ほら、ディオ。横になってさっきの質問にちゃんと答えてくれ。食事は?」
「スープは飲んだ」
「スープだけか?」
「喉が痛くて…」
「薬は?」
「飲んだ」
「そうか。じゃあ寝るまでついててやるから、安心して寝ろ」
安心させるように優しく手を握ってくれるけど、すぐに帰ってしまうんじゃないかと思えて、つい我儘を口にしてしまう。
「嫌だ」
「どうして?」
「起きてルーセウスが帰ってたら辛い」
でもルーセウスは呆れることなく優しく言ってくれた。
「大丈夫。ガヴァムに着いて即ここに来たからまだ荷解きも何もできてないけど、それが終わったらディオが治るまで側にいるから」
「本当に?」
「本当に。ディオが望むなら添い寝もしてやるぞ?いっぱい甘えていいからな?」
「ルーセウス…」
それが嬉しくて、ついつい表情がふにゃりと崩れてしまう。
そんな俺の頭を撫でてくれるルーセウスに更に我儘を言ったら、それも叶えてもらえて胸がくすぐったくなった。
(添い寝のお願いなんて初めてしたな)
すぐ戻ってくると言ってたけど、荷解きだけじゃなくシャワーにも行くだろうし、食事もまだかもしれない。
多少時間はかかるはず。
「シグ。俺もシャワー浴びたい」
「無茶っすよ!」
「だってルーセウスと同衾するのに汗臭いなんて嫌だ」
「あの方ならどんなディオ様でも受け止めてくれますよ。56回フラれても諦めなかった男ですし」
「…?そんなに振ってたか?」
「軽いのも合わせたら余裕でそれくらいフってましたけど?」
ちょっと自分でも驚きだ。
よく諦めなかったなと感心してしまう。
「じゃあ余計に大事にしたいし、折角来てくれたし、やっぱりシャワーに行ってくる」
「……わかりました。ぶっ倒れないようにちゃんと入り口に控えてるので、ササっと行ってきてください」
「ありがとう」
シグにお礼を言って、湯殿で手早く寝汗を流し、しっかり着替えてベッドに戻るとシーツも替えてあった。
きっとシグが侍女に頼んでくれたんだろう。
有り難い限りだ。
イソイソとベッドに入って待っていたら、少ししてルーセウスが戻ってきた。
嬉しい。
すぐにベッドに滑り込んで来てくれたからそのまま身を寄せてみる。
(やっぱり一番安心する)
この安心感が得られるのはルーセウスならではだろう。
気づけば俺はその温もりに身を任せて夢の中へと旅立っていた。
どうか起きた時もこの温もりに包まれていますように────。
***
【Side.ルーセウス】
朝起きたら腕の中でディオがスヤスヤ眠っていた。
少しあどけない表情に癒される。
「可愛い…」
チュッと思わず髪にキスを落としてしまうくらいに可愛い。
でもそれが刺激になったのか、ディオが『ん…』と身じろぎしてそっと目を開いた。
「おはよう。ディオ。起こして悪かった。体調は?」
「ん。大丈夫。ルーセウスがあったかいからぐっすり眠れたし、だいぶ元気になった気がする」
「そうか。良かった。朝食は?食べれそうか?」
そう尋ねると、まだ喉が痛いから柔らかい物を少しだけ食べたいと言われた。
「わかった。煮込んだスープがあればそれと、後はスクランブルエッグに果物、ミルクくらいでいいか?他にも欲しいものがあれば頼んでくるから言ってくれ」
「ありがとう。十分だ」
「じゃあちょっと行ってくる」
俺は手早く身支度を整えて、使用人へと食事を頼みに行った。
朝食はディオと勿論一緒。
ディオの背にクッションを添えて身を起こさせ、一口ずつゆっくりと食べさせる。
俺?俺はディオが食べさせてくれた。
後で食べるから先に食べろと言ったけど、一緒に食べたいって言われて食べさせ合いになったんだ。
おかしいな?俺が看病するはずだったのに。
これじゃあ単にイチャイチャしているだけな気がする。
まあ嬉しいからいいけど。
「ルーセウス。今日は午後からヴィオレッタ王女やローズマリー皇女達が見舞いに来る予定なんだ。だからその前に以前言っていたプレゼントを渡してもいいかな?」
「嬉しい。俺もちゃんと持ってきたから、皿を片付けついでにすぐ持ってくる。待っててくれ」
それからお互いに用意した贈り物を渡し合い、開けてみる。
「ふふっ。本当に言ってた通りの物なんだ」
「ああ。商人に特徴を伝えて持ってきてもらったんだ。ディオに絶対似合うと思う。元気になったらそれを着たディオを抱かせてほしい」
「うん。じゃあこれを着てルーセウスを言葉通り誘惑してあげる」
蠱惑的に微笑まれて思わずチュッとキスしてしまったら、ちょっと叱られた。
流石に風邪がうつるぞと。
残念。早く治してほしい。
ディオからのプレゼントは髪用オイルと解毒剤入りペンダント。
「女性用の髪用オイルは花の香りが多いんだけど、今回選んだのは男性向けの爽やかなミントの香りだから清涼感があってルーセウスも気に入ると思う」
どれどれ。
「凄くスッとしていいな」
これなら鍛錬後も汗臭くならない気がする。
「ペンダントは安全の為にも常に身につけておいてほしい」
「わかった」
ディオからもらったペンダントだ。
当然肌身離さず身につけたい。
「大事にする」
そう言いながらディオへの気持ちを込めてペンダントへとキスしたら、恥ずかしそうに目を逸らしながら頬を染められた。
「……ルーセウス。やっぱり発注…」
「それはダメだ」
ディルドの発注はダメだぞ?
全く、油断も隙もないな。
「ディオ。元気になったらいくらでも満足させてやるから、我慢」
囁くように『俺だってディオが欲しい』って言ったら、『今夜抱いて欲しい』って小さな声で言ってもらえた。
なんだか凄く甘酸っぱい。
「じゃあ夜までに元気になろうな?なってなかったら今日も添い寝だから」
「わかった。夜まで大人しく休んでる」
そう言って横になったディオに掛け布をかけてやり、退屈しないよう色々話した。
ゴッドハルトに暗部がないからディア王女に相談した話。
ワイバーンでここまで来たけどディア王女に散々文句を言われた話。
結婚式準備が面倒臭かった話。
ディオはそれらを穏やかに聞いてくれて、暗部の件は補足の提案までしてくれたし、ワイバーンは楽しそうだから自分も元気になったら一緒に乗ってみたいと言ってくれて、結婚式の準備も女性の方がこだわりがあるからしょうがないって共感してもらえた。
ちなみにディオもヴィオレッタ王女の要望にできる限り応えられるよう、諸々手配している最中らしい。
「ルーセウスのお披露目衣装も手配してるんだ」
「え?」
「順序とすれば、先に戴冠式。その次がルーセウスとディアの結婚式。その次が俺とヴィオレッタ王女の結婚式になるだろう?だからそれが最優先。戴冠式の翌日に結婚式をしてはっていう意見もあったけど、他の婚約者候補だった二人が文句をつけてきてるから準備がちっとも進まなくて…」
「拗れそうなのか?」
「まあ多分だけど、今日お見舞いに来たら看病を口実にローズマリー皇女がここでの滞在を前倒しにするって言い出しそうなんだ。それに追随してシェリル嬢もそれなら自分もと言い出すと思う。ヴィオレッタ王女はどうするかわからないけど、取り敢えず気疲れしそうなことだけはわかるから…ルーセウスのお披露目衣装姿でも想像しながら乗り切ろうかなと思ってた。でも本人が来てくれたから凄く気が楽になった気がする。ありがとう」
「うぐぅ…っ」
側妃候補達より俺か!
それは流石に俺を喜ばせすぎだろう。
(大好きだ!)
(元気になったら会いに行こう)
本当はワイバーンの方が早いが、ヴァレトミュラで行けば移動しながら仕事もできる。
上手く仕事をやりくりして、絶対に会いに行こう。
そう思っていた三日目の夕飯後、来客があるとかで外が準備のため賑やかになった。
誰だろう?
ヴィオレッタ王女始めローズマリー皇女やシェリル嬢は揃って明日の昼過ぎ頃見舞いに来ると手紙を受け取っているし、違うはず。
(まあ俺は今動けないし、考えてもしょうがないか)
熱は下がったものの、昨日から咳が出始め喉が痛い。
だから食事も摂る気になれなくて、スープだけ受け取ってなんとか流し込み、風邪薬を飲んだ。
カリン父様が見舞いに来てくれて、『これから見舞いに来る馬鹿がいるが、明日にしてもらうから気にせずゆっくり休め』と言ってくる。
誰だろう?
気になる。
それから暫くして、こちらにバタバタと駆けてくる足音が聞こえてきた。
それを聞き、心臓がドクリと跳ねる。
まさかと思ったからだ。
こんなに存在感があって、気配を全く隠そうともしない真っ直ぐな存在を自分は他に知らない。
ドクドクと期待に胸が震える。
コンコンコン。
「はい」
震えそうになる声で答えると、返ってきたのは思った通りルーセウスのもので…。
「ディオ?ルーセウスだ。見舞いに来たんだが、入っていいか?」
「……っ!ゴホッ。ルーセウス?本当に?」
「ああ」
扉が開き、ずっと会いたかったルーセウスの顔を見て呆然としてしまう。
もしかして風邪薬効果でいつの間にか寝入ってしまって、夢を見てるんじゃないかと思ってしまったからだ。
「ルーセウス。夢じゃ…?」
「夢じゃない。寝込んだって聞いたから即ワイバーンを飛ばしてここまで来たんだ。体調は?しんどくはないか?」
ルーセウスがすぐ側まで来てくれて、気遣いながらそっと触れてくる。
「ほら。ちゃんと寝ろ。ん。熱はないな。薬は?もう飲んだか?食事は?」
「ルーセウス…」
(夢じゃ…ない)
紛れもなくこれは現実だ。
それなら風邪をうつしてしまう可能性があるのでは?
「どうした?」
「風邪…移るから」
側に居てくれるのは嬉しいけど、うつすのはマズいから離れてもらった方がいい。
そう思ったのに、ルーセウスはそれをあっさり笑顔で吹き飛ばす。
「大丈夫だ。伊達に鍛えてない。俺は病気知らずだから、好きなだけ甘えてくれ」
ああ本当に、どうしていつもルーセウスはこんなに太陽みたいに眩しいんだろう?
思わず素直に抱き着き、会いたかったと言って甘えてしまう。
俺が頼りたいと思える数少ない人────。
「ほら、ディオ。横になってさっきの質問にちゃんと答えてくれ。食事は?」
「スープは飲んだ」
「スープだけか?」
「喉が痛くて…」
「薬は?」
「飲んだ」
「そうか。じゃあ寝るまでついててやるから、安心して寝ろ」
安心させるように優しく手を握ってくれるけど、すぐに帰ってしまうんじゃないかと思えて、つい我儘を口にしてしまう。
「嫌だ」
「どうして?」
「起きてルーセウスが帰ってたら辛い」
でもルーセウスは呆れることなく優しく言ってくれた。
「大丈夫。ガヴァムに着いて即ここに来たからまだ荷解きも何もできてないけど、それが終わったらディオが治るまで側にいるから」
「本当に?」
「本当に。ディオが望むなら添い寝もしてやるぞ?いっぱい甘えていいからな?」
「ルーセウス…」
それが嬉しくて、ついつい表情がふにゃりと崩れてしまう。
そんな俺の頭を撫でてくれるルーセウスに更に我儘を言ったら、それも叶えてもらえて胸がくすぐったくなった。
(添い寝のお願いなんて初めてしたな)
すぐ戻ってくると言ってたけど、荷解きだけじゃなくシャワーにも行くだろうし、食事もまだかもしれない。
多少時間はかかるはず。
「シグ。俺もシャワー浴びたい」
「無茶っすよ!」
「だってルーセウスと同衾するのに汗臭いなんて嫌だ」
「あの方ならどんなディオ様でも受け止めてくれますよ。56回フラれても諦めなかった男ですし」
「…?そんなに振ってたか?」
「軽いのも合わせたら余裕でそれくらいフってましたけど?」
ちょっと自分でも驚きだ。
よく諦めなかったなと感心してしまう。
「じゃあ余計に大事にしたいし、折角来てくれたし、やっぱりシャワーに行ってくる」
「……わかりました。ぶっ倒れないようにちゃんと入り口に控えてるので、ササっと行ってきてください」
「ありがとう」
シグにお礼を言って、湯殿で手早く寝汗を流し、しっかり着替えてベッドに戻るとシーツも替えてあった。
きっとシグが侍女に頼んでくれたんだろう。
有り難い限りだ。
イソイソとベッドに入って待っていたら、少ししてルーセウスが戻ってきた。
嬉しい。
すぐにベッドに滑り込んで来てくれたからそのまま身を寄せてみる。
(やっぱり一番安心する)
この安心感が得られるのはルーセウスならではだろう。
気づけば俺はその温もりに身を任せて夢の中へと旅立っていた。
どうか起きた時もこの温もりに包まれていますように────。
***
【Side.ルーセウス】
朝起きたら腕の中でディオがスヤスヤ眠っていた。
少しあどけない表情に癒される。
「可愛い…」
チュッと思わず髪にキスを落としてしまうくらいに可愛い。
でもそれが刺激になったのか、ディオが『ん…』と身じろぎしてそっと目を開いた。
「おはよう。ディオ。起こして悪かった。体調は?」
「ん。大丈夫。ルーセウスがあったかいからぐっすり眠れたし、だいぶ元気になった気がする」
「そうか。良かった。朝食は?食べれそうか?」
そう尋ねると、まだ喉が痛いから柔らかい物を少しだけ食べたいと言われた。
「わかった。煮込んだスープがあればそれと、後はスクランブルエッグに果物、ミルクくらいでいいか?他にも欲しいものがあれば頼んでくるから言ってくれ」
「ありがとう。十分だ」
「じゃあちょっと行ってくる」
俺は手早く身支度を整えて、使用人へと食事を頼みに行った。
朝食はディオと勿論一緒。
ディオの背にクッションを添えて身を起こさせ、一口ずつゆっくりと食べさせる。
俺?俺はディオが食べさせてくれた。
後で食べるから先に食べろと言ったけど、一緒に食べたいって言われて食べさせ合いになったんだ。
おかしいな?俺が看病するはずだったのに。
これじゃあ単にイチャイチャしているだけな気がする。
まあ嬉しいからいいけど。
「ルーセウス。今日は午後からヴィオレッタ王女やローズマリー皇女達が見舞いに来る予定なんだ。だからその前に以前言っていたプレゼントを渡してもいいかな?」
「嬉しい。俺もちゃんと持ってきたから、皿を片付けついでにすぐ持ってくる。待っててくれ」
それからお互いに用意した贈り物を渡し合い、開けてみる。
「ふふっ。本当に言ってた通りの物なんだ」
「ああ。商人に特徴を伝えて持ってきてもらったんだ。ディオに絶対似合うと思う。元気になったらそれを着たディオを抱かせてほしい」
「うん。じゃあこれを着てルーセウスを言葉通り誘惑してあげる」
蠱惑的に微笑まれて思わずチュッとキスしてしまったら、ちょっと叱られた。
流石に風邪がうつるぞと。
残念。早く治してほしい。
ディオからのプレゼントは髪用オイルと解毒剤入りペンダント。
「女性用の髪用オイルは花の香りが多いんだけど、今回選んだのは男性向けの爽やかなミントの香りだから清涼感があってルーセウスも気に入ると思う」
どれどれ。
「凄くスッとしていいな」
これなら鍛錬後も汗臭くならない気がする。
「ペンダントは安全の為にも常に身につけておいてほしい」
「わかった」
ディオからもらったペンダントだ。
当然肌身離さず身につけたい。
「大事にする」
そう言いながらディオへの気持ちを込めてペンダントへとキスしたら、恥ずかしそうに目を逸らしながら頬を染められた。
「……ルーセウス。やっぱり発注…」
「それはダメだ」
ディルドの発注はダメだぞ?
全く、油断も隙もないな。
「ディオ。元気になったらいくらでも満足させてやるから、我慢」
囁くように『俺だってディオが欲しい』って言ったら、『今夜抱いて欲しい』って小さな声で言ってもらえた。
なんだか凄く甘酸っぱい。
「じゃあ夜までに元気になろうな?なってなかったら今日も添い寝だから」
「わかった。夜まで大人しく休んでる」
そう言って横になったディオに掛け布をかけてやり、退屈しないよう色々話した。
ゴッドハルトに暗部がないからディア王女に相談した話。
ワイバーンでここまで来たけどディア王女に散々文句を言われた話。
結婚式準備が面倒臭かった話。
ディオはそれらを穏やかに聞いてくれて、暗部の件は補足の提案までしてくれたし、ワイバーンは楽しそうだから自分も元気になったら一緒に乗ってみたいと言ってくれて、結婚式の準備も女性の方がこだわりがあるからしょうがないって共感してもらえた。
ちなみにディオもヴィオレッタ王女の要望にできる限り応えられるよう、諸々手配している最中らしい。
「ルーセウスのお披露目衣装も手配してるんだ」
「え?」
「順序とすれば、先に戴冠式。その次がルーセウスとディアの結婚式。その次が俺とヴィオレッタ王女の結婚式になるだろう?だからそれが最優先。戴冠式の翌日に結婚式をしてはっていう意見もあったけど、他の婚約者候補だった二人が文句をつけてきてるから準備がちっとも進まなくて…」
「拗れそうなのか?」
「まあ多分だけど、今日お見舞いに来たら看病を口実にローズマリー皇女がここでの滞在を前倒しにするって言い出しそうなんだ。それに追随してシェリル嬢もそれなら自分もと言い出すと思う。ヴィオレッタ王女はどうするかわからないけど、取り敢えず気疲れしそうなことだけはわかるから…ルーセウスのお披露目衣装姿でも想像しながら乗り切ろうかなと思ってた。でも本人が来てくれたから凄く気が楽になった気がする。ありがとう」
「うぐぅ…っ」
側妃候補達より俺か!
それは流石に俺を喜ばせすぎだろう。
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