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第二章 側妃問題はそっちのけでイチャつきたい!

24.発熱 Side.ディオ

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熱い…。
苦しい…。

昨夜もまたルーセウスとツンナガールで自慰をし合い、シャワーを浴びてから横になったものの、なんとなく恋しい気持ちが込み上げて眠れなくて、庭で暗部と手合わせしてから寝たら風邪を引いた。
汗が冷えたせいで湯冷めしたのかもしれない。
失敗した。

王宮医に薬を処方してもらったけど、全然熱が下がらない。
こんな時ディアが居てくれたら薬を処方してもらえたのだけど。

ディアは闇医者のところに早くから弟子入りしていて医療関係全般に詳しいし、必要に応じて手術もこなす。
縫合は神業レベルと裏でも絶賛されているくらいだ。
俺も少しは医術を齧ったけど、流石にそこまではできない。
精々薬や毒薬、解毒剤の調合、後は応急処置的な諸々程度だ。
できることは限られている。
しかも今のこの熱で朦朧としている状況で調合はちょっと難しい。

「はぁ…しんどい」

カカッ!

「ちょっ、ディオ様?!そんな手元が狂いそうな体調でナイフ投げてくるの、やめてもらえます?!避けれる俺だからいいものの、怖いっすよ?!」
「なんだ。シグか」
「『なんだシグか』じゃないですよ!『熱で敵味方の区別がつかないから取り敢えず投げとけ』的行動は慎んでください!」
「ん~…」

俺付きの筆頭暗部シグが文句を言ってくるけど、全然頭に入ってこない。

「熱は…まだ高いっすね。新しい王宮医も前の王宮医と大して変わらないならクビにした方がいいっすよ?これは闇医者から貰ってきた薬だから効くはずです。ちゃんと飲んで休んでください」
「ん~…わかった。ありがとう」

ノソノソと起き上がって苦い薬をなんとか飲み下し、すぐに横になる。

(あ~…今日はルーセウスと話せないな)

寝る前のひと時は俺にとっての癒しの時間なのに、残念でならない。

「シグ…ディアに連絡して、今日は寝込んでてルーセウスと話せないって伝えてくれるか?後、治るまでは繋がらないかもって…」
「わかりました。ちゃんとやっとくんで、しっかり休んでください」
「ありがとう」
「お礼はキスでいいですよ?」
「舌を噛み切られたかったのか?それとも毒で悶えたかった?お前まで変態だったなんて、知らなかったな…。クビにしていいか?」
「嘘です!冗談です!二度と言いません!」
「そっか。おやすみ」
「おやすみなさいっす!」

軽口を終え、シグの気配が離れるのを感じながらそっとツンナガールを胸に抱く。

「ルーセウス…おやすみ」

せめて夢で声が聞けますようにと思いながら、深い眠りについた。


***


【Side.ルーセウス】

今日は挙式のアレコレを決めて疲れた一日だった。
ディオの戴冠式と俺との結婚のお披露目が半年後だし、その後くらいでディア王女との挙式予定。
殆ど彼女に丸投げしたけど、それでも決めるべきことは多いし、疲れるのは疲れる。

早くディオと話して癒されたいなと思いながら晩餐後の腹ごなしに剣を振っていたら、珍しくディア王女がやってきた。
こんな時間にどうかしたのかと思っていたら、思いがけないことを聞かされる。

「今日はディオはツンナガールで話せないそうですわ。風邪で寝込んでるんですって」
「え?!」

どうやら暗部からディア王女に連絡が入ったらしく、俺へ伝えてくれと言われたらしい。

「寝込んでるって、酷いのか?!」
「熱が高いみたいですけど、寝る前に私の師である闇医者が処方した薬を飲んだらしいし、明日には下がっていると思います」

そうは言っても心配だ。

「心配だな。…ディオのところに行ってやりたい」
「まだルイージ王子がいらっしゃるでしょう?」

それはそうだが、今日両親が城に戻ってきたからルイージ王子に俺がそれほど関わる必要はなくなったし、ルイージ王子は元々セレナの招待客だ。
俺がいなくても特に問題はない。

「ルイージ王子は俺の招待客じゃないし、どう考えてもディオの方が大切だ」
「……まあトルセン陛下達もお戻りですし、事情を話してわかっていただければ構いませんけれど」
「すぐ伝えてくる!」
「後でディオに叱られても知りませんよ?」

ディア王女の小言を聞き流し、俺は急いで父の元へと走る。

「父上!俺の大事な妃が高熱で寝込んでいると聞いたので、心配ですしこれからガヴァムへ行ってきます!」

バーンッと扉を開け放ったら父だけではなく母もいて、目をまん丸にされてしまった。

「あ、あー…うん。それは心配だな。わかった。行ってこい。ルイージ王子の方は俺達がもてなしておくから」
「ありがとうございます!」
「ちゃんとディア王女も連れて行けよ?護衛も兼ねてくれてるんだし」
「わかりました!では行ってきます!」

それから急いで荷物を詰めて、ディア王女も一緒にワイバーンに乗せて飛び立った。
フットワークが軽いと褒められたけど、今はそんなことはどうでもいい。

「行くぞ」
「ええ、いつでも…って、飛ばし過ぎですわ?!」
「俺はいつも単独ならこの速さだ」
「嘘でしょう?!」
「喋るな。舌を噛むぞ?」

ゴゥッと風が唸りを上げて吹き荒ぶ。
昨日に比べると雨が混じっていないだけマシだが、上空の風向きは非常に読み難い。
でもディオの為ならこれくらい読み切ってみせる。
上手く風が掴めれば以前よりも早く着けるかもしれないから。

「しっかり捕まっていろ」

そう伝えると返事の代わりに思い切り抱きつかれた。
これなら落ちる心配はないだろう。

そうして全速力で俺はガヴァムへとワイバーンを羽ばたかせた。


***


「うぅ…二度とルーセウス王子と空は飛びたくありませんわ」
「ちょっと風が強くて変則的に飛ぶ羽目になっただけで、いつもとそう大きくは変わらなかっただろう?ちゃんと休憩も取ったし、無事に着けたじゃないか」
「そういう問題じゃありませんわ!あのスピードであの動きをされて平気と思えるその神経が信じられませんわ!吐くかと思いました!」

ガヴァムの城へと辿り着き、ヨロヨロとワイバーンから降りてすぐにディア王女に文句を言われたが、振り落とすほどのヘマをする事は一度もなかったし、ちゃんと休憩は取ったし、途中宿だって取って睡眠時間は確保した。
文句を言われるほど酷くはなかったと思うのだが…。

「ようこそ。ルーセウス王子。おかえり。ディア」
「カリンお父様!」

どうやら今日はロキ陛下ではなくカリン陛下が出迎えてくれたようだ。
なんだか申し訳ない。

「今日はディオのお見舞いにわざわざ来てくれたとか?」
「はい!寝込んだと聞いて心配で!熱は下がりましたか?!食事は?ちゃんと摂れていますか?まだ寝込んでいたりしませんよね?」

取り敢えずディオのことが心配で、様子が知りたくて尋ねたらちょっと戸惑うようにされた後、ディオの様子を教えてもらうことができた。

「取り敢えず熱は下がった。ただ咳が出ているからまだ安静にしてベッドで横になっている。だから…」
「わかりました!側について俺が看病します!教えていただきありがとうございました!では失礼します!」

どうやら少しは快方に向かっている様子。
その事にホッとしてお礼を言い、俺は勝手知ったるディオの部屋へと急いで向かった。

バタバタバタッと足音高く向かってディオの部屋の前で一度足を止め、気持ちを落ち着けてからノックする。
ディオは起きているだろうか?

「はい」
「ディオ?ルーセウスだ。見舞いに来たんだが、入っていいか?」
「……っ!ゴホッ。ルーセウス?本当に?」
「ああ」

ドアを開けるとディオが呆然とした顔で俺を見つめた後、凄くホッとした顔で相好を崩した。

「ルーセウス。夢じゃ…?」
「夢じゃない。寝込んだって聞いたから即ワイバーンを飛ばしてここまで来たんだ。体調は?しんどくはないか?」

少し声が掠れてる気もするし、熱が本当に下がったのか確認したくて急いでベッドへと向かう。

「ほら。ちゃんと寝ろ。ん。熱はないな。薬は?もう飲んだか?食事は?」
「ルーセウス…」
「どうした?」
「風邪…移るから」
「大丈夫だ。伊達に鍛えてない。俺は病気知らずだから、好きなだけ甘えてくれ」

笑顔でそう言ったらディオは泣きそうな顔で抱きついてきて、会いたかったと言ってくれた。
寝込むと心細くなるって言うからな。
きっとディオもそうだったんだろう。

「ほら、ディオ。横になってさっきの質問にちゃんと答えてくれ。食事は?」
「スープは飲んだ」
「スープだけか?」
「喉が痛くて…」
「薬は?」
「飲んだ」
「そうか。じゃあ寝るまでついててやるから、安心して寝ろ」

そっと手を取って握ってやると、ギュッと握り返されて、嫌だと返された。

「起きてルーセウスが帰ってたら辛い」

なるほど。
折角会えたのにトンボ帰りされたら、夢だったのかと逆に辛くなる、と。

(可愛い!)

俺のディオはやっぱりどんな時でも癒し系だ。

「大丈夫。ガヴァムに着いて即ここに来たからまだ荷解きも何もできてないけど、それが終わったらディオが治るまで側にいるから」
「本当に?」
「本当に。ディオが望むなら添い寝もしてやるぞ?いっぱい甘えていいからな?」
「ルーセウス…」

ふにゃりと表情を崩すディオの頭を撫でて、だから安心して寝ろともう一度言ったけど、待ってるから荷解きしてまた戻ってきて欲しいと言われた。
どうやら添い寝をご所望のようだ。

「ルーセウスに包まれながら眠りたい」
「すぐ戻ってくる!待ってろ!」

俺が急いで部屋を飛び出すと部屋の前でディア王女が待ってくれていて、すぐに客間へと案内してくれる。
しかもどうやら話を聞いていたらしく、添い寝するならシャワーを浴びてからにしてくださいと言われたからちゃんと浴びてからディオのところに戻った。

「ディオ。お待たせ」

もう寝てしまったかもと思いながら戻るとディオはちゃんと待っていてくれて、ベッドの片側を早くとばかりにポンポンと叩いてくる。
そんな姿に頬を緩ませ、俺はそっとそこへと身を滑り込ませた。
するとすぐに抱き着いてこられて、凄く安心したように俺の胸にスリッと頬を擦り寄せ、幸せそうな顔であっという間に眠ってしまう。
そんな可愛いディオを抱き締めながら、俺もその温もりに幸せを感じて、気づけば夢の中へと旅立っていた。
なんだかんだで疲れていたのかもしれない。


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