【完結】攻略は余所でやってくれ!

オレンジペコ

文字の大きさ
上 下
4 / 11
御礼のサイドストーリー

1.親友の息子…ああ、あいつか。

しおりを挟む
思いつき作品にも関わらず沢山の方に見て頂けて嬉しいです。
訪問、ブクマしてくださった方にせめてものお礼を。
蓮さんサイドのお話です。
良かったらどうぞ。

────────────────

俺は加賀 蓮。享年25才。
結婚することもなく、友達と遊んでいることが多かった普通の社会人だった。
その日はちょうど帰省の時期で、たまには夜行バスでも乗ってみようかな~なんて思ったのが運の尽き。
気づけば事故か何かで死んだのか、賽の河原らしき場所のすぐ横の草地にいた。
周囲には俺と同じバスに乗っていた人達もいるし、まあまず間違いはないだろう。
ああ、死んだのかと思って周囲を観察すると、どこかやる気のなさそうな死神風の男がいたので話しかけてみることにした。

その男はやはり死神で、ここは魂の休息地であり、所定数の魂がここに集まったら転生作業を行うのだと言った。
どうやらちょうど俺達の前に転生作業を行ってしまったらしく、暫く待たないといけないとのこと。

(ま、仕方がないか)

その時はまさか10年も待たないといけないなんて思いもよらなかった。
少しずつ少しずつやってくる魂たち。
それも50人を超えたらそろそろかなって期待もする。
でも死神はまだまだだと口にするばかり。
じゃあ一体何人集まったら転生できるんだと尋ねた人がいた。
それに対してこの男はあっけらかんとこう言い放ったのだ。

「ん~…100人くらいかな~」

どうやら随分ものぐさな死神だったようだ。
しかもほとんどの時間をここで過ごしているから、魂たちは細々としか集まらない。
これじゃあ5年どころか10年はかかるんじゃないだろうか?
そう思った。

けれどまさか本当に10年かかるとは────。




「はい、97、98、99人目~」

そんな言葉と共に三人の魂が補充され、やっとあと一人となったところで皆の期待が高まっていく。

(あと一人だ!)

来い来い来い来い!

皆の心の中はその言葉でいっぱいだったことだろう。
俺もあと一人でやっと転生できるのだと思うと嬉しい気持ちでいっぱいになった。

「はい、100人目~!」

そして待ちに待った最後の一人がやってきて、死神がじゃあちょっと準備してくるからなんて言いながら席を外す。
それにホッとした皆は各々それはもう明るい顔で死神を待っていた。

俺はというと、最後にやってきた少年の姿に実は密かに心を痛めていた。
最初でこそみんなと同じように喜んだものの、よく見れば少年はどう見ても高校生くらいに思えたからだ。
こんなに若いのに可哀想に……そう思った。
しかもなかなか目を覚まさない。
心配で心配で────気づけばそっと声を掛けている自分がいた。

「おい!しっかりしろ!」

何度か呼び掛けると少年がそっと目を開いたので安心する。
けれどその顔はどことなく見たことがあるような雰囲気を漂わせていて、こんな知り合いいたかなと少し考えこんだ。
もしかしたら気のせいかもしれない。そう結論を出そうとしたところでその少年の口から自分の名前が飛び出した。

「蓮…さん?」

どうやら本当に知り合いらしい。
でもいくら考えても誰なのかが思い出せそうにない。
だからどうして名前を知っているのかと尋ねたら、あっさりと相手のことが判明した。
この少年は────俺の親友、有村 健太の息子、康太だったのだ。
俺が死んでからすでに10年────あいつは元気にしているだろうか?
健太は親子の名前を併せると『健康』になるから長生きできそうでいいだろう────なんて名づけの時笑って言っていたけど、まさか息子がこんなに早く亡くなるなんて思いもしなかっただろうなと思ってまたズキッと心が痛んだ。
とは言え死んでしまったものはもうどうしようもない。
せめてあいつの近くの誰かのところに生まれ変われるといいなと思った。
正直それくらいしか願ってやれない。

それから康太に死神のことと転生のことについて簡単に話してやった。
最初は驚いたようだったが、若いからかすぐに適応してくれ、そういうこともあるのか~と頷いていた。

そうこうしているうちに準備に行っていた死神が戻ってくるのが目の端に移る。

これで────やっと転生できる。

そう思ったらやっぱり胸がいっぱいになって、ついそのまま口にしてしまった。
けれどそれを聞いた康太がどこか楽し気にしながらニコッと笑ってくる。

「転生先、一緒だったらいいね」

そんな言葉にそうだなと思ったところで不意に唇に温かなものが触れた。

(これって…………キス?)

あまりにも突然のことに驚きながら康太を見たが、どうしてしたのかとか、そういうことを聞く前にあっという間に白い光に包み込まれて……気づけば赤子として転生している自分がいた。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。

マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。 いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。 こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。 続編、ゆっくりとですが連載開始します。 「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

どこにでもある話と思ったら、まさか?

きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

華麗に素敵な俺様最高!

モカ
BL
俺は天才だ。 これは驕りでも、自惚れでもなく、紛れも無い事実だ。決してナルシストなどではない! そんな俺に、成し遂げられないことなど、ないと思っていた。 ……けれど、 「好きだよ、史彦」 何で、よりよってあんたがそんなこと言うんだ…!

残念でした。悪役令嬢です【BL】

渡辺 佐倉
BL
転生ものBL この世界には前世の記憶を持った人間がたまにいる。 主人公の蒼士もその一人だ。 日々愛を囁いてくる男も同じ前世の記憶があるらしい。 だけど……。 同じ記憶があると言っても蒼士の前世は悪役令嬢だった。 エブリスタにも同じ内容で掲載中です。

婚約破棄だ!〜キレた婚約者が、王子を蹴り潰したら王子がドM化した〜

ミクリ21
BL
タイトルのままです。

処理中です...