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28.文化祭準備
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新学期が始まり、いよいよ文化祭の準備が本格化した。
各学年各クラス出し物の準備で忙しそうだが、同じくらい生徒会も忙しい。
文化祭のパンフレットの作成と配布。
来賓リストの確認。
業者とのトラブルが起こっていないか支払い関係の確認含めての対応。
チケット制のクラスで不正が行われていないかのチェック。
それと並行して選挙準備。
やることは盛り沢山だ。
文化祭当日の見回りは風紀委員も協力をしてくれる予定だからそちらとの連携も確認した。
次期生徒会を見据えた助っ人、二年の佐伯と仁科にも先生から声を掛けてもらって手伝ってもらえることになったし、準備はこれまで以上に順調に進めることができた。
御堂と内原もちゃんとしっかり手伝ってくれているし今のところ問題はない。
「有馬!当日の巡回路の確認なんだけど」
そう言いながら生徒会室に入ってきたのは俺のクラスメイトでもある風紀委員長の西条だ。
「ああ、西条。ちょうどよかった。風紀委員の方で────」
そうして頭を突き合わせて二人で話してると、何故か伊集院が自分も知っておいた方がいいよなと言って話に加わってきた。
ちゃんと後で伝えるのに。
(まあいいか)
きっと伊集院的には二度手間を避けたかったんだろう。
「このルートなんだけど、この辺りの出し物は人気が出そうだって聞いたから、どうしても人が多く廊下に溢れそうなんだ」
「ふんふん」
「だから、巡回する時に足止めを食らいそうだろう?他のルートを上手く使ってこっちにこう行って、こんな感じで巡回は可能か確認したいんだが…」
「ああ、なるほど。それならこっちからこう行って…」
「それだとこの辺りに目が行き届かなくならないか?」
「あ、そうか」
伊集院も気になった点を指摘してくれるから対策は立てやすい。
結果的には話に加わってもらってよかったかもしれない。
そしてあれこれ話し合った結果、なかなかいいルートを確保することができた。
これなら問題があった場合他のルートから援軍が駆けつけるのも簡単だ。
「じゃあこれで風紀委員の方は頼んだ」
「ああ。任せとけ。そうだ…内原と御堂はどうだ?」
二人を見ながらひそひそと耳元で確認をしてくる西条。
「今のところ問題ない」
「そっか。それならいい。何かあったらすぐ言うんだぞ?」
「わかってる」
西条は内原が教室でやらかした件を思い出し、また何かやってこないか心配してくれているようだ。
なんだかんだでこいつも面倒見がいいから気になるんだろう。
「じゃあな、有馬」
「おう。ありがとな」
そう言って笑顔で見送り、さて仕事の続きをと思ったところで、いきなりその場に内原の楽し気な声が響いた。
「うわぁ!会長、嫉妬し過ぎじゃないですか?ふふっ。副会長を風紀委員長と取り合うなんて凄いですね」
一体何を言い出したんだ?
「内原。忙しいからって頭が湧いたのか?いいから黙って仕事しろ!暇なら向こう手伝ってこい!」
「は~い。すみませんでした」
小馬鹿にしたその口調がまた腹立たしい。
でも仕事が忙しいのは本当だから、俺はそのまま伊集院へと目を向ける。
「伊集院、さっきの───。…?どうかしたのか?」
「いや…なんでもない」
そうは言うものの顔色が悪い、というより表情がやけに険しい。
「眉間に皺が寄ってるぞ?いくら内原がクソ忙しい時に笑えない冗談を言ったからって気にするな。仕事倍量に増やして扱き使ってやればいいんだから」
「そうだな」
「そうそう。で、こっちの学級委員達の当日巡回ルートをさっきのと照合して調整するのに────」
よくわからないがさっさと仕事仕事。
そんな俺達の様子を見て、様子見をしていた周囲もあっさりと仕事に戻ったし、問題はないだろう。
「内原!サボるな!」
そうしてちょいちょい尻を叩きながら俺は仕事の続きに取り掛かった。
***
【Side.伊集院 誉】
文化祭の準備が本格化して生徒会を出入りする生徒が増えた。
仕事がはかどるのはいいけれど、有馬と二人の時間が削られるのは素直に痛い。
でもこれも文化祭が終わるまでの辛抱だ。
そう思って我慢していたのに、有馬のクラスメイト兼風紀委員長の西条がやけに有馬と距離が近いから嫉妬してしまった。
羨ましいことにこの二人は二年の時も同じクラスで、その頃から仲が良かった。
成績順位だって悪くはなく、大体5位以内には食い込んできて、3位になる事もしばしば。
バスケ部のキャプテンだから運動神経だって良い方だ。
言ってみれば俺の一番のライバルと言ってもいい存在だった。
有馬の方に恋愛感情はなくても向こうにはあるかもしれない。
だから睨んだ。
近いぞと。
それを内原は見たんだろう。
だから意趣返しとばかりに俺にあんなことを言ってきたんだ。
(潰す…!)
思わず睨んだら酷く楽し気に『怖い怖い』と言わんばかりにおどけた態度を取られた。
そんな俺達の様子に周囲の目が集中するのを感じたものの、腹立たしい気持ちが大きすぎて咄嗟に言葉が出ない。
まさに緊迫した空気が流れたと言ってもいいだろう。
なのに有馬はあっさりとその場を収めてしまった。
「内原。忙しいからって頭が湧いたのか?いいから黙って仕事しろ!暇なら向こう手伝ってこい!」
「は~い。すみませんでした」
そうして腹立たしい内原を追いやり。
「眉間に皺が寄ってるぞ?いくら内原がクソ忙しい時に笑えない冗談を言ったからって気にするな。仕事倍量に増やして扱き使ってやればいいんだから」
「そうだな」
「そうそう。で、こっちの学級委員達の当日巡回ルートをさっきのと照合して調整するのに────」
あっさりと冗談で流した。
これには周囲もホッとした様子。
ただ一人内原だけは不満げだったが、それさえこの一言で黙らせてしまう。
「内原!サボるな!」
有馬が頼りになり過ぎて感謝しかない。
でも多分それを言ったら、お互い様だと有馬は言うだろう。
内原に腹を立てているのは自分もだと以前言っていたから。
(本当。好きだな…)
そうして蕩けるような瞳で有馬を見つめる俺に気付いたのはきっと数人。
その日以降「会長、頑張ってくださいね!」と応援されることが増えたのは有馬には秘密だ。
各学年各クラス出し物の準備で忙しそうだが、同じくらい生徒会も忙しい。
文化祭のパンフレットの作成と配布。
来賓リストの確認。
業者とのトラブルが起こっていないか支払い関係の確認含めての対応。
チケット制のクラスで不正が行われていないかのチェック。
それと並行して選挙準備。
やることは盛り沢山だ。
文化祭当日の見回りは風紀委員も協力をしてくれる予定だからそちらとの連携も確認した。
次期生徒会を見据えた助っ人、二年の佐伯と仁科にも先生から声を掛けてもらって手伝ってもらえることになったし、準備はこれまで以上に順調に進めることができた。
御堂と内原もちゃんとしっかり手伝ってくれているし今のところ問題はない。
「有馬!当日の巡回路の確認なんだけど」
そう言いながら生徒会室に入ってきたのは俺のクラスメイトでもある風紀委員長の西条だ。
「ああ、西条。ちょうどよかった。風紀委員の方で────」
そうして頭を突き合わせて二人で話してると、何故か伊集院が自分も知っておいた方がいいよなと言って話に加わってきた。
ちゃんと後で伝えるのに。
(まあいいか)
きっと伊集院的には二度手間を避けたかったんだろう。
「このルートなんだけど、この辺りの出し物は人気が出そうだって聞いたから、どうしても人が多く廊下に溢れそうなんだ」
「ふんふん」
「だから、巡回する時に足止めを食らいそうだろう?他のルートを上手く使ってこっちにこう行って、こんな感じで巡回は可能か確認したいんだが…」
「ああ、なるほど。それならこっちからこう行って…」
「それだとこの辺りに目が行き届かなくならないか?」
「あ、そうか」
伊集院も気になった点を指摘してくれるから対策は立てやすい。
結果的には話に加わってもらってよかったかもしれない。
そしてあれこれ話し合った結果、なかなかいいルートを確保することができた。
これなら問題があった場合他のルートから援軍が駆けつけるのも簡単だ。
「じゃあこれで風紀委員の方は頼んだ」
「ああ。任せとけ。そうだ…内原と御堂はどうだ?」
二人を見ながらひそひそと耳元で確認をしてくる西条。
「今のところ問題ない」
「そっか。それならいい。何かあったらすぐ言うんだぞ?」
「わかってる」
西条は内原が教室でやらかした件を思い出し、また何かやってこないか心配してくれているようだ。
なんだかんだでこいつも面倒見がいいから気になるんだろう。
「じゃあな、有馬」
「おう。ありがとな」
そう言って笑顔で見送り、さて仕事の続きをと思ったところで、いきなりその場に内原の楽し気な声が響いた。
「うわぁ!会長、嫉妬し過ぎじゃないですか?ふふっ。副会長を風紀委員長と取り合うなんて凄いですね」
一体何を言い出したんだ?
「内原。忙しいからって頭が湧いたのか?いいから黙って仕事しろ!暇なら向こう手伝ってこい!」
「は~い。すみませんでした」
小馬鹿にしたその口調がまた腹立たしい。
でも仕事が忙しいのは本当だから、俺はそのまま伊集院へと目を向ける。
「伊集院、さっきの───。…?どうかしたのか?」
「いや…なんでもない」
そうは言うものの顔色が悪い、というより表情がやけに険しい。
「眉間に皺が寄ってるぞ?いくら内原がクソ忙しい時に笑えない冗談を言ったからって気にするな。仕事倍量に増やして扱き使ってやればいいんだから」
「そうだな」
「そうそう。で、こっちの学級委員達の当日巡回ルートをさっきのと照合して調整するのに────」
よくわからないがさっさと仕事仕事。
そんな俺達の様子を見て、様子見をしていた周囲もあっさりと仕事に戻ったし、問題はないだろう。
「内原!サボるな!」
そうしてちょいちょい尻を叩きながら俺は仕事の続きに取り掛かった。
***
【Side.伊集院 誉】
文化祭の準備が本格化して生徒会を出入りする生徒が増えた。
仕事がはかどるのはいいけれど、有馬と二人の時間が削られるのは素直に痛い。
でもこれも文化祭が終わるまでの辛抱だ。
そう思って我慢していたのに、有馬のクラスメイト兼風紀委員長の西条がやけに有馬と距離が近いから嫉妬してしまった。
羨ましいことにこの二人は二年の時も同じクラスで、その頃から仲が良かった。
成績順位だって悪くはなく、大体5位以内には食い込んできて、3位になる事もしばしば。
バスケ部のキャプテンだから運動神経だって良い方だ。
言ってみれば俺の一番のライバルと言ってもいい存在だった。
有馬の方に恋愛感情はなくても向こうにはあるかもしれない。
だから睨んだ。
近いぞと。
それを内原は見たんだろう。
だから意趣返しとばかりに俺にあんなことを言ってきたんだ。
(潰す…!)
思わず睨んだら酷く楽し気に『怖い怖い』と言わんばかりにおどけた態度を取られた。
そんな俺達の様子に周囲の目が集中するのを感じたものの、腹立たしい気持ちが大きすぎて咄嗟に言葉が出ない。
まさに緊迫した空気が流れたと言ってもいいだろう。
なのに有馬はあっさりとその場を収めてしまった。
「内原。忙しいからって頭が湧いたのか?いいから黙って仕事しろ!暇なら向こう手伝ってこい!」
「は~い。すみませんでした」
そうして腹立たしい内原を追いやり。
「眉間に皺が寄ってるぞ?いくら内原がクソ忙しい時に笑えない冗談を言ったからって気にするな。仕事倍量に増やして扱き使ってやればいいんだから」
「そうだな」
「そうそう。で、こっちの学級委員達の当日巡回ルートをさっきのと照合して調整するのに────」
あっさりと冗談で流した。
これには周囲もホッとした様子。
ただ一人内原だけは不満げだったが、それさえこの一言で黙らせてしまう。
「内原!サボるな!」
有馬が頼りになり過ぎて感謝しかない。
でも多分それを言ったら、お互い様だと有馬は言うだろう。
内原に腹を立てているのは自分もだと以前言っていたから。
(本当。好きだな…)
そうして蕩けるような瞳で有馬を見つめる俺に気付いたのはきっと数人。
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