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16.※寸止め

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寸止めまででとは言ったものの、実は全く分かっていない俺。
こう言うことは未経験だし仕方がない。
ただわかることは、伊集院がやたらと上手いと言うことくらいか?

お互いに服を脱いで肌と肌を重ね合う。
嫌悪感は…ないな。
思うのは『普通に温かいな』くらいのものだ。
おかしい。俺はノーマルなはずなのに。
そう考えたところで、そう言えば初恋だけは男だったなとぼんやり子供の頃を思い出した。

あれは昔両親の仕事の都合で海外に住んでいた頃だ。
偶々同じクラスに同じ日本人の子がいて、凄く気が合った。
フルネームは忘れてしまったけど、皆から『ハマー』って呼ばれてて、俺もそう呼んでいた。
人懐っこい性格で、いつもニコニコしながら俺に『トモミ!』って呼び掛けてたっけ。
周りはトモーミと呼んでたし、ハマーも小さいから知臣って言いにくかったんだと思う。
俺はあの子が大好きで、親にあの子の話ばかりしてた。
それで…それで?
ああそうだ。
確か男同士では結婚できないって教えられて大泣きして、友達でいいじゃないって母さんに言われたんだっけ。
でも『友達なら一生一緒に居られないもん』って生意気にも言い返したんだよな。確か。
そしたら『だったらライバルを目指しなさい』って言われたんだ。
それならお互いに切磋琢磨できるし、側にも居られるよって……。

「あっ!はぁっ!」

そんな事を思い出しているうちに、伊集院の手はどんどん俺を追い込んでいく。

「や…ほま、れ…誉っ…!」
「知臣」

愛おしいとその瞳が語る。
大事なんだと手が伝えてくる。
慈しむように施される愛撫に心が解されて、気づけば俺はその手でイかされていた。

「知臣…」

これで終わりかとなんとなく思っていたら、今度は優しく抱き締められながら何度もキスされて、そこで沢山好きだと伝えてこられる。
そしてそのまま頭の位置が少し下がって、チュッチュッと啄ばむように肌に口づけが落とされた。

「知臣。ここも、可愛がってやる」

そう言ってまた俺にキスしながら胸を触り始める伊集院。
キュッと摘んだり、クリクリ捏ねたり、ペロリと舐めたり…。

(嫌悪感は…特にないな)

そもそもフェラにも嫌悪感はないし、そんなものなのかもしれない。
そしてそのままされるがままに身を任せていたら、段々と腰が疼くような感覚に襲われ始めて、折角さっきイかせてもらったにもかかわらずまた勃起させてしまった。
それを見た伊集院は安心したように笑って、更に下へと移動するとそのままフェラへと移行してしまう。

「ンンッ…」

それを受けて俺はどこか鼻にかかったような甘い声で啼いてしまう。
懸命に我慢するけど声を抑え切ることができそうにない。

「知臣。いっぱい感じてくれ」

そんな言葉と共に追い詰められて、俺はそのままイかされてしまった。
相変わらず伊集院は上手い。
すっかり力が抜けきってクテッとベッドに横たわる俺。
そんな俺を嬉しそうに見遣り、何度もキスを落としながら伊集院は『ここまでは大丈夫そうだな』と言った。
そして────。

「知臣…ちょっとだけ、ここも触っていいか?」

そう言いながらそっと触れてきたのは俺の尻の穴。
驚きはしたものの、そう言えば男同士でするなら当然そこに挿れるんだよな?と初めて思い至った。
ここで再度自問自答してみる。
俺はこれを受け入れられるのか、と。

(ちょっとよくわからないな)

多分比較対象がないせいだろう。
まあないならないで、比較対象を作ってみればいいだけの話だ。

これが初恋相手だった場合。
うん。よくわからないけど、多分平気…か?
仲良かったし。

クラスメイト。
仲が良いという点で言うと例えば西条。
う~ん。無理だな。普通に嫌だ。何かが違う。

内原や御堂達は…うわっ絶対無理。
鳥肌が立った。

「…やっぱり無理か。悪かった」

そんなどこか悲しそうな声が耳に飛び込んできて、俺はハッと我に帰る。
どうやら鳥肌を立てたことで勘違いされたらしい。
ここは誤解は解いておくべきだろう。

(伊集院は…うん。大丈夫な気がする)

「誉なら大丈夫だと思う」
「……え?」
「比較対象がないと判断できないなと思って、初恋相手とクラスメイトと内原達とで比較してみた」
「……比較」
「そう。で、結果から言うと初恋相手とお前は多分大丈夫だと思ったから、試してもいいぞ?」

そう答えたら、何故か思い切り激しく唇を塞がれてしまった。
クチュクチュと口内をかき回すように蹂躙されて、頭が真っ白にされてしまう。

「あ…はぁ…」
「知臣…想像でも、他の男にお前に触れられたくない」

そう言いながらゆっくりと指で俺の後ろの入り口をクニクニとほぐしてくる伊集院。
どうやら嫉妬したらしい。

(なんでだよ?!)

たかが想像に嫉妬するってどうなんだ?
仕方がないから、ここで初めて俺の方からキスしてやった。

チュッ…。

うん。平気だ。
まあ何度もしてるし、当然と言えば当然なんだが。
でもそれが伊集院の何かを刺激したのか、グイッと抱き込まれながらキスされて、気づけば後ろの穴に指が勝手に深々と入れられていた。

「ひっ、あっ!は、入ってるっ!」

しかもそこから中を探るようにかき混ぜられて、俺は縋るように伊集院に抱きついた。

「あっあぁっ!ほま、誉っ!こ、怖いっ!」

初めての感覚が怖くて震えていたら、伊集院はすぐにキスを宥めるようなものへと変えてくれる。
怖かったらやめると言ってくれていたし、それでだと思う。

「は…あ……」
「悪い。優しくする」

その言葉に安堵して俺は身体に入っていた力を抜いた。
伊集院は俺に酷いことをしない。
それがよくわかったから。

「ん…誉…」
「知臣。ゆっくり確認するから、怖かったら教えてくれ」」

その言葉に促されるように俺はそのまま伊集院に身を任せ、与えられる初めての感覚を覚えこむように腰を揺らした。

「ん…はっ、そこっ…ぃやだっ…!」
「ん?ここか?」
「あっあっ…!ゾワゾワするぅ…っ」
「大丈夫。ここは前立腺だ。男が感じる場所だから気にするな」

なるほど。これが噂の前立腺。
でも怖いのは怖い。
そう思って気を紛らわすように、俺は伊集院に抱きついて何度も何度もキスをした。

「可愛い…知臣」

そんな優しい声を聞きながら、最終的に俺は前立腺でイかされるという初めての体験をさせられたのだった。

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