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5.書記を確保
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昨日はちゃんと特訓だってしたことだし、今日こそは勝ってみせる。
そう思いながら今日も生徒会へと足を向けていると、途中で会計の内原を見かけたから、ついでに声を掛けていくことに。
「内原」
「あ、副会長。お疲れ様です」
「いい加減生徒会室に顔を出せ。御堂にも伝えておいてくれ」
「ええっ?御堂にもですか?」
「そうだ。何か不都合でもあるのか?」
「いえ…でも最近あいつとは仲が悪くて」
なるほど。同じ相手を狙うライバルだからぶつかることが多くなったのかも知れない。
それなら確かに内原に頼むのは難しいだろう。
「わかった。御堂には俺から言っておく」
「助かります。今週は一回は生徒会室に行きますから」
「ふざけるな。毎日来い」
「毎日は無理ですよ。ライバルが多いんですから」
ああ言えばこう言う。
本当に舌打ちしたくなるほどののめり込みっぷり。
「お前の責任感のなさには失望した。そんな奴が好きな相手を射止められると思うな」
俺はそれだけを言い捨てると、そのまま御堂の元へと向かった。
「御堂」
「副会長!お久しぶりです」
「本当にな。いい加減お前も生徒会室に顔を出せ」
「はい。流石にマズいなとは思ってるんですけど…」
「けど?」
「その…一度行かなくなると、なんと言うか顔を出し辛くて」
なるほど。こっちはこっちで多少は申し訳ないという気持ちはあるようだ。
「いいから出てこい。俺だけじゃなく会長だって迷惑してるんだぞ?」
「すみません。今日はきちんと顔を出すようにします」
「そうか。じゃあ一緒に行ってやろう」
「え?!」
「なんだ?不都合でもあるのか?」
「不都合というかなんと言うか…」
なんだか怪しい。
もしかして口先だけで乗り切ろうとしていたんだろうか?
「御堂。口だけで行動に出ない男に魅力はないぞ」
「……っ!」
「好きな奴を落としたいなら魅力的な自分になれ」
「副会長…」
「わかったら行くぞ!」
「は、はい!」
そして俺は何とか御堂を捕まえることに成功したため、そのまま一緒に生徒会室へとやってきた。
「伊集院。御堂を連れてきたぞ」
そう言いながら扉を開けると、伊集院がデスクから顔を上げてこちらへと目を向けてきた。
「か、会長!すみませんでした!」
御堂は開口一番そう言って勢いよく頭を下げる。
「……来たならきちんと仕事はこなしてもらう。本当に悪かったと思うならその分しっかりと働いてくれ」
「は、はい!」
御堂はバッと顔を上げると急いで所定位置に座り、自分のやるべき仕事の確認をし始めた。
「急ぎの物は俺が片づけてあるから、これとこれ、あとこっちのを順番に片付けていって欲しい」
「わかりました」
PCのファイルを指さしながら指示を出すと、すぐさま取り掛かる御堂。
どうやら今日は少し楽ができそうだ。
そう思いながら俺は会計の方の仕事に取り掛かる。
文化祭の予算案を伊集院が確認し、少々予算をオーバーしそうなところを指摘してもらい見直している最中だ。
だから黙々と数字に向き合い、いろんなシチュエーションを考えつつ試算しながら詳細を詰めた。
あとは業者にも連絡を取って値下げ交渉できないかを確認して────。
そうしてあれこれやっているうちに御堂の方は今日の仕事を終えたらしく、「お疲れさまでした!」と言って帰っていった。
残されたのは俺と伊集院だけだ。
「伊集院。お前はまだ終わらないのか?」
そちらを見ることなく、俺はキーボードに指を滑らせながら尋ねた。
「こっちはもう終わった。お前は?」
「俺はこれを打ち終わったら終わりだ」
「そうか」
そして「よしっ」と最後の入力を終え保存したところで顔を上げたら、いきなり背後から抱きしめられた。
「知臣…」
その甘ったるい声に思わずウゲッと言いそうになる。
「伊集院…」
「誉だろう?ほら、言ってみろ」
いや。待て。
なんで俺がこいつを名前で呼ばないといけないんだ?
「伊集院」
離れろと言おうと振り返ったところで、そのまま塞がれてしまう俺の唇。
「ん…はふっ…ちょっ…んっ…」
ゆったりと重ねられる唇に文句が全部吸い取られてしまう。
「知臣。ほら、誉だ」
「い、言わない…っ」
「この間は言ってくれただろう?」
(この間?いつだ?)
そう考えて、それが告白をされた一昨日のあの日だと思い出し、カァッと顔に朱が上った。
「あ、あれはっ…!」
「忘れたなら思い出させてやろうか?」
「え?!」
伊集院はそのまま俺を引き上げるように立ち上がらせると、口づけながら手早く俺のズボンを引き下ろしてしまう。
「んっ、ちょ、待てっ…!」
このままだとマズい。
しかもこれだと完全に伊集院のペースだから、折角の特訓の成果が生かせない。
それは流石に悔しすぎる。
「せ、折角昨日練習したんだっ…!試させろ!」
あまりの悔しさに思わずそう口にしたら、伊集院の手がぴたりと止まった。
「…………練習?なんの?」
どうやら気になったのかそんな風に聞いてきたから、俺はここぞとばかりに『キスの練習だ』と言ってやった。
「もちろんキスの練習だ!」
「誰と?どうやって?」
何故か機嫌が悪くなった伊集院がそんな風に訊いてくる。
「昨日の夕飯のタラコで自主練したに決まってるだろ!」
「…………ブハッ!」
だから自信満々にそう言い切ってやったら、伊集院は肩を震わせながら笑い始めた。
失礼な奴だな。
そう思いながら今日も生徒会へと足を向けていると、途中で会計の内原を見かけたから、ついでに声を掛けていくことに。
「内原」
「あ、副会長。お疲れ様です」
「いい加減生徒会室に顔を出せ。御堂にも伝えておいてくれ」
「ええっ?御堂にもですか?」
「そうだ。何か不都合でもあるのか?」
「いえ…でも最近あいつとは仲が悪くて」
なるほど。同じ相手を狙うライバルだからぶつかることが多くなったのかも知れない。
それなら確かに内原に頼むのは難しいだろう。
「わかった。御堂には俺から言っておく」
「助かります。今週は一回は生徒会室に行きますから」
「ふざけるな。毎日来い」
「毎日は無理ですよ。ライバルが多いんですから」
ああ言えばこう言う。
本当に舌打ちしたくなるほどののめり込みっぷり。
「お前の責任感のなさには失望した。そんな奴が好きな相手を射止められると思うな」
俺はそれだけを言い捨てると、そのまま御堂の元へと向かった。
「御堂」
「副会長!お久しぶりです」
「本当にな。いい加減お前も生徒会室に顔を出せ」
「はい。流石にマズいなとは思ってるんですけど…」
「けど?」
「その…一度行かなくなると、なんと言うか顔を出し辛くて」
なるほど。こっちはこっちで多少は申し訳ないという気持ちはあるようだ。
「いいから出てこい。俺だけじゃなく会長だって迷惑してるんだぞ?」
「すみません。今日はきちんと顔を出すようにします」
「そうか。じゃあ一緒に行ってやろう」
「え?!」
「なんだ?不都合でもあるのか?」
「不都合というかなんと言うか…」
なんだか怪しい。
もしかして口先だけで乗り切ろうとしていたんだろうか?
「御堂。口だけで行動に出ない男に魅力はないぞ」
「……っ!」
「好きな奴を落としたいなら魅力的な自分になれ」
「副会長…」
「わかったら行くぞ!」
「は、はい!」
そして俺は何とか御堂を捕まえることに成功したため、そのまま一緒に生徒会室へとやってきた。
「伊集院。御堂を連れてきたぞ」
そう言いながら扉を開けると、伊集院がデスクから顔を上げてこちらへと目を向けてきた。
「か、会長!すみませんでした!」
御堂は開口一番そう言って勢いよく頭を下げる。
「……来たならきちんと仕事はこなしてもらう。本当に悪かったと思うならその分しっかりと働いてくれ」
「は、はい!」
御堂はバッと顔を上げると急いで所定位置に座り、自分のやるべき仕事の確認をし始めた。
「急ぎの物は俺が片づけてあるから、これとこれ、あとこっちのを順番に片付けていって欲しい」
「わかりました」
PCのファイルを指さしながら指示を出すと、すぐさま取り掛かる御堂。
どうやら今日は少し楽ができそうだ。
そう思いながら俺は会計の方の仕事に取り掛かる。
文化祭の予算案を伊集院が確認し、少々予算をオーバーしそうなところを指摘してもらい見直している最中だ。
だから黙々と数字に向き合い、いろんなシチュエーションを考えつつ試算しながら詳細を詰めた。
あとは業者にも連絡を取って値下げ交渉できないかを確認して────。
そうしてあれこれやっているうちに御堂の方は今日の仕事を終えたらしく、「お疲れさまでした!」と言って帰っていった。
残されたのは俺と伊集院だけだ。
「伊集院。お前はまだ終わらないのか?」
そちらを見ることなく、俺はキーボードに指を滑らせながら尋ねた。
「こっちはもう終わった。お前は?」
「俺はこれを打ち終わったら終わりだ」
「そうか」
そして「よしっ」と最後の入力を終え保存したところで顔を上げたら、いきなり背後から抱きしめられた。
「知臣…」
その甘ったるい声に思わずウゲッと言いそうになる。
「伊集院…」
「誉だろう?ほら、言ってみろ」
いや。待て。
なんで俺がこいつを名前で呼ばないといけないんだ?
「伊集院」
離れろと言おうと振り返ったところで、そのまま塞がれてしまう俺の唇。
「ん…はふっ…ちょっ…んっ…」
ゆったりと重ねられる唇に文句が全部吸い取られてしまう。
「知臣。ほら、誉だ」
「い、言わない…っ」
「この間は言ってくれただろう?」
(この間?いつだ?)
そう考えて、それが告白をされた一昨日のあの日だと思い出し、カァッと顔に朱が上った。
「あ、あれはっ…!」
「忘れたなら思い出させてやろうか?」
「え?!」
伊集院はそのまま俺を引き上げるように立ち上がらせると、口づけながら手早く俺のズボンを引き下ろしてしまう。
「んっ、ちょ、待てっ…!」
このままだとマズい。
しかもこれだと完全に伊集院のペースだから、折角の特訓の成果が生かせない。
それは流石に悔しすぎる。
「せ、折角昨日練習したんだっ…!試させろ!」
あまりの悔しさに思わずそう口にしたら、伊集院の手がぴたりと止まった。
「…………練習?なんの?」
どうやら気になったのかそんな風に聞いてきたから、俺はここぞとばかりに『キスの練習だ』と言ってやった。
「もちろんキスの練習だ!」
「誰と?どうやって?」
何故か機嫌が悪くなった伊集院がそんな風に訊いてくる。
「昨日の夕飯のタラコで自主練したに決まってるだろ!」
「…………ブハッ!」
だから自信満々にそう言い切ってやったら、伊集院は肩を震わせながら笑い始めた。
失礼な奴だな。
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